■2010年5月16日 第2回 〜 講演「トマト」等について 神奈川県農業技術センター 部長 北宜裕氏
◇トマトの来歴
  • トマトは、南米のペルーやチリあたり、アンデス高地で生まれ、メキシコで栽培化されました。

  • 野生のトマトというのは、最近よくみかける「マイクロトマト」ぐらいの小さなトマトで、食べにくかった。「栽培化」とは、それを食べやすいかたちにした、ということです。
神奈川県農業技術センター 部長 北宜裕氏
  • メキシコで栽培化されたトマトが、コロンブスと一緒にヨーロッパに伝わり、ヨーロッパからアメリカやアジアに伝わって、アジアから日本へ来ました。

  • 日本には江戸時代に渡来しましたが、観賞用で、栽培が本格的に始まったのは明治以降。一般に食べられるようになったのは戦後のことです。
◇トマトの品種分化
  • いわゆる普通の「大玉トマト」は、200gぐらいのもの。ほかに、「中玉トマト」、「ミニトマト」、「調理加工用トマト」といったバリエーションがあります。

  • 世の中には、赤くならないものとか、赤くなるけれども小さいものなど、さまざまな野生種のトマトがあります。メキシコ在来の野生種は、マイクロトマトと同じようなかたちをしています。

  • 「エアルームトマト」といって、その家その家に伝わるトマトもある。まだまだ、いろいろなかたちのトマトが出てくる可能性があります。

  • 病気の抵抗性をつけるために、野生種を交配して…。そうすると、たまに種ができるので、その中から、抵抗性品種を育成する、ということをしています。

  • 野生のトマトが大きなトマトになった過程は、だいたい想像がついています。普通のミニトマトや、野生のトマトは、部屋が2つです(「心室」といいます)。これが、ときどき、くっついて4つになり、6つになり、8つになり…。どんどん増えていって、トマトが大きくなってきたんだろう、と考えられています。
◇トマトの生産状況
  • 世界でいちばん多くトマトを食べているのは、中国。世界全体で、だいたい1億3千万tの生産量のうち、1/4が中国です。次いで、アメリカが10%を占め、あとは、トルコ、インド、エジプト、イタリア。ただし、1人当たりでいえば、アメリカがダントツでトップです。

  • 日本では、作付け面積は、13,700ha。生産量は75万tで、いちばん多いのは熊本。熊本は、促成から抑制まで作っています。夏秋(かしゅう)は、北海道、愛知、千葉、茨城。神奈川は、ベスト12ぐらいに入っています。
◇トマトの栽培
  • トマトの味や成分に最も影響が出るのは、栽培方法の中の「灌水量」。つまり、「水」です。

  • 水をやらなければ、トマトの糖度は上がる。さまざまな研究が行われました。例えば、水の量を少、中、多と分けて、これに、慣行栽培を加えました。慣行というのは、多+αで水がある、ということです。水の量をギリギリまでしぼれば、糖度は11まで上がります。中程度にしぼると、9〜10度。ちょっと多めにすると、7まで下がってしまいます。普通に作ると、5.7。これでも高いほうです。明らかに、水をしぼれば、糖度は上がる。もちろん、酸度も同じ。ただし、収量は激減します。普通に作れば、10アールあたり13tとれるのに、水をしぼると、3.5t。1/4しかとれない。生産農家にすれば、4倍の価格で売れないと、やっていけません。そのあたりが、高糖度トマトを作るジレンマです。

  • 高糖度トマトには、ある一定の市場のシェアがありますが、私は、もうこれが限界ではないかと思っています。高糖度トマトというのは、マグロでいうトロなんです。1切れ食べれば、充分。

  • 有機肥料で栽培すると、ビタミンCが増える。われわれが10年ぐらい前に、環境保全型栽培技術のプロジェクトを組み、トマトでさまざまな試験を行ったところ、品種や、自根(じこん)・接ぎ木にかかわらず、有機肥料で栽培した場合は、化学肥料と比べ、ビタミンCが多い、という結果が出ました。ほかの野菜ではどうなのか、それも調べてみたところ、ビタミンCについてだけは、野菜の種類、栽培方法にかかわらず、有機肥料で栽培すると、ビタミンCが増えることが分かりました。
◇トマトの旬
  • トマトの旬は、実は、今頃。理由は、光が強くて、温度が比較的涼しい。これが、トマトの旬なんです。

