■2011年12月18日 第9回 〜 商品情報 茨城産「イチゴ」
【澤田勇治氏より】

 今日は、茨城県から、イチゴの担当の方が来ておりますので、お話ししていただきます。

 イチゴというと九州や栃木のイメージが強いと思いますが、茨城にもおいしいイチゴがあるということをぜひみなさんにも知っていただきたいと思っています。

澤田勇治氏
【JA北つくば イソベ氏より】

 茨城県のJA北つくばは、東京から約70km。茨城県の北西部、筑波山の西側に位置しています。関東平野の真ん中で、筑波山流の豊かな水と温暖な気候に恵まれ、甘くてみずみずしい新鮮なイチゴを栽培しています。

 部会員は全部で56名、面積は14ヘクタールです。昭和38年からイチゴの栽培が始まり、最初は「ダナー」という品種で、現在は「とちおとめ」を主に栽培しています。前年度の生産量は約600トン。「とちおとめ」の栽培では、栃木に次いで2位です。

 「とちおとめ」は、果汁の糖度が高く、酸味が低いので、とても甘く感じられるイチゴです。また、果肉も緻密でジューシー、食感が極めてよく、収穫後半になっても食味が衰えません。シーズン通してよい味わいで、日持ちもよい品種です。北つくばでは、11月から翌年の5月まで販売しています。

 今年は9月始めの台風の影響で定植が若干遅れ、昨年より1週間遅い11月3日が初出荷となりました。これからクリスマス、年末年始にかけて、量も増えてくると思います。

JA北つくばのイチゴ「とちおとめ」

 「とちおとめ」以外にも、茨城県では、平成20年に「ひたちほんごう」という名前で出したイチゴを現在は「いばらキッス」という名前で販売しています。JA北つくばでは、まだ7アールしか栽培していませんが、大田市場を通じ、大変食味がよいと好評を得ております。こちらもこれから数量が増えてくると思いますので、これからもJA北つくばのイチゴをよろしくお願いいたします。

 なお、イチゴには、ビタミンCが多く、ポリフェノールも含まれているため、風邪予防に有効で、これからの季節にぴったりです。洗うとき、ヘタをつけたまま洗うといいそうです。ビタミンCは水溶性なので、先にヘタをとって洗うと、効果が薄れる、ということです。

 
■2011年12月18日 第9回 〜 商品情報 山形産「花作大根」
 山形県の南部、長井市からやってきました。 今朝、家を出たときはかなり雪が降っていて、もう10cmくらい積もっていました。帰る頃には20cmぐらいになっているのではないでしょうか。

 私が作っている「花作(はなづくり)大根」は、上杉藩の時代、つまり江戸時代の中期あたりから作られていたといわれています。名前の「花作」は地名です。

 大きさは、普通の大根の1/3くらいしかありません。同じ期間かけて育ててもそれくらいの大きさにしかならないので、なかなか生産量が上がりません。

 

花作大根生産者 横澤芳一氏

 肉質はかたくて、漬けると苦い。で、収量が少ないわけですから、三重苦の大根、というわけです。

 かたいので、昔は漬物にして保存食として食べられていました。普通の大根も沢庵漬けにして食べるのですが、その沢庵漬けもなくなる6月頃、ちょうど田植えが始まります。夏の野菜はまだ出てこない、冬場の保存食はなくなった、という端境時期に、「花作大根」の漬物は重宝されていたようです。

花作大根

 しかし、「三重苦」の大根ですから、やわらかくて歯触りのいい大根が出てきたり、いつでも食物がある時代になって、作る人がいなくなり、すたれかけていました。今から30年ほど前に、復活の動きがあったのですが、それも5年くらいでなくなりました。ただ、昔からのものですから、やはり残しておきたいと思い、平成15年から、「花作大根物語」というパンフレットなどを作り、タネをみなさんにお配りして作ってもらっています。売っても儲かるわけではないので、自家用です。昔から、できたものを漬物にするというような形で細々と伝えられてきたものです。

 パンフレットの裏面には、「花作大根」を使ったさまざまな漬物の写真が載っています。タネを配って大根を作ってもらった人が漬けたものを持ち寄ったんです。いろいろな人のアイデアがあると、また違う方向性が出てきます。今日は、「花作大根」の漬物も持ってきましたので、後ほど食べてみてください。塩や醤油で漬けると、最初はおいしいのですが、2〜3日すると苦みが出て食べられないほどになります。そこで、酢で漬けてみたところ、苦みが出なくなりました。酢漬けにして、紅花で色を着け、「花色大根」と名づけました。ぜひ試食してみてください。

 地元の料理の先生は、スライスしてステーキのように焼き、塩、こしょうで食べるとおいしい、といっています。普通の大根ではやわらかくなりすぎるのが、「花作大根」はかたいので、歯ごたえが残って好評だそうです。

