■2010年7月25日 第4回 〜 勉強品目「なす」 東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役 澤田勇治氏
◇勉強品目「なす」
  • 日本全国には、いろいろなかたちのなすがあります。大きく分けて、「大長なす」、「長なす」、「中長なす(千両系)」、「中長なす(式部系)」、「丸なす」、「小なす」の6つがあります。

  • 「大長なす」は、非常に長いなす。現在、市場流通しているものより、もっと長くできるのですが、今のものより20cmも長いなすが出てきたら、一般消費者がびっくりして買わないという部分もあるので、それほど長いものは出回っていません。

東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役
澤田勇治氏
  • 「長なす」系統は、九州や、愛媛などの四国地域に多いなすです。

  • 「中長なす(千両系)」は、全国の生産量の7〜8割を持っています。一般的に、「なす」というと「千両」を指します。

  • 千両に似た中長系で、特にこれから、北関東エリアや東北あたりでよく作られるのが、千両よりやや大ぶりで、低温に強いよう皮がかたくなっている「式部」という系統のもの。袋から出してしまうと、千両だか式部だかよく分からなくなってしまうほどよく似ているので、注意が必要です。

  • 「丸なす」は、字のごとく、丸いなすです。奈良の「丸なす」は、今年は天候不順のためA品の発生率が悪い。奈良のもののほか、有名な京都産の「賀茂なす」があります。上賀茂神社周辺で作っているなす、ということで「賀茂なす」の名前があります。愛媛・西条の大型のなす「絹かわなす」も丸なす系との掛け合わせ品種。それから、グリーンのへたの大きな「米なす」。このあたりが丸系のなすの代表です。

  • 「小なす」系統は、今日は、山形や仙台のものがあります。生育環境等が非常に短い中で、小型になっている。よく仙台に行くと、お土産で小なす漬けを売っています。山形のは、それにかたちのいい「真黒」を掛け合わせて作った「サファイヤ」という小なすです。

  • その他、特色のあるものとしては、千葉県の船橋地域で作っているグリーンの「白なす」。固定種です。F1ではないので、なかなか産地が広がりませんが…。食べ方は万能なので、ぜひお試しください。

  • イタリア系の「シチリアなす」は、ヨーロッパのなすの特徴で、巾着のようなかたちをしています。作っているのは日本国内ですが、こういうものもある、というのを覚えておいてください。

  • 大変残念なことに、なすという食材に対する認識がまだまだ薄い方が多数いらっしゃる。「なすは油炒めして食べるもの」と思いこんで、水なすでも炒めてしまう。そうすると、非常に水っぽいものになってしまいます。水なすというのは水の含有量が多いわけですから、ぬか漬けも、長く漬ければ漬けるだけ、ぬか床が水っぽくなってしまう。地域によって、かたちや料理の仕方はすべて違います。それぞれのなすの特性を、対面販売の有利性を生かし、八百屋さんのちからで消費者の方々に知らしめていただきたい。

  • 仲間内に、山形出身の方も九州出身の方もいらっしゃるわけですから、それぞれの地域のなすのおいしい食べ方というものを、交流しながらお話いただいて、お客さんに知らせる、ということをお願いしたいと思います。

  • なすの生産量は、価格の低迷と生産者の高齢化等により、年々減少しています。

  • 夏秋のなすの主要産地は、関東エリアでは茨城県が大きな位置を占めています。そのあとは、栃木、群馬。それから、近年、丸なす系で伸びてきているのが京都。それから、埼玉、新潟、千葉、山形など。

  • 今日のなすの中で一番単価が高いのは、愛媛県の「絹かわなす」。原価250円です。グリーンの「白なす」は1個80円です。
千両2号
式部
庄屋大長
筑陽

産地:栃木 JAはが野真岡
特徴:露地もの。関東では代表的ななすの産地

産地:群馬 JA群馬みどり笠懸
特徴:ハウスもの。式部は千両より低温に強く、北関東・東北ではよく用いられる
産地:愛媛 えひめ中央
特徴:松山長なすとも呼ばれ、愛媛松山地域の地場なすとして知られている。筑陽より柔らかい
産地:茨城 JA常総ひかり八千代
特徴:露地もの。栽培にこだわっている
さしみサラダなす
泉州水なす
蔵王サファイヤ
大長なす 黒紫

