■2010年4月18日 第1回 〜 講演「なぜ勉強するのか」 東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役 澤田勇治氏
◇八百屋塾の開講にあたって
  • 八百屋塾は、私どものOBである江澤正平が、「八百屋さんというのは、ただ“モノを売る”だけでいいのか?」と提起し、発足しました。

  • 八百屋塾に来て勉強する最大の目標は何か。最終的には、野菜・果物を買いに来てくれる一般の消費者の方に、商品説明も含め、どう食べたらいいのか、旬はいつ頃か…等を伝え、コミュニケーションを図ることのできる「食の伝道師」になることではないかと考えています。
東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役
澤田勇治氏
◇「食の伝道師」の6原則
  • 「食の伝道師」になるためには、6つのポイントがあります。まず1つ目は、「野菜・果物のおいしさ、食感を知ること」。特に、味覚が大事。甘いのか塩辛いのか苦いのかすっぱいのか辛いのか…。人間の味覚の中にある要素を、自分の尺度で認識する。これには、自分の感性をどう磨いていくか、ということも大切。かたいかやわらかいか…という食感も、自分の口に入れてみて実際に感じないと、分からない。そして、味覚や食感の相違はどうしてなのか、常に疑問を持ちながらやることも必要。

  • 2番目は、特に一般の消費者が関心を持っている、「個々の機能性を学ぶこと」。この野菜を食べるとどういう作用・効果があるのか。今はインターネットで調べると何かしら出てきますが、だいたいのことは自分の知識として持っておいてほしい。小売り屋さんも同じですが、「おじさん、これ食べたらどうなるの?」と聞かれたときに、スラスラと答えられる方と、そうでない方とでは、消費者のお店に対する認識度が大きく変わってきます。ですから、商売の手段として、大いに学んでいただきたいと思います。

  • 3番目は、「旬」。日本列島は南北に長い。北は北海道、南は沖縄まで、各種産地があり、いろんな地域から野菜・果物が出てきます。いつどこで、どの地域から、どのようにして来るのか…。それも商品知識を知る上で、大事なこと。

  • 4番目は、「栽培方法」。日本の野菜・果物類は、栽培の仕方が多種多様です。大まかにいえば、露地で自然に作っている産地、それを早めて作ろうという地域(促成産地)、それを遅らせて作ろうという地域(抑制産地)があります。基本的には、この3つのバリエーションの中で品目が出てくるわけですが、 そのほかにも、気候条件等によって、多種多様な栽培形態があります。

  • 5番目は、「食べ方」。調理方法によって、味覚に相当差が出てきます。生で、サラダで食べたらおいしいな、というものもあれば、加熱することによって、味がよくなる野菜もある。 加熱の仕方にしても、蒸したり茹でたり…。冷たくして食べるとおいしい、というのもある。調理方法によって味は変化する、ということも学んでいただきたい。

  • 6番目は、「文化」。野菜・果物は、どういう過程で日本に渡来したのか、どういう条件のもとで作られてきたのか…、という歴史的な流れです。今ある野菜や果物は、個々の生産農家の努力と研究があって、時間をかけてできたもの。種苗メーカーの研究者も、勉強しながらやっています。そうした歴史的な流れを、みなさんは、1年間の中で、個々の先生方のお話を聞いて、学んでください。
◇基本的な心構え
  • みなさんにぜひお願いしたいのは、「情報は正確に知らしめていただきたい」、ということ。生半可な情報は流さないほうがいい。人に話すときは必ず確認をする、というのを肝に銘じておくこと。

  • 勉強は継続すること。八百屋塾は1年間で10回開催されるわけですが、所用で休むことがあれば、事務局にいって資料だけでも確保しておく。知識の欠落がないようにしていただきたいと思います。

  • 分からないことは、そのままにしない。「こんなことを聞いたら恥ずかしいかな」とは一切思わないでください。聞くことより知らないことのほうが恥ずかしい、と常にアタマに入れておいてください。

