■2010年12月19日 第9回 〜 商品情報 「山東菜の漬物」

 今日は、1年にわずか10日〜半月ぐらいしか出てこない「山東菜(さんとうさい)」を漬物にしてお持ちしました。現物は大きすぎてジャマだから持ってこなくていい、といわれてしまいましたので、漬物だけです(笑)。

 12月6日、初市の日に仕入れたものを漬けて、すぐに食べられる状態になっています。八百屋塾用に漬けたので、塩は本来より薄くし、正月用のものはこれより2〜3割塩を余計にふります。

杉本晃章氏

 山東菜は、白菜の一種で、不結球のもの。丸く結球したものが白菜と呼ばれています。

 明治時代初期、政府の勧業政策の一環として、中国からレンコンや山東菜が入ってきました。同時に、北海道では、クラーク博士を呼んで、北米からジャイアントかぼちゃや札幌大球を導入しました。これも、明治政府の勧業政策の一環でした。

 山東菜は、明治8年の東京博覧会に、当時の清国政府が出展したのが始まり。その後、なかなか広まらなかったのですが、日清戦争、日露戦争で、日本の兵隊さんが清国へ行ったときに持ち帰ったタネがきっかけで、栽培が始まりました。兵隊さんの多くは、農家の方々でしたから…。

山東菜の漬物

 現在、山東菜は、埼玉県の越谷、岩槻、吉川市、それから茨城県の南部で少々作られています。

 なぜ山東菜が廃れてしまったかというと、平成元年に今の大田市場に移る前、秋葉原に市場がありました。場所は非常によかったのですが、狭い市場でした。当時で年間1000億ぐらい売っていましたから、荷物を市場へ下ろしていたら間に合わない。だから、トラックからトラックへ積み替えて、全国へ転送していました。入荷量があまりにも多すぎて、近隣にすごい迷惑をかけたんですね。そういういきさつもあって、山東菜なんか置き場がないからいらないよ、と全部断ってしまったんです。また、当時はバブルの頃でしたから、金額が高くて、売れるものがいくらでもありました。山東菜のような1束2000〜3000円のものなんて、目じゃなかった。そういうことがあって、だんだん市場から閉め出されてしまった、という経過があります。でも、北足立の市場だけは、産地に近いので、まだなんとか残っています。

 山東菜は非常に重いんです。白菜4本で10〜12キロぐらいですよね。山東菜は、大きいもので1束38キロもある。小さいものでも18キロ。それを10把ずつ並べて、セリをします。私もそろそろ年なので、山東菜を1週間も10日も漬けていると、あちこち痛くなってくる。大きいものは1株が10キロ近いので、半分に切った株でも4キロ以上あるんです。非常に重くて、作業が大変です。山東菜は、1週間〜10日漬けると、35〜38キロのものが、10キロぐらいになります。

 うちの店の倉庫は、今、山東菜を漬けた樽でいっぱいです。今までで140束漬けたのですが、そのほとんどがインターネットの通販で売れています。送料込みで6000円、120ケース売り抜きました。これから1週間かけて、南は沖縄、北は札幌まで、発泡スチロールの箱に詰めて送ります。お客さんは、去年のリピートの方がほとんどです。店では、漬ける前の山東菜も売っていますが、ほとんど売れません。なぜかというと、山東菜の大ファンの人たちがみんな高齢になって、自分では漬けなくなってしまったから。20束店におろしても、売れるのは1束か2束。あとのほとんどは、どんどん割って、毎日毎日樽に押し込んでいます。

 山東菜はもうお終いですが、葛西の市場にはいくらかあるかもしれません。今年は間に合いませんが、来年、もしお客さんから山東菜の注文があったら、店にお電話ください。足立まで取りに来てくれるのであれば、買っておきます。みなさんも一度は挑戦してみてください。

 
■2010年12月19日 第9回 〜 商品情報 山形産「赤根ほうれん草」

 本日は、根っこの元の部分に赤みがある「山形赤根ほうれん草」をご紹介します。

 山形赤根ほうれん草は、昔ながらの東洋種の系統で、葉っぱが薄く、切れ込みが深いのが特徴です。非常においしいほうれん草です。

 東洋種は病気に弱かったり、作りにくかったりするため、今、ほうれん草は、ほとんど東洋系と西洋系の雑種になっていますが、山形赤根ほうれん草は、本来の東洋種の品種です。

