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■2023年8月20日 第5回 なす・シャインマスカット 〜 「伝統野菜のなすについて」 伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏
◇伝統野菜の「なす」について
[伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏より]
なすはナス科ナス属です。インドの東部が原産だといわれています。
有史以前から栽培化されているといわれ、中国にはチベットを経て、または東南アジアの方から入ったとされています。
ヨーロッパのほうにはペルシャ人が伝えたといわれています。ヨーロッパでは13世紀頃に栽培されるようになったそうですが、熱帯のものなので、広く普及はしませんでした。現在、低緯度地帯(スペイン、フランス、イタリアなど)では栽培されていますが、積極的には栽培されてきませんでした。
伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏
北アメリカには、移民が持ち込んだといわれています。そこでいろいろな品種が生まれました。「ブラックビューティー」という素敵な名前の米なすなどもあり、日本にもアメリカから入ってきています。ただ、トマトやトウモロコシなどと比べると、量的にはなすの栽培は少ない、と聞いています。
中国の中で、河北といわれる寒い地方では丸なすが主流です。長江を境にして、華中や華南では長なす。用いられ方としては、煮もの、焼きもの、炒めものなど。漬けものとしての需要が多い日本とはだいぶ違いますが、今、なすの生産量世界一は中国だそうです。
日本では、奈良時代に記録が残っています。諸説ありますが、「奈須比」、「中酸果」と書いて、「なすび」と読ませたようです。なすを味わってみると、ちょっと酸っぱいので「中酸果」か、と思いました。
中国から朝鮮半島を経て入ってきた北の方の系統のものは丸なすで、南の方から入ってきたものは長なす系統です。
以前、「日本全国なす自慢」というイベントを行い、日本全国からなすを集めて、展示しました。それを資料の地図にまとめてあります。朝鮮半島を経て伝わった丸なすは、もともと熱帯のものですから、日照が少ない東北地方では小なすになりました。長なすは九州に伝わり、日が長いので、栽培するうちに長果になりました。そうした形の変化が、地図でご覧いただくとよりわかりやすいと思います。
なすは、漬けもの、煮もの、焼きもの、揚げもの、炒めもの、蒸しものと、さまざまな食べ方ができます。ここまで多目的に使われる野菜は、なす以外にないかもしれません。全国的に長卵型のなすが増えてはいますが、地方にはその土地の食べものと結びついた特徴のあるなすが選ばれていたりします。
今、栄養価や生食ができるという面で野菜を選ぶ傾向があります。なすそのものの消費量は変わらなくても、ほかの野菜に追い越されて、なすの生産量はやや落ちているのが現状です。
伝統野菜のなすをご紹介します。宮崎の「佐土原なす」は焼きなすにするととてもおいしい有名ななすです。新潟の「鉛筆なす」や「久保なす」といった系統のもとになったのでは、といわれています。
隣の熊本県にも、「佐土原なす」に似た「赤なす」や「肥後むらさき」があります。
「ていざなす」は長野。1888年(明治20年)頃に巾着型の種を取り寄せて栽培を始めたところ、だんだん長くなっていったそうです。ヘタが緑色なので、米なす系が入っているのかもしれません。以前、「ていざなす」を栽培している農家さんのところで、半分に切ったものをトロトロに焼いて、味噌をかけて食べさせてもらいました。本当においしかったことを覚えています。
「ぼてなす」は愛媛県。「絹かわなす」ともいいますが、在来種は現地では「ぼてなす」と呼ばれています。これと水なすを掛け合わせたのではないかと思われる「絹かわ水なす」は、明らかにF
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です。
香川県の「三豊なす」は、昭和初期に朝鮮半島から持ち帰って栽培したもので、ポテッとした形のなすです。焼きなすがおすすめです。
「寺島なす」は江戸東京野菜です。昔の「蔓細千成」の系統だそうです。
京都では昔からさまざまな在来種を育てており、中でも「山科なす」は主要品種として用いられたもので、今でも京のブランド産品として残っています。
今日は、私も初めて見るなすがありました。これからもこういうものが出てくると思うので、勉強を重ねていきたいと思います。
【八百屋塾2023 第5回】
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