■2010年4月18日 第1回 〜 勉強品目「新物野菜」 東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役 澤田勇治氏
◇勉強品目「新物野菜」&「新野菜」
  • 市場用語では、新しいものを「新物」といいます。いろいろな品種がありますが、最初に出るものは、全部「新物」だと考えていただいて結構です。

  • 今は春の時期ですから、出ているのは春の新物。夏になれば夏の新物が出ますし、秋は秋の新物、冬は冬の新物が出る…、ということは覚えておいてください。

  • 新キャベツ(春キャベツ)は、テレビのニュースでもやっている通り、今、やや高価です。冬キャベツとの違いは、形。冬キャベツは扁平、新キャベツのほうが丸くて楕円形。中には、三角形のやや尖ったような形になっているものもありますが…。食感としては、新キャベツはフワフワ、冬キャベツはかため。歯ごたえのある食感がいいなら冬キャベツを活用する。新キャベツは、今、神奈川県や、千葉県の銚子地域から出てきています。その後になると、また、群馬県の高原キャベツといわれるものに切り替わります。
新物野菜、新野菜各種
  • 白菜は冬場の野菜だと思っているでしょうが、1年中あります。業務関係で、漬物には周年必ず使うということで、産地が作っています。春と秋に出てくる新物の白菜は、冬の白菜に比べると、やや巻きが甘い。さわってみると分かります。ちょっとやわらかい部分がある。また、通常の白菜より甘みが薄く、パサパサしている感じがある。

  • 今日の新ジャガは、二化性ではなく、完全な「新」です。従来ですと、今、鹿児島から長崎に産地が切り替わる時期ですが、今年は低温のため生育が遅れており、鹿児島県出水地区のものを持ってきました。指でちょっと強く押すと皮がスッとむける、というのが新ジャガのひとつの特徴です。成熟の途中なので、通常のジャガイモに比べると、みずみずしくて、香りがある。言葉を変えれば、水っぽいので、煮物タイプ。ポテトサラダには不向き。完全に成熟したものは、充分サラダにも使える。そのあたりの使い分けを、お客さまにも消費者にも伝えていただきたい。「新ジャガでサラダを作ったんだけど、水っぽいのよね」といわれたときには、はっきり、「こういう用途のときは、こうなんですよ」、と説明をする。嫌われない程度に、問い合わせがあった場合は親切に答えてあげる。それが大事です。

  • 今日の新タマネギは、熊本産。ほかに新タマネギは、佐賀、愛知が出始めています。新タマネギには、白系と赤系がある。まず、葉っぱがついているタマネギから始まって、ちょんまげがついて、次に白っぽいタマネギ、それから赤いタマネギ…。このように、タマネギは変遷していきます。

  • 新にんじんは、今、徳島のものがメイン。まだ、関東の千葉県のものも残っています。

  • 雪下にんじんは、新潟県は津南のもの。畑にあったままの状態で、雪に埋もれさせ、それを掘り返して、出してくる。貯蔵すればするだけ、甘みが増してくるのが特徴です。

  • 雪下にんじんと、新にんじんを食べ比べると、香りと甘みが全く違います。香りを楽しむなら、新にんじん。甘みを好むお客さんには、貯蔵のものとか、雪下にんじんをすすめてあげるといい。用途がそれぞれ違うんですよ、ということ。にんじんに限らず、ジャガイモでもタマネギでもそうですが、同じ品種でも、時期やその他条件によって違う、ということを、お客さまに説明していただきたい。

  • 今日、特に見ておいていただきたいのが、新ゴボウです。新ゴボウというと、九州あたりから出てくる短いゴボウ、洗いのみがきを「新」だと思っている方もいらっしゃるでしょうが…。今日のは、西日本などで、山菜と同じような食べ方で食べられているもの。葉っぱと軸の部分を主に食べるゴボウで、非常に香りがいい。通常、ゴボウとして食べられている部分が、これは、長くは伸びません。茹でてごま味噌あえにしたり、天ぷらにしたり…。もう、あと2週間もすればなくなってしまう貴重品です。

  • 新大根(春大根)は、銚子産。どちらかというと、怒り肩。冬大根は、お尻の部分が丸く詰まっているような感じですが、春の大根は、尖ったような形で、みずみずしく、やや辛みが強い。

  • 春ネギは、冬に比べると、ぶんけつの部分がやわらかい。ネギが老化しているかしていないかは、ぶんけつ部分を見てさわって判断してください。根は、基本的には、何ミリかは残します。売るときは、どんなに新鮮でも、ここを切ってしまうと、すぐ傷んでしまいますので、気をつけてください。

  • 新しょうがは、初夏のものだと思っている方も多いでしょうが、今の新物野菜。九州と高知が2大産地で、今日のは、高知県の近江しょうがです。近江しょうがを貯蔵して、春先に、その根の部分から伸びてくるものが、「新しょうが」と呼ばれます。

