■2011年10月16日 第7回 〜 講演「きのこの不思議の世界」 (財)日本きのこ研究所 常務理事 中沢武氏 |
◇日本きのこ研究所とは |
- 日本きのこ研究所の母体は森産業株式会社で、本社は群馬県桐生市にあります。食用きのこの種菌を販売している会社で、北海道でしいたけの生産をしている他、きのこに関連した食品や、家庭でできるきのこ栽培セットの販売もしています。
- 研究所は、昭和48年に群馬県知事認可、昭和52年に農林大臣認可の財団法人になっています。森産業の研究所の一部を独立させ、財団法人を作りました。
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- 桐生市の北、約40万平米の山の一画に研究所があります。山の中ですから、ときにはイノシシや猿が出てきます。研究所では、きのこの品種改良や野生きのこの栽培化をしたりしています。
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主な仕事は、品種改良の他、しいたけの病理学的な研究、栽培技術、野生きのこの栽培化、遺伝子工学、生理生態に関する研究、栄養や機能性、きのこの保健効果など、実にさまざまです。試験研究の成果は学会誌に報告していますが、研究成果の普及が大事だと考えています。
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研究所は、MR認証、生産情報公表JAS、有機JASの3つの登録認定機関になっています。ただ、残念ながら、きのこは、野菜と比べると、有機認定を受ける方が極めて少なく、今、認定を受けている方は、全国で4〜5名。食の安全・安心につながることなので、もっときのこの有機認定を広めていきたいと思っています。
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その他の活動としては、さまざまな刊行物を発刊したり、数年前には、国立科学博物館の「菌類の不思議展」での展示に協力し、約17万人が来場しました。また、研究講演会や研修会への講師派遣や、小学校の食育支援もしています。今、東京の小学校約20校にほだ木を提供し、学校できのこを作って給食で子どもたちに食べてもらう、という試みもしています。さらに、外国の研究機関との交流、新規参入支援など、幅広く活動しています。
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◇きのこのイメージ |
- ある大学の農学部の学生140名に、「きのこから連想するもの」を聞いたところ、ナンバーワンは「毒」でした。これは、大学生に限らず、小・中学校、高校でも、大人も同じです。
- その他、「きのこ」と聞いてイメージする言葉は、上位が、「菌類」、「微生物」。これは正しい。5番目くらいに「好き」。続いて、「森林」、「木」、「山」。その後に、「しいたけ」が出てきます。
- 12番目に「嫌い」、「おいしくない」という言葉が出てきます。干ししいたけの香りが苦手、という小学生が多い。
- アンケート結果から感じるのは、きのこに関する認識はまだまだ低い、ということです。
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◇きのこって何? |
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◇きのこは何に使われてきたか |
- 1900年の終わり頃、アルプスの氷河から5000年くらい前の原住民の死体が発見され、皮で編んだナップザックのようなものの中に、ツリガネタケというきのこが入っていました。もうひとつ、カンバタケというオブジェのようなものも持っていました。ツリガネタケは、繊維をほぐすと火がつきやすいので、火を起こすときの着火剤の役割だったと考えられています。カンバタケのほうは、ネックレス状になっていたため、おそらく、おまじないに使われていたのではないか、と考えられています。
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日本では、東北地方に、縄文時代の環状列石という遺跡があり、そのゴミ捨て場の部分から、きのこの形をした土器がたくさん出ています。どのように使われていたかはよくわかりませんが、昔から、きのことわれわれは深い関係があった、ということになります。
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江戸時代の煙草の刻み入れで、サルノコシカケの中心部分をくり抜いたものもあります。くり抜いた部分に刻み煙草を入れ、キセルと一緒に使っていた、ということです。
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長野に行くと、家の玄関や商店の入り口の上に、マンネンタケが飾られています。マンネンタケは、中国では「幸せを呼ぶきのこ」とされ、厄除けとして使われていたそうです。
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山形県では、山のきのこを塩蔵して販売しています。やはり、人間と最も深く関係しているのは、「食べる」ということ。食用としてのきのこが、昔から連綿と続いてきた、と考えていいでしょう。
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◇きのこの県民性 |
- 私の住んでいる群馬県の桐生では、秋になると、山にきのこを採りに行く人が大勢います。群馬の人は、ウラベニホテイシメジというきのこが第一の目当てで山に入ります。
- 群馬の隣の栃木県では、チチタケというきのこが人気です。8月頃、宇都宮のデパートに行くと、チチタケが1パック2800円くらいで売られています。高価ですが、非常によく売れます。