山形県東京事務所 流通対策課 佐藤隆士氏

 昭和2〜3年頃、山形市の風間という地区の柴田さんという方が、根っこの部分の赤みが濃い株を見つけ、その中から、寒さに強いものを選抜して、現在に至っている、ということです。

 10月中旬から翌年の2月頃まで収穫できます。年内は露地、年明け1〜2月はハウス物が出荷されます。

 糖度が12〜14度もあり、非常に甘くておいしい。特に、雪の中に埋まったほうれん草は糖度が17度ぐらいあったそうです。また、1株が200〜300グラムと大株なのも特徴です。

 銀座一丁目にある山形のアンテナショップの2階に、「ヤマガタ サンダンデロ」というイタリア料理のレストランがあります。そこでも、去年から、赤根ほうれん草のパスタを定番メニューとして出しています。

 生でも非常に甘みがあって、シャキシャキした歯ごたえが楽しめます。フライパンでさっと加熱すると香ばしく、ちょっと柔らかい食感になります。ゆでたものはさらに甘みが増します。赤根ほうれん草と東根の麩を使ったグラタンといった調理例もあります。みなさんも、ぜひ、赤根ほうれん草をご賞味ください。

 それから、10月の八百屋塾で、山形のお米「つや姫」をご紹介しましたが、おかげさまで好評をいただいています。インターネットで、「おいしい山形 東京通信」(http://oyt.nmai.org/)と検索していただくと、都内でつや姫が食べられるお店が見られます。われわれ職員が足で稼いだ情報を載せていますので、ぜひご覧ください。

 

■2010年12月19日 第9回 〜 商品情報 群馬産「下仁田ネギ」「上州ネギ」「大和イモ」「花豆」「キウイフルーツ」

 今回は、群馬県から、下仁田ネギと上州ネギ、大和イモ、花豆の缶詰、キウイフルーツをお持ちしました。

 まず、鍋の季節に最適な下仁田ネギ。加賀太群の一本ネギです。根が短くて、生ではとても辛くて食べられないと思いますが、火を通すと大変甘くなります。

 同じ下仁田ネギでも、太さが違うものがあります。太い下仁田ネギは、15ヶ月かけて作っている、とのことです。秋にタネをまいて、一回定植します。それを夏に植え替えることにより、地上部よりも根っこの生育のほうに栄養がまわり、根をしっかり張るので、太いものができます。

群馬県東京園芸情報センター 主幹 川島正俊氏
 下仁田ネギにはいろいろな歴史があります。江戸時代に、江戸の旗本が、「郵送代がいくらかかってもいいからネギを200本送れ」と書いた文書が下仁田の古民家に残っています。このことからも、下仁田ネギが、江戸時代から作られていたのが分かります。ただ、あまり外には出ていませんでした。広い地域で作り始めたのは、明治・大正以降、とのことです。戦後、食糧増産の時代があり、そのとき、下仁田ネギも系統がバラバラになってしまいました。太いものと細いものが混在している産地になってしまったんです。それを、昭和27年に、馬山(まやま)地区の農家の方が、太いものの選抜に取り組み、今の状況になった、ということです。

 今日お持ちした太い下仁田ネギは、「下仁田葱の会」から出荷されています。タネも自家採種で、伝統を守って作っているそうです。年に2回植え替え、選果・選別も、厳しい基準を設けています。青箱で、主に贈答用に流通しており、大変人気があります。下仁田葱の会については、下仁田町役場のホームページ(http://www.town.shimonita.gunma.jp/)にも情報が載っていますので、ぜひ、詳細をご覧ください。

 袋入りの下仁田ネギは、甘楽冨岡のものです。この地区でも、タネ取りをして、生産している人がいます。また、群馬では、それ以外の地区でも下仁田ネギを作っています。自家採種をしている方もいれば、タネ屋さんから出ているものを使って生産している人もいます。

 上州ネギは千住群のネギです。下仁田ネギと一本ネギのいいところを掛け合わせたもの。以前は、上州鍋ネギという名前だったのですが、鍋ネギというと用途が鍋だけになってしまうので、上州ネギという名前に変更されました。お客さまに応じて、下仁田ネギがいいか上州ネギがいいか、どちらか選んでいただくことができます。群馬には、ネギのバラエティがある、ということです。

