■2011年8月21日 第5回 〜 商品情報 福井県の伝統野菜「吉川なす」
 福井県は京都の上、能登半島の下に位置し、その中央部に鯖江市があります。鯖江市周辺は丹南地区と呼ばれ、非常にものづくりが盛んな町です。 越前漆器、越前打刃物、越前和紙、陶器など、 食文化と結びつきの強い地場産業が集積しています。また、九頭竜川や日野川といった一級河川があり、昔から米どころとしても知られています。

 今回、私どもがお持ちしたのは、「吉川なす」です。鯖江市の西の地域でかなり古くから栽培されていたもので、定かではありませんが、一説によると、1,000年以上の歴史がある、ともいわれています。

福井県鯖江市役所 特産づくり応援室
青山英彦氏
 昔は「吉川なす」がたくさん作られていて、関西方面に出していたのですが、非常に手間ひまがかかるので、栽培農家がだんだん少なくなってきて、一昨年、たった1軒になってしまいました。そのたった1軒残った農家のご主人もお亡くなりになりまして、これではいけない、と…。伝統野菜を守り伝えていかなければ、ということで、 鯖江市内の有志農家13軒が集まって、現在、伝統野菜等の栽培研究会を作っています。

 最後の1軒の農家に3つだけタネなすが残っていたので、そのなすからタネを採って、13軒の農家に分けて栽培を始めました。昨年から、復興に向けての取り組みを始めたばかりなので、現在はまだ600株、1年間で7,000個くらいしかとれません。

 伝統野菜とは、F1(一代交配)ではなくて、農家がタネを採って守り育ていく野菜です。福井県にも伝統の福井野菜推進協議会ができ、「吉川なす」やその他のなす、「勝山水菜」などをどんどん世に出していこう、と働きかけているところです。

 「吉川なす」の特徴は、ヘタに鋭いトゲがあること。葉っぱにもトゲが生えています。露地栽培が非常に難しいので、現在は、ハウス栽培も奨励しています。

 現在は、試行的に、栽培研究会が栽培をしており、今年から、東京のレストラン10〜20軒に卸しています。

 鯖江市の特産づくり応援室では、農業公社も抱えています。本日は、販路拡大、販売力の強化にご協力いただければ、と思い、東京にやって来ました。ご相談いただければ、農業公社からお送りしますので、よろしくお願いします。ご注文がたくさんあれば、来年の販売計画にも有利に働くのではないか、と思っています。

 ただ、値段は一般的ななすに比べるとやや高めです。大きさにもよりますが、1個200円くらいで、送料は別になります。

 「吉川なす」は、7月〜8月上旬くらいに1回目のピークを迎えます。8月に入ると、やや樹勢が落ちてくるので、農家はいったん枝を切り、また9月に入ってから樹勢が復活して2回目のピークを迎え、10月中旬くらいまでは収穫できるはずです。

 京都の「賀茂なす」に似ており、味が濃いので、若い人にも喜ばれるのではないでしょうか。焼いて田楽にするのが一番向いていると思いますが、煮ても形が崩れないので煮物にもおすすめです。昔は漬物にもしていたようです。

 鯖江市の伝統野菜を守っていこう、ということで、今、ロゴマークを全国公募しています。8月いっぱいで締め切り、来月、選定委員会を開いて、市役所が商標登録をする予定です。市も一丸となって、伝統野菜を守り、農家には安心して「吉川なす」を作っていただけるようなシステムを作っていきたい、と思っています。

  「吉川なす」以外にも、いくつか鯖江市の野菜をご紹介します。鯖江市では、JAや商工会議所が一体となり、県の協力も得て、地場野菜をどんどん売り込んでいこう、という動きがあります。

 まずひとつは、「さばえ菜花」。ようやく栽培態勢に入ったところで、まだ量は少ないのですが、青森県産の「ククタチ」という菜花と、三重県の「極早生菜の花」を掛け合わせた新しい交雑種で、5〜6年前から作っています。鯖江市では、農作物による景観づくりということで、「さばえ菜花」を堤防、農地、街路樹の下などに播いています。そうした中から、いいものをセレクトして、食用としても売り出していこうとしています。

 ブロッコリーも、20年くらい前から、鯖江市で特産化をすすめています。鯖江市は小さな町で、12校の小学校がありますが、そのすべてに学校給食畑という畑を設けて、農家さんと小学生が一緒に自分の学校の給食で使う野菜を作っています。

 「越のルビー」は、福井県で開発されたミディトマト。非常に糖度が高く、おいしいトマトです。

 「さばえ夢てまり」は、マルセイユメロンです。すべて糖度を測り、14度以上あるものに「夢てまり」というシールを貼って出荷しています。数はそれほど多くありませんが、現在推進しています。

 都会の方や若い方に、職人さんの技や農業に触れて、おいしいものを食べ、田舎暮らしを体験してもらおうと、グリーンツーリズムもすすめています。また、福井県はコシヒカリ発祥の地です。水のおいしいところなので、非常においしいお米ができます。今年から、鯖江市独自に、菜の花をすき込んだお米作りも始めました。まだ量は少ないですが、多角的にいろいろな仕掛けをしていますので、ご興味があれば、ぜひお問い合わせください。私どもに対応できる範囲で、お応えしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 
■2011年8月21日 第5回 〜 商品情報 山形産「民田なす」「だだちゃ豆」
 山形県の日本海側に面している鶴岡から、今日は、「民田なす」と「だだちゃ豆」をご紹介します。

