■2018年3月11日 第12回 修了式 〜 基調講演「野菜摂取量とがんの関係〜データの真実と読み解き方〜」 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 保健社会学研究部部長 同企画戦略局 国際戦略室室長 山本精一郎氏
 基調講演は、国立がん研究センターの山本精一郎先生による「野菜摂取量とがんの関係〜データの真実と読み解き方〜」。山本先生には、2017年11月12日の特別開催イベント「やっちゃば秋葉原 学べるマルシェ」、公開八百屋塾第2部でも上記の演題でご講演いただきました。八百屋塾のスタッフやマルシェのお手伝いをしてくれた受講生の中には、講演を聞けなかった人も多数いるので、再度お話しいただくことになりました。
[山本先生のお話の骨子]
  • 世の中には、がんについての情報が溢れています。氾濫する情報の中で何を信じればいいのか、その判断基準となるヒントをお伝えします。

  • 研究にはいろいろな種類があり、専門家の意見、生物学的研究結果、ケースレポート、ケース・コントロール研究、コホート研究、ランダム化比較試験の順に信頼性が高くなります。研究は複数あればなおよい、とされています。
国立がん研究センター 社会と健康研究センター
保健社会学研究部部長
同企画戦略局 国際戦略室室長 山本精一郎氏
  • 野菜・果物摂取とがんについては、さまざまな研究が行われています。その他のリスク、予防要因も含め、国立がん研究センターのグループが中心となり、これまで日本で行われた疫学研究をまとめた結果があります。下記をクリックしてご覧ください。
    http://epi.ncc.go.jp/files/02_can_prev/matrix_150819JP.pdf

  • 「データ不十分」、「可能性あり」という場合にどう判断をすればいいのか。メリットとデメリットを両方考えることが大事で、メリットが確実ではなくても、悪いわけではないとしたら、やったほうがいいのではないか、というふうに考えてはいかがでしょうか。

  • がん検診もメリットとデメリットを勘案して、国として推奨しているのが、次の5つです。
     ・胃がんのエックス線と内視鏡
     ・肺がんのエックス線
     ・子宮頸がん
     ・乳がんのマンモグラフィ
     ・大腸がんの便潜血検査

  • 「日本人のためのがん予防法」として、国立がんセンターですべての証拠を集め、今、確実にいいとされているのは次の6つです。
     1. たばこは吸わない(他人のたばこの煙をできるだけ避ける)
     2. 飲むなら節度のある飲酒をする
     3. 食事は偏らずバランスよくとる(塩蔵食品・食塩の摂取は最小限、
       野菜・果物不足にならない、飲食物は熱い状態でとらない(食道がんのスクになる) )
     4. 日常生活を活動的に過ごす(立つだけでもいい)
     5. 成人期の体重を適正な範囲で管理する(太りすぎない、痩せすぎない)
     6. 肝炎ウイルスと感染検査(機会があればピロリ菌検査を)
    下記をクリックしてご覧ください。
    http://rok.ncc.go.jp/review/evidence/prev_j/index.html

  • 誤った健康情報に振り回されないため、まず、どんな研究から出た結果かを判断し、リスクとデメリットを判断する習慣をつけましょう。

 山本先生のお話の詳しい内容については、下記をクリックして11月の講演録をご覧ください。
 http://www.shoukumi.or.jp/htdocs/yj/2017/171112/yj_171112_03.htm
◇質疑応答より

    Q:昔と比べると、がんは増えているのでしょうか? 食事の影響は考えられますか?
    A:がんの多くは加齢にともなう病気です。寿命が延びているので、確実にがんは増えています。食事の影響で増えていると考えられるのは、乳がん、大腸がんです。昔のほうが高塩分食だったので、胃がんは減っていると思います。

    Q:小児がんの要因は?
    A:原因はあまりわかっていません。これとは別に、よく「がん家系」といいますが、家族は食事をはじめ生活習慣が似るから同じ病気になりやすいという場合がほとんどです。

    Q:がんになったら、どういう行動をとればいいのかアドバイスをいただけますか?
    A:私なら、まず、病院に行きます。診断が出たら、国立がん研究センター がん対策情報センターが「がん情報サービス」としてさまざまな情報を提供しているので、そこで勉強します。そして、どのような治療がいいのか、別の病院に行ってセカンドオピニオンをもらいます。また、必ず保険診療を受けます。

    Q:伝統的に塩蔵して食べものを保存する文化があります。塩抜きして食べればいいのでしょうか?
    A:胃がんの多くはピロリ菌が原因で、塩分をたくさん取るとさらにリスクが上がります。なので、胃がんの予防には、塩蔵品を食べないのではなく、塩分を控えたほうがいい、ということです。ごはんとよく合う塩辛いおかずを多く食べていた地域に胃がんが多いです。塩分の取り過ぎは血圧も上がりますので、取り過ぎには注意したほうがいいでしょう。

    Q:がんになったとき、民間治療に頼る人も多いですが、身近にそういう人がいたとしたらどう説得すればいいでしょうか?
    A:日本では効果のある治療はすべて保険診療になっています。このことを話すといいのではないでしょうか。もしいい薬があれば、製薬会社が見逃さないはずです。

    Q:野菜はがんにいいということを、お客さまに言ってもいいのでしょうか?
    A:確実ではないが野菜ががんのリスクを下げるという報告がいくつもあります、というのは言ってもいいと思います。他の疾患の予防にもなりますし、メリットとデメリットをトータルで考えたら、野菜はすすめてもいいと思います。

 

【八百屋塾2017 第12回】 挨拶修了式調理の先生より基調講演「野菜摂取量とがんの関係〜データの真実と読み解き方〜」塾生より茶話会