■2015年6月14日 第3回 きゅうり・ハウスみかん 〜 講演「きゅうり」について 野菜ソムリエコミュニティかながわ 幹事 石田友一氏
◇きゅうりの概要
  • きゅうりは、ウリ科キュウリ属のつる性一年草植物です。

  • 漢字では「胡瓜」と書きます。熟すと黄色くなるので、「黄瓜」と書く、ともいわれます。

  • 原産地はインド北東部で、中国の南側を通って日本に来た春きゅうり系の華南タイプと、北側から来た夏きゅうり系の華北タイプがあります。華北タイプは比較的暑さに強く、華南タイプは寒さに強いのが特徴です。日本には、最初、華南のほうが多く入っていたようですが、最近主流の青きゅうりは華北タイプです。
野菜ソムリエコミュニティかながわ 幹事
石田友一氏
  • 華南型の中に半白系、青節成系、青長系、地這い系があります。このほか、華北型、ピックルタイプなど、世界にはさまざまなきゅうりがあります。石川県の「加賀太きゅうり」は、春型の雑種群という、一般的なきゅうりとは違う種類です。

  • きゅうりをよく食べるのは東アジア、特に中国と日本でほとんどが消費されており、他の国ではあまり主流ではない野菜です。

  • 日本では、923年頃の文献に「きゅうり」の記載があり、鎌倉幕府より前に栽培が始まっていたと考えられています。当時は半白、地這いなど、雑種に近いものが多かったようです。
◇きゅうりの生産量など
  • きゅうりは、1951年(昭和26年)頃、農業用ビニールハウスの登場により、急激に広まりました。それまでは、埼玉県、東京都、神奈川県などが主力産地でしたが、北は福島、南は宮崎などでもたくさん作られるようになりました。

  • 日本では、全国で年間約48万6000トンのきゅうりが作られています。生産量1位は宮崎県、以下、群馬県、埼玉県、福島県、千葉県、茨城県、高知県、北海道、長野県、岩手県の順で、宮崎県、群馬県、埼玉県、福島県、千葉県の5県でほぼ半数以上の出荷量を占めています。

  • 東京市場の産地の移り変わりをみると、5〜6月は、埼玉県、群馬県、福島県が多く、今はちょうど関東から北の産地に移る時期です。

  • 埼玉県の農家さんによると、今年は3〜4月の乾燥が厳しく、樹がばてている、という話もありましたので、7月は少ないかもしれません。すでに、10〜11月の抑制の準備を始めている、と聞きました。

  • 福島県も、3〜4月に高温で、時折寒さも厳しかったので、出始めは厳しい状況かもしれません。
◇きゅうりの栽培について
  • 日本で栽培されているきゅうりの95%以上が、いわゆる「青きゅうり」です。家庭菜園用では、イボのある「四葉」も作られており、その他、真っ白いもの、薄い緑色のもの、長いものなど、さまざまなきゅうりがあります。

  • 「青きゅうり」の品種は栽培時期によって変わります。

  • きゅうりは日中に光合成で作られた養分が、夜、実に行って太っていきます。夜温10℃以下、または地温15℃以下になると生育が著しく悪くなるので、冬場は土の中に温水が通るパイプを入れるなどして暖めます。

  • きゅうりの栽培は、まず、主枝(親枝)を伸ばし、次に子枝(子ヅル)、そこから孫枝(孫ヅル)が出てきます。親枝を伸ばしたほうがいい品種、子枝を伸ばしたほうがいい品種、早く孫枝を出させたほうがいい品種など、いろいろなタイプがあります。

  • 露地の夏秋栽培では、最初、親枝を伸ばし、20〜25節目で採って、孫枝を早めに出させます。ハウス栽培では、親枝の摘芯の位置を18〜20と短くして、早めに子枝を出させるなど、農家さんによっていろいろな方法をとっています。最近よく見るのは、親枝を吊り下げて栽培する方法です。草勢が落ちにくく、長くきゅうりが採れるのが特徴で、相場が安定しない昨今、農家さんにとっては経営を安定させるひとつの方法だと思います。

  • きゅうりの90%は水分です。100キロ収穫すると90キロは水、つまり畑から90キロの水が失われている、ということになります。 毎日水をやらないと、樹勢を確保できません。

  • ある産地の規格では、曲がりが1.5センチ以内はA品、2.5センチ以内はB品とされています。曲がりの原因は、乾燥、急激な樹勢のバランスの崩れ、カリウム不足など。カリウムと水は光合成をするために必要で、これらをコントロールできる生産者は、いいきゅうりを作れます。

  • 暑い時期になると、収穫は朝と夕方の2回行います。朝方はまだ果実が小さくても、日中に温度と水があると、きゅうりはすぐに太ります。

  • きゅうりは、最長50センチくらいまで大きくなります。出荷されるのは22〜25センチ。かつては22センチが一般的でしたが、加工用が増え、長めのものが求められるようになっています。22〜25センチという長さは、コンビニの「恵方巻き」にちょうどいい長さと聞いています。