 ちなみに、下仁田ネギは、霜に当たって葉っぱが黄色くなったほうが味がのる、とご理解ください。量販店では、葉っぱが黄色いと、お客さんが買っていってくれないのですが、八百屋さんには、そのあたりを説明して売っていただければ、と思っています。

 次に、大和イモ。昭和30年頃から、群馬県では、生産性の高いものを作ろうということで、同じイチョウイモの中でも、形状のきれいなもの、スラッとしているものを選抜し、商品性の高いものを作っています。11月頃から新イモが出始めました。今、出ているものが新イモですので、ぜひ、早いうちにご賞味ください。今日はせん切りで食べていただきますが、ほかにもさまざまな食べ方ができると思います。

 べにばないんげん、通称、花豆は、標高が高いところでないと実をつけないため、嬬恋、北軽井沢、六合(くに)村といった地区でしかとれません。今日は花豆の缶詰をお持ちしました。とても甘くておいしいので、私も大ファンのひとりです。価格は195グラム入り、420円です。ご注文はJAあがつまの西部営農経済センターまで、直接ご連絡お願いします。

 最後に、キウイフルーツ。先般、「群馬にもキウイフルーツはあるの?」と、市場関係者から聞かれました。甘楽冨岡地区のキウイはものがよく、選果・選別もいいので、とても評判がいい。群馬県では果実もがんばっていますので、ぜひ、覚えておいてください。群馬では、緑のヘイワードと、黄色いかいみつを作っています。

 今回ご紹介したもののうち、花豆の缶詰以外は大田、築地市場にありますので、ぜひ、よろしくお願いします。

 
■2010年12月19日 第9回 〜 商品情報 茨城産「紅レンコン」「レンコン三兄弟」「トマピー&ヌーベル」
【塩田氏より、紅レンコンについて】

 紅レンコンは、中国種とは違い、明治以前に入ってきた在来種で、徳島県の備中種の突然変異からできたレンコンです。

 収穫は、表面30センチぐらいをユンボで掘って、その後、手堀りしています。

 若柳友弘さんという方が品種登録されているので、品種上は「友弘(ともひろ)レンコン」という名前で登録されています。金澄と同様に、人の名前です。

 レンコンは先が見通せて、縁起がいいといわれる商材ですが、紅色なので、白と合わせると紅白になり、さらに縁起がいい。また、備中種なので、もっちりとしていて非常においしいレンコンです。

紅レンコンの説明をする塩田氏(写真左)と
ハナワ種苗 来栖氏(写真右)
 おすすめの商材なのですが、生産者が1人しかいないので、ほとんど出回っていないと思います。初めて見る方も多いのではないでしょうか? 品種登録をしている若柳友弘さん1人しか作っていません。出荷量が少ないので、市場価格末端ですと、キロ単価3000円を超える高級食材です。現状、やや小さめのMサイズは予約でほぼいっぱいです。Lサイズも、10キロ箱で、残り20ケースぐらいしかありません。都内の高級料亭やホテル、鉄板焼き店などで使われています。

 酢水に一回つけると、色がピンクのまま残ります。ピンク色を生かして、前菜などにお使いいただいてもいいですし、また、酢水につけずに加熱すると、紫色になります。白と合わせると3色でお使いいただけます。

 残りわずかですが、ご希望の方がいらっしゃいましたら、お配りしたパンフレットの連絡先にお問い合わせください。よろしくお願いします。

【来栖氏より、レンコン三兄弟について】
 茨城県稲敷市でレンコンを作っている、宮本さんのレンコンを紹介します。レンコン王国茨城を背負って立つ生産者の方です。まだ若い三兄弟で栽培されているので、「レンコン三兄弟」という名前がついています。

 市場流通のものと比べると、すごく色がきれい。茨城のような大産地では、通常は機械を使って水堀りをしますが、宮本さんのところでは、いいものを出したいということで、手で水堀りをするという方法をとっています。これにより、表面に傷がつきにくくなり、傷みにくく、きれいな色のレンコンができる、ということです。

 変色が少ないので、店持ちも非常にいい。私もよく購入して家で食べているのですが、冷蔵庫に入れなくても、玄関などの涼しい場所においておけば、1ヶ月は持ちます。店持ちのよさにも、ぜひ、ご注目いただきたいと思います。