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長野県に行くと、カラマツ林に出るハナイグチというきのこが非常に好まれます。これは、塩蔵されます。
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なぜ県によって好きなきのこが違うのか。群馬県は小麦の産地で、うどん文化が発達しています。ウラベニホテイシメジは、うどんのつゆにとてもよく合う。栃木県にはチチタケ蕎麦というものがあり、チチタケは、蕎麦の出汁にいい。長野県は冬が厳しいので、きのこを塩蔵して保存します。塩蔵に非常に適しているのがハナイグチだということです。
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◇きのこの栽培化の歴史 |
- 小麦、大麦は、6000年〜7000年前から栽培されています。続いて栽培されたのが稲で、しいたけは、1600年の中頃、江戸時代に栽培が始まったといわれています。
- しいたけ栽培の発祥の地は中国です。「農書」という本には、1300年に栽培のことが記されています。ただ、中国から日本に栽培技術が入った形跡はなく、日本は日本で独自に発展をしてきた、と考えられます。
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◇きのこの生産量 |
- 平成21年の統計では、全国で、食用きのこが44万トン生産されています。生産額は2500億円です。
- 生産量が一番多いのはエノキタケの約14万トンで、長野県を中心に作られています。2番目はブナシメジの11万トン。3番目がしいたけ。しいたけは生と干しがあるので、両方合わせると、ブナシメジと同じくらいは生産されていると思います。
- 昔と違い、最近は、エノキタケだと年間平均で1kgあたり248円、生産者は非常に厳しい状況です。
また、今は雪国まいたけやホクトといった大規模なきのこ生産工場があり、一般の生産者は単価の面で厳しくなっています。ただ、大規模な企業は、一定の規格のきのこをきちんと出してくれるので、市場にとってはいいことです。一般の生産農家とのバランスをうまくとって、きのこ産業が発展してくれることを願っています。
- 最近は、今までにないさまざまなきのこが栽培化されるようになってきました。バリエーションが広がるという意味で、とてもいいことだと思っています。
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◇原木栽培と菌床栽培 |
- きのこは、原木で作っているものと、おがくずで作っているものの2つに分けることができます。今、原木で培されているのは、しいたけ、原木なめこ、一部のマイタケ、クリタケ、ヒラタケ、アラゲキクラゲ、ブナハリタケなど。私が入社した頃は100%原木しいたけでした。今は、東北や北海道、徳島県などに大きな生産工場ができて、菌床しいたけが大量に供給されるようになり、82〜85%は菌床になっています。
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原木栽培のなめこはとてもおいしい。菌床とは歯ざわりが全然違います。ですから、秋の1ヶ月くらいの間に、ぜひ、原木なめこの企画販売をしていただけるといいと思います。
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原木栽培をするには、原木に穴をあけてタネを入れ、ハンマーで叩きます。1〜2年寝かせて菌を回し、山の中に伏せ込んで、浸水して、きのこを出します。庭や土地があればできますから、みなさんも原木しいたけを栽培して、自分の店で売ってみてはいかがでしょうか。
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原木栽培は、山の木を切るので自然破壊に繋がると思っている方もいますが、誤解です。原木林では、18〜25年サイクルで切った木を活用しています。また萌芽してきますから、森林資源を活用した循環型の生産方式だといえます。これにより山が健康に保たれるので、森林の多面的機能の発揮に大きな役割を果たしていることになります。山に人が入らなくなると、きのこも出なくなる。山をうまく活用することが、今、求められています。山からイノシシが出てくるということは、山が藪になっている。原木栽培はぜひ継続しなければならない、と私は強く思っています。
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しいたけ、エノキタケ、ブナシメジ、なめこ、ヒラタケ、エリンギ、ハタケシメジなど、ほとんどのきのこが菌床栽培で作られており、工場での生産が可能になっています。
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菌床は、基本的にはおがくずに米糠やトウモロコシ糠、ふすまなど栄養剤となるものを加え、水を入れてミキサーで混ぜます。ビンや袋に充填し、殺菌して、タネを植えつけたら、培養室で培養します。きのこの種類によって期間が違いますが、ヒラタケは1ヶ月くらいで培養が終わり、35〜40日あればきのこを作ることができる。しいたけは最短でも90〜100日、マイタケは70日くらいかかります。培養後、発生室に移してきのこを発生させる、という流れになっており、ホクトや雪国では、毎日仕込みと収穫、出荷をするサイクルが成立しています。
- 野生きのこ、たとえば、ナラタケ、ホシアンズタケ、カンゾウタケ、トンビマイタケ、キヌガサタケ、ニカワウロコタケ、タマチョレタケなども栽培化されています。ただ、売れるかというと、簡単ではありません。消費者のニーズはさまざまですから、非常に難しい問題だと思います。
