■2011年7月24日 第4回 〜 講演「かぼちゃ」 カネコ種苗(株) くにさだ育種農場 果菜担当 研究員 野口総一郎氏 |
◇かぼちゃの栽培面積 |
- 日本でのかぼちゃの栽培面積は、全国で約18,000ヘクタール、北海道で約9,000ヘクタール。参考までに、平成18年は全国で16,900ヘクタールでした。他の品目に比べ、面積の減っていない野菜といえます。北海道以外では、鹿児島、茨城、長崎、秋田、千葉など。海外では、ニュージーランド、メキシコ、トンガなどで多く栽培されています。
- 国内のかぼちゃの栽培面積が減っていないのは、八百屋さんや流通関係者のご努力に加え、健康野菜として高い評価を受けていること、また、国内産と輸入物との差別化、棲み分けが確立されており、継続的においしいものがご提供できている、ということもあると思います。
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カネコ種苗(株) くにさだ育種農場
果菜担当 研究員 野口総一郎氏
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- 私は、カネコ種苗(株)に入って約20年、ずっとかぼちゃの育種をしています。どのメーカーのブリーダーも味を重視していますから、最近出てきた新しいかぼちゃはどの品種もおいしい。だからこそ、面積を減らさずにいるのではないでしょうか。われわれがおいしいものを提供できれば、八百屋さんがそれをお客さまに提供できる。そして、子どもたちがおいしいものを食べてその野菜を好きになり、また農家さんが作ってくれる。そういう形になるといい、と思っています。
- かぼちゃの栽培面積が減らないのは、水田転作の影響もあります。
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◇栽培上の難しさ |
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◇かぼちゃの種類 |
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かぼちゃは、ペポカボチャ、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャの3種類が主体です。
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ペポカボチャは、イタリア料理などに使われるズッキーニが代表的。ズッキーニはクセがなくて、どんな料理にも合います。洋食のイメージがあると思いますが、和食にも合います。私は、もう少しズッキーニの消費が増えるといいなと思っています。「そうめんかぼちゃ」ともいわれる「金糸瓜」もペポカボチャの一種です。
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ニホンカボチャは、京料理に使われる「鹿ヶ谷(ししがたに)」や「日向かぼちゃ」など。好き嫌いがあるとは思いますが、煮崩れせず、だしの味でいただくかぼちゃです。
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一番消費が多いのは、セイヨウカボチャ。「えびす」などが中心の品種です。
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セイヨウカボチャは、原産地が南アメリカのペルー、冷涼な気候のところなので、暑さに弱い。逆に、ニホンカボチャは、赤道直下が原産地なので、暑さに強いんです。ですから、日本では、涼しいところではセイヨウカボチャ、暑いところでは、ニホンカボチャが作られてきました。ここ数年の温暖化は、かぼちゃ生産にも大きく影響しています。
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ペポカボチャ、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャの3種類のほか、セイヨウカボチャにニホンカボチャを掛けた種間雑種もあります。これは、花粉が出ないので、他に花粉樹を植える必要があります。
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◇おいしいかぼちゃの選び方 |
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今日、私が一番みなさんにお話したいのは、「おいしいかぼちゃの選び方」です。まず、種子の充実。なかにタネがしっかり入っているのは、当然のことです。
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次に、形状。かぼちゃには、「すくなかぼちゃ」のように長細いもの、「えびす」、「恋するマロン」のように扁平なもの、「栗味」や弊社の「九重栗」のようにハート型のものなどがありますが、形は味には関係ありません。
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かぼちゃは、節の間隔が果実の縦伸びに影響するので、どこに着果したかによっても、かぼちゃの形は違ってきます。根元周辺につくほど扁平のかぼちゃ、遠くにつくほど縦長のかぼちゃになります。
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低温と乾燥は節間を短くするので、形が扁平になりやすくなります。逆に、湿度が高かったり、温暖な条件で作れば、縦伸びが強くなります。このように、かぼちゃの形は、畑や環境などの条件によっても違ってきます。
