■2011年9月11日 第6回 〜 ドールセミナー「フレッシュシステム川崎センター」
●第2部:野菜(輸入・国産) 〜フレッシュシステム川崎センター内会議室〜
◇野菜全般についての概略
  • 国産野菜の流通量は、1997年から緩やかな減少傾向にあり、2008年は90%くらいまで落ちています。輸入量は増えたり減ったりしていますが、1997年と2008年を比較すると137%、増加傾向にあるのが特徴です。

  • 輸入野菜は、2005年に輸入量のピークを迎えました。しかし、2006年に中国産野菜の残留農薬の問題があり、2007年に冷凍ギョーザ事件が発生したことで、安全・安心の意識が非常に高まって、2007〜2008年にかけては半減しました。
(株)ドール 野菜営業 村山真彦氏
  • 国産野菜は、2006〜2007年にかけて増加しています。これは、それまで原料に輸入品を使っていた業務系のお客さまが、残留農薬やギョーザ事件で、一気に国産にシフトしたためだと考えられます。

  • 2009〜2010年は、再び国産野菜の流通量が減り、輸入野菜が増えています。主な原因としては、昨年夏の歴史的な猛暑や、その前年の寒波や冷夏など、ここ5年ほど、天候が非常に不安定になっています。その結果、国産野菜の出荷が不安定で、まったくものがないという状況も多く、それを補完するために輸入品が見直されてきたのだと思います。
◇(株)ドールで取り扱っている商品
  • (株)ドールでは、ブロッコリー、セロリ、カリフラワー、パプリカ、スイートコーン、ミニキャロット、レタス、ラディッキオ、アスパラガス、エダマメ、芽キャベツ、かぼちゃ、安納芋、ニンニク、しょうがなど、20品目以上の野菜を扱っています。

  • 輸入品だけではなく、ここ6年くらいは国産野菜の取り扱いも増やしており、昨年は全体の売上げの約50%が国産野菜でした。
◇アメリカ産セロリについて
  • 国産セロリの数量と作付面積は、1992年と2008年を比較すると、どちらも75%前後まで減少しています。

  • (株)ドールでは、アメリカ産のセロリを輸入しています。産地は、カリフォルニア州のオックスナード地区、サリナス地区。品種は「グリーンタワー」や「バッド・スペシャル」です。生産会社は(株)ドール・フレッシュ・ベジタブル、アメリカにあるわれわれのグループ会社です。そこが生産したものを、(株)ドール・ジャパンが輸入して販売しています。
アメリカ産のセロリ
  • 日本に輸入されているセロリの約7割は、(株)ドールが販売しています。

  • セロリの輸入量は、2009年にそれまでの半分以下に減っています。その理由は、ある輸入商社さんが入荷したカリフォルニア産のセロリに、使用が認められていない農薬が検出されたためです。われわれのセロリには何の問題もなかったのですが、そのあおりをくらうような形で、輸入量全体が減ってしまいました。

  • 問題となった農薬の名前は、「ボスカイド」といいます。2006年からポジティブリストが施行され、日本で登録されていない農薬については0.01ppmという基準値で、すべてを検査することになりました。「ボスカイド」は登録されていなかったので、0.01ppm以上検出されると輸入ができなくなります。

  • われわれは、輸入したセロリのモニタリング結果を厚生労働省等に出し、違反等は一切ないということで、2010年からは通常通り輸入を再開しました。
◇(株)ドールの栽培管理
  • (株)ドール・フレッシュ・ベジタブルと(株)ドール・ジャパンでは、野菜の栽培を行う前に、綿密な資料を作成します。まず、生産を行う生産管理会社の概要。何を栽培するのか、どういった流通経路をたどるのか。それから、栽培計画表。栽培する作物、使う肥料、農薬を含め、計画を作ります。その中に、使用予定農薬リストという形で、例年、そのエリアで作る場合に使う農薬のリストを出します。農薬等は非常に深刻な問題となるので、危機管理フローも作成します。万が一、何らかの問題が発生した場合には、まず一番初めに誰のところに情報が届くのか、どういった形でトレースバックしてその問題を解決していくのか。責任者の所在や連絡先などを、問題が起こる前から決めておこう、ということです。