  • みなさんが一緒に勉強する機会を生かして、仲間作りをしてください。今後、知らない方と同席することもあるでしょうが、そのときこそチャンスです。隣の人は何をしている人なのか、八百屋さんなのか、違う分野の人なのか…。1年間ありますから、個人的なつながりをぜひ作っていただきたい。仲間を作る、というのは大事なこと。

  • 八百屋塾では、めずらしい野菜、さまざまな野菜が出ますので、カメラは必ず持ってきてください。人間の記憶は定かでない部分がありますので、これはと思った野菜は写真に撮っておくこと。講義の始まる10分前には、商品サンプルが並ぶと思うので、早めに来て早めに撮るとよいのでは…。
◇野菜と果物を楽しもう
  • 野菜と果物を楽しむには、どうしたらいいのか。まず最初に認識していただきたいのは、「旬とは何か?」、ということ。 それぞれ固有の青果物で、最もおいしくて、栄養価が高くて、量が多く出回っていて、価格がいちばん安い。それが「旬」の定義です。

  • 現在は、栽培の仕方や生産者の思惑等により、旬の概念が薄れてはいますが…。八百屋塾は、「旬」というものを大事に、テーマをかかげて勉強していく、という場なので、それも覚えておいてください。

  • 食べることと寝ることは、人間の大事な要素です。でも、この場にいらっしゃるみなさんの半分近くは朝ごはんを食べていないようです。今、国を挙げて、日本人の食生活を改善するために、「5 A DAY」などの取り組みをしています。1日野菜350グラム・果物200グラムを食べましょう、という運動をしていますが、八百屋塾の生徒さんでも、まだそこまで食べていない方がいる。1日野菜350グラム・果物200グラムを食べるにはどうしたらいいか、日々考えていただきたい。生では量が食べられませんが、加熱することによって、相当ボリュームが減ります。生で食べることの多いレタスを例に挙げると、炒めたり、汁気のものに入れたりすると、相当量が減って、1個分ぐらいペロリと食べられるようになります。常にそうして、おいしく食べること、量を食べることを考えていただきたい。
◇指定野菜と特定野菜
  • 国が挙げている、「基本の野菜14品目」というものがあります。いわゆる「指定野菜」。日本国民の消費が多く、生活にとって重要な野菜です。野菜生産安定基金、安定法で、この野菜については、どんなことがあっても必ず生産量を確保する、ということになっています。

  • 「特定野菜」は、指定野菜に準じるもの。重要性等については、指定野菜と同じような位置づけですが、新しく出てきた野菜類等が入っています。

  • 「特定野菜」で大事なのは、「つけ菜」です。俗に言う「葉物類」、小松菜、水菜、タアサイ、チンゲン、からし菜、野沢菜等を総称して、「つけ菜類」といいます。これらも、非常に大事な野菜のひとつです。

  • やや聞き慣れないかもしれませんが、「特認野菜」というものもある。近年、消費が拡大し始めているもの、一般に浸透し始めているもので、代表的なものとしては、らっきょう、オクラ、ゴーヤーがあります。
◇春野菜とは何か
  • 日本は東西に細長く、四季がある。春夏秋冬と、明確に天候が変化する国です。4シーズン、それぞれの野菜が出回ります。「春野菜」には、鮮やかな緑色をしていて、春の訪れを感じさせてくれる「香り」が非常に豊かな野菜が多い。市場で野菜を取り扱っていると、今の日本人は香りや匂いをやや忘れかけているのでは…、という感じがします。以下、代表的な春野菜について説明します。

  • 本来、露地の山菜は、これから出てくるもの。ただ、業務関係では、年内からハウス物の山菜が出てきて、これから春、野山に出たときに収穫して食べる本当の山菜類の時期になると、一般消費がガタッと落ちてしまう、という悲しい現象がある。

  • 山菜は、お客さんに食べ方を聞かれることがあると思います。もし、そのときに、分からなければ、「分からない」とはっきり伝えてください。で、「今度来るときまでに、必ず、聞いておきますから」、と。これが、お客さんとの信頼関係を繋ぐ大事な要素です。

