■2015年5月17日 第2回 いんげん豆・メロン 〜 講演「いんげん豆」について 雪印種苗(株) 大橋真信氏
◇いんげん豆の概要
  • いんげん豆は、マメ科インゲンマメ属に分類される植物です。十六ささげは、ササゲ属なので、厳密にいうといんげん豆ではありません。ささげといんげんは混同されることが多く、いんげんのことをささげと呼んで栽培しているところもありますが、分類的にはささげといんげんは違うものです。

  • いんげん豆は、17世紀に中国の僧、隠元が日本に伝えたという説がありますが、これはフジマメだったのではないかともいわれています。

  • 次から次に採れる長期採り作物なので、関西地方では「三度マメ」とも呼ばれています。
雪印種苗(株) 大橋真信氏
  • いんげん豆には、β-カロテン、ビタミンCが多く含まれ、緑黄色野菜に分類されています。疲労回復効果があるとされるアスパラギン酸も含まれています。
◇いんげん豆の種類
  • いんげん類は、大きく分けると、矮性種と蔓性種があります。矮性種は上には伸びないもの、蔓性種は上に伸びていくもので、全国的には蔓性種が多く栽培されています。矮性種と蔓性種の中間型もあります。

  • 矮性種は、支柱などがいらないので、比較的簡単に栽培ができます。ただ、いんげん豆は長期間採り続ける作物で、丈が低いとかがんで収穫しなければいけません。これが大変で、若い人はあまりやりたがらないようです。

  • 蔓性種は立って収穫できますが、どんどん大きくなり、蔓が出てくるので、栽培管理に手間がかかります。蔓は、上から見ると、必ず時計回りとは逆方向に巻いていく性質があります。
◇さやの形状について
  • 八百屋さんなどで一番よく見かけるのが、丸ざやです。切ったときの断面が丸いので、丸ざやと呼ばれます。

  • 丸ざやには、凹凸がはっきりしているタイプと、凹凸の少ないタイプがあり ます。関東で「どじょういんげん」と呼ばれているものは、凹凸のあるタイプで、味がいいといわれています。実が太り、その甘みや香ばしさ が食味に反映されるのではないかと思います。「ケンタッキーワンダー」、「ステイヤー」などが代表的な品種で、ほとんどが蔓性です。

  • あまり凹凸がないタイプは、「どじょういんげん」 と違って曲がりが少なく、きれいに箱詰めして出荷できます。ステーキのつけあわせなど飾り的によく使われ、見た目が重要視されます。食感 は「どじょういんげん」よりかたいのですが、長めにゆでればおいしく食べられます。洋風の食べ方に向いており、関西で好まれている「キセ ラ」という品種がこのタイプです。

  • 平ざや種は、断面が平べったいタイプで、「モロッコいんげん」がよく知られています。全国的に面積は少ないのですが、味はよく、スライスするなど、いろいろな使い方ができるので、一定の需要があります。丸ざやタイプは太くなるとかたくなるので、小さいもののほうがいいとされており、農家さんが高く売るには小さいものを採る必要があります。Sサイズだと、2キロの箱に1000本は入りますから、割に合わず、辞める人が多いという事情もあって、平ざや種が最近増えてきています。同じ2キロでも、平ざや種のほうが収穫作業は早くなります。

  • 「モロッコいんげん」より大きいのが、「ジャンボいんげん」です。「びっくりジャンボ」などの品種があり、通常の丸ざやの5倍くらいあるので、収穫がとてもラクなのが特徴です。

  • 世界にはさまざまないんげん豆があります。黄色や紫色の莢のものもありますが、紫色は茹でると色が褪せて、緑と黒が混ざったような色になるので、商品にはしにくいと思います。

  • タネの大きさは品種によって違います。実採り用のいんげんでは、白いんげん、虎豆、べにばないんげんなどが知られていますが、これらの豆(種子)は穀類に分類されます。
◇栽培について
  • 豆類は全般的に湿害に弱い作物です。雨が多いと順調に生育しません。水はけのいい土地を選ぶ、水の逃げる道を作るといった栽培指導をしています。

  • 発芽の適温は20〜25℃です。

  • 豆類はタネ蒔きをしたあと、すぐに水をかけてはいけません。豆類はタネが大きく、乾燥した状態になっています。小さいタネはすぐに水を吸いますが、大きいと周辺だけが急激に水を吸って中までは染み込みません。芯の部分に水がいかないと、表面だけが膨張して土の中で割れてしまいます。地上に出ると、豆はまず2つに分かれて子葉となり、それが栄養源になるので、最初に育つための栄養がない、ということになってしまいます。水分のあるところにタネを蒔き、徐々に水を吸わせて、何日後かに乾いていたら水をかけるのが正解です。

  • 温度管理は、豆によって違います。いんげん豆は20〜25℃、人間が過ごしやすいぐらいの気温が適温です。枝豆、大豆は25〜30℃と、ちょっと暑いぐらい。えんどう豆、そら豆は15〜20℃の低温を好みます。人間だと上着がほしくなるぐらいの温度です。