  • 商品にはすべて「BOXコード」と呼ばれる暗号のような数字が入っており、収穫した圃場のエリアや、そのときの責任者番号等、すべてBOX単位でトレースバックができます。パレット等のナンバーは、これとはまた別に管理されています。

  • われわれが一番大事にしているのは、実際に栽培を始めてからの肥培歴、防除歴の管理です。日々の日記のようなもので、どういう化学肥料や農薬を使ったか、日別で、管理している畑ごとにすべて記載します。膨大なデータになりますが、生産会社が管理し、何か問題があった場合や、問い合わせをした場合には、その中から防除歴を出し、そのときにどのような栽培が行われたかが追えるようになっています。当たり前のことのようですが、現場にはいろいろな年代の、さまざまな考えの方がいらっしゃるので、すべての方に記載を徹底するのはなかなか大変です。

  • 2010年にわれわれがセロリの輸入を迅速に再開できたのは、肥培歴、防除歴をすべてとっていたことがひとつの理由です。問題となった輸入商社さんは、「ボスカイド」が検出されたとき、なぜそれが出たのか理由が一切わからなかった。(株)ドール・フレッシュ・ベジタブルと(株)ドール・ジャパンでは、この問題を深刻に捉え、理由を調べたところ、前年にセロリではない作物(アメリカ国内向け果物)を植えていたときに使った農薬が土壌に残留し、セロリがそれを吸い上げてしまったのではないか、という検証結果が出ました。それ以降、われわれは、前年に違う作物を植えていたエリアのセロリは輸入しない、作付もしない、と、アメリカ側の(株)ドール・フレッシュ・ベジタブルと取り決めをして入荷しています。われわれは、栽培管理、肥培管理等データをすべて持っているので、問題が発生したときに、すぐに産地側と調査をして原因を突き止め、対応できるという部分が非常に大きいと思います。
◇輸入野菜の産地からの流れ
  • (株)ドール・ジャパンがセロリを輸入する場合は、単純に、アメリカの(株)ドール・フレッシュ・ベジタブルというグループ会社から持ってきます。

  • ほかの輸入商社の場合は、複雑です。アメリカ側に輸出会社があり、そこが各生産農家やグループ、団体と情報をやりとりして、商品を買う。そして、日本側の輸入商社に対して情報を出し、輸出する、という形をとります。そもそもの仕組みが入り組んでいるので、間違いが起こりやすいような流れだといえるかもしれません。

  • ただ、アメリカの生産会社はレベルが高いので、BOXコードや栽培管理も、ある程度はきちんととっています。われわれ以外の輸入業者も、トレースバックをとろうとすれば、多少時間はかかるでしょうが、問題なくとれると思います。
◇アメリカ産セロリの栽培
  • アメリカのセロリ産地では、日本と同じように、育苗ハウスで播種して育苗し、定植、栽培という形をとっています。アメリカ産ブロッコリーの場合は、「直まき」といって、いきなり畑にタネをまいてそのまま育てたものを収穫します。日本と大きく違うのは、湿度が非常に低いエリアだということ。そのため、それほど株間や畝間をとる必要がありません。雨も、雨期の時期しか降りません。反当たりでいうと、日本ではだいたい3,000株植えるのがポピュラーだと思いますが、アメリカの場合は5,000〜6,000株。そうしたことからも、もともとの生産コストが違う、といえると思います。

  • 収穫時には、収穫するチームがとったセロリをそのまま畑においていきます。サイズごとにわけられたBOXが置いてあり、箱詰め担当の人は、一株一株、畑でサイズを見極めて、その箱の中に詰めていきます。われわれは、これを「フィールドパック」と呼んでいます。日本の場合は共同選果場に持ち込んで、すべて一緒にして選果していきますが、アメリカは土地が広大であるということと、固定の選果場は維持費や運営費が発生するので、フィールドパックを取り入れています。収穫しながら製品化していくことで、流通の段階で大幅なコストダウンを行うことができます。

