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■2017年12月10日 第9回 さといも・みかん 〜 講演「さといもの栽培」について 生産者 千葉「小川農園」 小川次郎氏
◇さといもは「わがままな作物」
さといもの特徴や品種については、先ほど鈴木さんから詳しいお話がありましたので、私からは百姓の苦労話をしたいと思います。さといもの栽培は手間も材料もそれほどかからないのですが、東南アジアの熱帯地域生まれなので、夏の強い日射しがないと我慢できず、湿り気もないと困るというわがままな作物です。
面積が減っているのは、作りづらいからだと思います。品種にもよりますが葉が上を向いているさといもの場合、水分が足りなくなると葉が垂れてきて枯れそうになります。。7〜8月は週に1回か10日に1回はかん水する必要があり、スプリンクラーなどの設備がなければ作れません。水が足りないと、芽なしになったりします。
生産者 千葉「小川農園」 小川次郎氏
さといもは1年作ると、4〜5年は同じ畑では作りません。普通栽培の場合、3月の彼岸過ぎに種いもを植えます。畝間は90センチくらいとって下向きに植えます。芽は必ず上を向くので、少しでも下から芽を出させるためです。
種いもを植えたら、3〜4センチくらい土をかけます。太陽の光が届くように浅くかけます。さといもは、芽を出したら霜でやられるかどうか、わかっています。もう大丈夫、となったら芽を出します。
3月末に定植、6月頃に土寄せをします。土が足りないと芽なしが出るので、たっぷり寄せます。その頃には乾燥してくるので、水かけをします。
さといもは水田で作るといいものができます。畑より芽立ちがよく、健全ないもが育ちます。カビは出ません。田んぼの水がいもの雑菌を殺してくれるのでしょうか。畑では輪作が必要ですが、田んぼでは毎年作っても大丈夫です。
霜枯れといって、地上部が枯れたら、畑に穴を掘って出荷まで貯蔵します。掘り出したままの傷がついていない状態で入れるのがベストです。あまり深い穴だと春が来たと勘違いして芽が出てしまうので、芽が出ないように、穴の深さはひざくらい、狭いほうがいい。わらを上にのせて土をかけます。中が温かくなり過ぎないように、寒さに応じて、何回もかけます。
さといもはできるだけ寒さにあてないことが大切です。納屋では、夜は毛布などをかけておきます。1週間もおくのは無理で、穴から出して2〜3日のうちに煮るのがベストです。寒さにあたることを、私たちは「風邪をひく」といいます。八百屋さんは風邪をひいたいもを売らないようにしてください。大事に扱って、残ったら濡れた新聞紙に包んで段ボールに入れ、人のいるところおいておく。ふたができる発泡スチロールの箱でもいいですし、湿度と温度が管理できる冷蔵庫があればなおいいと思います。
皮をむいたさといもは中から露が出たような状態になり、翌日までしかもちません。むいたらすぐに調理したほういいでしょう。
貯蔵用の穴
子いもを「小頭(こがしら)」とも呼びます。小頭は孫いもより親に近く、かたい。孫いもといっしょに煮ると、孫いもがやわらかくなりすぎるので、小頭は小頭だけ分けて出荷しています。
「石川早生」は、小さな丸いいもが親いもの回りに40個くらいびっしりとつきます。孫いもが増えると傷みが出やすくなります。大阪に「石川早生」の原種を見に行ったことがあります。原種の圃場で、毎年選抜し、変わらないようにしているそうです。
さといもの花は、「咲くと親が亡くなる」というほどめったに咲きません。親いものほうが比較的咲きやすく、私の農場では、「関西土垂」の花が咲いたことはあります。
◇今年の状況
今年の8月と10月は極端な日照不足でした。水が足りなければ井戸を掘ってかければいいのですが、さすがに百姓もお日さまは出せません。
今、秋野菜が高いのは、8月と10月の日照不足と台風のせいです。私の農場がある千葉での話ですが、にんじんなどは最たるものでした。通常は8月10日を中心に前後10日くらいが播きどきで、8月のうちに芽が出ればどうにかなります。今年は雨が多く、曇っていて、発芽はよかった。ところが10月、日が照らないから葉がどんどん伸びて、伸びすぎたところに台風が来ました。葉が寝てしまうともう起きません。下の葉が全部だめになり、収穫が約半月遅れました。
だいこんは、9月10日が基準で、昔の人は、早いと一寸ずつ株間を詰め、遅れると伸ばしたものです。風に弱いので、今年は台風でやられて播きなおしました。春のものは追いつくのですが、秋のものは、播種が1日遅れると収穫が1週間遅れます。
【八百屋塾2017 第9回】
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