  • 8月頃、「太陽の光をいっぱい浴びて〜」などとよくいいますが…。6月23日が夏至で、いちばん太陽の光が強い。それから1ヶ月後は7月20日ごろ、45日過ぎるのが8月15〜16日ごろ。いちばん暑い時期です。その頃になると、トマトは、どちらかというと、消耗します。ですから、旬の時期をこえている、と考えたほうがいい。
◇トマトの品種特性と品質
  • トマトを大きく分類すると、180〜200gぐらいの「大玉トマト」があり、「中玉トマト」、「ミニトマト」と小さくなって、ほかに「調理加工用トマト」があります。

  • トマトの品質の中では、糖度、酸度、グルタミン酸、リコピン。この4つの項目が、重要な要素。糖度、酸度は、甘いかすっぱいか。グルタミン酸は、トマトのうまみ。リコピンは赤い色素で、抗酸化作用があることがよく知られており、いわゆる「機能性成分」です。

  • 糖度、酸度、グルタミン酸、リコピンの4項目について、大玉に比べ、中玉は、糖度と酸度がやや高い。グルタミン酸とリコピンは、あまり変わりません。ミニトマトは、感覚的に分かる通り、糖度と酸度は、大玉に比べて明らかに高い。同じ畑で普通に作って、明らかに差が出ます。調理加工用は、糖度と酸度は、大玉に比べて明らかに低いのですが、グルタミン酸とリコピン含量は非常に高い。

  • 私はトマトの品種育成をずっとやってきて、生だけでは限界があるので、調理加工用をやらなければ…、と考えました。調理加工用トマトを使うイタリア料理のシェフにお話をうかがいました。すると、「甘さとすっぱさは、料理人の腕次第。砂糖やビネガーで何とでもできるので、トマトにはないほうがいい。それよりも、うまみや赤さのほうが重要だ」、といわれました。

  • 日本では、調理加工用トマトを生で食べてしまうので、「味がない」とか、「酸味がない」とかいわれますが…。調理加工用トマトは、糖度と酸度が低いほうがいい。

  • 温室で作る促成栽培のトマトと、露地栽培のトマトの糖度と酸度を比べると、促成栽培は、普通に作って、糖度6%ぐらい。ただし、酸度はやや低めになります。7〜8月の露地栽培では、糖度は5%いけばいい。一方、酸度は高くなります。暑い夏には、甘いものよりも、すっぱいもののほうがいい。私は、これが自然の摂理だろう、と思います。
◇消費者の購買行動調査
  • 減農薬、減化学肥料など、有機栽培に近い、環境保全型栽培でトマトを作った場合、消費者は、どのような購買行動を取るのか、という実験をしたことがあります。直売のようなかたちで、500g入りの袋に、いろんな値段をつけて、どういう確率で買ってくれるのか…。値段に対しての購買確率を取りました。

  • 慣行栽培と、環境保全型の栽培では、明らかに、慣行よりも、環境保全型のほうに、消費者は高めの値段をつけてくれました。購買確率の最大値は、慣行で167円。環境保全型で186円。最も高いのは、環境保全型の245円という結果でした。

  • 消費者は、環境保全型のトマトを、10%ぐらい高く評価してくれた、ということが分かりました。10%高く買ってくれるわけですから、作る側の立場からすると、手間のかけ方も10%ぐらい増やせばいい、ということになります。それ以上増やしたら、足が出てしまいます。八百屋さんのように売る側の方にとっても、この結果から、「売れ筋」というものが分かると思います。
◇多様化するトマト
  • トマトは、非常に多様化しています。普通の大玉があり、ゴールドタイプといって、濃い黄色のものがあり、薄い黄色、色が白いものもあり…。また、ミニトマトがあったり、熟さないトマトがあったり、「ショコラ」のようにアントシアンが出るブラックトマトがあったり…。「トマトベリー」は、肉質が特徴的。イギリスではかなりブレイクしている、と聞いています。