  • フィールドパックされた商品は、すぐに冷蔵庫に入れますが、その前に、ハイドロシャワーという処理を行います。上から地下水をかけて、濡れた状態の商品をどんどん冷蔵庫に入れていく。単に冷水で商品の温度を下げるだけではなく、上から水をかけたものを冷蔵庫に入れると、商品の水分が蒸発していって、何もしないままよりも、半分くらいの時間で品温が下がります。

◇アメリカ産セロリの販売
  • (株)ドールは、輸入セロリのうち約7割のシェアを持っており、その約8割は加工用です。業務向けの浅漬けや、スープの下地を作る原料などに使われています。

  • 昨年の猛暑で国産野菜が高騰し入荷もない、という状態が続き、業務用だけでなく多くの量販店のバイヤーさんから相談を受け、曜日市で98円で販売するといった特売アイテムとしてご紹介しました。

  • 量販店さん向けの輸入セロリは、それまで月間50万円くらいの売上げでしたが、特売を仕掛けて以降、月間250万円くらいまで一気に伸びました。

  • 景気が不安定な中で、コンスタントに98円くらいで売れるアイテムとして、輸入セロリは非常に歓迎されました。
◇韓国産パプリカについて
  • パプリカの輸入統計をみると、2000年から、韓国産のパプリカを含め、輸入パプリカが爆発的に増えています。昨年の実績では、輸入量の中で64%を韓国産を占めています。

  • (株)ドールでは、韓国産のパプリカを中心に輸入しています。農産貿易という生産会社が、キムジェ市で栽培を行っています。

  • 韓国では全土でパプリカを栽培しています。ソウルや釜山といった大都市部の近郊農家さんにはさまざまな情報が入るので、かなり価格に敏感です。われわれは16年くらいパプリカを扱っており、品質に一番気を遣っています。お客さまのニーズに合わせて、品質の要望を出すのですが、近郊農家さんは品質の前にまず価格です。キムジェのあたりは比較的都市部から離れていて、長期的な視点で、「ドールと一緒に取り組んでいきましょう」と言ってくださる方が多いエリアです。

◇韓国産パプリカの栽培や選果
  • 韓国産のパプリカは、アメリカと同じように、大きなガラスハウスとロックウールの養液栽培を採用しています。日本より背の高いガラスハウスを使っています。

  • 害虫に対して天敵となる昆虫でその害虫を駆除し、化学農薬の使用をできる限り減らす農法も行われており、これを「天敵栽培」と呼んでいます。

  • 天敵栽培のメリットは、省力化と、農薬を使わないので、作業員に対する毒性がないこと。農薬の残留の心配もありません。また、農薬を使うと、虫に抗体が生まれ、農薬が効かなくなります。そうなると、また新しい農薬が必要になる。害虫を駆除してくれる天敵栽培には、そうしたいたちごっこの必要がない、というメリットもあります。

  • 天敵も虫ですから、食べ物がないと死んでしまいます。害虫が発生しているところに放さないと、すぐに死んでしまうので、意味がありません。天敵農法では、天敵を投入するタイミングが重要です。「天敵栽培をやっている」とアピールする農家さんは多数います。しかし、害虫も何もいないのに一回天敵を放しただけでは意味がありません。

  • ガラスハウスは基本的に密閉されていますが、暑い時期になると窓を開けるので、虫が入ってきます。われわれが取引をしている韓国の農家さんでは、ハウス内と周囲に虫取り紙のようなものを無数に貼っています。それを1週間に1回、韓国国内にある農薬資材屋さんに、レポートと一緒に提出します。そこで検査をしてもらって、害虫の発生状況に合わせて、さまざまな天敵を組み合わせて提供してもらいます。こうしたやりとりを必ず週1回行って、タイムリーに天敵を放し、農薬を使わずに栽培しています。

