■2010年10月17日 第7回 〜 勉強品目「きのこ類&香酸柑橘」 東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役 澤田勇治氏
◇勉強品目「きのこ類」
  • 本日の勉強品目は、みなさんが一般的にご存じではないと思われるきのこをお持ちしました。「あぎ茸」のように、今年の夏の高温で栽培に失敗したという連絡が産地からあり、持ってこられなかったものもあります。

  • きのこ類は、「秋の味覚」を示す食べ物です。かつては本当に季節感の強い野菜だったのですが、近年は計画生産、計画出荷ができています。

  • きのこ類はカロリーが低いため、健康志向の中で注目されている商品です。また、いちばんの特色は、和洋中、どんな料理にも活用され、食べられている、ということです。

東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役
澤田勇治氏
  • 日本は、きのこが大変豊富な地域です。しかも、きのこにはもともと多様性があり、また、バイオ等の発達もあって、かつての2〜3倍の種類が出てきています。

  • 消費者の方の中には、雑誌、新聞、テレビなどからの情報で、八百屋さん以上に、きのこの種類を知っている方もいらっしゃいます。テレビなどできのこの特集をやっているときは基礎知識として見ておくといいのではないでしょうか。

  • 昔は自然な栽培方法で作られていましたが、現在は、栽培方法が多様化しています。

  • しいたけは、原木栽培から、ほとんど菌床栽培に切り替わったため、一年中出回ることになりました。

  • マッシュルーム等は堆肥栽培をしています。最近は、ワラ、おがくず等をベースにしており、馬糞そのものを使用しているわけではないので、ご安心ください。

  • 松茸など、生きた木に自生するきのこ類の栽培方法は、林地(りんち)栽培といいます。

  • きのこ類を販売するときは、お客さんに、「食べる前に、パックから出して、ちょっと日光に当ててください」と、言っていただきたい。日に当てると、きのこのうまみ成分や、コレステロールを下げる機能が増進するといわれています。先日テレビでも、「一流の料理人は、きのこを買ったら半日ぐらい日に干して、それぞれのきのこのうまみ成分を高めてから料理をする」と言っていました。

  • 一般的に「しめじ」と呼ばれているものは、「ひらたけ」です。「ほんしめじ」の商品名で並んでいるものは、正しくは「ぶなしめじ」です。今日お持ちした「大黒しめじ(ほんしめじ)」は、本当のしめじ。野山に生えている「ほんしめじ」から、菌を培養して作ったもので、非常に食味のいいきのこです。

  • 現在、市場流通している松茸は、海外からの輸入がほとんどです。97%が輸入で、特に多いのが中国、次いでカナダ、ほかにモロッコなどからも輸入されています。生しいたけは、業務加工等に使われる原料は、ほぼ中国産です。中国産は必ず中国産と表示しなければなりません。

  • きのこ類は、日本では古来から食べられてきました。松茸は「万葉集」に、ひらたけは「今昔物語」や「平家物語」にも出てくるぐらい、日本人の食生活に密接な食べ物です。

  • 講師の先生によると、名前がついているきのこが約3,000種、とのお話でしたが、私どもが調べた中では、日本古来には約6,000種のきのこがあるのではなかろうか、とのことでしたので、まだまだ未知のきのこ類がたくさんあると考えられます。毒きのこと普通のきのこを間違えるのは当たり前。疑わしいものは食べない、というのが消費者の知恵ではないかと思います。

  • 日本人はきのこ類をたくさん食べていますが、世界でも約800万トンと多くのきのこが食べられています。

  • 今日は特に、みなさんには、原木しいたけと菌床しいたけがどのように違うかを注意して見ていただきたいと思っています。

  • 「山茶茸」は、えのきだけの原種に近いタイプ。普通、えのきだけは、日を当てずに栽培するので、白くなりますが、通常の環境で作ると、色がつきます。

  • 黄色い「たもぎだけ」はめずらしいきのこ。また、たもぎだけの一種で、オレンジ色というかさくら色のものもあります。

  • まいたけは食味がよく、うまみも強いのですが、汁にするとアクが出てきれいに澄んだ仕上がりになりません。料理屋さんや業務筋から、濁らないまいたけを求められてできたのが「白まいたけ」です。

