■2024年3月17日 第12回 修了式 〜 勉強品目「山菜」 東京青果(株) 長谷川岳氏
◇「山菜」について
[東京青果(株)  長谷川岳氏より]
  • 山うど。弊社には栃木県産、JAしおのやなどがメインで入っています。山うどは、ウコギ科の多年草です。土から顔を出したばかりの新芽や、少し育った茎や若芽を食用とします。ある程度日光に当てながら根元に土をかぶせて軟白したもので、独特の香りと苦味があります。食べ方は主に、きんぴら、天ぷらなど。芽がみずみずしく、茎が太くて短く、産毛がしっかりとついているものが良いとされています。現在は非常に作柄が悪く、品薄状況なので、価格は高めです。

  • ふきのとう。本日は群馬のものです。市場ではL、Mが価値が高いとされ、Lは1パック8玉前後、Mは12玉前後の大きさが重宝されます。キク科の多年草で、ふきのとうはつぼみの部分。花が咲いた後に地下茎から伸びる葉(ふき)が出てきます。独特の香りと苦味が特徴です。つぼみが開いてしまうと苦みが強くなるので、硬く閉じていて、花芽が見え始めるくらいのものが良いとされます。油との相性がいいので、天ぷら、アヒージョなどに向いています。

  • たらの芽は、山形、秋田、群馬あたりが主産地で、今日は山形産です。山形は蔵王系がよいとされ、L、Mの価値が高い。たらの芽はウコギ科のタラノキの新芽です。独特の風味とほのかな苦味が特徴で、高評価を得ている山菜です。たらの芽の収穫期は桜の開花期とほぼ同じといわれます。大きすぎると苦味やエグミが強くなります。あまり日持ちはしません。揚げもの、混ぜご飯や炊き込みご飯、肉巻きにしてもおいしくいただけます。

  • こごみは、秋田、山形が主産地で、今日は秋田産です。正式名称はクサソテツで、シダ植物の多年草。春から初夏に出る渦巻状の新芽を食用とします。茎が太く、葉がしっかりと巻かれているものがよいとされます。採れたては生でも食べられるぐらい、クセはありません。ぬめっとした食感があり、ごま和え、天ぷらなど、あまり強い味をつけないシンプルな調理法が向いています。

  • 雪うるいの主産地は山形です。正式名称はオオバギボウシ。緑色のうるいを軟白栽培したもので、黄色くやわらかくてクセがない。あくがなく、火を通さないサラダや野菜スティックなど、生で食べられます。噛むと少しぬめりがあります。普通のうるいは、天ぷら、酢の物など、他の山菜と似た調理法がメインですが、あくはなく、ややぬめりがあり、非常に面白い山菜です。

  • 行者にんにくの産地は、山形、長野、岩手、後発の青森や北海道など。タマネギ、ニンニク、ニラなどと同じユリ科の多年草です。ニンニクと似た香りがあり、滋養強壮に強い効果が期待されて、北海道では古くから食されてきました。収穫までに5年以上かかり、乱獲が増加したため、天然物は激減。現在出回っている多くは栽培物です。種から大体7年ぐらい、 苗からでも3〜4年。面積がないとなかなか栽培できません。修験者が山ごもりする際に食べたため、行者にんにくと呼ばれています。

  • わらび、本日は茨城産。山形は後発です。シダの仲間で、先端の葉が開く前に収穫され、産毛がたくさんついているのが特徴です。茎の色は黄緑色から赤褐色に近いものまで、日当たりなどによって違います。土から出て間がないものは首が垂れるように曲がっており、料理店などで珍重されます。しっかり湯がいて、あく抜きをし、炒め物や おひたしなど。ぬめぬめとした食感が大変おいしい食材です。

  • のびるの主産地は徳島。ネギ類と同じヒガンバナ科の多年草で、根元に小さなタマネギ状に肥大した部分があり、若い葉とともに食べます。火を入れることが多いのですが、生でエシャレットのように味噌をつけて食べたり、料理の付け合わせとして飾るといった使われ方もします。のびるも昔はいろいろなところに生えていたといいますが、今、産地として確立されているのが徳島です。

  • 秋田のひろっこに似た庄内浅葱は、ネギの原種とされます。山菜では比較的早く、12〜1月が出荷のピーク。食味がよく、さっと湯がいた酢味噌和えや、天ぷらなどの食べ方が好まれています。