  • 農産貿易では、天敵栽培を始める前年に比べ、農薬の使用量を平均で40%くらいにまで落とすことができました。パプリカ農家といっても1軒ではなく十何軒いますので、技術のレベルが違います。まったく農薬を使わずに栽培できた農家もいるのですが、そうではない農家もいて、全体の平均ではだいたい40%ぐらいの使用量に抑えることができた、という実績があります。

  • 天敵となる虫は、日本側で天敵農薬として登録しておかないと、不合格になる場合があります。われわれや韓国の大使館から、日本の農水省に申請をするなどして天敵栽培を進めています。

  • 韓国では、共同選果場を使って選果しています。パプリカの場合、小さな土地で人工的な環境を作り出し、より多くの収穫量を上げるやり方なので、ヨーロッパや韓国のように、国土が狭くて人件費の高い国で発展する栽培法です。作付面積が小さいので、車で30分〜1時間の範囲で共同選果場にものが集まってきます。ですから、パプリカに関しては、共同選果場で品質レベルを一定化しています。

  • 韓国政府は、海外のマーケットに対して、韓国の商品や文化の認知度を上げるために、多額の予算を投入しています。パプリカについても、韓国政府からある程度の補助をいただきながら、試食マネキンなどを毎年定期的に実施しています。
◇(株)ドールの国産野菜事業の背景と展開
  • (株)ドールは、輸入商社のイメージが強いと思います。しかし、社内では入社してからずっと、「われわれは生産者だ」ということを繰り返しいわれます。消費者の方のニーズを聞き、求めるものを生産していこう、というマインドが強い。近年は国産野菜に対するニーズが非常に強いので、国産野菜事業にも参入しています。

  • 10年ほど前から、日本の農業は、高齢化が問題になっています。2008年には、65歳以上の農家の方が全体の30%以上を占めており、今や差し迫った問題になっています。

  • われわれとしては、高齢化問題を解決していかないといけない。遊休農地が全国的に増えてきています。若い人が農作物を作らない理由のひとつに、相場が乱高下するので収入が不確定、という問題もあると考えています。こうした問題を解決するために、(株)ドールでは農業法人を取得して、全国で7ヶ所、農場運営を進めています。そして、全国の自治体などからご紹介いただき、地主さんと契約をして土地を借り、今、全国で800ヘクタールくらいまで作付面積が拡大しています。販売に関しては、量販店さんや小売店さんとのお付き合いがあるので、マーケティングを含め、これまでの販売ルートを活用していこうとしています。
◇(株)ドールの農業生産法人
  • (株)ドールでは、北海道、宮城、福島、千葉、岡山、宮崎、長崎の7ヶ所に農業生産法人を立ち上げ、事業を展開しています。

  • 農家さんと契約するのではなく、関連会社が農業法人を取得して土地を借り、タネの購入から播種、栽培まで、すべて自分たちで進めています。

  • 一番大きなファームは北海道。面積は413ヘクタールと非常に広く、ブロッコリーなどをメインにしています。
ブロッコリー
  • 作付面積は年々増えており、今、特に増えてきているのが、岡山の笠岡や、長崎の五島列島にある福江島という島です。

  • 農業生産法人事業の展開で非常に難しいのは、われわれがアメリカの会社だということです。弊社の人間が、日本の農家さんや地主さんに、「農業をしたいので土地を貸してください」といっても、何だかよくわからない外資系の会社には貸せない、と…。はじめは北海道以外では土地が借りられない状況が続きました。しかし、例えば、笠岡では、まず山頂部近くの畑から始め、1年間ファームの人間が回りの雑草を刈り、畑のメンテナンスをし続けました。周囲の農家さんも、畑を見れば、どういう農業をやろうとしているかがわかるわけです。1年後くらいから、「ずっと見ていたけど、ドールさんはよく畑に手を入れているから、自分の畑の一部を貸してもいい」といってくださる地主さんが出てきました。そういった地道な活動をしながら、今年で6年目。ようやく全国で800ヘクタールくらいまで拡大することができました。