  • プロのシェフは、赤くしたくないけれど、トマトの味を出したいときには、緑色のトマトを使う。緑のトマトというのは、自然突然変異で、赤くなる遺伝子がつぶれて動かなくなっているトマトです。種をとるのがなかなか難しい。

  • 多様化していても、オーソドックスな大玉トマトをきちんと作る、というのが基本。
◇増える加工業務用野菜〜キャベツについて
  • 加工業務用の野菜の割合は、現在、56%です。例えば、畑でキャベツを100個作ったら、56個は、カット屋さんやファミリーレストランなどにいく。主婦の方は、44人しか買って帰らない、ということ。ところが、作る側は、主婦が使いやすいような作り方、出荷形態で出している。今、われわれが作っているような野菜は、業務加工には向かない。

  • 野菜の自給率は、1965年100%だったのが、95年には88%になり、2005年は80%を割っています。20%も減っているのに、業務野菜は、年々増えています。つまり、業務加工用として使い勝手がいいものは、どんどん輸入される。生鮮野菜は自分の国で作るべきだ、と私は思いますので、なんとか、加工業務用の野菜を作ろう、ということで、今、仕事を全国ネットで進めています。

  • キャベツは、90年頃までは、春系志向でした。私は、就職してすぐの頃、三浦で、寒玉がどうしたら春系に変わるか、という仕事をしました。とにかく寒さに弱いので、大変でした。ようやく春系ができるようになったら、2000年頃になって、今度は「寒玉にもどれ」という。時代が変わったんだな、と思いました。

  • 寒玉は、大きく巻いてかたいので、せん切りにしたときに、ふわふわのせん切りキャベツができます。ところが、春系は、葉っぱが短く、やわらかいので、せん切りにするとボロボロになる。寒玉でないと、業務用には対応できません。それで、なんとしても、4〜5月に寒玉を作れ、ということになりました。

  • 「カット事業協議会」の方々に参加していただき、寒玉と春系キャベツの食味調査もしました。色、歩留まり、水っぽさ、もろさ、外観、風味、甘み、歯触りなど…。すると、明らかに、「寒玉がいい」、という評価が出た。

  • 植物としてのキャベツの目標は、春に花を咲かせて子孫を残すことです。冬を越して、抽苔(ちゅうたい)し、春に花を咲かせるのがキャベツの宿命です。それなのに、無理矢理巻かせるわけですから…。4〜5月に寒玉を作るのは、非常に難しい。

  • 4〜5月に寒玉を作るには、夏まきして冬にとるものを、春まで引っ張るという方法があります。これで、なんとかカバーできる。愛知はこの方法をとっています。今、三浦で作っているのは、10月にまき、11月に植えて、5月にとるという作型。温かいところなら、12月にまき、1月に植えて、トンネルをかけたりすると、5月にとれる。これは、時期をちょっと早くしたりすると、全部トウが立ってしまいます。また、適した品種はほとんどないのが現状です。

  • 去年、秋まきで5月にとれる作型の有望品種を検討しました。各種苗会社に声をかけて、出てきたのは12品種。その中で、1等賞になったのが、「さつき女王」というキャベツでした。今年、三浦の産地では、約10%が「さつき女王」で、将来的には、3〜4割ぐらいに増やしたい。ただし、出荷形態は市場ではなく、ほとんどの場合、契約栽培です。
◇ほうれん草について
  • ほうれん草は、中東が起源。大きく分けて2つあります。東へ向かった東洋系と、西へ向かって、長日(ちょうじつ)でもできるようにした西洋系。日本では、昭和40年代半ばまでは、東洋系が主流でした。今のほうれん草の品種は、ほとんどが西洋系のを掛け合わせてF1にしたものになっています。

  • 西洋系・東洋系という分け方は、日本だけ。世界標準では、ほうれん草を、「サボイ型」、「セミサボイ型」、「スムーズ型」に分類しています。葉っぱがチリチリになったものがサボイ。スムーズというのが、われわれにいちばんなじみのあるもの。サボイは、日本ではあまり流通していませんが、ヨーロッパやアメリカではかなり流通しています。