  • こしあぶらは、やや旬が遅い山菜です。即成栽培で2月末か3月、天然物は3月中旬ぐらいから出てきます。産地は、秋田を中心に、山形、北海道あたり。年々、収穫量や産地が減っており、幻の山菜といわれています。苦みは少なく、天ぷらはもちろん、電子レンジで少し加熱して納豆に入れてもおいしいので、個人的に好きな山菜です。

  • うどの芽は、うどの若採り。山うどに似た食感で、天ぷら、きんぴらなどがおすすめです。促成栽培の産地はほとんどなく、3月頭ぐらいから天然物が出荷されます。

  • 本日ののかんぞうは新潟。山形が主産地ですが、まだ弊社には入っていません。和え物、天ぷら、お味噌汁に入れます。

  • ハマボウフウの生産者は、今2人だけで、出荷量は去年の半分以下。非常に生産量が減っている山菜の1つです。茨城で作っています。ボウフウに土寄せをして軟白栽培し、柔らかく白いところを食べます。名前の通り、山で採るのではなく、海に近いところで作られます。爽やかな、清涼感がある山菜で、天ぷらのほか、スープに浮かべて爽やかな香りとともに食べます。

  • つくしんぼは、今はほとんど取り扱いがないのですが、昔は入っていたようです。3月ぐらいからの出荷になります。本日は、福島のようです。料理に少し添えるような山菜です。
◇質疑応答より

    Q:山菜の先行きはどうなんでしょうか?
    A:山菜全般として、コロナ禍は業務の自粛傾向もありましたが、去年ぐらいから非常に引き合いが強く、コロナ前ぐらいの水準になっています。この先、数量の増加は見込めず、数量減、引き合いは増えていくという状況が考えられます。今、出ている山菜は、去年の夏から秋口にかけて、露地で、山菜の元となる木などを栽培して栄養を蓄え、寒さにあてて休眠させ、温度をかけて出てきたものを収穫したものです。去年の夏と秋は、東北含め各産地、高温傾向で、12月より前から予想されていましたが、今年の出来が悪い。出荷が始まってから、どの山菜も数量が出ていません。この後、3〜4月も、露地山菜の数がしっかりと出てくることは見込めない状況です。今日のように、みなさんが山菜の勉強をしてくださったり、一般の量販店、レストラン関係で、春のメニューとして山菜を使っていただいたりしますので、供給の方が追いつかず、高い販売展開になるだろうと見込まれています。

 
◇「山菜」などの写真
うど
(栃木)
ウドの芽
(群馬)
うるい
(山形)
ぎょうじゃニンニク
山形)
こごみ
(秋田)
こごみ
(秋田)
コシアブラ
(秋田)
たらの芽
(山形)
つくばわらび
(茨城)
のかんぞう
(新潟)
のびる
(徳島)
のらぼう菜
(東京)
のらぼう菜
(東京)
ふきのとう
(群馬)
よもぎ
(徳島)
わさびの葉
(山形)
奥多摩わさび
(東京)
庄内砂丘あさつき
(山形)
雪うるい
(山形)
八尾若ごぼう
(大阪)
浜防風
(茨城)
     
 
◇「山菜」についての補足説明
[(株)果菜里屋 高橋芳江氏より]
  • 葉ごぼうは、伝統野菜の見学で福井に行ったときに紹介されたものです。根っこは食べないそうです。湯がいて、つくだ煮風にするとシャリシャリしておいしいですよ、と言われました。

  • 奥多摩わさびは、花が咲いてしまいましたが…。江戸東京野菜のひとつです。山の中の急傾斜地で栽培しています。塩もみして、三杯酢で食べるとお酒のあてにすごくおいしい。最初のうちはつーんとする辛い味ですが、馴染んでくると病みつきになる味です。友達に教わって、私も毎年よく作ります。今日も調理の方に作っていただいたので、のちほど味わってください。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • のらぼう菜は、ピークが過ぎていますが、発祥の地である五日市のものをご用意しました。昔、この地域で飢饉があったときに助けられた、というエピソードがある野菜です。たくさんありますので、今日は1人2つぐらいずつお持ち帰りいただき、野菜炒めなどにして、召し上がってみてください。
 

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