  • ファームでは、自前の施設を持ち、持続性のある農業をしていきます。1年やってみて損をしたからやめます、というのではなく、長期的に腰を据えてやっていく考えです。

  • 高齢化問題の解決と、次世代の農業の担い手を育成するという意味で、われわれのファームでは、毎年3〜5名ほど、農業大学を卒業した新卒者を受け入れています。一番多い年には12〜13名を受け入れました。種苗会社をリタイアした60歳以上の方や、元農家の方、農協の指導員だった方などに来ていただいて、若者たちに栽培指導等をしてもらいながら農業を進めています。われわれのファームの平均年齢は30代。3〜4年前に33〜34歳くらいだったので、今はもうちょっと上がっていると思いますが、それにしても、平均的に若い世代が多くなっています。
◇(株)ドール国産野菜のラインナップ
  • われわれが取り扱っている最も多い国産野菜は、ブロッコリーです。

  • 「真珠もろこし」は、白いトウモロコシ。それ以外にも、かぼちゃや安納芋等を栽培しています。

  • 裏作を考えると、いろいろな作物を植えていかなければなりません。市場のお客さまやバイヤーの方、業務系のお客さまなどからアドバイスをいただきながら、さまざまな作物をテスト栽培しています。
◇(株)ドール農業生産法人のご紹介
  • 北海道にあるファームは、「I LOVE ファーム日胆」です。一番大きなアイテムはブロッコリーで292ヘクタール、「真珠もろこし」は83ヘクタールくらい植えています。

  • 岡山の「I LOVE ファーム笠岡」は、カブトガニで有名なエリアにあります。瀬戸内海に面した干拓地等を借りて栽培しています。

  • 長崎の「I LOVE ファーム五島」は、福江島という島にあります。この島には、種苗会社のブロッコリー採種圃場もあり、非常にいい環境です。ここで、ブロッコリーを中心に栽培しています。

  • 鹿児島にあるJAいずみ農協は、空豆など、非常にいい商品を作る農家が多いところです。われわれはここからも購入しています。例えば、資材など、自分たちで直接買うより割高でも、最寄りのJAさんや農協さんと協力関係を築きながら進めています。
  • 宮城県登米市の「I LOVE ファーム登米」では、昨年から国産パプリカの栽培を始めました。

  • 当初はガラスハウスでパプリカを作ろうとしたのですが、法律上難しかったので、ビニールハウスでテスト栽培を行っており、年間100トンくらい生産する予定です。パプリカは非常に効率のいい作物で、パートさんを含め10〜15名で運営していける形になっています。
宮城県登米市産のパプリカ
◇質疑応答より
  • Q:国産のブロッコリーは輸入品よりも倍ぐらい早く変色する気がするのですが…?
  • A:ブロッコリーは、収穫してからどれだけ短時間で品温を3℃以下まで下げられるかが、その後の商品の店持ちに一番大きく関与してきます。輸入ブロッコリーはセロリと同様にフィールドパックを行っています。収穫したら、その時点で、全て箱詰めする。ブロッコリーの場合、アイシングマシーンという機械がパレットの上にのり、横から上から下から、30秒でパレットすべてのボックスに氷が投入されます。国産のブロッコリーも収穫してから1時間以内に発泡氷詰めにして冷蔵庫に入れれば、アメリカ産と同じくらいの店持ちになると思います。1回品温を3℃まで下げても、段ボールで流通されて、また10℃くらいまで上がると、そこからの劣化が非常に早くなってしまいます。少しでも早く温度を下げて、あとはそれをどれだけ長い時間維持できるかが、品質に一番大きな影響を与えると思います。

  • Q:栽培管理はいつ頃からしているのですか?
  • A:私が(株)ドールに入社して13年になりますが、栽培管理はそのときにはもう、フォーマットにのっとって管理されていました。2007年に野菜の輸入量が減少したから始まった、というわけではありません。

