今、会場となっているこのビルを建てることになったとき、江澤正平先生が、「せっかく大きな建物が建つんだから、テストキッチンを作りなさい」、と。現在、八百屋塾で行っているような、食べ比べの場を作ろうではないか…、というのが当初からの構想でした。
キッチンが狭いのは最初から分かっていたのですが、当時の上層部には、そういった考えが全くなくて…。「勉強会をやりたいので、キッチンを作ってください」とお願いして、やっとできたのが、この小さいキッチンです。でも、これがなかったら、今の八百屋塾はありません。八百屋塾は、食べ比べをして、おいしいものをお客さんに売ってあげよう、というのが、根本にあります。
八百屋さんで、自分が食べてもいない商品を売っている、という人は無責任です。自分で食べてから売ってください。「八百屋さんに行くと、なんでもおいしいわね」、といわれるような八百屋になっていただきたい。
私も現役で八百屋をやっています。好きでやっているので、毎日が本当に楽しい。特に、毎朝、「今日はお客さんとどういう話をしようか…」、と考えるのが楽しみです。これは、本当に、江澤正平先生の精神のおかげだと思っており、感謝の念に堪えません。
私は絶対に自分の店の品物を食べてから売ります。今日、柿沼農園の大竹さんがセロリを持ってきてくださっていますが、これも取り寄せて毎日食べています。で、おいしいものを売ってやろう、と思っています。たとえば、普通の春菊は売りません。江戸川のほうのある農家と提携して、根付きの春菊だけ売っています。それをお客さんが大変喜んでくださっています。
八百屋さんはそうして販路を広げていかないと、価格競争をしていても、とうてい太刀打ちできません。大手の量販店などに対抗するには、自分の信念を持って商売をすることが大切ではないかと思っています。
自分で食べたものをお客さんにすすめる、というのは、非常に説得力があります。市場でみんながおいしいといっていたから、たぶんおいしいのだろう…、ということで売っていたのでは、とてもお客さんの心はつかめません。
現在235名の葛西支所では年間10名ぐらいずつ、八百屋を辞めていきます。東京でも、毎年150人ぐらい辞めていく。辞めてしまう方々は、やはり、勉強していません。考え方が狭いので、お客さんがついてきてくれない。それぐらい、今、現実は厳しいわけです。お客さんのほうが一生懸命勉強していますから、対話のできる八百屋にならないと…。八百屋だけで食べていつもりくなら、もっともっと勉強しなければいけないのではないでしょうか。
八百屋塾でせっかく食べ比べができるのに、来ないなんていうのは、大変もったいない話です。みなさんは今後、一生懸命勉強していただいて、明日からの営業につなげてください。
10年目の八百屋塾は、みなさんの力を結集して、「もう一歩進んだ八百屋塾」にしたいと考えています。共同仕入れ等の問題を含めて、せっかくの輪を自分たちの事業に役立てられるような、何かプラスになるような形を作っていければ…、と考えていますので、今年1年、みなさん、一生懸命勉強して、自分のアタマを磨き、お客さまにつなげていただきたい。それが私の願いです。
これをもってご挨拶といたします。ありがとうございました。
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