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着果節位は、かぼちゃの肥大にも大きく影響します。根元につくと小さくなり、ツル先のほうにつくと大きくなります。かぼちゃは、縦伸びと横伸びで、期間が違います。花が咲いてから5〜7日間はかぼちゃはあまり肥大せず、20〜25日の間に肥大します。ウリ科作物全体にいえることですが、まず縦に伸びたあと、横に伸びる傾向があります。そのため、寒い時期に作ると、縦伸びが早く終わる。そのあと、横伸びのときに温度が十分になるので、縦に比べて、横の伸びが強くなります。縦長か横長かで味のよしあしは変わりません。大切なのは、樹の状態と、収穫のタイミングです。
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お客さんに、「今年は乾燥したから扁平になった」とか「今年は、最初の頃、雨が多かったから縦長になった」とか…。八百屋のみなさんからお話いただければありがたいと思います。
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皮の色は、品種によってさまざまです。色は、肥料をたくさん入れれば入れるほど、濃くなる傾向があります。また、かぼちゃがついている位置が株元に近いほうが濃い。遠くについているほど淡いかぼちゃができます。光沢に関しては、出荷時に磨いて出してくるのでわかりにくいのですが、通常は、熟してくると少しくすんできます。タイプ別には、「九重栗」などの真っ黒いタイプの品種はくすみ方が少なく、「えびす」や「恋するマロン」のような斑が入るタイプは、くすむ傾向が強いようです。
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かぼちゃの育種をするにあたり、妻に、「どんな品種を買いたいと思う?」と聞いたら、「かぼちゃの中の色を見たい。色が濃いと、完熟したようなイメージがある」と…。やはり、そのイメージはみなさん持っているので、中が濃い色の品種を育成してきました。未熟の場合はレモン色、適熟になってくると黄色で、中の色があまりに濃いものは過熟気味だと思って結構です。ただ、品種の違いもあり、貯蔵用の品種などは、中の色が淡い傾向があります。白皮のかぼちゃは、特に色が淡い。これは、品種による違いで、決して、未熟というわけではありません。
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肉の厚みも選ぶ際のポイントになります。かぼちゃは、樹の状態がしっかりしているほど、肉厚になります。畑をいい状態にすれば、いいものがとれます。
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果皮表面の溝も、樹がしっかりしているほど深く、ゴツゴツしたかぼちゃになります。これは、どの品種でもそうで、果皮がのぺっとしているかぼちゃは、樹が十分な状態ではありません。
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花落ちの部分は、よく500円玉以下がいいとか、100円玉以下がいいとかいいますが、花落ちが大きかろうが小さかろうが、味には関係ありません。ヘタの部分は、収穫のときは目安になりますが、みなさんが選ぶ際はどれも乾いているので目安にはならないと思います。また、ヒビの入り方も、品種によってさまざまなので、目安にはなりません。
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爪を立てて、皮のかたさを見ることがあります。確かに、未熟のかぼちゃはどれも皮がやわらかいのですが、今のかぼちゃは、品種によって、皮がかたくなるものも、やわらかいままのものもありますので、あまり参考にはなりません。
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弊社の「九重栗」という品種は、皮がかたくなりません。かたくならない品種は、消費者にとっては、切りやすく、食べても口に残りにくい。反面、貯蔵には適しません。皮がやわらかいからまずいとか、皮がかたいからおいしいとか、一概にはいえません。ぜひ、お客さまに、八百屋さんから伝えていただきたいと思います。
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「九重栗」は、私が育成しました。ハート型で、中の色が濃いものを選んで作りました。ハート型にしたのは、とにかく目立つ品種にしたい、一度買っていただいたお客さまに、かぼちゃの味と形を覚えていただきたくて作りました。果肉の色が濃く、おいしくて、しかも皮がやわらかいので扱いやすい品種です。
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◇かぼちゃのおいしさ |
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◇かぼちゃ作りの新しい課題 |
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◇腐敗防止のために |
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◇貯蔵のポイント |
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◇産地での取り組み |
- 私どもカネコ種苗(株)は、産地の方にご協力したい、と頑張っています。福島県の浜通りでは、「九重栗」を「黄色いハート」というブランドで出荷しています。私は先月、先々月と、南相馬市にも行ってきました。原発事故の問題等で、非常にみなさん苦労されているなか、今年も頑張っていますので、ぜひ、みなさんのご支援をいただきたい、と思っています。
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◇よりニーズにマッチした品種の開発 |