  • 新しょうがにも2種類あって、昔、「三州(さんしゅう)しょうが」という細かいしょうががあった。あれは、俗に言う、「葉しょうが」のもとになる。取り扱いが面倒で、単価が取れないので、産地でも作らなくなっているのですが…。非常に香りの強いしょうがですので、見つけたら使ってみてください。

  • 新野菜の、「アメーラルビンズ」。静岡の「アメーラ」というトマトの産地が作っている、ミニタイプのトマトです。糖度を10度以上にしてある。高級品です。

  • 「マーメラス」は、インゲンの一種。スナックとは異なります。茹でて食べると、香りと甘みが非常に強いのが分かります。静岡の篤農家が作っている、インゲンからの選抜品種です。

  • 「ミニチンゲン」は、サカタのタネが作っているもので、商品名を「シャオパオ」といいます。通常のチンゲンは切って料理に使わなければいけませんが、横浜中華街からの要望で、器にそのままのせられる小さいタイプを作った。単純にいえば、普通のチンゲンの極早生タイプです。通常は50日前後かかるものを、40日前後で収穫しています。

  • その他、春のレタス、セロリアック、セリ、カタクリなど山菜各種もあります。

  • イタリアンでよく使う、「花ズッキーニ」は、新物野菜の中でも評判が高い。簡単に料理ができて、彩りもいい。花が大事なので、つぶれないように、丁寧にパッケージしてあります。下の部分が伸びたものが、いわゆるズッキーニになる。緑のほか、黄色もあります。

  • スプラウト、カイワレ類もさまざまな種類があります。非常に機能性を強めた野菜ということで、近年注目されている商品。ブロッコリー、クレス、レッドキャベツ…。彩りも楽しみつつ、機能性を追求した、健康にいいといわれている野菜です。

  • 近年また出てきたのが、皮付きのベビーコーン。サッと茹でて食べると大変おいしい。通常のトウモロコシとはまた違った香りがあります。

  • 最後に、「季節を味わう」ということでは、やはりタケノコ。今日は静岡産。

新キャベツ
新ジャガ
雪下にんじん
新しょうが
アメーラルビンズ
マーメラス
ミニチンゲン
セロリアック
セリ
カタクリ
たらの芽
花ズッキーニ
スプラウト
長寿の芽
スプラウト
クレス
スプラウト
マジックレッド
スプラウト
レッドキャベツ
スプラウト
空心菜の新芽
スプラウト
おくらの新芽
スプラウトミックス
ベビーコーン
(皮なし)
 
■2010年4月18日 第1回 〜 勉強品目「バナナ」 松孝 葉山聡幸氏
◇勉強品目「バナナ」
  • 今日は、バナナが15種類あります。主に、産地と標高別に分かれています。

  • 世界には、約300種類のバナナがあるそうです。そのほとんどが調理用。アフリカや南米などでは、青いバナナを、焼いたり茹でたりして食べる。日本人は、黄色いバナナを甘くして食べるのが一般的。

  • 日本に入ってきているバナナは、フィリピン産が9割を占めています。エクアドル産が1割に満たないくらい。そのほか、数パーセントが台湾バナナで、ペルー産、コロンビア産、メキシコ産も日本で流通しています。
松孝 葉山聡幸氏
  • 世界的にみて、バナナの生産量が多い国1位は、インドだそうです。ただ、インドは、輸出をほとんどしていない。人口が多いので、ほとんど国内で消費されているような状況です。2位は中国。ここもやはり人口が多く、国も大きいので…。3位は、数年前まではブラジルだったのですが、今はもうフィリピンに変わっているそうです。

  • 今、日本に入ってくるのは、フィリピン産バナナが9割ですが、昔は、バナナといえば、台湾産でした。その後、まず、エクアドル産が入ってきて、4割近くシェアを占めたそうです。さらに、アメリカの会社と日本の商社が、フィリピンでバナナを栽培しよう、となって…。やはり、日本との距離の近さとか、コストの面で安くできるとかいうことがあり、一気にフィリピンのバナナが日本に輸入されるようになった、という歴史があります。

  • 実際に日本に入ってくるのは、青バナナといわれるもの。さわってみると、本当にかたい。これを、エチレンガスを充満させた「むろ」に入れて1日半〜2日加工します。その後、温度を調整しながら5日ほどかけて、うっすら緑が残っている状態から、黄色く食べられるようにする。さらに、おいしく、甘くなるような加工をして、みなさんに食べられている、というような流れです。