 いろいろな方のお知恵を借りながら、少しずつ増えつつあり、現在3名ぐらいで作っています。収穫は全て終わりました。形のいいものは、最近、地元のスーパーでも少しずつ扱ってもらえるようになりました。形の悪いものは自分たちで加工場を持って漬物にしています。ただ、10本の形のいい大根をとるのに、20本くらいとらないといけません。昔ながらの在来の大根なので、条件の悪い点は多々ありますが、今までしぶとく生き残ってきたということは、生命力が強いに違いない、と感じながら作っています。山形に「花作大根」というものがある、とみなさんに知っていただければありがたく思います。

 なお、2012年1月23日(月)〜26日(木)の4日間に渡り、銀座にある山形のアンテナショップに、仲間と一緒に漬物や加工品を持っていきます。お時間があれば、ぜひお越しください。

 
■2011年12月18日 第9回 〜 商品情報 山ノ内町のリンゴ各種
【山ノ内町 関一夫氏より】

 今日は「サンふじ」の説明をさせていただきます。

 「ふじ」は、だいたい満開185日で完熟するといわれています。今年の山ノ内町の開花は5月5日頃に始まり、満開は5月13日頃でした。5月13日から185日ということは、11月の半ば過ぎが完熟する時期になります。

 山ノ内町は12月に入ると一度雪が降ります。何年か前、雪のあとにすごい低温が来て、とりきれず樹にならせておいたリンゴが果汁にもならなかったことがありました。ほとんどの農家では、11月いっぱいにとるようにしています。

 

山ノ内町 関一夫氏

 今年は完熟するのが遅かったのですが、花芽や樹の状態にバラツキがあるので、どこの農家でも、いいものからとり始めると思います。

 「サンふじ」を3つ並べてみましたが、どれが完熟品だかわかりますか? 正解は一番左。あとの2つは、完熟していません。真ん中のリンゴは、まだ青みが残っています。地色が消えないと、完熟しません。一番右は着色系といい、早く色が入るように改良したもの。これ自体は完熟していません。農家はどうしても色で見る傾向がありますので、これだと早どりする危険性があります。もちろん、完熟すれば味は変わりませんので、おいしいリンゴになります。

サンふじ3種の比較
 農家としては、すべて一番左のような、おいしいリンゴを目指して作っています。買うときはよく見ていただいて、ぜひ、完熟品をお求めください。

 完熟していないリンゴは、今食べてもおいしくありませんが、春まで持ちます。春になると、こういうリンゴも甘くておいしくなります。本当は、摘果のときにこういうリンゴは落とせばいいのですが、樹勢調整のために、ならせたままにしておくこともあります。

 「シナノスイート」や「つがる」と違い、「ふじ」はリンゴ自体の性質にすごくバラツキがありますから、農家は必ずひとつひとつ見てお出ししています。見た目がいいのは贈答用、多少傷などがあると値段を安く出して、それ以下のものはジュース用にしかなりません。個人的には、おいしくて安いリンゴで勝負したい、とも思いますが、外観商品ですから、サビ、傷があると、すごく安くなってしまいます。とにかく、食べたお客様がおいしいと思ってくださるものを出していくつもりです。八百屋のみなさんも、ぜひ、おいしいリンゴを消費者の方に売っていただければ、と思います。

 

【山ノ内町 湯本将平氏より】
 私からは、「シナノゴールド」の商品紹介をいたします。詳しい来歴などはお配りしたパンフレットに書いてありますので、のちほどご覧ください。

 「シナノゴールド」は長野県のオリジナル品種で、「シナノスイート」、「秋映」とともに、「リンゴ三兄弟」との名前をつけ、長野県でPRしています。

 食べていただければわかると思いますが、非常に食味がよくて味が濃厚です。果肉はかたく、とてもシャキシャキとした食感が味わえると思います。また、とてもジューシーで、本当に食味にすぐれたリンゴです。

 

山ノ内町 湯本将平氏

 また、日持ち性と貯蔵性が非常に高く、常温で3週間、冷蔵では約3ヶ月持つといわれています。

 おいしい反面、なかなか評判が上がらないのは、「黄色いリンゴ」だということです。リンゴは赤、とのイメージが強く、お客さんが手を出しづらい。また、標高の高い山ノ内町などは、年によっては酸味が強く、渋みも残ることがあります。その原因は、黄色いリンゴなので収穫適期の判断が難しく、未熟果のときにとってしまうからです。今年は9〜10月の温度が少し高かったので、酸抜けが例年よりも早く、とてもおいしく仕上がりました。