産地:岩手 JAいわて花巻大迫
特徴:スライスしてそのまま食べられる

産地:大阪 泉州
特徴:江戸時代から、泉州地方で栽培。かつては、田んぼのすみなどに植え、喉を潤したといわれている
産地:山形 JAやまがた大郷(おおさと)
特徴:ハウス栽培の小なす。部会が命名、20年以上の歴史がある。漬物用
産地:熊本 鹿本
特徴:今までの大長なすに比べ、10〜14日早く収穫できる中早生種。つやがあり肉質も緻密で種子の入りが少なく収量性高い品種
肥後むらさき
丸なす
十全なす
白なす

産地:熊本 高森
特徴:種が少なく、あくも少なくて甘みがあり、果肉も柔らかく口当たりがよい

産地:奈良 平和
特徴:賀茂なすより古いといわれている
産地:新潟 JA小国
特徴:漬けなす、小ぶりで歯ざわりがよい
産地:千葉 船橋農産物センター
特徴:外皮は青く本来なら青なすと呼ぶところをなぜか白なすと呼ぶ。煮ても焼いても揚げても食味がよく、なすの味がする
絹かわなす
米なす
シチリアなす
賀茂なす

産地:愛媛 JA西条
特徴:形状は米なす、食味は水なす

産地:高知
特徴:ヘタが緑色で大型
産地:不明
特徴:巾着のようなかたち
産地:京都
特徴:京の伝統野菜の代表的存在。肉質が緻密で、ずしりと重い
 
■2010年7月25日 第4回 〜 勉強品目「枝豆」 東京青果(株) 個性園芸事業部 審議役 澤田勇治氏
◇勉強品目「枝豆」
  • 「枝豆」という名前の由来は、江戸時代、もとの枝付きのかたちのままサッとゆでて売り歩いていたことから。

  • 地方色豊かな枝豆もありますが、現状は、白毛が主体です。白毛と赤毛の見分け方は、ゆでる前のサヤを見ると、微妙に白い毛や赤い毛がはえているので分かる。白毛タイプのほうが作りやすく、生産量が優秀ということで、市場の中では白毛タイプが多くなっています。

  • 特色ある豆としては、秋田、福島の「五葉豆(ごようまめ)」、新潟の「茶豆」、京都産の「黒豆枝豆」など。

  • ブラントとして市場で認知されているのは、群馬県の「天狗」の豆、これから出てくる山形の「だだ茶豆」、新潟の「黒崎茶豆」、山形の「秘伝豆」、青森の「田子の枝豆」、群馬県産、利根沼田の「ミネラル栽培枝豆」など。

  • 豆は「畑の肉」といわれるくらい栄養価が高い。良質のたんぱく質、鉄分を含んでいます。仕事が終わって1杯やるというときには、酒の肴に最適です。

  • なすと同じように、ただ「枝豆」として売るのではなく、「どこの産地のこういう豆なんですよ」というのがお客さんにも分かるようにディスプレイしていただければ…、と思います。

  • 今日持ってきている枝豆の価格は、千葉県産の枝付き枝豆が束で500円。群馬の天狗、青森の田子枝豆が袋で300円。あとの豆は200円前後です。

千葉 枝付き枝豆
青森 さや娘
秋田 湯あがり娘
新潟 茶豆
群馬 湯あがり娘

 

■2010年7月25日 第4回 〜 勉強品目「桃」 橋本幾男氏
◇勉強品目「桃」
  • 「てっぺんもも」は、生産者が8名ぐらいしかいなくて、特別な栽培方法で作って出している。

  • 白い桃は、「浅間白桃」。

  • 「白鳳」には、赤いものと白いものがある。白い「白鳳」は、袋がけしたままならせたもの。赤いほうは、ある程度袋をかけておいて、収穫する何日か前に袋を取る。そうすると日に当たって赤くなります。味としてはそれほどの違いはありません。
橋本幾男氏
  • 岡山の「白桃」は、全部袋がけして作られる。ただ、最近は、本当の「白桃」が少なくなった。「清水白桃」ぐらいしかない。また、生産者によってだいぶ味が違うようです

  • 今月末になると、産地が山梨から新潟、福島、長野に移り、品種も変わってきます。

  • 店で売るときには、パックに詰めるにしても、ラップは一切しません。この天気ですし、ラップをするとどうしても熱を持ってしまいます。また、桃は冷蔵庫に入れないでください。

  • 桃は、表面に白くポチポチと斑点のようなものが出ていたほうがおいしい。一般の方は、桃を買うときには触らずに、斑点を目安にするか、信用のある店で買うこと。小売店で聞けば、おいしいとかおいしくないとか、教えてくれますから…。お店を選んで買ってください。
福島
長野須坂
山梨笛吹
山梨春日居
山梨笛吹白桃
南アルプス
しろね
 
 
 

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