■2023年6月25日 第3回 うり類・スイカ 〜 勉強品目「うり類」「スイカ」 伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏、東京青果(株)
鈴木氏、水ノ江勇太氏 |
◇伝統野菜の「うり類」について |
[伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏より] |
- うりは、仲間同士ですぐ交雑する植物で、多くの種類があります。そのなかで、今回は、とうがん、きゅうりの大型のもの、白うりに限定しました。
- 漢字では「瓜」と書きます。「南瓜」と書くと、かぼちゃ。「冬瓜」は、とうがん。「西瓜」は、スイカです。胡瓜(きゅうり)の「胡」という字は、中国から見た西域を指します。「苦瓜」は苦いからで、ゴーヤ。「隼人瓜(ハヤトウリ)」は、鹿児島あたりに導入されたので、その名前からつけられました。「糸瓜」はヘチマで、沖縄では「ナーベラー」と呼ばれ、食用です。昔は繊維をとったので、「糸瓜」という名前がついたとされます。「夕顔」には「瓜」の字は入りませんが、うりの仲間で、「かんぴょう」です。ひょうたんは、夕顔の変種の実を干したものです。お酒の器や、手おけ、ひしゃくなど、いろいろに使われます。
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- 原産地の大きなくくりの1つは、熱帯。もう1つは、新大陸と旧大陸。旧大陸はインドやアフリカ、新大陸は中南米です。大まかには、とうがん、スイカ、きゅうり、夕顔や糸瓜の一部、苦瓜の原産地は、アジア、アフリカ。かぼちゃ、ハヤトウリ、そして一部の夕顔や糸瓜の原産地は、南米です。
- かぼちゃは、コロンブスの新大陸発見によって世界に広まったと思っていましたが、新大陸と旧大陸で種の交換が行われていたことが、今回、うりの勉強を通してわかり、個人的に面白いと思いました。コロンブスは、うりの種を南米に持って行って栽培し、また次の航海に出たときに、「よし、なっていたぞ」とか「なっていなかった…」などと一喜一憂したといいます。
- とうがんは、ウリ科トウガン属です。とても日持ちがよく、夏に収穫したものが、冬でも食べられるので、「冬瓜」という名前になったといわれます。原産地は熱帯アジア、インドあたりと考えられています。
- きゅうりは、ヒマラヤ山脈の南の山岳地帯が発祥の地だといわれています。
- とうがんは、日本書記に書かれるぐらい古くに日本にやってきました。きゅうりの日本への渡来は10世紀またはそれ以前、という資料がありますが、当初、受け入れられず、江戸の末期ぐらいに定着しました。ちょうど園芸が盛んになり、早出しのような工夫がされて、いろいろな形できゅうりが食べられるようになりました。以降、地方品種等ができてきたという経緯があります。
- 白うりはアフリカが原産地で、白うり、まくわうり、網メロンなどは、ウリ科キュウリ属メロンの仲間です。最初に日本に渡来したのは白うり。縄文時代の遺跡から種が出るくらい古くから食べられています。
- 白うりは、白いから「白うり」、かたいので「かたうり」とも呼ばれます。正倉院に、漬けものとして献上されたという記録が残っており、古くから漬けものに使われたので、「つけうり」という名前もあります。
- うりは、昔から愛されてきましたが、今の食生活にはあまり入ってきません。きゅうりは品種改良され、サラダなどで食卓にものぼりますが、白うりやとうがんは、今後なくなるのではないかと心配です。
- うりには地方名がたくさんあります。たとえば、とうがんは、石川県で「かもうり」。その理由は、完熟すると表面にブルームと呼ばれる白い粉がつきます。それが毛のようなので「けもうり」と呼ばれ、少しずつ変化していって、「かもうり」とか「かもり」になったといいます。「かもり」は富山です。
- きゅうりには、華南型、華北型、シベリア系ピックル型があります。「加賀太きゅうり」は華南系の節成りで、節成りとシベリア系統が交雑したもの、といわれています。
- 「モーウイ」は、沖縄のきゅうり。華南系の原型をとどめているとされます。
- 白うりは、かす漬けやなら漬けの材料です。愛知では「かりもり」と呼ばれます。非常にかたく、食感がいい。カリッとした漬けものでモリモリご飯が進むので、「かりもり」なのだそうです。
- 葉県で有名な「はぐらうり」。白うりとまくわうりが交雑したとされ、他の白うりに比べてやわらかい。歯がグラグラしている高齢者でも食べられるので、「はぐらうり」なのではないか、といわれています。
- 地方には愛されてきたことを感じさせる名前が残っていて、面白いと思いました。
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◇「とうがん」「小とうがん」について |
[東京青果(株)
鈴木氏より] |
- とうがんと小とうがんについてご説明します。
- 冬場は沖縄から入るのですが、ほとんど終わりで、現在、愛知産、静岡産が流通しています。