  • サボイ型のほうれん草を見て、「寒締めほうれん草」と思われた方もいるのでは? 寒くなって葉がチリチリになったのではなく、そもそもこういう葉っぱのかたちをしたものを、「寒締め」として作っているケースが多い。見かけが寒締めになるほうれん草の品種を使った「寒締め」です。本当の寒締めができるのは、東北ぐらい。関東近辺で作られているのは、「半締めほうれん草」(笑)。2月頃、いちばん寒い時期に収穫したほうれん草の糖度が12度以上あれば、寒締めされているのは間違いない。

  • ほうれん草が持つべき特性は、作る側からすると、たくさんとれること、抽苔しないこと、収穫作業がしやすいこと、葉っぱが緑で濃いこと、病気に強いこと。最後に、食味。

  • 何年か前、野菜の硝酸塩が問題になりましたが、そのときやり玉に挙がったのが、ほうれん草でした。そこで、われわれは、ほうれん草の硝酸と、えぐみの原因となるシュウ酸に着目し、硝酸とシュウ酸を両方とも低くするにはどうしたらいいかを調べた。ただし、硝酸もシュウ酸も、ゆでると全体の8割ぐらいは外に流れてしまいますので、ゆでて調理すれば、関係ないのですが…。

  • ほうれん草は、日長に影響を受けます。そこで、春分、夏至、秋分、冬至と、日長や温度の違うときに、冬作、春作、夏作、秋作…となるように作りました。春は、日長は秋作と同じだが、気温が低い。秋は、春作と日長は同じだが、気温が高い。そのズレをうまくカバーするように栽培して、3年間で200品種のほうれん草を作った。その結果、早生の品種はシュウ酸塩が低いが硝酸塩が高く、晩生になればなるほどシュウ酸の量が増えた。つまり、栽培条件よりも、品種特性が関係するのではないか、ということが分かりました。シュウ酸と硝酸はトレードオフの関係にあり、両方とも低くすることはできない、ということ。結果としては、両方とも低い品種を選ぶしかない。

  • 研究の過程でもうひとつ分かったのが、葉色(ようしょく)の濃いものは、シュウ酸濃度が高い。つまり、「えぐい」ということ。葉色の薄いものは、硝酸濃度が高い。濃くなるほど、硝酸濃度は低くなります。どういうことかというと、西洋系品種は、色が濃くて、シュウ酸が高く、あまりおいしくない。東洋系品種は、色は薄いが、シュウ酸塩が低いからおいしい。ただし、硝酸濃度が高い。

  • ほうれん草も業務需要が増えている野菜。青果用は、25cmぐらいの大きさで収穫する。25cmというのは、家庭で鍋に入れてゆでられる大きさ。ほうれん草は、基本的に、大きくしてもほとんど食味は変わらないので、業務用には大きく育てて収穫し、冷凍します。ファミリーレストランで出てきたほうれん草のソテーを広げてみると、大きな葉っぱなのが分かると思います。

  • ほうれん草の大きさとえぐみの関係を調べたことがあります。小さいほうれん草から、大きくなったものを、その都度とってきて、硝酸、シュウ酸濃度を調べました。結果、東洋系の早生品種と、西洋系の晩生品種を比べると、小さくても、大きくても、西洋系はシュウ酸が高くて、東洋系は低い。硝酸塩濃度は、その逆になる。生育の大きさには関係ない。「ほうれん草は大きくしても食味が変わらない」ということが証明されたわけです。

  • 現状、生産者は、業務加工用にほうれん草を作っているのではなく、普通に作って、大きくなったものを業務加工用に回しています。

  • 昨年秋に開催されたわれわれの研究所の「全国日本品種審査会」では、28品種のほうれん草が出てきて、サカタの「ミラージュ」という品種がいちばんになりました。揃いがよくて、病気に強く、硝酸もシュウ酸も比較的低く、収量が多くて、おいしい品種です。

◇神奈川県の特産品種
  • われわれは、「直売所は八百屋さんと競合するものではなく協調するものである」、と思っている。秦野に「じばさんず」、という直売所があり、これができてから、お年寄りと女性が元気になりました。ここに野菜などを出して、少しでも自分の自由になるお金が入ると嬉しい。そういう意味では、直売所はただ安いだけではなくて、地元の小さな農家さんが元気になるひとつの方策だと考えています。