  • 一昨年のバナナブームのときには、市場から黄色いバナナが消えてしまった。バナナは栄養価が高く、からだにいい。1本食べれば、お腹いっぱいにもなります。時間がないときは、朝1本食べると、朝食がわりにもなる。バナナダイエットもありましたが、そうしたことで人気が出たのではないかと思います。

  • スポーツをする方にも、バナナはよく食べられています。バナナのでんぷん質は、すぐエネルギーに変わる。たとえば、東京マラソンでもバナナが配られましたし、大手の商社さんはサッカーチームにバナナを提供しています。運動をしている方に、バナナはおすすめです。

  • バナナは、すぐに栄養にかわるので、アタマにもいいといわれています。たとえば、受験生ですとか…。バナナはフルーツの優等生、というのは本当だと思います。

  • バナナは産地と標高によって、ある程度、区分されています。まず、フィリピンの「低地栽培」。「レギュラーバナナ」といわれる100円前後で売られているものが、フィリピンの低地で栽培されているバナナです。気温が高いので、成長も早い。サイクルが早ければ、1年間にとれる量も多く、安く作れる。価格訴求の面で、「レギュラーバナナ」が日本ではいちばんシェアを占めている。

  • 「中高地栽培」というのは、フィリピンの中でも、低地より高いところ、山間の地域で作っているもの。若干昼夜の気温差があるので、低地よりは栽培日数が長い。その分、レギュラーバナナより甘さがあります。「バナージュ」は、フィリピンの中高地栽培のもの。

  • 「高地栽培」という種類は、よく見かける「スウィーティオ」や、今、テレビでCMをやっている「甘熟王」など。 フィリピンの山の高いところで生産されているものです。中高地よりも昼夜の寒暖差が大きいので、より栽培に日数がかかるのですが、その分、糖度が高い品種になっています。

  • 一般に、品揃えとしては、安いバナナ、リーズナブルでちょっとおいしいバナナ、高いけどおいしいバナナ…、というような感じで並べられていることが多い。

  • 最も安く出回っているのは、フィリピンのレギュラーバナナ。100円とか、それ以下で売られていることも多い。次に値段が手頃でおいしいのは、エクアドルバナナ。当社のおすすめです。高地栽培のバナナよりもリーズナブルですし、味も負けないぐらいおいしい。フィリピン産の低地栽培ものよりは若干高いですが、リーズナブルなので、エクアドルバナナをレギュラーバナナとしておいていただくというのを松孝ではおすすめしています。

  • 一般的に、「安全系」と呼ばれている有機JASのバナナもあります。今日持ってきているのは、ペルー産の「インカバナナ」。雨の少ない乾燥地帯で作られているので、病原体などがつきにくい。農薬を使用することなく栽培できる環境にある。

  • 台湾バナナは、甘くてもっちりとしているのが特徴。お値段は結構します。高級品ですが、昔ながらの台湾バナナの味をご存じの方は、値段が高くても、買っていかれます。

  • 「モラード」は、生食用バナナです。これも当社で「むろ」に入れて、エチレンガスで加工しています。最初は茶紫色が濃いですが、熟すに従って柔らかく、薄い茶色っぽくなっていきます。味にはクセがあって、若干酸味があります。ただ、暖かくなってくると、この酸味が逆にさっぱりした感じになっていい、というお客さまもいらっしゃいます。甘くてもっちりしたのが口に入るとちょっと…というときには、いい。夏におすすめのバナナです。

  • フィリピン産の「セニョリータバナナ」は、「モンキーバナナ」といわれているもの。実が本当に小さくて、ひとくちサイズで食べられる。見た目もかわいいですし、お子さんのおやつにもいい。手軽に食べられるので、人気があります。 同じ「モンキーバナナ」でも、エクアドル産のほうが若干大きめです。

  • 東京マラソンで配られた、「ラカタンバナナ」。品種的には、若干甘酸っぱいバナナです。商社さんの説明によると、この酸味が、運動しているときには甘ったるくなくていい、ということです。

  • 調理用バナナは、外国人の方が買っていかれることが多い。調理方法としては、青いまま皮をむいて、油で揚げたり、衣を着けてフリッターにしたり、薄くスライスして炒めたり…。ずっとおいておけば黄色くなりますが、黄色くなってから食べてもまったく甘みがなくて、芋類のような感じです。やわらかくはなりますが、甘くはない。
極撰
(高地栽培)
スウィーティオ
(高地栽培)
バナージュ
(中高地栽培)
昭和の贅沢
甘熟王
(高地栽培)
台湾バナナ
インカバナナ
(有機栽培)
ラカタンバナナ
チキータ
(低地栽培)
エクアドル産バナナ
生食用
モラード
フィリピン産
モンキーバナナ
エクアドル産
モンキーバナナ
エクアドル産
サニート(追熟前)
フィリピン産カルダ
ババナナ(調理用)
 
 

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