Q:サブスクって、たとえば、毎月300円払って音楽聞き放題というシステムですよね。八百屋さんには顧客リストがあって、その人たちが安定的に買ってくれるから、その意味でサブスクだということですか?
A:はい、もし車だったら1回買ったら2年ぐらいは買わないかもしれない。でも、野菜だったら、また買いに来てくれる。そういう意味でのサブスクです。わざわざ買いに来てくれる人がいるということは、リストを取っていなくても、そういう人たちが実は間近にいっぱいいて、それはいわゆる見込み客が常にいる状態なので、すごいチャンスがあると思っています。
Q:ナンバーワンには人の尽力とかいろいろなことが関わってきますが、オンリーワンとはまた違うのでしょうか?
A:ナンバーワンというのは、勝てないところで戦わない、ということです。たとえば、水泳のプロフェッショナルでも陸上で勝負したら負けます。得意なところを絞り込んで、自分がナンバーワンになれる場所を探す。まずは勝てるステージを探すことが大切です。
Q:私はあまり戦うのは好きじゃないのですが(笑)、やはり戦わないとむずかしいのでしょうか。
A:逆にいうと、戦わなくてもいい自分のコミュニティを見つけたら、すでにナンバーワンです。「あなたから買いたい」という人を、自分がほしい収入になる分だけ集めれば、ナンバーワンじゃないですか。
Q:八百屋さんは、お客さまの食の安全を守る、安定的に供給するという要素も重要だと思います。ビジネス戦略としては共感できますが、利益追求だけに走るのはちょっと怖いと思っているのですが…。
A:よくわかります。F1は固定種に比べ個性は落ちるかもしれない。でも、F1のおかげで安価な野菜を食べられる人たちも増えたわけです。お客さまの健康を守りたくても、全部が固定種で、天候が悪いと高すぎて買えないとしたら、本末転倒です。伝統野菜は多様性を守るという意味でとても大事だし、F1や農薬が悪ともいえず、多様性の1つだと思います。伝統野菜はこういう特徴があり、F1はこういう野菜、あなたはどちらを選びますか、という提案をするのが八百屋なのではないかと思います。
Q:体によくておいしいものを安く提供するような努力ができれば一番いいのですが…。
A:「体にいいものを扱っている八百屋」が会社のポリシーなら、だれに伝えるかが明確化されています。その考えに共感するお客さまに来てもらえる八百屋さんになれば、ハッピーでいい、と思います。
Q:インバウンドでたくさん訪れている外国の方が、日本のフルーツは最高においしい、と言います。それはここ20〜30年の進化のおかげですよね。かんきつとか、本当においしいですから。野菜に関してですが、日本のハイブリッドの野菜はわざわざ外国へ輸出するほど人気があるのですか?
A:ハイブリッドというより、花穂じそ、木の芽、たけのこといった促成品の需要が高いです。香港の場合、当日朝に来た注文をピッキングして発送すると、その日の夜のレストランの営業に間に合う。そういうタイムラインで飛行機を使います。一般的な野菜はコスト的に合わないので、船で運んだりしています。
Q:やや精神論的な部分が強かったので、補助金の話を含めテクニックの部分をお話しいただけますか?
A:サービス自体は世の中に溢れていますが、試行錯誤しなければわからない部分があるので、精神論っぽくなりました。ぜひ活用していただきたいのは政府の補助金です。たとえば、「TANOMU」という自動発注システムは、IT助成金を申請できます。仮に月5万円で2年間使うとしたら、120万円の3分の2が対象になります。こうした情報を、私は有料のところで取っています。先行投資による将来のリターンを計算すると、答えが見えてきます。うちの会社はコンサルもしています。たとえば、産地が新しいものを作ったら、まず市場に出してみて、その反応をだれよりも早くリターンし、売れる仕組みを作る。コンサルは、質問に答えられる知識がなければアドバイスできませんから、勉強が必要です。八百屋塾は、キャベツにしても今日これだけの種類を食べくらべられるのですから、すごい。自分1人ではできません。ですから、八百屋塾に来ているみなさんは、戦闘力がすごく高いと思います。
Q:「TANOMU」という自動発注システムは、先方にも導入してもらわないと使えないのですよね?
A:はい。相手に合わせた項目、メニューを作って、導入してもらいます。そこが1番大変ですが、1回作ったら、他はなかなか参入できないので武器になる、と考えてうちは参入しました。
Q:システムを作って販売するとして、最終的には資金を回収しなければなりません。どんな感じで資金回収、与信管理をしているのか、海外だと為替の問題もあります。そのあたりを教えてください。
A:日本に代理店があり、上場しているとか、与信がある会社はそのままですが、そうではない会社はデポジットを入れてもらいます。今は、マネーフォワードとか、与信をつけるサービスがたくさんあります。手数料は発生しますが、資金が回収できなかった時のコストや、事務コストを考えると、それほどの金額ではありません。与信会社マネーフォワードに売っていることになり、決まった日に全額入ってきます。入金管理をしなくていいのですが、まだ全部ではなくて、ステージによります。
Q:今日のお話は、私たちのような納め屋にはすごく参考になります。でも、小売り屋さんにとってはハードルが高くて、たとえば、Facebookでもなんでもいいから、まずは世の中に知らしめることが大事だと思うのですが、その点はどういうふうにしたらいいのか、教えていただけますか?
A:社長は、経理も、キャッシュフローも見なければならない。さらに仕入れ、支払い、ピッキングも、片付けもします。そこで、どんなシステムなら労力を削れるかと考えて、私は発注システムなどを導入しました。物事を自動化するには、40倍ぐらいの労力がかかるそうです。でも、40倍で、その後の労力がなくなるなら、私は投資をしたほうがいいと思います。ただ、効果にもよりますから一概には言えません。人によって目標や目指すところは違うので、一概にFacebookがいい、とはいえません。むしろ、中途半端ならやらないで、その時間を違うことに使うほうがいいかもしれません。逆に、Facebookを使うのが1番近道、という人もいるでしょう。先ほどお話した「マインドマップ」を使って、もう1度自分のことを見つめ直すために使うと、考え方が整理されます。仕事だけではなく、自分の生き方の中で、生きる意味とか、健康、家族、余暇、趣味などを分類していくと、見えなかったものが見えてくるのではないかと思います。
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