  • キャベツは、冬の寒玉系のものから、春のやわらかいキャベツに変わる。これもひとつ、季節を示すもの。

  • 菜の花は、アブラナ科の野菜のひとつ。花を食べる菜の花、茎を食べる菜の花、両方食べるもの。菜の花だけでも3種類ある、ということを認識してほしい。

  • セリは、鍋に入れるものというイメージがあるかもしれませんが、基本的には、春に出てくる野菜。ですから、香りが非常に強い。逆にいえば、アクも強いということ。ぜひ、春のセリの香りを、みなさんにも実感していただきたいと思います。

  • フキは愛知県を中心に約半年間出てきますが…。最初に出てくるフキは、抑制です。前年に、根っこを冷蔵庫で寝かせておいて、秋口にもどす。それを栽培して出てくるのが、正月前後に出てくるフキです。今、出てくるのは促成。ちょうど、タケノコとの炊き合わせ等に使われると思いますが、そのフキは、非常にみずみずしくてやわらかく、香りもある。フキの葉っぱは捨ててしまう方が多いのですが、春のフキはやわらかいので、葉っぱも炒めてしょうゆと砂糖を入れ、佃煮にして食べていただきたい。

  • セロリは夏場の産地と冬場の産地がありますが、この時期になると、東京・江戸川の篤農家が作るセロリが出てきます。非常にやわらかい。葉も食べられるし、芯もいける。生でよし、炒めてもよし、煮てよし。セロリは捨てるところがありません。葉っぱがしおれてしまったら、水につけるとピンッとします。それを刻んでシーチキンと合わせて、好きな方はマヨネーズを加えて、パンにはさんでいただくと、非常に香りのいいサンドイッチの具にもなります。野菜というのは、使い方によっては、捨てるところがない。調理の先生方もいらっしゃいますので、そのあたりも勉強してください。

  • アスパラは、今まではハウス物でしたが、これから、露地物が出てきます。価格的な問題もありますが、なるべく太いものを選ぶと、非常に甘みが強い。アルギン酸も多く、栄養価が高い商品。そのあとになると、抑制という、ちょっと白っぽいアスパラが出てきます。夏場で枝が繁茂し、光が差さないので白っぽくなりますが、栄養価等は同じ。このごろは、パープルという、紫のアスパラも出てきています。

  • 今、みなさんにいちばん食べていただきたいのは、新タマネギです。いろんな産地のものが出てきていますが、今は、愛知、佐賀。一部、熊本からも出てきています(商品名「サラたま」)。水にさらさず、すぐに食べても辛みが薄い。辛みがない、とはいいませんが、食べやすい。

  • 今が旬のタケノコ。 今年は天候不順で遅れ気味ですが、タケノコは、ぜひ、年に1回、食べていただきたい。基本的に、水煮が一般的ですが、皮がついたままのタケノコも、筋目を入れれば簡単に茹でられます。非常に香りのいいタケノコ料理ができますので、ぜひお試しください。

  • ほかに、 伊豆七島で作っている都下産の野菜、明日葉。 香りを楽しむ野菜、うど。 時期的にはややずれてきていますが、ふきのとうも春の野菜です。
◇土物野菜
  • よく家庭で使われるジャガイモ、タマネギ、カボチャ、長芋等を、土の野菜ということで、「土物」と呼びます。

  • 土物類の保存の仕方について、常識かもしれませんが、「何でもかんでも冷蔵庫」というのは違う。
    高温期には、商品を傷めないために、冷蔵庫を大いに活用していただきたいのですが、土物類で最も怖いのは、蒸れてしまう、ということ。風通しがよく、涼しいところ。台所の中でも、日が当たらないようなところに保管しておけば、ほぼ1ヶ月は、間違いなく利用できます。1ヶ月以上になると、芽が出たり、腐ったりすることがある。

  • ジャガイモは、エチレンガスに反応します。リンゴと一緒においておくと、発芽しません。ジャガイモ1〜2キロに、小さいリンゴ1個ぐらいでいい。ただ、このエチレンガスに、逆に反応するものもある。スイカやメロンは軟化するので、リンゴと同じ袋に入れて冷蔵庫に保管することのないようにしてください。