  • Q:国産野菜の比率は、これから増やしていく予定ですか?
  • A:昨年、全体の約57%を国産アイテムが占めました。それまでは輸入品の売上げが8〜9割。国内での作付面積が増えるとともに、国産野菜の売上げも増えてきました。ただ、今年は国産野菜の売上げは横ばいで、拡大はしていません。というのは、作付面積が拡大したとはいえ、北海道は別として、5反もあれば10町歩もあるというようにまとまった広い畑がなく、アメリカ型の大規模で効率的な農場運営ができません。そのため、コストが見込み通りには下がらない。北海道は採算ベースにのりつつありますが、それ以外の産地については、コスト面で苦戦しているというのが現状です。ただ、それでも畑ごとに特徴を捉えた作付のノウハウがようやくできてきて、どのファームでも少しずつ生産性が上がっています。生産がある程度軌道に乗れば、拡大していくと思います。

  • Q:アメリカ産セロリを食べてみて、ちょっとかたいと思いました。アメリカでは生食と加熱ではどちらが多いのですか?
  • A:アメリカでは生食の需要が多いです。例えば、アメリカのスーパーマーケットでニンジン売場を見ると、7割くらいが「ミニキャロット」と呼ばれるそのまますぐに食べられるニンジンです。アメリカのセロリがかたいのは、昔の品種だからです。においが強く、色も濃く、筋が強い。日本で作っているセロリはやわらかくて、どちらかというとマイルドな味のものが多くなっています。

  • Q:日本で野菜を栽培するときは、アメリカのタネを持ってくるのですか?
  • A:アメリカで使っているタネを持ってきても、日本は高温多湿なので、いいものがとれません。そのため、基本的には日本の種苗会社さんのタネを使っています。種苗会社さんから、「試しにこれを植えてみて」といわれることもあり、いろいろな品種を改良しながら試しています。

  • Q:アメリカで売られているセロリはもっと株が大きいと思います。今日のセロリは小さめ。品種の違い? それとも、日本向けになっているのでしょうか?
  • A:これは、日本向けのスリムなセロリです。輸入品というと、多くの量販店さんは、98円や100円で売りたい、というのが一番大きなご要望なので、本日も小売店さん用に、小株のセロリ、一番小さいものをお持ちしました。業務用として輸入しているセロリは非常に大きく、日本の2Lや3Lサイズです。大きな株から小さなものまで生産しており、お客さまに合わせて持ってきている、ということです。

  • Q:ファーストフードなどと契約栽培のような形でやっていくご予定は? 一般向けを重視する予定はありますか?
  • A:アイテムにもよりますが、セロリに関しては加工向け。カット野菜、水煮、浅漬けといった加工品の原料として販売している比率が高い。ファーストフードやファミリーレストランも販売ルートとして模索はしていますが、まだノウハウが十分ではありません。今後、市場と協力しながら取り組んでいくつもりです。

  • Q:ブロッコリーの扱い高が一番多い理由は??
  • A:日本にブロッコリーを輸入し始めたのは、(株)ドールともう1社でしたから、10年以上ブロッコリーを販売してきたわけです。国産野菜事業を始めるにあたり、すでに売っているアイテムを国内で作ってみよう、ということになりました。結果、ブロッコリーが一番多くなっています。

  • Q:アメリカ産のブロッコリーは、主に夏に出回ります。国産は夏以外の時期に出す予定ですか?
  • A:夏の国産ブロッコリーの産地は北海道だけなので、相場が高値安定します。この時期、国産の198円、158円のブロッコリーだけでは消費者の方がたまらないので輸入のニーズが強くなる。こうした理由から、夏場、輸入ブロッコリーが多く感じられるのだと思います。われわれは、国産ブロッコリーの年間出荷を目指して、北海道から長崎まで、四季を通じて収穫できるように作付けしています。

  • Q:バナナを輸入するときには消毒などのいろいろな作業があるようですが、ブロッコリーはそのまま輸入されるのですか?
  • A:ブロッコリーは畑でワンパレットにされ機械的に氷を入れて、日本に着くまで、基本的には手が加わることはありません。ただ、流通の段階で虫が入ることもあります。農薬によっても違いますが、農薬をまいてから1週間から10日おいてから収穫するので、その間に虫が入ってしまうこともあります。
 

【八百屋塾2011 第6回】 バナナ加工室の見学野菜(輸入・国産)についてパイン、シトラス、トロピカルについてレポートより