■2018年1月14日 第10回 みつば・水菜 〜 勉強品目「みつば」「水菜」 東京青果(株) 藤原寛氏
◇みつばについて
  • 糸みつばの生産には、ガラスハウスなどが必要で資材費がかかります。余力がある地域は面積が増えますが、そうでないとやめていくことも多いようです。冬はハウスの中の暖房が自動的に15℃に設定されます。温暖で日照があるところが栽培に向いていて、もとは静岡県で作られていました。

  • 根みつば、切みつばは伝統野菜として栽培方法をかたくなに守っているから希少性も出るわけですが、栽培に半年、手間もかかるので、若い人はやりたがりません。
東京青果(株) 藤原寛氏
  • 切みつばは光が当たると青くなります。茎がきれいな白でないと、高く評価されません。

  • 愛知県は切みつばが多く、大葉を作っている農家が栽培しています。

  • 茨城県では1軒のみつば農家が6〜7名の研修生を使っていることもあり、1軒あたりの量が他県より多くなっています。周年、切りみつばを苦労して作ってくれています。

  • 切りみつばが高い時期だけ、北海道産も出てきます。

  • こだわり野菜をほしい人も、リーズナブルなほうがいい人もいます。旬を売るなら根みつばや切りみつば、そうでないなら糸みつば、と2パターン置いてもいいでしょう。食べれば、根みつば、切りみつばは、口の中に広がる芳醇な香りが違います。根みつばの根っこのきんぴらもおいしいので、ぜひ試してください。

  • みつばは料理には広がりがないので、さまざまなレシピが広まるともっと需要が増えるかもしれません。
◇水菜について
  • 京都では、町を守る、景観を残すということで野菜を作らせています。高い建物ができないように、都市部に畑があるわけです。京都府は南北に長いので、エリアによって作っているものもいろいろ違います。

  • 1993〜1994年(平成5〜6年)頃、茨城県や埼玉県では、ハウスでキュウリが空く時期には「壬生菜」を作っていました。その頃、あるスーパーさんが「水菜」を作ってもらえないかと話を持っていった産地のなかで、手を挙げたのが茨城県だった、と聞いています。始めは東京青果で全量売っていたのですが、増え方がすごかった。需要がこれほどあるとは思っていませんでした。水菜の生産量が増え、小松菜が減ったようです。

  • 茨城県はハウスの大きさが桁違いです。6町歩が平均的な広さで、1日で2000ケースもの水菜を出します。これほどの規模の産地はほかにはありません。もともとメロンの大産地で、メロン栽培をしていた人が10〜15年前に転作したといわれています。規格は茨城の農業に合わせて、京都の水菜より長めになっています。

  • 水菜が安定的に売れたのは、サラダバーに置かれたからだと思います。周年栽培で価格が安定しており、味にばらつきもない。サニー、リーフが高いときに需要があります。居酒屋さんのお通しやラーメン屋さんの具材、冬場は春菊の代わりに鍋ものに使われたりもします。

  • 京菜はもう間もなく出てくると思いますが、漬物屋さんが旬のものとして買う、という感覚ではないでしょうか。

  • 大株の水菜は、品種はまったく同じなのですが、土壌や作り方で大きさや味が変わります。葉も茎も味が濃いので、機会があればぜひ食べてください。食文化としては、西のほうが見た目ではなく味を重視しているような気がします。

  • 同じ産地の水菜でも、いろいろなところから仕入れて自分で食べてみることをおすすめします。自分が気に入った銘柄産地をきちんと追いかけることが大切です。
◇その他
  • 今の野菜の高値の原因は、10月の台風によるものです。その時期に植えるものが今頃出てくるはずだったのですが、ダメになって播きなおしたりしなくてはならなくなりました。春めいてきたら、いろいろな野菜が一斉に出てくると思います。

  • 参考としてお持ちした「ちぢみ小松菜」は冬季限定で茨城県が出しているものです。ちぢみほうれん草はロゼット型に広がりますが、ちぢみ小松菜は葉先がちぢれるだけです。サッと洗って、ゆでずに炒めるだけでもおいしく食べられます。

  • 一般的に関東の春菊は株とり、関西の丸葉春菊などは摘みとりです。丸葉のほうがえぐみが少ないと思います。
◇「みつば」「水菜」などの写真
根みつば
(茨城)
根みつば
(岩手)
切りみつば
(茨城・JAなめがた)
切りみつば
(茨城・北浦)
切りみつば
(茨城・野友)
みず菜
(茨城・JAなめがた)
京みず菜
(京都)
潮江菜
(高知)
大株水菜
(大阪)
壬生菜
(京都)
赤ミズナ
(茨城)
京菜
(千葉)
サラダみず菜
(茨城)
ベビーリーフミズナ
(茨城)
ちぢみこまつ菜
(茨城・JAなめがた)
春菊
(大阪)
 
 

【八百屋塾2017 第10回】 挨拶講演「みつば、水菜」について勉強品目食べくらべ