シナノゴールド


 果肉がかたく、貯蔵性が高いという「シナノゴールド」の特徴を生かして、春先、減酸貯蔵をして酸の抜けた頃に売っていただくとよいのではないか、と思っています。 そうすれば、おいしい「シナノゴールド」を長くお客さんに提供できるのではないでしょうか。

 山ノ内町は標高が高く、昼夜の寒暖差がとても激しいところです。差が激しいので色がとてもよくつき、青から黄色に、さらにややオレンジがかった色にまでなる本当に優れた「シナノゴールド」が収穫できます。また、実がすごく引き締まっているので、シャキシャキ感も楽しめます。

 今年は酸味がとれておいしい年だったので、10月28日に開催された長野県のリンゴコンクールに、「シナノゴールド」を出展してみたところ、3位の賞をいただくことができました。今までは、長野県の産地でも、「山ノ内町ではゴールドは作れない」といわれていたので、県の中で認められて自信がつきました。

 「シナノゴールド」は、ヨーロッパデビューすることになりました。長野県と、イタリア最大の産地、南チロルの生産団体が契約を結んだそうです。今後、世界から注目を浴びるようになると思いますので、ぜひみなさんも注目してください。

 

【山ノ内町 小坂博章氏より】
 夜間瀬地区で30年ほどリンゴを作っています。今日は「ぐんま名月」というリンゴをご紹介します。

 名前の通り、「ぐんま名月」は群馬県が「あかぎ」と「ふじ」を交配して作った品種で、平成3年に名前をつけて登録されました。もう20年ほど経っていることになります。

 そんなものをなぜ今頃作っているのかといいますと、私はもともとは「ふじ」をメインに作っており、その受粉樹として導入したのがきっかけです。

山ノ内町 小坂博章氏

 「ふじ」の場合、違う品種の花がないと、大きくて丸いリンゴはできません。花が咲いたら、違う品種の花粉をつけてやります。人工授粉の作業は、大変な労力です。花が一気に咲くと、間に合わないこともあります。そうするとうまく受粉ができず、きれいなリンゴができません。

 そこで、「ふじ」の畑の中に違う品種のリンゴを入れています。以前は、「王林」を導入していましたが、お金にならないのでだんだん人気が落ちてきて切られてしまい、畑に受粉樹がなくなって、「ふじ」の品質が落ちてきました。

ぐんま名月
 当地区では、これではいけない、ということで、「王林」に替わるいい受粉樹を探しました。部会の研究チームが、いろいろと調べた結果、群馬県にある「ぐんま名月」が候補になり、試験的にやったところ成績がよかったので、今、次第に普及してきています。

 「ふじ」のための受粉樹からもおいしいリンゴができて売れるわけです。私も、「ふじ」の空いている樹に高接ぎをして、4年目くらいになり、今年はかなりとれました。受粉樹は捨ててしまえばいいと思われるかもしれませんが、消毒など年間の労力を考えると、経済的には、受粉樹のリンゴも売れなければいけません。

 花が咲く時期は「ふじ」と同じですが、収穫期は「ふじ」より早い。通常は10月下旬といわれています。当地区では、「ふじ」をとる直前までならせておいて、蜜が入るのを確認してからとっています。片親が「ふじ」ですから、熟すとどんどん蜜が入るんです。もう片方の親、「あかぎ」は群馬県の観光農園で昔から使っている赤い小さなリンゴです。赤と赤を交配して黄色いリンゴになったという、ちょっと珍しい品種です。陽の当たるところは紅が差したように、ピンクに着色します。収穫するときはお尻のほうを見て、色が透明感のある黄色になったものからとっていきます。私は2回に分けて収穫していますが、1回で収穫する農家さんもいます。1回収穫の場合、同じ箱に、黄色がかったリンゴと全体に青みがかったリンゴが入ってくると思いますが、黄色いリンゴのほうから売ってください。普通において2週間、冷蔵すれば1ヶ月は持ちます。

 他のリンゴと同じですが、これも早どりしたものはおいしくないので、十分に味がのったものを確認して、お買い求めいただければ、と思います。

 「ぐんま名月」は、表面がツルツルしてきれいなのですが、皮がやわらかい。皮ごと食べられるくらいです。ただ、やわらかすぎて、ちょっとかたいものに当たると、下のほうが打撲になりやすいので、取り扱いにご注意ください。クッションを敷いたり、キャップに入れるといいと思います。

 量的にはまだまだ少ないのですが、おいしいふじが出る直前、11月の頭くらいにはご提供できると思います。酸味は非常に少なく、甘くて果汁たっぷり、大変食べやすい品種だと思います。黄色い品種もいろいろありますが、「ぐんま名月」もご購入いただければ幸いです。

 

 
 

【八百屋塾2011 第9回】 実行委員長挨拶|講演「かぶ」|勉強品目「かぶ」「ミカン」|商品情報食べくらべレポートより