野菜のおいしさが置いてかれたのは、時代もあるのでしょうが、大量収穫ができるF1になっていったことが原因です。それまでの野菜は、地方品種、伝統品種で、とれる時期が決まっていてその時期にしかとれないし、病気になりやすい。そろいも悪いんです。ただ、味はいい。その野菜らしい味がします。
F1は、逆です。耐病性がある、病気に強い。そろいが抜群。100個タネをまくと、99.9個発芽する。みてくれもいい。ただ、味がいまいち。
昔、きゅうりが出てくるのは夏だけでした。いまは一年中ありますね。ただ、品種は同じではない。一年中店に並ぶように、品種が開発されているんです。
いまのきゅうりは、ほとんどがまっすぐのA品です。あってもせいぜい曲がりが3p未満のB品で、3p以上曲がってるC品なんて、ほぼないといっていい。いまはA品かB品の2段階。それが昔は32段階あった。それほどバラついていたんです。それが2段階になるほど、そろいがよくなった。それがF1の力です。
江澤先生は、「きゅうりの命は3日だ」と言っていました。昔は、きゅうりを店に並べたら、必死でその日のうちに売ったものです。次の日にはもう売りものにならないので、漬けものにするよりほかなかった。
いまのきゅうりは、稲山光男先生がかぼちゃを台木にしてブルームレスにした。ピカピカで持ちもよくなり、よく売れました。1週間くらい冷蔵庫に置いたってピカピカしていて、わからない。シャキ感も残っています。
ただ、皮がかたくて中がやわらかい。だから、漬け物にすると漬かりが悪い。皮のかたさは、漬け物にするとよくわかります。それに、きゅうりの匂い、カッパの匂いが3日でなくなる。やっぱりきゅうりの命は3日、というのは当たっています。
きゅうりの長さはだいたい20pと決まっていますが、これは何で決まっているか、というと、海苔のサイズです。カッパ巻きにつごうよくできている。F1で、まっすぐで、都合のいいサイズで、日持ちがよくて、ピカピカのきゅうりになった。だけど、匂いが薄いし、皮がかたい。
今日は、茨城の柿沼農園のセロリが並んでますが、これはセロリ名人の伊藤さんのお弟子さんなんですね。僕も、セロリづくりを見学したことがあります。手間がかかって、病気に弱くて、すごくたいへんです。
だから、産地が少ない。
僕は前はセロリが嫌いだった。匂いだけで、味はあまりないと思っていた。伊藤さんのセロリは、ふつうのセロリと違います。野菜は嫌いだと売れません。みなさんも食べて好きになってください。好きでなくちゃ売れません。
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