- 従来のとうがんは、皮の表面に白い粉が吹くものが多いのですが、琉球とうがんなど、今、市場に出回っているものの多くは、粉を吹かない品種です。
- 旬は夏ですが、貯蔵性にすぐれ、ちゃんと管理すれば冬まで持つので「冬瓜」という説があります。現場でも、大晦日や正月まで傷みなどなく貯蔵されているものがあり、棚持ちはいいです。黒点病などの病気や傷などがあると、そこから傷みが発生することが多いので、全体的に色が均一で、傷や病気がないものを選ぶといいと思います。
- とうがん自体にあまり味はなく、淡泊です。煮もの、スープ、漬けものなど、味を染み込ませる料理に向いています。中華では煮込みや、最近はシロップ漬けにされることもあるようです。
- 愛知も静岡も例年通りの作なので、静岡は来週ぐらいからは潤沢に入ってくるはずです。8月に向けて、どんどん増えてきますので、売り場の展開をよろしくお願いします。
- 小とうがんは、現在、神奈川の三浦と愛知が若干入っています。とうがんより小さく、多くは早い時期に出されます。1個が1〜2キロぐらい、段ボール5キロで3〜4玉が標準です。切ったものは抵抗があるお客さまもいらっしゃるので、まるまる1玉をお店に並べたいときは、小とうがんが便利です。とうがんよりも早い段階で収穫するので果肉はやわらかく、肉厚です。今後、潤沢に入ってきます。
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◇その他の「うり類」について |
[(株)果菜里屋 高橋芳江氏より] |
- 白うりは、食べやすいうりで、昔は夏になるとよく見かけたものですが、今はあまり見なくなりました。ほとんどが漬け物に使われます。
- はぐらうりには、白と青があります。京都産は、椀物などに使われています。千葉で作っている青系のはぐらうりは、用途が狭いこともあって、あまり使われていません。
- 青うり、はやとうりについては、現在、入荷がありません。
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- 金糸うりは、切って熱湯につけると、ほぐれて細い糸のようになるのでこの名前があります。「そうめんかぼちゃ」とも呼ばれ、そうめん風につゆにつけて食べたりします。炒めものや、さまざまな使われ方があり、うり類としては面白い商材ではないかと思います。
- バターナッツは、オーストラリア産です。味は、江戸東京野菜の内藤かぼちゃに似ているかもしれません。普通のかぼちゃほど濃くなく、さっぱりしていて、スープにすると、さわやかな味です。フレンチやイタリアンレストランでよく使われます。
- コリンキーは、かぼちゃの仲間です。スーパーなどでもよく見かけるようになりました。皮ごと薄くスライスして、加熱せずに生で食べられます。
- 苦瓜は、レイシ、ゴーヤとも呼ばれます。ゴーヤチャンプルーやサラダにして私もよく食べます。白いゴーヤもあり、あまり苦くありません。苦瓜は、昔と違い、今はあまり苦くなくなり、食べやすいと思います。
- ズッキーニも今、盛んに夏の商材として出ています。黄色と白があり、炒めものにしたり、さっと茹でてサラダに入れたり、私はスープに入れたり、ポタージュにして食べています。
- きゅうりの「四葉(すうよう)」という品種はいぼが強くて、中華の炒めものなどに使います。
- 「もろきゅう」は和食屋さんなどで使われる小さなきゅうり。白い粉はブルームです。
- 「花丸きゅうり」も、お料理屋さんで飾りものとして重宝されます。市場の、専門に扱っている商材屋さんで仕入れられます。プロ向きなので、いい料亭に行くと出てくるかもしれません。
- 「加賀太きゅうり」は石川県。中の種を取ってサラダにしたり、「白岩うり」のように薄くスライスしてポン酢で食べたり、とろみをつけた煮ものにしたり、加賀の郷土料理でよく使われます。
- 「モーウイ」は沖縄の伝統野菜です。スライスしてツナとあわせたり、味噌炒めにして食べられています。講師の先生のお話にあった南谷のうりは、この「モーウイ」に似ていると思います。
- 夕顔は、サラダや煮もの、味噌汁、炒めものにするとおいしい。ただ、みなさん、なかなか買いません。あまり売っていないこともありますが。1本は重たいし、核家族では持て余してしまう。タナカトウコさんによると、青森ではふつうに食べられているそうです。20センチぐらいの長さに切って、青唐辛子とセットで、ラップにくるまれて売られていて、豚肉といっしょに、ちょっと辛みのある味噌煮にするそうです。
- へちまは、沖縄では「ナーベラ」と呼ばれ、銀座のわしたショップで売っています。食用は、普通のへちまとは違います。ちょっと食べにくい味ですが、味噌炒めにするとおいしく食べられます。
- 小メロンは、切って酢漬けや塩漬けにします。もっと小さい小メロンもあり、お料理屋さんで椀物に入れたりします。扱っている八百屋さんは滅多にないと思いますが、こんなものがあるということを知っていただければと思います。
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◇「スイカ」について |