 肥料には酒粕やカルシウム類を入れ、歯ざわりや味の部分にもこだわって作られています。

 ハウス栽培もしており、7〜8月の夏用には早生品種を使い、9〜10月からは金澄系の別の品種を使って、時期にあったものを栽培されています。

 新レンコンは非常にみずみずしくて甘みがあり、柔らかくて食べやすいものです。これからの時期のレンコンとはまた違うものがあるので、来年、新レンコンもぜひ味わってみてください。宮本さんのレンコンは4キロ箱で3020円、送料込み。ハイランドキャピタルで取り扱っています。

【来栖氏より、トマピーとヌーベルについて】
 以前、八百屋塾でトマピーとヌーベルをご紹介しました。今、その頃より、だいぶ立派なものがとれています。茨城で、新規で農業を始められた方が作っています。赤と緑で、クリスマスにぴったりの商材なので、ぜひ、八百屋さんにお試しいただきたいと思っています。

 送料だけご負担いただければ、商品プレゼント、というキャンペーンも行っています。トマピーもヌーベルも、まだあまり知られていない商材だと思うので、ご興味があれば、お問い合わせください。

 
■2010年12月19日 第9回 〜 商品情報 長野産りんご「サンふじ」
【鈴木氏より、長野産サンふじについて】

 今日は、長野県山ノ内町から、生産者5名で八百屋塾に来ました。

 お持ちしたりんごは、「サンふじ」です。日本の約半分はこのりんごなのですが、今の東京の市場を見ていると、長野県産は安曇野が主流です。私どもの産地は、大阪、名古屋をメインにしています。

 りんごのタイプとして、安曇野は着色系のべたの品種で、私どもは本来のふじの味であるしま系の品種にこだわって作っています。今日は、本来のふじの味をしっかり覚えていただきたい、と思っています。

鈴木武洋氏
 年によっては、形の悪いものや、サビが出るものが、生産量の半分ぐらい出ることがあります。ロスが非常に多い。そうしたものをどう売っていくか…。今後生き残っていくために、私どもの経営手腕が問われるところだと思っています。

 同じ山ノ内産のりんごでも、それぞれ生産者5人、持っている畑が違うので、後ほど試食して、ご感想をいただければ幸いです。

 私どもの産地は味にこだわっていますので、11月に入って、葉っぱが紅葉し、落葉している最中に収穫しています。寒空の中、一生懸命味をのせたりんごをとっています。他の産地のりんごや、みなさんのお店で扱っているりんごと食べくらべていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

山ノ内町のりんご生産者のみなさん
鈴木武洋氏のサンふじ
山崎聡氏のサンふじ
瀧澤諒氏のサンふじ
小林和幸氏のサンふじ
小坂博章氏のサンふじ
【小坂氏より、「まるまるかじり」について】
 20年ぐらい前から、20数名の仲間と試行錯誤しながら減農薬栽培という新しい栽培方法に取り組んでいます。ようやく軌道にのせることができ、「まるまるかじり」という名前で商標登録を取ることができました。

 栽培者が少ないので、現在、主に関西方面にギフトとして出しています。札幌の生協さんや東海コープさんにも一部出していますが、関東のほうまではなかなか回すことができませんでした。今年はもうあまりものがありませんが、ご興味があれば予約しておきますので、来年度からお使いいただければ、と思います。ギフトでなければ、3000円程度からご用意できます。

 収穫は11月10日過ぎくらいで、実際に品物が出回り始めるのは11月20日過ぎくらいになります。鈴木さんと同じように、味をのせて、しっかり完熟したものを出荷していますので、若干遅くなるとは思いますが、ぜひ、よろしくお願いします。

【小林氏より、「雪中りんご」について】
 山ノ内の標高の高いところで、キュッとしまったしっかりしたサンふじりんごを使って、「雪中りんご」という商品を作っています。文字通り、雪の中で保存して、ゴールデンウィーク前に掘り出して販売する、というもの。小ロットなので、いつも限定販売で売れてしまうのですが…。インターネットで、「ほなみ村 雪中りんご」と検索すればヒットします。雪中りんごが登録商標なので、それだけでもヒットすると思います。一度、ホームページでご覧ください。よろしくお願いします。
 

【八百屋塾2010 第9回】 実行委員長挨拶|講演「レンコン」|勉強品目「ネギ」「サトイモ」「レンコン」「みかん」|商品情報食べくらべ