  • 新ジャガは、まだ未熟な状態で、でんぷん糖度が低い。通常のジャガイモよりも1週間くらい長くもつかもしれません。ただし、皮が薄いので、しなびる率が高い。また、光に当てると、緑化します。青くなった部分は、からだによくありません。ジャガイモを店頭におくときは、よく見て、日が当たらない場所におくとよいでしょう。緑化してしまったものも、あとで、皮を厚めにむいて食べれば問題ありません。そういうことをお客さんに教えてあげると、「あ、この八百屋さん勉強しているんだな」、と思ってもらえる。

  • 新ジャガは、今、「にしゆたか」という品種が出ているかと思いますが、これは、早めに成熟する品種です。そうでないものが新ジャガとして出てきたときには、担当者に品種まで確認すべき。

  • 市場用語で、「二化性(にかせい)」という言葉を聞いたことがあると思います。新ジャガでも2つあるよ、ということ。二化性とは、秋口に収穫したものをそのまま冷蔵庫において、出荷する。春に掘ったものではありません。新ジャガは新ジャガなのですが、出荷体系が違う。二化性の場合は、保管している間にも成熟しますから、皮がむきにくくなる。見た目はきれいでいいのですが、そのあたりをどう使い分けるか。「新ジャガでも、あまり水っぽくないのがほしい」というお客さんには、二化性を使っていただくといいでしょう。料理の仕方としては、ふかしてもいいのですが、素揚げしていただくと、結構おいしく食べられます。
◇新野菜
  • 最近、みなさんが特に関心を持っているのが、「新野菜」ではないでしょうか。今、いろんな新野菜が出回ってきています。私は市場に入って30年を超えるのですが、昔は知らなかった野菜が多数出てきています。

  • 「新野菜」のひとつの定義は、同一品種、たとえば、アブラナ科とアブラナ科の野菜を掛け合わせる、ということ。それで、新しい機能を持った野菜が出回ってくる。

  • 「新野菜」には、栄養価の高いもの、健康志向的なもの、特性の強いものが多い。科学や文明が発達し、バイオ技術の進歩で、試行錯誤しながら栽培している。今、みなさんが目にしている新野菜は、最低でも10年以上、中には30年前から研究しているものもあります。
 
■2010年4月18日 第1回 〜 講演「バナナ」について 松孝 代表取締役社長 吉村誠晃氏
◇おいしさにこだわる
  • 大田市場で輸入フルーツの仲卸をしています。問屋稼業は、業績は落ち込んでいるし、お客さんである八百屋さんも減っているので、大変。ただ、当社は、バナナを追熟させる「むろ」を自社で構えています。ご存じだと思いますが、バナナは青い状態で輸入されてきたものを、「むろ」で追熟させます。おいしく仕上げることができるハードを持っていた。野菜もそうだと思うのですが、フルーツは「おいしさにこだわる」ということが、自分たちが生き残っていくヒントというか、唯一の方策だと思っています。
松孝 代表取締役社長 吉村誠晃氏
  • 「むろ」を活かして、バナナのほかにも、アボカドやキウイフルーツのような追熟性のフルーツを食べ頃に仕上げて、おいしい状態で届ける。今は、それを分かってくれるお客さま(八百屋やスーパーのバイヤー等)や消費者の方々の反応が、少しずつ感じられるようになっています。

  • 最近は、どうしても、価格競争に陥りがち。そうした中で、バナナは、お店のいちばんいい場所におかれて、隣のスーパーがいくらだから、じゃあいくらで…、という形で販売されていると思います。しかし、バナナにはいろいろな種類があり、値段だけではありません。差別化は図れる。

  • 野菜・果物の専門店である八百屋さん、果物屋さんには、「フルーツの魅力」というものを、もっとお伝えいただいて、買い物が主婦の義務に終わるのではなく、「楽しい買い物」になるような雰囲気作り、環境作りをしてもらいたいな、と切に願っています。

  • 東一の澤田さんから、「食の伝道者になることが求められている」とのお話がありましたが…。主に輸入フルーツを扱って、バナナなどを生業にしている私たちは、八百屋さんや果物屋さんと、プロのコミュニケーションを取っていきたいと思っています。

