■2018年1月14日 第10回 みつば・水菜 〜 講演「みつば、水菜」について 茨城県農産物販売推進東京本部 次長 方波見(かたばみ)誠氏
◇みつばの特徴
  • みつばは、にんじんやパセリなどと同じセリ科の多年生草木で、日本全国に自生していおり、数少ない日本原産の野菜です。ほかにはウド、ヤマノイモ、セリ、フキ、ミョウガ、ワサビなど約20種類くらいしかありません。

  • 葉が3つにわかれている姿から「みつば(三つ葉)」と呼ばれています。

  • 抗酸化作用のあるβ-カロテンが豊富で、ビタミンや鉄分にも富んでおり、日本料理に欠かせない野菜のひとつです。特に、切みつばは、正月のお吸いものや、松茸が出る時期(11月)に需要が増えます。
茨城県農産物販売推進東京本部 次長 
方波見(かたばみ)誠氏
◇みつばの栽培方法
  • 独特な香りを持つみつばは、露地栽培や水耕栽培で密生させて栽培します。

  • みつばには、「根みつば」「切みつば」「糸みつば(青みつば)」の3種類があります。

  • 「根みつば」は、ねぎのように盛り土をすることで軟化させて、土、根つきで出荷されます。シャキシャキ感、香りは、3種類の中で根みつばが一番強いです。

  • 「切みつば」は、5月に種を播き、養成した根株を堀り上げ、ウドのように温床(ムロ)で軟化させ、根を切り取ったものです。再生するので、1つの株で3〜4回採れます。

  • 現在の主力となっているのは、主に水耕栽培で葉柄全体が青い「糸みつば(青みつば)」です。盛り土はしないので青が強く、多くはスポンジがついてい売られています。β-カロテンは3種類の中で一番多いのですが、香りは薄めです。年間6〜7作できるので、根みつば、切みつばとは収量が違います。
◇みつばの主な産地
  • みつばの生産量は、千葉県2,640トン、愛知県2,440トン、茨城県1,530トン、埼玉県1,410トン、静岡県1,250トン。

  • 千葉県と茨城県は、根みつば、切みつばも栽培しています。埼玉県はほぼ糸みつばです。
◇みつば出荷量の推移
  • 東京中央卸売市場のデータによると、切みつばは、2002年(平成14年)252トン、2006年(平成18年)135トン、2016年(平成28年)46トン。根みつばは、2002年(平成14年)800トン、2006年(平成18年)411トン、2016年(平成28年)174トン。糸みつばは、2002年(平成14年)2,829トン、2006年(平成18年)2,530トン、2016年(平成28年)1,826トン。14年間で合計6割ほど減っています。
◇みつばの月別入荷量と価格
  • 月別入荷実績は12月が最も多く(約250トン)、次に1〜4月。5〜9月の夏場は少なく、10月以降に増加します。盆暮れがピークです。

  • 各月とも千葉県が全体の40%以上を占めています。

  • 価格は1キログラムあたり338〜1,098円(年平均567円)となり、年による差はありますが、糸みつばは1〜6月までは下げ基調、7〜9月にかけて上げ基調に転じ、需要期になる12月が最高値となります。

  • 切みつばは松茸の出荷時期に合わせて、11月に高くなる傾向があります。

  • 切みつばは調整作業が大変で、高齢化もあって、昔と比べると地元の生産者は1/5以下に減っています。
◇切みつばの生産
  • 切みつばの作型は、「冬取り軟化栽培」と「秋播き軟化栽培」があります。

  • 冬取り軟化栽培は、5月に種を播き、9月半ばに堀り上げ、ムロに入れて20〜25日で収穫します。

  • 秋播き軟化栽培は、9月に種を播き、5月にムロに入れて、9月いっぱいまで収穫します。

  • 収穫した株は「軟化床」と呼ばれるムロに植えつけ、真っ暗にすると、2週間ほどで伸びてきます。「青入れ」といって少し光を入れて、うっすら緑色をつけます。これを調整して出荷します。
◇根みつばの生産
  • かつては春に播種して秋まで根株を養成し、地上部が枯死したあとに盛り土をして、伸びた新芽を収穫しました。現在は、収穫予定の30日前に葉茎を刈り取り、土寄せをして軟化させる技術が開発され、9月から翌年4月まで収穫する作型になりました。
◇糸みつば(青みつば)の生産
  • 遮光や軟化をせず、露地栽培や水耕栽培で作られます。切みつばや根みつばと異なり、茎が青くなるのが特徴です。

  • 今はほとんどが水耕で、スポンジの上に種を播いて栽培します。

  • 年間を通して作られており、冬場は3ケ月、夏場は2ケ月くらいで採れます。
◇水菜は京都から広がった野菜
  • 水菜は京野菜の一種で、肥料を使わず、水と土だけで作られていたことと、あぜの間の清流で育てられたことから「水菜」と呼ばれるようになったといわれています。

  • 現在では全国的に「水菜」と呼びますが、以前は関西以外の地域では「京菜」、「からし菜」などと呼ばれていました。濃緑色のギザギザの葉と白いすらりとした茎をもつ野菜で、シャキッとした歯触りが持ち味です。

  • 葉が細長くて細かい切れ込みのあるものと、葉に切れ込みがなく、細長い丸葉のものの2種類があります。緑黄色野菜で、ビタミンCとカロテン、鉄分が豊富です。
◇水菜の分類・名称など
  • 水菜は植物学的には、アブラナやカブなどと同種で、同種同変種に「壬生菜(みぶな)」があります。