- 日本にもヨーロッパから入ってきているトリュフは、松茸と同じく菌根きのこなので、ハウスの中で作ることはできません。イタリアやフランスでは、ハシバミやカシワの木の根にトリュフの菌を植えつけて菌根を作り、それを山に植えてプランテーションをしています。10年ほど経って木が大きくなると、地下にトリュフができる。豚の嗅覚を使って収穫するのが有名ですが、豚は掘ったものを食べてしまうので、今は犬を使っています。黒トリュフと白トリュフがあり、100gのビン詰めで1万5000円〜2万円もする非常に高価なものです。日本は石灰岩地帯が少なく、栽培は難しいかもしれません。
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◇きのこの栄養と機能性 |
- 食品の成分は、水分、有機質、無機質で構成されています。水分を除いたものが有機質と無機質で、燃やしたとき灰になって残ったものが無機質。カリウム、リン、鉄、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどで、これらは人間の体に必要なものです。たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルが5大栄養素、それに食物繊維を加えたものが6大栄養素です。さらに、トマトのリコピンなど抗酸化能を加えたものを7大栄養素と呼んでいます。
- しいたけは、菌床と原木を比較すると、エネルギーはどちらもほとんどありません。たんぱく質は、菌床23%、原木21%と、菌床のほうが多くなっています。脂質はどちらも非常に少なく、糖質は原木のほうが多い。菌床には米糠やふすまが入っているので、ミネラルは当然菌床のほうが多くなります。菌床と原木の一番の違いは、食物繊維です。原木のほうが食物繊維が多いので、歯ざわりが違う。消費者の方には、ぜひその点をご説明ください。優劣ではなく、噛んだときやわらかいほうがいいのか、食感を重視するのか、好みによる、ということです。
- 食品の役割には、一次機能、二次機能、三次機能があります。たとえば、しいたけの一次機能はビタミンB群など。二次機能は味と香りの成分、グアニル酸とレンチオニンという成分を含んでいます。三次機能は、抗酸化などの機能性です。今、いろいろな疾病の原因は酸化作用である、とわかってきています。抗酸化物質を含む食品が注目されており、アメリカではORAC値という抗酸化値を食品につけて販売しています。日本にもやがて入ってくると思います。
- しいたけは、たんぱく質は少なく、ビタミンB群が豊富で、B1は野菜の2倍、B2は3倍、ナイアシンは8倍ぐらい含まれています。ビタミンB群は尿酸を減らすとか、口角炎、目の充血、皮膚炎の予防などに効果があるといわれています。ビタミンDはカルシウムとリンの代謝にも有効で、骨を丈夫にします。
また、生しいたけに含まれるエルゴステロールは、太陽光に当たるとビタミンDに変わります。生しいたけを買ったら30分くらい天日に干して使うとビタミンDが増える、ということもお客さまにお話になるといいのではないでしょうか。
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3大うま味成分、しいたけのグアニル酸、かつお節のイノシン酸、昆布のグルタミン酸は、単独で使うよりも、合わせると相乗効果でより味がよくなり、とてもいい出汁が出ます。
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きのこはガンにいい、とよくいわれます。薬事法違反になりますから、きのこを食べるとガンに利く、という売り方はできませんが、いろいろな実験結果から抗腫瘍活性があることがわかっています。
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私たちが行った実験では、ガン細胞を植えつけたマウスにしいたけの粉末を10%、20%、30%入れたビスケットを与えていると、ガンの増殖が抑えられることがわかりました。また、群馬大学医学部との研究では、発ガン物質をマウスに与え続け、通常は100%ガンを発症するのが、しいたけの粉末を与えていると約半分はガンにかからないこともわかりました。つまり、ガンになってしまってからきのこを食べると、免疫力を高めることができる。また、ガンにかかる前からきのこを食べると、免疫力を高め、かかりにくい体質を作る可能性があることがわかります。
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マウスでの実験結果をすぐ人に応用することはできませんが、今、きのこからとったレンチナンやクレスチンなどが製品化され、臨床現場で使用されています。
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きのこには、β-1,3、β-1,6といったグルカンが含まれており、異物がわれわれの体に入ると、それを抑える免疫機能が働きます。きのこは、われわれの体を守る働きを持っています。
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エリタデニンは、しいたけだけに含まれる成分です。メチオニンという成分が体に入ると、肝臓の中でシステインになり、普通は排出されますが、肝臓の中にたまってしまうとホモシステインになります。これが血液中に出ると高濃度のホモシステインになり、動脈硬化と心筋梗塞の原因になります。コレステロールも動脈硬化や心筋梗塞の原因になりますが、ホモシステインはそれ以上にリスクが高い。2002年に研究結果が発表され、ホモシステインが非常に悪さをすることがわかっています。しいたけに含まれるエリタデニンは、ホモシステインをシステインにして尿として外へ排出する役割を持っています。
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われわれは、エリタデニンを多く含む「H44」というしいたけを作ったのですが、形がよくなかったため、販売はしていません。今後、粉末にして、練り物の中に入れるなど、さまざまに活用して拡げていこうと考えています。