  • 問屋稼業に入る前は、新聞記者をやっていたので、翌週の商品情報を、メールやFAXで毎週お客さんに配信したり、大田市場の店舗にA4のチラシをおいたりして、情報発信しています。ただ、実際に来て、チラシを持っていかれる方というのは、本当に限られた方で…。みなさまのように、休みの日でも勉強会に足を運ばれている方は、情報に対しての感度が高いと思うので、そうしたニーズはあると思っている。今、ほかの業界の方や消費者のみなさんの目が農業に向いていたり、情報を欲したりしているということに対して、私どもも、もっとお互いに高め合うような関係作りをしていきたい、と考えています。

  • ある方の言葉ですが、「これからの仕事は、“かきくけこ”をやっていれば困らない」、と。「か」は「環境」、「き」は「教育」、「く」は「食い物」、「け」は「健康」、「こ」は「高齢化」。なるほどな、と感じませんか? 特に、われわれが携わっている農業というのは、このうちの大部分を占めると思いますし…。教育という部分では、お客さんへの啓蒙活動、旬の食べ物をおいしい状態で食べるということを、お客さんとともに勉強して伝えていく…。考えれば考えるほど、非常に有用な、いい仕事なのではないかと思います。

  • 私は、諦めずにバナナダイエットを続けています(笑)。1年半くらいかかっていますが、のんびりと5キロぐらいやせました。医者の不養生ではないですが、野菜・果物屋さんは健康であるべき、というのが私の信念です。ぜひ、みなさんも、野菜・果物を大いに召しあがって、健やかな、元気な八百屋さんでいていただきたいな、と思います。
◇バナナの加工方法について
  • バナナを黄色くする方法は、2つあります。最近は、商社が港で船積みされてきたバナナをパレットに積まれたままの状態でむろに入れ、急速に高温にして、急速に冷蔵するという方法が一般的に使われています。こうすると、効率的に短時間で加工できます。ただ、船積みのとき、温度を13度くらいに保ってあるのを、いきなり20度ぐらいまで上げて、外側から一気に色をつけるわけです。皮に色をつけるような感じです。そうすると、中のでんぷん質までは充分に糖化しません。断面図で書くと、外から圧がかかるような状態です。バナナは追熟が進むに従って熱を持ちますので、そのままにしておくと、どんどん色ばかりが進んでいく。そこで、今度は急冷蔵します。こうして、だいたい5日ぐらいの短時間で店頭に並べられるようにするわけです。

  • 当社の場合、昔ながらの加工方法を行っています。社員たちが、隙間ができるように、手積みで荷を積み替えて、エチレンを行き届かせ、低い温度からじっくりと上げて、また、じっくりと冷ましていく。だいたい7日間かけて加工します。そうすると、バナナのでんぷん質が充分に糖化していきます。こうすると、皮にちゃんとしまりがあって、しかも甘みはできあがっている、というバナナに仕上がります。

  • 自分たちの加工方法と、そうでない加工方法で追熟したバナナは、明らかに違いがある。実際、ギュッと握るような感じで、バナナにさわっていただくと、しまりの度合いが違うのがお分かりいただけると思います。

  • 色は黄色いのに食べるとガリッとするようなバナナ、われわれは、「ガチが残る」というのですが…。これは、おそらく、加工方法だと思います。無理なストレスがフルーツにかかった結果では。それは、そのままおいておいても、おいしくはなりません。当社のバナナであれば、そういうことはありません(笑)。

  • 最近、一般の消費者の方にも人気のアボカドについても、バナナと同じようなことがいえます。選ぶときの基準として、「皮が黒くて、やわらかければいいんじゃないの?」といわれますが、ただ温蔵庫で加温加工しているだけだと、バナナと同じ現象で、単に皮が黒くやわらかくなっただけ。アボカドも、エチレンをかけて、中から追熟させてあげることで、外側にはしまりがあるけれど、クリーミーなアボカドになる。「しまりがあって、店持ちするアボカド」というのができるのです。

  • バナナ、アボカド、キウイフルーツは、エチレンを使って食べ頃に仕上げてあげることで、おいしくて、店持ちがして、消費者の方が食べたいときに食べ頃で食べられる…、というものにできる。そういうものを売っていただくことで、お店の回転率が上げられるのでは…、と思っています。