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最近、抑制で、貯蔵できるかぼちゃ「九重栗イレブン」を開発しました。抑制のかぼちゃは、夏に植えて秋から冬に収穫します。色が濃くていいものがとれるのですが、作りにくい点もあります。暑さに負けず、しかも、大玉になりやすく、冬至出荷はもちろん、1〜2月まで出荷できるかぼちゃです。
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生産者の高齢化もすすんでいるので、簡単に栽培できる「栗五郎」という省力化品種を作りました。今後、みなさんのところに、「九重栗イレブン」や「栗五郎」という新しい品種が来たときは、ぜひお試しください。
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私どもは、産地の方、消費者の方に喜んでいただけるかぼちゃの育種に励んでいます。かぼちゃの育種は、自分自身のワイフワークですので、今後とも、ぜひよろしくお願いいたします。
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■2011年7月24日 第4回 〜 かぼちゃ生産者 小川次郎氏 |
◇かぼちゃ作りでの苦労 |
- かぼちゃは葉柄も長いし、葉も大きいので、狭い場所では栽培できません。でも、植える場所さえあれば、原っぱでも草むらでも植木でも垣根でも十分育ちます。そういう意味では、ただ育てるのであれば、こんなに簡単な野菜はない、と思います。
- 私のように百姓としてかぼちゃを作るのは、収量やサイズなどの問題があり、結構大変です。八百屋さんが一番扱いやすいサイズ、というものがあるんです。6個で1箱くらいのサイズを作ろう、というのが百姓の目標だと思います。
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- 14〜15節、2本立てにすると、重さが2キロ半〜3キロ近くになります。
- かぼちゃの場合は、10アールあたり、300株くらい植えます。2個ならせると600個。3キロになれぱ、収量は結構上がります。1箱だいたい10キロですから、200ケース近く出ることになる。平均2キロ半だと、110ケース。このあたりをどうするか、という問題も考えなくてはなりません。
- 今、大きなかぼちゃもあれば、「坊ちゃんかぼちゃ」のような小さなかぼちゃもあります。食べきれるという点では小さなかぼちゃがいい。少しでも小さくしようと思ったら、2本立てではなく、3本立てにするなどして育てます。ただ、3本立てにすると、1個増えますから、手間もかかります。
- かぼちゃはもちろん、スイカでもメロンでもそうですが、無制限に着果させずに、適宜、摘果をして育てています。うっかりすると、7〜8個ぐらいなります。でも、それだけならすと、味も悪くなりますし、品物もいい形にはならないんです。
- 10節前につけると、形が扁平になります。溝は深く、色もよくなりますが、まだ体ができていないので、収量が落ちてしまいます。
- ここに、今朝咲いたかぼちゃの花を持ってきました。これは雌花です。これがかぼちゃになるわけです。授粉は、今、ほとんどが蜜蜂です。かぼちゃは、ツル性の野菜のなかで、花が咲くのが一番早い。今朝、5時ちょっと過ぎにこの花をとりに畑に行ったら、なかに蜜蜂が何匹もいました。今、花の咲く作物がなくなってきて、かぼちゃの畑にはまだ花が咲いているので、寄ってくる。これをおいておくと、ついてしまうんですね。そうすると、かぼちゃになってしまいます。10〜12節でつけようと思っていても、雌花を残しておくとついてしまい、ある程度大きくなったからもったいない、とそのままにしておくと、形のあまりよくないかぼちゃになる。出荷できなくはないかもしれませんが、秀品にはならないと思います。一番いい形にするには、10節過ぎないとダメなんです。
- かぼちゃを作る上で何より大変なのは、着果すると樹が疲れてくること。一気に着果させると、だいたい着果して40日くらい経つと、疲れてきます。人間が疲れてくると病気になりやすいように、うどんこ病が出やすい。肥料をたくさん入れるなど、ある程度対策はするのですが、今、減農薬で、薬をある程度控えめにしますので、どうしても病気が出てきてしまいます。
- 今日は、焼けて白っぽくなってしまったかぼちゃも持ってきました。もともと白いものではないんです。太陽の熱で焼けてしまったもの。焼けると、割れてきてしまいます。焼けないようにするには、葉をしっかりと持たせないといけない。今年も暑いので、焼けがかなり出ています。個数が決まっているので、1個でもこうなれば、出荷できません。食べられなくはないのですが、出荷するわけにはいかない。これが一番の苦労のタネです。
- 未熟果も持参しました。未熟果には未熟果なりの料理の仕方があり、結構食べられます。かえって、パサパサしないので、煮て食べる場合などはそのほうがいい、とおっしゃる方もいます。今日は和風煮にしていただく予定なので、のちほどご賞味ください。
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私のところでは、だいたい50日くらい樹につけておいて収穫する、という形をとっています。
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若めのかぼちゃは傷みにくい。完熟したかぼちゃは、だいたい1ヶ月以内、20日くらいまでなら、どうにかおいしく食べられますが、それを過ぎるとおいしくなくなります。若いかぼちゃの場合は、今とって、冬至までおいても、結構持ちます。そのくらいの差があります。私ども農家は、冬至用にかぼちゃを保存する場合には、若いものを残しておきます。
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