 「民田なす」は、地元ではまったく売れません。というのは、JA鶴岡の管内の農家であれば、ほとんどが自家用として「民田なす」を作っており、自分たちで漬物にしている、ということです。その漬物の味をそれぞれ自慢することはあっても、「民田なす」自体を買うことはありません。

 地元には漬物屋さんが4社あり、農協に出荷される「民田なす」は、100%漬物屋さん用です。

JA鶴岡 大井欣哉氏

 「民田なす」は、非常に小さな丸なすです。最近はようやく受け入れてもらえるようになりましたが、10年ほど前は、小さいのは味がないとか、食味がないとか、かたくておいしくないなどといわれ、ほとんど受け入れられませんでした。

 また、「薄皮丸なす」という新しいなすが作られ、「民田なす」が売れなくなってしまったこともありました。最近は、在来野菜ブームの影響なのか、少しずつ「民田なす」の漬物が注目されるようになってきました。

  今、農協に出荷してくれている生産者の方は20名ほどしかおりませんが、その人数で細々と漬物屋さん用に「民田なす」を作っています。

 「民田なす」の由来は非常に古く、松尾芭蕉の俳句の中や、藤沢修平の文学の中にも出てきます。古いなすだということはわかっているのですが、実態はつかめていません。

 漬物は、ほとんどが辛子漬けです。最近は、一夜漬け、二夜漬け程度の浅漬けも出ています。ただ、浅漬けの場合、皮が厚いので、相当の技術がないと、おいしい一夜漬けにはなりません。これに成功したのが、地元の「本長(ほんちょう)」さんという漬物屋さんで、今「民田なす」の浅漬けを売っています。非常に評判がよく、生産が追いつかないという状況だそうです。ぜひ、機会があれば、本長さんの浅漬けを食べてみてください。

 JA鶴岡で、販売の大半を占めるのが「だだちゃ豆」です。

 8月18日、山形県庄内地方は、1時間あたり100ミリを超えるとても強い雨に降られました。その前にも、6月23日、30日、7月5日と、集中豪雨がありました。

 枝豆は水に弱いものですから、前半の豪雨からやっと回復してきたと思った矢先に8月18日の雨で、ここへきてまた出荷量が半減してしまいました。枝豆は鮮度が命ですし、水といっても雨水なので雑菌などが入ってしまい、選別の段階ですべて捨てることになったそうです。今は、非常に厳しい状況になっています。

殿様のだだちゃ豆(ゆで)
 ですから、正直、今年は宣伝しにくいのですが、来年のための宣伝をさせていただきたいと思います。

 「だだちゃ豆」は、ここ20年で、ようやく現在のように出荷できるようになったものです。在来野菜で、ある1軒の農家のお母さんが細々と作っていました。タネ採りに失敗すると、翌年の出荷量が少なくなってしまうので、JAのタネ採り部会がすべて責任を持って行っています。

 他産地にタネを持っていって作っている方もいますが、他の地域で作るとなかなか味がのってこない、と聞いています。栽培方法を教えてください、と言われれば、教えているのですが、やはり、鶴岡にあった産物なのだろうと思います。

 普通の白毛系統の枝豆は、10アールあたり500〜600キロの収量がありますが、だだちゃ豆は、頑張ってもせいぜい300キロ前後です。収量を上げると味が落ちるので、300キロ以上収穫する方がいると、農協の指導員が圃場に行って、肥料をどのくらい使ったか、どういうことをしていたかなど、チェックをして指導します。反収がだいたい300キロ前後になるようにして、おいしいだだちゃ豆をみなさんにお届けするようにしています。

 今年は雨の影響もあり、量は少ないのですが、一生懸命作っていますので、山形の「だだちゃ豆」をどうぞよろしくお願いします。

 
■2011年8月21日 第5回 〜 商品情報 茨城産のぶどう「藤稔」「晩生巨峰」

 今日は、茨城県から、ぶどう「藤稔」と「巨峰」をお持ちしました。

 茨城県産のぶどうはあまり見たことがないかもしれませんが、県の中央部などで結構作られています。ただ、県内の直売所などで売られてしまうのがほとんどで、市場にはあまり出ていないと思います。

 ぶどうの作り方など、詳しいことは資料に出ていますのでご覧ください。

ウエルシード 来栖宏美氏

 「巨峰」は立派なものをお持ちしたかったのですが、中山果樹園さんという生産者さんのハウスが切り替わったばかりで、やや酸味が残っているとのことで、持ってこられませんでした。その代わり、ちょっと変わった「巨峰」の晩生果をお持ちしました。1房に小さく5〜6粒しかなっていなくて、見栄えはあまりよくありませんが…。ぶどうは、通常の商品を収穫した後に、もう1回花が咲いて実がつきます。2回目なので、房につく実の数が少なく、粒も小さいものになっているわけです。ただ、味自体はすごく凝縮されていておいしいんです。先日、糖度を測ったときは18度くらいありました。

 普通には出せないので、こういったものは、農家さんが自分たちで食べて終わってしまいます。でも、味はいいものなので、何か売り方を工夫できないか、と思って、今日は八百屋塾にお持ちしました。みなさんに何かいいアイデアがあれば、教えていただけるとありがたく思います。出荷形態など、ご希望があれば、相談に応じていろいろと対応させていただきたいと思っています。少量ですが、ご試食いただき、ご検討ください。よろしくお願いします。

 今日のぶどうは、県内でも有名な「みずほの村市場」という大きな直売所に出荷されています。ここでは、直売所独自で茨城大学の先生と組んで、放射性物質の検査をされています。すべて安全だと確認されたものを商品として店に出しており、今日お持ちしたものも検査済みなので、安心してお召し上がりください。

中山果樹園のぶどう
 

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