  • 蔓性のタイプは、上に伸びていくので、支柱立てや誘引が必要になります。

  • 潅水は少量多回数が原則です。花が咲いてから水をやりますが、水が切れると収量が上がらなくなります。かといってやり過ぎると根腐れを引き起こす原因になります。

  • 丸ざやの場合、開花後2週間ぐらいで収穫できます。採り遅れないことが重要で、さやをつけたままにしておくと、中にタネが入ります。そうなると、植物は子孫を残し終わっていると判断し、花が咲きません。長期間採るためには、ずっと収穫し続けなければいけません。

  • いんげんの主な害虫は、スリップス(アザミウマ)、葉ダニなど。病気には、灰色かび病、菌核病などがあります。
◇生産動向
  • 国内のさやいんげんの流通量をみると、国産の割合は高かったのですが、全体としては減少傾向にあります。

  • 海外から、冷凍と生鮮が輸入されており、冷凍は中国、タイ、台湾、メキシコなど。生鮮は、中東のオマーンから。オマーンでは日本への輸出用にいんげんを作っています。品種は「キセラ」のような丸ざやタイプです。

  • 1975年からの統計によると、さやいんげんの作付け面積と収穫量は、近年、減っています。

  • 都道府県別にみると、福島県、千葉県が大産地で、「どじょういんげん」のタイプが多く栽培されています。次の大産地が鹿児島県ですが、ほとんどが関西に出荷されています。いんげん豆は、暑いのが苦手なので、夏場は北海道や東北で作られています。

  • 大阪市場における月別の入荷量と単価をみると、6月に平均単価が大きく下がり、入荷量は増えます。いんげん豆の旬は5〜6月で、気温的にも一番作りやすい時期ですから、この頃に出荷量も多くなります。7〜8月、暑くなってくるとやや減少し、また秋頃になると作る人が増えてきます。15℃以下では作れず、暖房が必要になってくるので、冬場は減少します。そこにオマーンなどからの輸入が入ってくる、というわけです。ただ、さやいんげんは、1年中、いつでもどこかの産地から出荷されています。

  • 北海道のハウス栽培は「雨よけハウス」と呼ばれ、暖めるのではなく、湿害に弱いので雨をよけるためのものです。

  • 北海道の露地栽培は、東京ドームぐらいの面積がある広大な畑で行われています。機械でタネを蒔き、刈りとります。支柱はしません。冷凍加工向けとして出荷されています。

  • 大産地の福島県では、関西向けに矮性の「キセラ」も作っていますが、7〜8割は東京向けの「どじょういんげん」のタイプです。

  • 鹿児島県では、秋には露地栽培もされています。雨の影響は受けやすくなります。

  • 沖縄県は、豆類が豊富な地域です。沖縄県だけは、冬場でも暖房を使用せずに豆が作れます。
◇雪印種苗の枝豆について
  • 枝豆「味風香(あじふうか)」は、今年から販売を開始した味にこだわった品種です。最初に交配したのが2004年で、販売まで11年間かかりました。今年は関東周辺でも作られています。いろいろな地域で作れるように、「豊熟の味わいシリーズ」として、今後、第二弾、第三弾を出す予定です。6月くらいから出てくる早生の品種ですので、どこかで見かけたら、よろしくお願いいたします。

  • 枝豆「サッポロミドリ」は、見た目がよくて大きく、画期的な品種といわれています。「サヤムスメ」は約20年前に品種にしたもので、当時の品種と比べると、明らかにさやが大きく、色が濃くて見栄えがいい枝豆です。枝振りがいいので、バランスがよくきれいな束にもできます。熟期は、「サッポロミドリ」が早生、「サヤムスメ」は中早生で、わりと早くから採れるタイプです。現在も日本中で作られています。
◇質疑応答より

    Q:モロッコいんげんの色の白さは何とかならないのでしょうか?
    A:モロッコはこれまで色を濃くする品種改良がされていません。需要があれば、会社として取り組むことも可能だと思います。

    Q:スレやサビが出るのはなぜですか?
    A:虫害、風など、いくつか原因があります。さやが小さくてやわらかいときに、風によって組織が傷つけられると、育つにつれて目立ってきてしまうことがあります。

    Q:北海道のいんげんは、生産のうちの何%ぐらいが加工用なのでしょうか?
    A:8割以上が冷凍加工用です。生鮮いんげんの産地も多いのですが、東京であまり見かけないのは、ほとんどが「キセラ」なので関西に行っているためだと思います。

    Q:今回の八百屋塾のために輸入のいんげんを探したのですが、ありませんでした。この時期は国産品が多いからなのでしょうか?
    A:生鮮のいんげんに関しては、国産だけで足りているとは思えません。冷凍でまかなっているのではないでしょうか。

 

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