[東京青果(株)
水之江勇太氏より] |
- 私は大田市場で千葉のスイカの競売をやっており、今日ここにある八街のスイカを担当しています。今日はスイカの紹介ということで、スイカ色のジャケットを着て参りました。
- 先日、八百屋のみなさんと八街のスイカ畑を見学するバス旅行に行きました。そのときに、果菜里屋の高橋さんに、「話に来て」と依頼されて来ました。
- 千葉県は全国で2番目のスイカの生産量を誇り、八街市や富里市、山武郡市が中心です。ハウス栽培と露地栽培の2つがあります。
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- スイカ畑は葉っぱだらけで、どこにスイカがあるのかよくわかりません。農家さんも、いつ採ったらいいかわからなくなってしまうので、チョークで色を着けます。ハウスなら交配から50日ぐらい経つと食べ頃になるので、赤、オレンジ、黒など、着果日によって色分けをしています。これは「着果棒」という仕組みで、千葉ではリボンを巻いたりクレヨンやチョークで書いたりしますが、熊本では、着果した実の横に、水色やオレンジの棒を刺しておいて、農家さんはそれで判断します。そうしないと、どこに何日に実が着いたのか全部は把握できません。熊本や鳥取は機械センサーで測っていますが、千葉は農協の集荷場がなく、農家さんが自分で何日目だから糖度がのっているはず、と判断して出すので、着果棒の色着けによって、日付をきちんと確認しています。
- 台木は、とうがんやかぼちゃ。スイカの苗にスイカの芽をつぐと、上手に着果しなかったり、いい形にならないので、病気に強くて着果しやすいものを作るために、とうがん系のものにスイカをつぐわけです。
- スイカの苗にスイカを継ぐことを実生(みしょう)といいます。鳥取の「極実西瓜」は実生で、すごく難しいやり方で作っています。非常に味がいい。お客さまに「実生スイカないですか?」と言われたら、倉吉の「極実」をすすめればいいと思います。味が乗っていて、糖度10〜13度程度はあると思います。砂地で作っているためシャリ感もあり、大田市場で1番評価が高いスイカの1つです。
- C品の大きくて安いスイカは、たたくとボコボコと音がする。棚落ち、といって、中に隙間があります。スーパーでも売りようがなく1個980円で売っていましたが、最近は切ってブロックにすれば儲かるので、C品をブロック用として仕入れています。利益率がものすごく高い。
- C品は、育ちすぎではありません。成長の過程で、片側に引っ張られたりすると形が悪く、バランスよく育たない。A品は、バランスよく成長するので、まん丸で中に隙間はできません。C品は歪んでいて、ポロっと落ちたりするので、「棚落ち」といわれます。糖度は関係なく、プロの中にはC品の方がおいしいものがある、という人もいるくらいですが、カットだと売りにくいので、評価が低いということです。ブロックでフードバックに入れて売る分には十分なので、競売場でもC品が人気になっています。
- 和歌山の小玉スイカは、以前は東京市場にはほとんど入っていませんでしたが、この5年間で、大田市場の取り扱いが第2位になりました。ちなみに、大田市場での東京青果の果実のシェアは55〜60パーセントなので、みなさんに置いてもらっているものの半分以上が当社のもの、というわけです。
- 品種は萩原農場の「ひとりじめ」です。和歌山は千葉や茨城とは味が全然違います。同じ品種でも、土壌や作り方によってこんなに味が違う、という代表例ではないかと思います。水気が多く、糖度は11〜12度ぐらいなのですが、甘みがじわっと広がるので、おいしく感じられます。ただ、足は速いので、日向に置かないように、冷ケースに置くぐらいの方が安全だと思います。
- 「金色羅皇(こんじきらおう)」は、スイカ界の大谷翔平くんといいたくなるくらい、おいしいスイカです。羅皇シリーズとして、「羅皇ザ・スウィート」と「金色羅皇」という2つのスイカがあり、「羅皇ザ・スウィート」は赤い実、「金色羅皇」は黄色です。普通、赤と黄色なら赤の方がおいしいのですが、「金色羅皇」は黄色でもすごくおいしい。真ん中の糖度が15度近くあります。これが流行ってきたら、スイカの売り方が変わると思います。のちほど試食で召しあがってみてください。今はまだあまり作られていませんが、よかったら競売場に買いに来てください。
- ぶどうの「シャインマスカット」など、種がないものが売れています。スイカでも「ピノガール」や「ひとりじめ」など、種が少ない小玉スイカが出てきました。種なしとはいえないのですが、ナノシード、マイクロシードなどといって、種が非常に小さいため、食べても歯に引っかからない。糖度も乗っており、作付けが増えてきました。今後、売れ筋も変わってくるのではないか、と思っています。
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◇「うり類」「スイカ」の写真 |
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