■2011年8月21日 第5回 〜 食べくらべ
◇なすなどの食べくらべ
  • 前回はかぼちゃ3品種をブラインドで食べくらべ、受講生に好評だったが、今回は、全国各地の伝統野菜のなすが多数集まったこともあり、それぞれをおいしく食べてもらおう、ということで、「利きなす」の形式にはしなかった。

  • なすの食べ方としては4種類。油をしいてフライパンで焼いたもの、蒸しなす、漬物、揚げ浸しを用意。フライパンで焼いて食べるのは、「絹かわなす」、「寺島なす」、「雑司ヶ谷なす」、「吉川なす」。蒸しなすは、新潟の「巾着なす」と信州の「小布施丸なす」。漬物は、「梨なす」、「民田なす」、「水なす」、「サファイヤなす」。揚げ浸しは、「ていざなす」と「千両なす」。

  • その他、山形の「だだちゃ豆」、信州の「八町きゅうり」のスライス、ぶどう各種も試食した。
なす各種
「絹かわなす」の焼き
「小布施丸なす」の蒸し
「ていざなす」の揚げ浸し
[感想など]
  • 個人的には、「千両なす」が結構甘くておいしかった。かための肉質のほうが好き。ひとり暮らしなので、普段はあまりなすを食べることはありません。

  • なすの漬物が好き。今日、「民田なす」を初めて食べましたが、歯ごたえがあって、おいしかったです。

  • 「民田なす」の漬物は、やや渋みというかえぐみを感じました。そういう特徴のなすなのでしょうか?
    (この質問に対しては、「だから辛子漬けといった味の濃いもので漬ける。今回の漬物だけで「民田なす」を評価するのはややかわいそうかも」との意見あり)

  • フライパンで焼いて食べた、「絹かわなす」、「寺島なす」、「雑司ヶ谷なす」、「吉川なす」の中では、「絹かわなす」が一番おいしかった。「吉川なす」は、「賀茂なす」のルーツ、とのことでしたが、「賀茂なす」よりやや水っぽい気がした。味自体はすごくいいので、料理方法を考えたほうがいい。

  • 「吉川なす」がとてもおいしかった。「賀茂なす」は名前が通っているので、どうしてもそちらのほうが注目されると思いますが…。見栄えは、「賀茂なす」よりも「吉川なす」のほうがおいしそうに見えたし、実がすごくしっかりしていて、実際に食べても大変おいしかった。商標登録も進められているということなので、ロゴやシールなどの飾りも含め、ブランド化を図ってもらって、収量が上がり、値段が落ち着いてくれれば、すごくいいと思います。

  • フライパンで焼いたなすでは、「吉川なす」と「絹かわなす」が、舌触りがよくておいしかった。「寺島なす」は皮がかたくて口に残る気がして、甘みもあまり感じられませんでした。伝統野菜は、周年栽培する必要はなく、旬の時期にとれたもので、「この時期はこれがありますよ」というのでいいのではないかと思います。ハウスとか周年作って、1年中あるということになると、伝統野菜とはまたちょっと違ってきてしまうのではないでしょうか。

  • 伝統野菜を守ることも必要だと思いますが、「これは皮がかたいのが特徴なんだ」と突っ張るのではなく、おいしく食べてもらうためには、ときには皮をむいて出したりしてもいいのでは? 特に、今、お年寄りが増えていて、皮がかたいなすは、むかなければ食べてくれません。改良することも否定しないでいただきたいと思います。
◇その他
  • 杉本晃章氏より、なすの食べ方や伝統野菜のなすについてのお話がありました。

    • 以前、八百屋塾で長岡に行き、なすの勉強をしてきました。長岡では、なすは焼きません。全部、蒸して食べるんです。油をしいてなすを焼く文化は、東京だけ。地方へ行くと、蒸してから、煮浸しのような形で食べたりする。

杉本晃章氏
    • 京都の「賀茂なす」は1個200円とか300円もします。評価がわかっていても、お店ではなかなか売れません。長野県や山形県からも、露地物の丸なす系統のものがたくさん出ています。これらは1箱500円とか800円で、10個も15個も入っている。どれも伝統品種で、少しは違いますが、総じて変わりません。寒い地方のなすは、かえって皮がやわらかく実のしまりがよくておいしいこともあります。その代表が、「梨なす」や「八石なす」です。「梨なす」は、皮なんてほとんど気になりません。中身は非常にしまっています。東京の人は、皮がかたくて中がスポンジのようにフワフワのおいしくないなすしか食べていないんです。だから、なすが売れなくなっている。伝統品種のなすを売り込めば、お客さんは必ずわかってくれます。なすは非常に品種が多いので、八百屋の腕の見せ所でもあります。キュウリは、どこのキュウリでも、なすほどの差はありませんが、おいしいなすはおいしい。市場で今日勉強したような伝統品種のなすを見つけたら、積極的に扱ってください。
  • 築地で「ていざなす」を取り扱っている(株)ワイ・ディー・エスの塩田氏より、「ていざなす」についての簡単なご説明がありました。