  • 直売所などで地産地消が進むと、「何か、特産品種を作れ!」、ということになる。玉ねぎ「湘南レッド」は、もう30年も作っていますし、一本ネギでやわらかい、「湘南一本」というネギも出ています。最近では、「サラダ紫」という水ナスとネパールの系統のナスを掛け合わせたもの。F1で、サラダでそのまま食べておいしいナスです。「さがみグリーン」、「大山育ち」というつけ菜、「万福寺大長ニンジン」、「のらぼう菜」、唐辛子もあります。近々出そうとしているのは、見かけはイタリアン、味は日本、というトマト。それから、ほうれん草の日本系のもの。われわれは、地元の農家を支えなければいけないので、採算は合わなくても育種をする、というスタンスで取り組んでいます。

  • 「サラダ紫」というナスは、今年、約1haで、10tぐらい出ています。市場に出ているかどうかは分かりませんが…。生でそのまま食べられます。水ナスもさまざまなものが出ていますが、これは、切ったあと茶色になりにくい。

  • 見かけはイタリアン、味は日本、というトマトは、まだ名前は番号ですが、今年中に品種登録するつもりです。桃太郎をイタリアのトマトに4回ぐらい掛け合わせた。調理用だといって出しても、やはり、みなさん生で食べてしまうので、味をよくしました。カロテンを含むゴールドタイプとセットで出す予定。輪切りにして、クラッカーの上にのせて、バジルをのせて…、そうすると簡単でとてもおいしく食べられます。

  • 「湘南一本」というネギについては、今、消費者から、短いネギへの要望が出ていますので、「コンパクトネギ」という名前をつけて、販売モデルを調査しています。平塚にある八百屋さんの組合の協力を得て、長さや太さの違いで商品を分けてみて、どれぐらいのものがいいのか、売れ筋を調べていただいています。ほぼ予想通り、2cmぐらいの太さで、長さ30〜40cmのネギがよく売れています。ただし、関東では、緑の部分を食べないで捨ててしまうので、捨てなくて済む方法はないか、と、今はそれを考えています。
◇環境保全型農業について
  • 環境保全型農業とは、生産性を落とさずに、農薬などをなるべく使わず、物質循環器をじょうずに利用する、というもの。病害虫防除、土壌管理など、なるべく、農薬などに頼らず、バランスと調和を持って食料生産をしましょう、という考え方です。

  • 農家の方には、環境保全型農業を実際にするにあたって、人間は5,000年も6,000年も、長く農業をやってきたということを認識してください、その中の一点にわれわれはいるんです。自然とのかかわり方をよく知らないといけませんよ…、といっています。

  • 日本では、豊かな自然が、プラスにもマイナスにも働きます。放っておけば、草はすぐい生い茂る。除草剤を使わないのなら、勤勉に労働するしかない。それを理解した上で、環境保全型農業に取り組んでいただきたいのです。

  • 最近は、農家ではない方が農業をやるようになり、そういう方に限って、無農薬栽培だとか、有機栽培をします。それは、基本を知らないで、いきなりプロの世界に入って野球をやるようなもの。とりあえず、基本の栽培技術はしっかりおさえてから、農薬を減らす方向にいってほしい。

  • 「農業の原理」という、われわれ農学の研究者には有名な本があります。それに、「富める農家より、幸福な農家のほうが、より成功した農家」という名文句があります。この「農家」の部分は、「八百屋」に置き換えてもいいと思います。成功する、ということはどういうことかを考えさせられる言葉ではないでしょうか? 物質的な側面だけでなく、そういったこととは異なる価値観で、環境保全型農業に取り組んでいただきたい。

  • 八百屋さんも、有機系の栽培でできた農産物を売るときは、「価値観」の話を消費者に投げかけて売っていただけると、作った側としては非常に嬉しい。

  • 外国に行くと、消費者と連携した有機栽培の取り組みがかなり進んでいます。八百屋さんにもこういうことを学んでいただき、ぜひ、消費者と生産者を結ぶ役割を担ってほしい、と思っています。
 
 

【八百屋塾2010 第2回】 実行委員長挨拶前実行委員長挨拶講演「トマト」|勉強品目「トマト」「メロン」|商品情報食べくらべ