■2019年2月17日 第11回 春を感じる野菜・中晩柑 〜 講演「野菜と果物 栄養学観点から」 管理栄養士 石井玲子氏
◇はじめに
  • 約15年前、国は「食事バランスガイド」を作りました。コマの形になっており、たくさん食べたほうがいいものは上に、下に行くにつれて少量になり、ご飯、パン、副菜などのバランスがイメージとしてつかめるようになっています。お菓子、嗜好飲料などは適度に、ということでコマの紐の部分、水分は積極的に摂ってほしいので、軸になっています。コマの上で人が運動しているのがわかります。
管理栄養士 石井玲子氏
◇栄養の基本的な考え方
  • 食事をとるときの基本的な考え方は、炭水化物、たんぱく質、脂質という3本柱で、炭水化物は食事全体の50〜65%、たんぱく質は20〜30%、脂質は13〜20%。脂質が少ないのは、炭水化物やたんぱく質に比べ1グラム当たりのエネルギー量が多いからです。

  • 野菜はたっぷり、果物は毎日摂ることが大切。野菜と果物は、ビタミン、ミネラルの供給源です。ただし、いも類、とうもろこしなどは炭水化物が多めなので、摂取量は考える必要があります。大豆はたんぱく質が豊富なので、肉類を制限して大豆、豆腐、豆乳などからたんぱく源を摂るという人もいます。

  • 代謝とは、食べものを外部から取り込み、体内で化学的に変化させて、不用なものを外部に放出する反応のことです。

  • 代謝のためには、腸が元気に動いていなければいけません。腸が元気だと栄養素がしっかりはたらき、免疫力がアップしてアレルギーが防げる、といわれています。
◇健康に関する食品
  • 2015年に食品表示法ができてから、保健機能、栄養機能という言葉を聞くようになりました。保健機能とは、健康の維持、増進に役立つ機能成分のはたらきのこと。栄養機能は、特定の栄養成分が体内でいいはたらきをすることです。

  • 健康に関する食品や医薬品はカテゴリー分類があって、法律で定められています。

  • 食品には一般食品と保健機能食品があり、保健機能食品は機能性表示食品、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品に分けられます。

  • 特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品については、食品表示法で表現の決まりができました。トクホは、特定の保健機能について、国の審査を受けた上でマークをつけていいことになっています。栄養機能食品、機能性表示食品は、業者がしっかり審査をして国(消費者庁)に届け出ればOKという商品です。

  • 特別用途食品は、たとえば、高齢で飲み込みが弱い方のための嚥下用食品、乳児のための食品などがあり、専用のマークがつけられています。

  • ヨーグルトなど、昔からある商品にもトクホのマークや、機能性表示食品と書かれていることがあります。メーカーとしても、認定マークをつけて販売したほうが売れるという認識を持って、許可を取っているのだと思います。

  • 健康に関わる食品の表示は、食品表示法、景品表示法、健康増進法、薬機法(旧薬事法)によって定められています。

  • 食品表示法は、保健機能食品(トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品)に関して規定しています。

  • 景品表示法は、誇大広告や不正表示の取り締まりをしています。

  • 健康増進法は、健康や栄養の表示をするのであれば科学的根拠をもってやってください、というものです。

  • 私が働いているホテルのビュッフェレストランにサラダバーのコーナーがあり、料理長から、「お客さまに野菜の摂取をうながすために栄養成分の表示をしたい。情報を提供してほしい」と依頼されました。何か表示をするときは、安全管理室にいる保健所OBに確認します。そこで、スーパーフード、食べる輸血などともいわれているビーツについて、「一酸化窒素が血流を改善、オリゴ糖ラフィノースが腸内環境を整えるといわれています」とか、「大豆は低GI食品で血糖値の上昇を緩やかにする食品だといわれており、食物繊維が体内の不要物をからめとって排出します」といった内容を見せたところ、「明らか食品」なのでOK、と言われました。「明らか食品」とは、薬事法で使われる言葉で、野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介などの生鮮食料品、その乾燥品、加工食品でも、豆腐、ヨーグルト、パン、牛乳など、その名前を聞いて薬と思う人はいない食品のことです。
◇表示について
  • 野菜や果物を容器包装に入れたときの注意点としては、ビタミン〇〇が含まれていると知られているとしても、科学的に分析した資料をもって表示する必要があります。

  • グレープフルーツ、納豆は、特定の薬と相性が悪いことが知られています。こういったものは、薬を飲んでいる人に対する注意事項を書かなければいけません。

  • ある食材だけで健康になるわけではないので、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」と促す記載が必要です。

  • POPは、たとえば、「血圧が高めの方に適する」「β-カロテンは抗酸化作用があります」「疲労回復効果があるといわれています」といった表示はOKです。「ガンが治る」「コレステロール値が下がる」とか、リコピンをそれほど含んでいないのに「高リコピン」というのはダメです。「ガンが治る」という表現は、薬を飲んでいる方が服用をやめてしまうおそれがあります。医者から薬を出されている方はきちんと服用した上で、こうした栄養素に助けてもらう、ということなので、〇〇が治る、といってはいけません。

  • 先日、市場でみかけたキクイモのPOPに、「キクイモの奇跡、食物繊維イヌリンの力、腸内フローラを元気にする」といった表現がありました。いつ作ったものかわからないのですが、おそらく今ほど法律が厳しくない時代のものではないか、と思います。

  • 食生活指針の中で、「野菜たっぷり」「果物は毎日」といっていますが、私が最近気になっているのは、コンビニのサラダだけを食べて野菜を摂りました、という人がいることです。加熱するといい栄養素もたくさんあるので、サラダだけに頼るのは懸念されます。