    • 今日、揚げ出しで食べていただいた「ていざなす」を持ってきました。米なす系で、伝統的には、130年以上前に作られていたという記録が残っています。果肉がやわらかいのが特徴で、油との相性が非常にいい。まだ生産量が少なく、弊社で扱っていますが、月間500本がMAXという状態です。8月は予約でいっぱいですが、9月はまだ若干余裕がありますので、興味がある方はご連絡下さい。
塩田勝良氏
  • 福井県東京事務所の面谷氏より、都内にある福井県のアンテナショップのご説明がありました。

    • 福井県のアンテナショップは、「ふくい南青山291」といい、10年前から南青山5丁目にあります。最寄り駅は表参道で、骨董通りから小原流会館の角を左折すると右側にあるグラッセリア青山の一画です。福井県のおいしいものを各種取り揃えておりますので、ぜひ足をお運びください。
面谷弘弥氏
  • 調理担当の荒井慶子先生より、なすの調理等について下記のお話がありました。

    • なすは果肉がスポンジ状なので、油をよく吸います。ダイエット中で、なるべく高エネルギーにしたくないのであれば、電子レンジで10〜20秒、軽く加熱して、水分を少し抜いてから、炒めたり揚げたりすると、だいぶ油の吸収率が減ると思います。

    • なすは温度が低いといっぱいに油を吸収してしまいます。揚げるときの温度は、180度より上。揚げ浸しにするときは、熱いうちに調味液に漬けるのがポイントです。一番簡単なのは、めんつゆを好みで薄めて使う方法です。揚げ浸しは常備菜的なおかずになりますので、おすすめです。

  • 受講生から、原発事故にともなう食品の安全性についての質問があり、東京青果(株)の野原秀司氏と杉本晃章氏より、下記のお話がありました。なお、杉本晃章氏は10月の第3週または第4週に放送されるテレビ番組「ガイアの夜明け」に出演されるそうです。お時間のある方は、ぜひご覧ください。

    • [野原秀司氏]3月に震災が起こり、非常に厳しい環境が続いているのは事実です。ただ、青果物に関しては、国や地方自治体がきちんと放射性物質の数値を測定しています。市場に出ているものは安全・安心です、と消費者の方に説明して売っていただければありがたいと思います。危険なものは、農水省(http://www.maff.go.jp/)や厚労省(http://www.mhlw.go.jp/)のホームページを見ると、提示されています。

    • [杉本晃章氏]独立行政法人の食流機構では、毎日、福島、栃木、茨城辺りの各市町村の野菜のサンプリング調査結果を刻々と出しています。インターネットで食流機構のホームページ(http://www.ofsi.or.jp/)を検索すれば出てきます。

    • [杉本晃章氏]足立支所では、3月31日に「応援宣言」を出しました。全青連の専務がそれを全国へ発信してくれて、農水省から感謝状をもらいました。4月2日には、足立の市場で、市場をあげて風評産地を応援しようというキャンペーンもやりました。そのときに、ただ、われわれが口で「安全だ」といっても、心配する消費者の方はいらっしゃいます。だから、きちんと資料を持っていこう、ということで、最新の資料を何十種類も集めていきました。「これこれこういう基準値が出ていて、われわれはきちんとそれを把握した上で、この野菜を安全だと言っているんですよ」と説明したわけです。

    • [杉本晃章氏]福島県の原発20〜30km圏内の野菜は、全部出荷停止命令が出ています。4月くらいの時点で市場に流通したことはあったのですが、ちゃんと卸売会社が全部止めました。市場の隅に囲って、立ち入り禁止にしてありました。どこの市場でも、それと同様の措置がとられていたんです。市場には基準値以下の青果物しか流通していない。流通の末端であるわれわれが、それを信じないでいたら、売れるわけがないと思います。

    • [杉本晃章氏]スーパーなどでも風評応援フェアだとかをやっているようですが、並んでいる商品を見たら、西のほうの野菜だったりする。実際に、風評産地のものを市場で買っているのは、われわれ八百屋なんです。今、福島の桃はおいしいですよ。通常は2,500〜3,000円する桃が、800〜1,000円ですから、本当に気の毒です。今が旬のもの、おいしいものを、大丈夫ですよといって売れるのは、八百屋のはずです。われわれが売らなければ、産地も困ってしまいます。少しでも産地の力になってあげないといけないのではないかと思っています。
 

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