  • きゅうりのタネを扱っている種苗会社はたくさんありますが、メインで育種をしているのは、ときわ研究場、埼玉原種、久留米原種の3社のみです。最初の2社は埼玉県にあります。きゅうりは光合成が大切で、埼玉県は関東の中でも日射量が多いため、育種が発展したと考えられます。

  • きゅうりには雄花と雌花、もしくは両性花があります。交配して時間が経つと実は黄色くなり、採種できるようになります。華南型春きゅうりは晩熟なので、実をならせた状態でかなりおかないとタネが採れません。華北型の夏きゅうりは早熟で、早く黄色くなり、タネが採れます。

  • きゅうりの市場価格は低迷しています。流通では統一化、規格化が進んでおり、外観や店持ち性も重視されます。半白系は店持ちが悪いので、市場出荷から外されたのではないかと思います。
◇伝統野菜のきゅうりについて
  • 「馬込半白節成きゅうり」は、東京の伝統野菜で、今ではほとんど見ることができない品種です。長さは22センチ、太さは4センチくらいで、おいしいのですが、日持ちはしません。河原梅次郎さんという方が、きゅうりとうりを交配して作ったもので、西馬込2丁目あたりが発祥といわれており、現在は住宅地に囲まれたテニスクラブになっています。

  • 「馬込半白節成きゅうり」と「青きゅうり」を交配して生まれたのが、神奈川県の伝統野菜、「相模半白節成きゅうり」です。平塚市にある湘南きゅうり園の吉川さんという若手農家が「相模半白節成きゅうり」を栽培しています。華南型の品種で、3〜5月が旬です。一般的なきゅうりの旬は初夏から夏にかけてですが、「相模半白節成きゅうり」は、夏場はかたくなりすぎてしまいます。

  • 湘南きゅうり園では、「相模半白節成きゅうり」のほか、「四葉」、「ガーキン」など、さまざまなきゅうりを栽培しています。「ガーキン」は肉質がかたく水分が少ない品種で、欧米ではピクルスによく使われています。実が伸びる前にケースをかぶせてハート型にしたものもあります。湘南きゅうり園では、「神奈川食べる通信」を通じて、収穫体験や作業体験のイベントも行っているそうです。ぜひみなさんも現場を見て、感じて、学んで、農家さんの思いや作り方、畑の匂いをお客さまに伝えてください。
◇質疑応答より

    Q:同じのコンテナの中でも、ときどき非常に苦いきゅうりがあるのはなぜですか?
    A:窒素過多とか、まだバランスがととのっていない時期に硝酸態が多いケースなどが考えられます。きゅうりは、栽培上、窒素を多く使用するので、出はじめは気をつけたほうがいいかもしれません。

    Q:最近のきゅうりに先細りが多い原因は?
    A:水分不足だと思います。太ろうとする段階で水がないとうまく育ちません。今年は3〜4月に乾燥してしまったので、細いものが多かったのではないでしょうか。

    Q:中が白くなるのはなぜですか?
    A:夏場、暑さが厳しすぎて、根から吸う水分が足りないと、葉をもたせるために、自分の実から水分を吸い取ろうとします。そうすると細胞が壊死して白っぽくなってしまいます。

    Q:冬場に芯が赤くなるのは?
    A:低温が原因です。地温が15℃以下になると根がとまり、実が縮こまろうとしてバランスが崩れるために起こると考えられます。

    Q:乾燥を防ぐために袋に入れて売ると、暑いときは下のほうが膨らんできたり、冷蔵庫にしまうと中が赤くなったりしてしまうのですが、何かいい方法はありますか?
    A:保存はしめった布か新聞紙に包んで、水分が蒸発しないようにするのがベストですが、基本的にきゅうりは日持ちしない、と思ってください。

    Q:きゅうりの中が黄色いことがありますが、栽培のときには何ともなくても、その後の温度変化で起きることはあるのでしょうか?
    A:今、主流の華北型きゅうりは寒さに弱く、温度変化に対応しきれないのかもしれません。

    Q:置いておくと色が変わることもあり得ますか?
    A:あり得ます。スが入っていたり、過熟のものは出荷しない農家さんもいらっしゃいますが、出荷基準が厳しい産地と緩い産地があるので、いい産地を見極めることが重要だと思います。

    Q:メロンは光センサーで糖度や品質をチェックしていると聞きますが、きゅうりはそういうことはしていないのでしょうか?
    A:今のところ、きゅうりでは、聞きません。農家さんの見極めに頼っているのが現状です。いい農家さんを見つけたら、ぜひ実際に会って顔を見て、話をして、情報交換をしていただきたい、と思います。

    Q:接ぎ木と地根の違いについて教えてください。
    A:今、病気を防ぐため、大半は接ぎ木です。味が変わりにくい台木を使っている農家さんもいるので、味重視か、収量かといった農家さんの方向性を確認して仕入れるといいのではないでしょうか。

 

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