青梅は、海岸に近い地域で栽培されているケースが多いので、それほど大きな影響は受けていない。南高梅は、和歌山でも、山間部での栽培が多いので、そういったところを中心に被害が出ています。昨年対、8割ぐらいの生産量になる予想です。
南高梅の出荷は、梅干しの相場が低迷していること、家庭消費を増やすという点からもそれほど減る傾向にはないと思います。
山側は生産量が少ないので、6月後半、20日以降の時期のものがすぐになくなってしまうかもしれません。ピーク時期は、6月12〜13日あたりが中心。20日を過ぎると、入らない市場も出てくると思います。できるだけ20日までに仕入れたほうがいいのかな、と思っています。
また、今はまだ若干小玉ですが、これからの状況次第で、肥大は進むのではないかと思います。
小梅の収穫は、すでに始まっています。小梅も全国的に不作ということなので、相場は堅調に推移していくのではないでしょうか。
まず、南高梅についてご説明します。南高梅は、「白加賀」のように何百年という歴史のある品種とは違い、若い品種で、和歌山県のみなべという地域で作られました。地域の土地や気候に適した品種を探すため、5年の歳月をかけ、品種選抜を繰り返したものです。よって、みなべ以外では、本来の特性が出にくい。全国的に南高梅の栽培が進んでいますが、全国どこで作っても本来の品種特性が出るかというと、それは非常に難しいでしょう。土質などがまったく違うので、地元の人たちは、「まったくものが違う」といいます。ぜひ、みなさんには、「本物」を選んでいただきたいと思います。
南高梅の加工品のひとつは、「梅ジャム」です。青い梅ジャムと、成熟して黄色くなった梅ジャムの2種類あり、いずれも南高梅を使っています。一度洗ったあとに、ヘタ取りをして、冷凍させたものを使って作っています。冷凍してしまえば、シーズン通して、冬でも使えますから…。青い梅ジャムと、黄色い梅ジャム、味はお好みですが…。青い梅は、皮ばなれや実ばなれが悪いので、作業工程としては熟したもののほうが作りやすい。梅干しについても同じで、できるだけ熟したもののほうが、梅本来のいい味が出ます。梅ジャムは、ゆず茶のようにお湯で割っていただくと、熟した南高の香りがふわっと広がるので、非常においしい飲み物になります。
梅干しは、袋を使って、簡単に漬けられる方法をご紹介します。アンケートをとると、失敗の原因の9割方が「カビ」。問題のあるカビではないので、産地では少々のカビは気にしないのですが…。袋を使うと、カビの発生をかなり抑えられます。従来の漬け方ですと、塩でもんだあと、そのまま桶に全部返すのですが、空気に触れる面が多いため、カビが出やすかった。袋を使うと、空気に触れる面がほとんどないので、初心者の方でも、カビが出ず、成功する。去年、一昨年と、いろんなところで、初めての方に挑戦してもらったのですが、ほぼ失敗はありませんでした。
それから、「梅ラッシー」とでもいいますか…。梅シロップを牛乳で割ったものもご提案しています。梅シロップ1に対し、牛乳5ぐらいの割合で割ったものです。既製品の梅シロップもありますが、手作りの梅シロップを使ったほうが、圧倒的においしい。手作りの梅シロップのほうが味が濃いので、何かで割るとき、割るものの量をやや増やして、薄めに作ったほうがおいしいかもしれません。水割りでもいいですが、牛乳割り、豆乳割りなどがヘルシーでいいのでは…。梅シロップをお酒で割れば、即席の梅酒にもなります。
「トマト梅」は、和歌山の「優糖星(ゆうとうせい)」というトマトをソースのようにして、梅を漬け込んだもの。優糖星は、「キャロル7」を高糖度に栽培したミニトマト。産地では、糖度基準は満たしているものの、実割れなどで外観が基準に達しないものを原料に活用しています。
この時期になると、いろいろな雑誌で、梅が取り上げられますが、若い女性向けの媒体では、梅干しは提案されません。若い世代は漬物を作らないし、最近は、ごはんそのものを食べない、という方もいるので、「ごはんに梅干し」というよりは、「梅ジャム」などのほうがいいのではないか、と思います。
八百屋さんと違い、スーパーでは、なかなか、提案型の販売というのができません。梅のシーズンが来たから、ただおいているだけ…というところが圧倒的だと思います。産地としても、今の売り方に対しては、このままでいいのか、という思いを持っていますので、みなさんのようなコミュニケーション力のある方々が、お客さんと情報交換をする中で、梅の文化を伝えていっていただきたいと思います。
関東では、白加賀という品種が地域に根ざした品種です。ですから、南高がいいとか、白加賀がいいとかいうことではなくて、「いろんな梅を試してください、風味が違いますよ」と、それぞれご提案していただければいいと思います。品種によって適した加工方法があって、南高は一般的に梅干しだといわれています。果肉が多いのを生かしているわけですから、ジャムにも適している。南高を梅酒にすると、フルーティーな感じになります。さっぱりした梅酒がお好みなら、いわゆる青梅のほうが適していたりもしますので、そのあたりは、お客さまの好みに合わせて、ご提案ください。
産地でも、農協によって、それぞれ、出荷体制が違います。みなべという農協でしたら、ほとんど家庭選別で、箱に生産者の名前と番号が入っています。もし、未熟なものや、「秀品」と書いてあるのに傷だらけのものなどがあったら、市場にクレームを出してほしい。生産者番号か名前が入っていれば、追跡できますから…。生産者指導にも生かせますので、ぜひ、ご連絡をお願いします。
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