- 機能性は、今、非常に大事なテーマです。いろいろな病気の原因とされる活性酸素を消す力のある食品がたくさんあります。それを強調して販売をする。食は健康の源です。食べるもの次第で病気になることもあり、日本の人々の健康に寄与するという意識を持って販売をすることが大変重要です。
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しいたけにも、抗酸化効果が高い品種があることがわかっています。成分育種をすることにより、今後、抗酸化力の高いしいたけが販売できるようになるかもしれません。
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私は、きのこには、ほかにもさまざまな可能性があると思っています。たとえば、毒きのこの成分を抽出して、医薬や生物工学の現場で使える可能性もあると思います。現在、抗酸化能などを付加した菌株を使い、製薬会社とのコラボレーションで栄養食品を作り、通信販売をしています。また、シイノトモシビタケ、ツキヨタケといった発光するきのこも、何かに活用できるのではないか、と考えています。ヤマブシタケには、脳の神経細胞を活性化する成分が含まれていますから、将来、痴呆が不安な方は、たくさん食べるといいかもしれません(笑)。まだ動物実験の段階ですが、きのこには、じつにさまざまな利用法がある、ということです。
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◇宇宙に行くきのこ |
- 小惑星探査機「はやぶさ」のニュースでおなじみのJAXA(宇宙航空研究開発機構)の先生と協力して取り組んでいることがあります。
- 人間が月の次に行ける惑星は、火星しかありません。宇宙船で往復しても1年半ぐらいかかる非常に遠いところです。火星で人が生活するには、水と食料と酸素をくるくる回す小地球を作らなければなりません。今、そのために、「宇宙農業サロン」という研究が行われており、われわれは、小地球で育てた樹木を分解させ、しいたけやキクラゲを作り、食料として供給する、というようなプロジェクトをしています。火星に行くには莫大な費用がかかりますが、70〜80年後には行けるのではないでしょうか。そのとき、物質を分解して無機物に戻す働きがあるきのこは、どうしても無視できません。
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◇毒きのこについて |
- ベニテングタケとタマゴタケは、どちらも非常に鮮やかな赤い色のきのこですが、ベニテングタケは毒きのこ、タマゴタケはとてもおいしいきのこです。色が鮮やかなものが必ずしも毒きのことは限りません。ベニテングタケは赤い傘の上に白い斑点があり、長野県の白樺林の中によく生えています。ヨーロッパでは幸せのシンボルとして、いろいろなモチーフに使われています。じつは、ベニテングタケは味は非常にいいそうです。1〜2本なら食べても死ぬようなことはない、といわれています。
- クサウラベニタケとウラベニホテイシメジは似ていますが、クサウラベニタケは毒きのこです。群馬県民が大好きなのがウラベニホテイシメジです。昨年、クサウラベニタケがマーケットで売られる、という事件がありました。見分け方は、傘の上に指で押したような斑の有無、白い毛が生えているかいないか、柄の太さもやや違いますが、慣れていないと判別できません。クサウラベニタケは食べても腹痛を起こすくらいで、死に至ることはありません。
- カヤタケはおいしいきのこです。これに似た形のドクササコは危険な毒きのこ。3週間くらい経ち、食べたことを忘れた頃に手や指の先が猛烈に痺れて、それが1〜2ヶ月間続き、死に至ることもあります。昔、日本海側では、風土病として扱われていましたが、新潟大学医学部の先生が、原因がドクササコであることを突き止めました。日本海側にはよくあるので要注意です。
- 真っ赤で変わった形のカエンタケには、トリコテセンという成分が含まれており、非常に危険な毒きのこです。今、ナラ枯れという木の病気が増えて問題になっていますが、その根元にはカエンタケが多い。食べると、脳の萎縮、下痢、頭の毛が抜けるなど、あらゆる症状を起こします。私の知り合いがこれを採集し、手をよく洗わないで昼食をとったら、猛烈な口内炎を起こしたそうです。数年前、新潟の旅館でカエンタケを食べた方は、残念ながら亡くなっています。
- クロラッパタケはイタリア料理やフランス料理によく使われるおいしいきのこで、日本にも乾燥したものが入ってきています。
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ヨーロッパで多い中毒は、シロタマゴテングタケによるものです。ドクツルタケも同様の毒成分を含み、1本食べると致死量に達します。腎臓や肝臓をアタックするので、透析しないと助かりません。純白で、柄の途中にツバというスカートのようなものがあり、下にはツボというふくらみがあります。このきのこは絶対に食べないでください。
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ノウタケはその名の通り脳のようにも見え、一見怖そうですが、食用きのこです。中のスポンジ状の白い部分が食用になります。
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毒きのこには、迷信がいろいろあります。なすと一緒に煮るとどうとか、柄が縦に裂ければいいとかいいますが、一切正しくありません。
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◇森喜作に学んだこと |
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