■2018年11月11日 第8回 だいこん・みかん 〜 勉強品目「だいこん」 東京青果(株) 鈴木孝佳氏
  • 東京青果でだいこんを担当しています。昔、北海道は6月は雨が降らなかったのできれいな夏だいこんを供給できたのですが、3〜4年くらい前から蝦夷梅雨があたりまえになっています。今年は特に産地の釧路、十勝、羊蹄あたりで6月に晴れた日が3日くらい、8〜9月はほとんど入荷が見込めないという中でのシーズンスタートでした。追い打ちをかけるように胆振地方の地震があり、停電で、輸送、選果などがすべてストップし、価格がかなり上がりました。また、今年は予想と違ってサンマがとれ、だいこんが少ない中で引き合いが多かったことも影響しています。台風24号が関東を直撃し、塩害の被害を受けましたが、去年より台風の上陸が2週間ほど早かったので、播き直ししたり、水洗いや薬での防除など対策はできています。昨日、三浦の産地に行きましたが、青々した畑で、ほぼ塩害の影響は感じられませんでした。播き直した部分が追いつかないと1月は入荷が若干減るかもしれませんが、暖冬予想で豊作傾向の可能性もあります。大田市場では北海道が終わり、青森はまだあります。関東の各産地が入り乱れており、どの産地を販売したらいいか、という感じです。
東京青果(株) 鈴木孝佳氏
  • 本日は現在主流の「青首だいこん」、今日は千葉の鎌ケ谷で作られているものをお持ちしました。当社に入る中ではツヤ、太さ、長さもあってきれいなだいこんです。

  • 青首は、9月の天候不良、10月の台風による塩害などで、葉っぱや首回りが傷めつけられて黒くなったり、そこから菌が入ったりして、やや品質が心配なものもあります。黒斑細菌というバクテリアのせいで切ったら中が黒いとか、生理障害のあるものが1ヶ月くらいは頻発するかもしれません。

  • 青変症は夏に起きやすい生理障害です。北海道でも30℃とか関東と気温が変わらず、それが輸送の時に冷やされて、2日くらいかかって届き、店頭に並ぶ前にまた30℃になったりすると、中が青というか透き通ったようになってしまいます。品種や産地によって出にくいものもあり、雨が多いと出やすいとも言われています。

  • 「葉つきだいこん」は年々産地が減り、千葉の手賀や柏くらいしかありません。かなり高齢化した生産者さんが8名ほどで作っており、貴重な産地です。葉っぱを食べる文化はなくなっていますが、葉つきが少ないのでほしがる方もいらっしゃいます。農薬が心配だから葉は食べたくないという方もいるそうですが、きちんと説明できるお店で売れています。栽培に気をつける意識の高い産地が作っています。オリンピックを前にGAPを取る産地が増え、千葉東葛もGAPを取り入れる取り組みが進んでいます。

  • 「レディサラダ」を作っているのは三浦だけで、年々量は減っています。最近、量販店さんでカラフルなミニトマトがバイキングで売られ、だいこんも「変わり種だいこん」として、いろいろな色を並べたいという要望もありますが、数的に対応できていません。

  • 加賀野菜「源助だいこん」は、今年は天候不良でやや遅れており、取り戻しつつありますが、小ぶりなものが多いです。「源助だいこん」を作っているのは石川県だけです。ほかに、トーホクさんの「おでんだいこん」など、煮ものにするとおいしいだいこんを作ろうとしている産地も増えています。大きい農協さんがあるところではなくて、いろいろなだいこんを試験的に作ってみたいという産地があります。

  • 「辛みだいこん」はかなり前から普及していますが、年々品種が変わっています。かぶのような形のものもあります。産地としては、埼玉いるまの、群馬伊勢崎、三浦の3つが出ています。新しもの好きの産地が作る傾向にあるかもしれません。

  • 京野菜の「聖護院だいこん」は必要な分だけ全農京都さんに発注して販売しています。

  • 「もみ菜」はだいこんの間引きです。昔は埼玉や東京で作られていましたが、葉っぱを食べなくなり、面積も減っています。当社では東京の小松菜農家のものを入れています。

  • 三浦の塩害は回復しています。銚子、青森、北海道に比べ、三浦の青首だいこんはやや短いかもしれませんが、ツヤがよくきれいです。「三浦だいこん」は年末だけ市場に入荷されるので、今日はありません。去年は出荷直前に大雨で水を吸い込んでしまい、切ったら青かったりしてクレームが多発したので、今年は栽培面積が減ると思います。ただ、正月のなますになくてはならないので、需要は高いです。縛って出す出荷形態にも技術が必要で手間がかかり、農家さんの希望単価と実際がかけ離れてきていますが、高値は予想されます。

◇「だいこん」の写真
青首だいこん
(トーホク種苗)
青首だいこん
(千葉)
葉つきだいこん
(千葉)
レディサラダ
(神奈川)
源助だいこん
(石川)
辛みだいこん
(トーホク種苗)
辛みだいこん
(群馬)
聖護院だいこん
(京都)
練馬だいこん
(東京)
亀戸だいこん
(東京)
安家地だいこん
(岩手)
黒だいこん
(フランス)
黒だいこん
(栃木)
紅しぐれ
(トーホク種苗)
紅芯だいこん
ビタミンだいこん
ミニだいこん
(茨城)
もみ菜
(東京)
かいわれ
(埼玉・三和農林)
プチリーフ「レディッシュ」
(福岡)
切り干しだいこん
     
■2018年11月11日 第8回 だいこん・みかん 〜 勉強品目「みかん」 橋本幾男氏
  • 本日お持ちしたみかんは、愛媛の「真穴」、「日の丸」、長崎・西海の「味まる」、「味っ子」、和歌山・有田のみかん、熊本の「きらめき」などです。静岡・清水の「朝福」はのちほどJAしみずの方に紹介してもらいます。

  • 今年は気候が温かいので、なき(傷み)が出やすく、売るときは気をつけないといけません。箱で売る場合も全部見てからにするといいでしょう。

  • 宇和島系統の赤箱は、多少被害があったようで、みかんが弱いです。
橋本幾男氏
  • 極早生の「豊福」はもう終わりですが、なかなかよかった。ただ、穫ってから機械でブラッシングするので弱くなってしまいます。極早生は特に弱かったです。

  • 皮がボコボコした菊みかんは、ちょっと酸が残りますがおいしいです。

  • 昔は産地ごとに独自の等級があったものですが、今はどこもS、M、Lになりました。

  • 糖度14度になる「201」というみかんを毎年取っていますが、今年は台風でマルチが飛ばされてやり直したりして、少ないようです。

  • 店で売るなら「日の丸」か「真穴」をおすすめします。
◇「みかん」の写真
AQみかん
(和歌山)
きらめきみかん
(熊本)
真穴みかん
(愛媛)
日の丸みかん
(愛媛)
朝福ちゃん
(静岡)
西海みかん
(長崎)
味っ子みかん
(長崎)
 

【八百屋塾2018 第8回】 挨拶講演「だいこん」勉強品目「だいこん」「みかん」食べくらべ