  • 「やまぶしたけ」は、やまぶしが修行をするときに持っている白いぼんぼりみたいなものによく似ていることから名前がつけられました。

  • 「雪嶺たけ」は、薬効があるといわれています。

  • 「きくらげ」も今はほとんど栽培のもの。周年栽培しています。

  • きのこというと、秋〜冬の食材で、鍋の友というイメージですが、夏も春も出回っています。八百屋さんは、その時期にもきのこ類を食べてもらうための情報発信をしてください。産地から、食べ方やレシピが出ていますので、ただ生で売るだけではなく、「こうして食べたらおいしいよ」と提案して販売するとよいでしょう。
原木生しいたけ
菌床生しいたけ
ジャンボなめこ
大黒しめじ(ほんしめじ)
丹波しめじ(はたけしめじ)
山茶茸
たもぎたけ
あわびたけ
白まいたけ
雪嶺たけ
ハナビラタケ
やまぶしたけ
生きくらげ
ホワイトマッシュルーム
ブラウンマッシュルーム
ポットベラ
国産松茸
中国産松茸
カナダ産松茸
 
 
◇勉強品目「香酸柑橘」
  • 「香酸(こうさん)柑橘」とは、酸味が非常に強く、そのままかじるとすっぱいのですが、香りが強いみかん類の一種です。

  • 代表的なものとして、高知や徳島の「黄ゆず」、「青ゆず」、徳島の「すだち」、大分の「かぼす」、宮崎の「へべす」、沖縄の「シークワサー」など。ライム、レモンも香酸柑橘です。

  • 「青ゆず」はやや時期を逸してしまいましたので、一部色がつき始めています。宮崎の「へべす」も時期が終わっていますが、県内にはまだあると思います。大きさは、かぼすとすだちの中間ぐらい。「香りのすだち、ジューシーなかぼす」といいますが、その中間が「へべす」で、宮崎特産です。

  • 特殊なものでは、仏様の手のような形の「仏手柑(ぶっしゅかん)」というものがあります。市場には出回っていないので、ご存じないかもしれません。これから、埼玉県秩父の周辺で若干出ることがあります。

  • 選び方は、果物と一緒です。果皮にハリとツヤがあるもの、持ったときに重いもの。いくつかものがあったら、手にとって重さを見てみるといいでしょう。それから、グリーンが鮮やかなもの。陽気が温かいと色が回ってきます。買ったときは乾燥しないようにして冷蔵庫に保存するといい。 黄色くなってしまったものも捨てないでください。甘みが増してきます。簡単な利用法としては、お新香や刺身にかける、味噌汁やお酒に入れるといった使い方があります。

  • 香酸柑橘類には、カリウムが多く含まれています。近頃は、「塩分控えめ」といいますが、料理には塩分がないとおいしくない。カリウムは、その塩を体外に排出する作用があります。

  • 今日お持ちした香酸柑橘以外にも、いろいろなものがあるので、さまざまな料理にかけて食べていただきたいと思います。果実を絞るのが面倒でしたら、瓶に入っている果汁だけのものも売られていますので、それもご活用ください。

  • かぼすかどを切る場合は、まな板の上など、平らなところでコロコロと転がしてから切ると、身と皮が少し離れ、ジュースが出やすくなります。種離れもしやすくなるので、覚えておくと便利です。
青ゆず、黄ゆず
(高知・徳島両県)


すだち(徳島)


かぼす(大分)


シークワサー(沖縄)


レモン
 

【八百屋塾2010 第7回】 実行委員長挨拶|講演「きのこ」|勉強品目「きのこ類」「香酸柑橘」商品情報食べくらべ