◇農薬の問題について
  • その昔、バナナは先端のほうに農薬が残っている可能性があるから、大人はいいけれど、子どもに食べさせるときは気をつけたほうがいい、などという話がありましたが…。端のほうに農薬が残留するという科学的な根拠はありません。影響はない、とご説明いただいて結構です。

  • バナナと農薬の問題については、まず、輸入するにあたって、残留農薬基準があります。それに満たない数値で基準が定められており、バナナの場合、それを超えたことはない。ですから、まず安全です。

  • 残留農薬基準というのは、全果検査です。果物全部を検査ということですから、皮まで含めたものをミキサーにかけます。それを人間が何十年飲み続けたとしても、人体に影響がない、という基準になっています。普通、バナナを皮まで食べる人はいませんから、ご安心ください。
◇「バナナを洗って使う」のはナンセンス
  • 病院、福祉施設、学校給食などで、皮ごとのバナナを洗ってから使う、という話を聞きます。そんなことをすれば、あたって黒くなる。それがイヤだから、あまり熟していない薄めのバナナを納品するというケースもあるようです。患者さんや子どもさんが、本当においしいものを食べられなくなっている。それは不幸だと思います。普通の判断ではないし、ナンセンスだと思いますが、どうか、粘り強く訴えていただきたいと思います。
◇売り方の工夫
  • ひとり暮らしのご高齢の方に、「バナナを1パック買っても、数本はダメにしてしまう」、といわれるとしたら、そこは、売り方の工夫が必要。

  • 昔は房で売ったりもできたが、今は、 自社でパッケージをしていても、どんどん量目が減っている。

  • まずひとつは、私どもの行っている加工方法だと、比較的、店持ちがいいというのがあります。

  • 当社では、リーズナブルでおいしいエクアドル産バナナをおすすめしていますが、難点は大きいこと。ご高齢の方や、小さなお子さんが1本食べきれるか?というと、そうではない。そこは、5本売りを3本売りにするとか…。みなさんのほうで手間をかけていただくなり、われわれのような業者をうまく使って、回転数を高めていただければ、と思います。

  • 解決方法としては、売るときに、1本1本はずして、新聞紙に包んであげる。保存は、春夏秋冬、冷蔵庫。こうすれば、適度に湿度もあるので、最後までおいしく食べられます。ホシが出るくらいまで色が回ったバナナは、皮をむいてラップに包み、冷凍庫に保管する。夏には、これをミルクシェーキなどにしてもおいしい。
◇昔と違う、台湾バナナ
  • 台湾バナナは、今、もう、日本にごくわずかしか入っていません。昔を知っている人に、台湾バナナをむいてみたら、部屋中にバナナの香りが漂って、噛んでみたら、断面がオレンジ色で美しくて…、という話を聞いたことがありますが、それは決して美化されているわけではないと思っています。

  • 台湾も、日本のように工業化が進み、農業に従事される方の高齢化が進んでいます。重労働なので、簡単に収量が上がるように…。また、台湾は台風の通り道ですから、背が低くて倒れにくいものに品種改良していったら、きれいではあるのですが、ずんぐりむっくりして、いわば、サイボーグみたいなバナナになってしまった。それに従って、味はおいしくなくなってしまった。

  • 昔の台湾バナナと、現在の台湾バナナは全く違います。昔は、北蕉(ほくしょう)種。それから、1回、新北蕉(ほくしょう)というものに変わっていきました。ネックの部分が太くて、われわれがパッケージしようと思っても、入らないくらいずんぐりむっくりしていた。ボディビルダーみたいなもので、強いだけで、全然味気なくて…。そこから、また、北蕉(ほくしょう)に戻しているとはいうのですが、おそらくあまり戻っていないのではないか、と…。

  • 日本でシェアが減っていったのは、昔の古き良き台湾バナナを食べたい、とお買い求めの方が、買ってはみたけれどおいしくなかったから、2度と買わない…というのが、おのずと現れたのだと思っています。
 
 

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