マメ類に限りませんが、みなさんは八百屋さんとして、「この野菜は一年中あるけれど、この時期が本当の旬」、「この時期が一番おいしい」ということを、消費者のみなさんに教えてあげていただきたい。そうしないと、いつが旬で、一番おいしい時期はいつかわからない、ということになります。
その後は、おやつ的な利用が消費の主流だったわけですが、時代が変わると食生活も変化してきて、ソラマメ、エダマメなどは、いわゆる酒のつまみとして好まれるようになりました。日本酒の場合は魚が合いますが、ビールなどの西洋的な飲み物が普及してくると、つまみも変わってきて、ソラマメ、エダマメなどが重宝されるようになった、ということだと思います。
エンドウの場合は、ほかのマメのように穀物としての重要性はなかったため、古い書物の中には出てきておりません。ですから、比較的、新しい野菜だといえるのではないかと思います。
明治16年の「舶来国際目録」によると、当時、アメリカ、フランス、オーストラリアから品種を導入した、とあります。まず北海道に入ってきて、試作をして、それが定着していった、ということです。
「30日キヌザヤ」、「フッコクオオザヤ」といった品種があります。欧米で品種改良が進み、それが日本に導入されているわけですが、その中で、サヤ用のもの(いわゆるサヤエンドウ)と、グリーンピースのような品種、それから、熟してマメだけを利用する穀物としての品種が分化されていった。それらが、日本で整理されていった、という流れがあります。
日本には、「フランスオオザヤ」という、大きいサヤのものがあります。明治18年に、フランスから導入され、サヤが非常に大きかったので、「オオザヤ」とつけた。今でもそういう呼称の品種があります。
「アメリカオオザヤ」も、戦後、普及した品種です。もとは、昭和12年頃、和歌山の佐藤さんという方の奥さんが、カナダのバンクーバーから持って帰ってきた、といわれています。バター炒めにすると非常においしいので、「バターマメ」の名前で、大阪の市場に出荷していました。しかし、この名前が原因で、品種的には評価されたのですが、あまり取り扱われなかった。そこで、すでに「フランスオオザヤ」がありましたので、フランスに対してオランダという名前をつけて、「オランダオオザヤ」に名前を変えて、普及していった、という話があります。
エンドウの栽培面積は、日本では、約4,310ヘクタール。鹿児島が非常に多く、福島、和歌山あたりが主産地になっています。
鹿児島に、指宿という有名な温泉があります。指宿には地熱発電所があり、その周辺が、エンドウの産地です。見渡す限り、エンドウとソラマメの畑で、たまにキャベツ畑も入っています。減農薬など、きちんとした栽培をしている地域で、1月頃がエンドウの収穫の最盛期です。指宿温泉に行く機会があれば、ぜひ、エンドウの畑も見に行ってください。普通、エンドウは10月にまくのですが、鹿児島の場合は、8月くらいにまく。芽を出したら冷蔵庫に入れ、低温にあてて、花芽分化をさせて、暮れ、正月くらいから出荷をするという栽培方法をとっています。
和歌山では、海岸沿いのあちこちでエンドウを栽培しているのが見られます。
宮崎でも、面積的には少ないのですが、日南からちょっと南のほうに行くと、ササダケを立てた中で、エンドウの栽培をしています。
輸入品は、青果としては、あまり出回っていません。東京市場に入ってきているのが、だいたい400トンくらいでしょうか。多いのは、中国、ベトナム、タイなど。エンドウは、収穫に非常に労力がかかるので、なかなか大面積で栽培するわけにはいきません。私は、中国で、日本への輸出用のエンドウを作っている圃場を見たことがあるのですが、向こうの人たちも、「エンドウは収穫が大変だ」と言っていました。
非常に古くから栽培されている作物で、中国では、「胡豆」という記録があります。キュウリには、「胡瓜」という字が使われます。「胡」というのは、中国から見ると、西の方角ですから、「胡豆」は、西方から来たマメ、ということになるわけです。ソラマメは、原産地である地中海、中央アジアのほうから、シルクロードを経て、中国に入った、と思われます。
日本には、インドのお坊さんが、中国から来たときに持って入り、兵庫で試作された、といわれています。
ソラマメは、「空豆」、「天豆」、「蚕豆」などの字があてられます。花が咲いて実がなるときに、上を向いてなることから、「空豆」や「天豆」、サヤに入ったマメが蚕に似ているということで、「蚕豆」となったようです。
非常に重視された作物で、「農業全書」という古い本では、麦と同じような扱い、評価を受けています。昔は、ダイズに次ぐ作物と位置づけられていました。
10月にまいて、今頃とれるわけですから、冬の間、生育する作物です。寒さはありますが、夏のように台風の害はなく、また、低温のため、虫の害もないので、不作になりにくい作物です。こういうことからも、夏のダイズに対して、冬のマメ類として重宝がられていた、と考えられます。
ただし、現在では、アブラムシがよくつきます。冬の間はいいのですが、春になり、いよいよ伸び出してきた頃に、アブラムシがついて、ウイルスにかかってしまう。かつて、埼玉にも産地があったのですが、ウイルスによってなくなってしまいました。
指宿のソラマメ畑では、マルチングといって、一面に反射をするフィルムを使っています。虫がこれを嫌うので、農薬を使うのを減らすという意味と、ウイルスの防止にもなります。
香川には、「サヌキ」という品種がありました。サヤが長くて、小さい粒が6〜7粒入るもの。
品種名には、「河内一寸」、「城西一寸」、「仁徳」、「房州」など、地名が付いたものがあります。
青果用の輸入は意外に少なく、東京市場には30トンくらいしか入っていません。多いのはフィリピンから。中国からはそれほど入ってきていません。別のルートで、業務用として入っているところはあるかもしれません。
インゲンには、つる性の品種と、わい性(つるなし)のものがあります。
「ケンタッキーワンダー」という品種が有名です。いわゆる「ドジョウインゲン」とか、「尺五寸」とかいわれるもので、非常に長くサヤの肉が厚いので、食べるとおいしいのですが、非常に曲がりやすい。家庭菜園用にはいいと思いますが、出荷用として作っているところは少ないだろうと思います。直売所などに行くと、見られるかもしれません。
きれいに揃ったインゲンは、ほとんどがつるなしのわい性のものです。ただ、非常に収穫が大変なので、大量には栽培されません。福島、千葉、北海道、鹿児島などに産地があり、7,000ヘクタールほどの栽培面積があります。
青果用としての輸入は少なく、タイ、ベトナムなどから、300トンくらいが東京市場に入ってきているようです。冷凍インゲンは、業務用として入っていると思います。
インゲンによく似たものに、「ササゲ」があります。「三尺ササゲ」はぐるぐると巻けるほど長くなる。 本来は、熟したもののタネを赤飯に入れたりしますが、若ザヤも食べられます。作物的には、インゲンとは別のものです。
トウミョウの栽培は、非常に簡単です。家庭でも、タネから栽培できます。また、カットするときに、上の部分でカットすると、また出てきます。トウミョウに限らず、モロヘイヤでも春菊でもそうですが、手でつまんで簡単に折れるところで収穫すると、ゆでたときに、やわらかい。ハサミで刈ると、かたい部分が入ってきてしまいます。
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