  • カラシナと呼んだほうがわかりやすいかもしれませんが、「きょうな(京菜)」、「ひいらぎな(柊菜)」、「せんすじな(千筋菜)」、「せんぼんな(千本菜)」、「せんすじきょうな(千筋京菜)」、「いとな(糸菜)」など、さまざまな別名があります。「きょうな」を標準和名として用いている図鑑も多いようです。

  • 京都の水菜は大株で、関東で目にするものとはだいぶ違いますが、作り方が違うだけで同じ品種です。
◇水菜の栽培について
  • 京野菜の水菜は、9月に種を播き、10月に移植して、11〜3月まで穫ります。主な用途は鍋ものや漬けもの。関東産とは栽培期間や密度が違うので、大株になります。

  • 関東では一般的にハウスで周年栽培されています。夏場は1ケ月弱くらいで収穫、冬場はもう少し長くかかります。茨城県では、サラダで生食と鍋がメインで、漬けもの用としては考えていません。

  • 生産状況は、茨城県18,400トン、埼玉県2,000トン、滋賀県1,540トン、京都府2,010トン、兵庫県1,920トン、福岡県1,730トンと、圧倒的に茨城県が多くなっています。
◇茨城県での水菜の生産拡大
  • 行方市北浦地域(旧北浦町)は、県内有数の水菜産地です。この地域で本格的に水菜の生産が始まったのは2001年(平成13年)で、水菜は関東ではあまりなじみのない野菜でしたが、消費拡大を狙う大手スーパーから要請され、産地化の取り組みが始まりました。

  • 産地化にあたっては、当時の北浦町の中核農家で組織された鍬頭(くわがしら)会議が中心となり、町役場や農協の協力を得て、それまでの販売組織の枠を超え、町で一元出荷する新しい出荷体制をつくりました。

  • 17名から始まった水菜生産は、現在、部員数70名を超え、年間1,900トンを産出する全国有数の産地を形成しています。
◇さまざまな水菜&その仲間
  • 京都の伝統野菜「壬生菜(みぶな)」も、「京菜」と呼ばれることがあります。水菜と違い、葉のギザギザがなく、細長く丸みがあります。「壬生寺」周辺で作られていたので「壬生菜」と呼ばれるようになったといわれています。秋に播いて収穫は3月いっぱい。寒さに強く、独特の風味とほのかな苦みがあり、葉の色は濃く茎もしっかりしています。京都特産の千枚漬けの青みとして、また、おひたしや炒めものなど幅広く使えます。ハウス栽培などでサラダ用のやわらかいものも出ています。

  • 「赤水菜」はここ2〜3年で流通量が一気に増え、スーパーなどでも見かけるようになりました。通常の水菜と同じように、鍋やサラダ、おひたし、漬けものなど、幅広く使えます。酢に反応して色味を増す特徴があり、色がきれいなので、料理に彩りを与えてくれます。野菜に含まれるアントシアニンは、加熱によって色素が抜けてしまうことも多いのですが、赤水菜は加熱後も色が残ります。

  • 「紫水菜」は茎が緑色で、葉の部分が紫色をしています。アントシアニンを含み、抗酸化作用があります。赤水菜と違い、加熱すると紫の色素が抜けて緑色になります。やわらかい若葉は生でサラダなどに使うと彩りがきれいですが、茎やかたい部分はゆでたり炒めたりすると食べやすくなります。

  • 「潮江菜」は水菜の原種といわれ、高知県潮江地区で栽培されていたことから、「潮江かぶ」とも呼ばれていました。葉と茎を食用にします。潮江菜は絶滅したと思われていましたが、牧野富太郎博士の指示で竹田功氏が種を収集、保存。これをもとに「Team Makino」が結成され、「牧野野菜」として復活させる活動が始まっています。

  • 一般的には、「京菜=水菜」という認識で間違いではありませんが、京菜と水菜が区別される場合があります。それが、「茎広京菜(くきびろきょうな)」という種類の水菜で、「広茎京菜」とも呼ばれます。葉の形は柊の葉と同じように先がギザギザしており、千筋京水菜とは趣が違います。また、葉はやや厚くて、生のまま食べるにはかたく、苦みも感じられ、加熱調理するか漬けものに適しています。
◇質疑応答より

    Q:切みつばはどのようなものがいいのでしょうか?
    A:茶色くなっているのは老化した部分なので、取り除くか避けたほうがいいでしょう。切みつばはまっすぐなものがいい、といわれるので、20〜30℃弱ぐらいのお湯につけてきれいに伸ばしています。

    Q:切みつばは3〜4回穫れるというお話でしたが、最初と次以降で違いはありますか?
    A:1番切りといって、1回目に出たものが香りはいいとは言われます。

    Q:切みつばの苗は露地で育てるのでしょうか? 枯れたりしませんか?
    A:種をまくのは露地です。地上部が枯れた頃が堀り上げどきになります。

    Q:春先の切みつばに節があるのはどうしてですか?
    A:春先は花芽が出てくるので安定しないためです。茨城県は節があるような切みつばは出していないと思います。

    Q:切みつばの栽培方法が確立された時期はいつ頃ですか?
    A:技術が静岡で確立され、他県にも導入されるようになりました。茨城県には昭和40年代後半に入ってきた、と聞いています。

    Q:大株の水菜が関東にないのはどうしてですか?
    A:需要の問題が一番だと思います。関東では水菜はサラダや鍋もの用で、漬けもの用という感覚があまりないのでしょう。

 

【八百屋塾2017 第10回】 挨拶講演「みつば、水菜」について勉強品目食べくらべ