Q:有機栽培の場合、個々で仕入れると輸送コストがかかり高くなったりしませんか?
A:それはあります。私たちがクール宅急便で送ると1000円かかります。今、農協さんがだいぶこちらを向いてくれるようになり、流通コストをおさえる動きが少しずつ始まろうとしているところです。深谷に全農のセンターがあり、毎日、昼頃に築地への便が出ています。それを利用して、この冬から生活クラブ生協ににんじんを出そう、という話があり、1箱200円でやってくれるかもしれません。小川町には若い農家がどんどん入ってきて、がんばってはいるのですが、なかなか出荷がうまくいかない、というケースもあるので、もっとそういうことができればありがたいです。
Q:「青なす」は採種をなさっているそうですが、その他の野菜も自家採種ですか?
A:私は、おいしいものを届けたい、という思いがあるので、おいしいもののタネは採りますし、F1でもおいしいものは積極的に使います。ルッコラは簡単にタネ採りができるのですべて自家採種です。風の丘ファームは、固定種の割合は少ないほうではないでしょうか。小川町のほかの農家で、固定種にこだわっているところもあります。
Q:畑を有機農法に切り替えるとき、うまく行くようになるまで、どれくらいの期間がかかるのですか?
A:畑を新しく借りるとなると、耕作しなくなって数年が経ち、雑草だらけになっているところが多く、雑草のタネがたくさん落ちているのが問題です。年に数回だけトラクターをかけていた、という畑では、機械が入らない下の土がかたくなっています。土が痩せているので、土作りもして、自分が思ったようなものができてくるのは3〜4年後でしょうか。
Q:どのようなくくりで有機農家をやっていらっしゃるのですか?
A:すべて無農薬、無化学肥料ですが、有機JASは取っていません。東京から近いので、来てくださったお客さまに畑を見てもらったり、じかに説明することができるからです。有機JASを取るにはお金もかかるし、品目数が多いと、書類を出すのが大変です。何か問題があったときのために、作業日報や、どういう肥料を使っているかなどはすべて記録し、栽培管理カードなどの提出ができるように対処はしています。隣町に食品残渣を使った堆肥工場があるので、その堆肥と、国産大豆のおからと籾殻で作るぼかしをメインの肥料として、栽培しています。日本の有機農家にとっては、有機JASがあるからといって、より売れるようになるわけではない、と思っています。
Q:有機JASを取っていないということは、われわれは店舗で有機野菜として販売はできない、ということになります。お客さまに無農薬野菜としておすすめするときに、農薬などを使っていない、という作業工程表のようなものは出していただけるのでしょうか?
A:はい。八百屋さんが口頭で説明する分には大丈夫なのですが、有機、オーガニックという表示はできません。「栽培期間中、農薬、化学肥料は不使用」というようなまどろっこしい表示になってしまいます。
Q:無農薬といっても、隣の畑の農薬が飛んで来ているかもしれないし、なかなか自信を持って言えないのですが…?
A:日本は狭いので、隣との関係は確かに難しい問題です。畑であれば少し距離を離すこともできますが、田んぼはすぐ隣に別の人の田んぼがあったりします。農薬を使う方も、飛散しないように気をつけているとは思いますが、回りとの関係で、まったくゼロと断言するのはむずかしいと思います。
Q:同じタネで有機と慣行栽培をした場合、違いはあるのでしょうか?
A:あります。私のところは堆肥、ぼかしを使い、化学肥料は使用していません。慣行とは窒素の濃度がかなり違います。窒素と糖は反比例することがわかっており、窒素濃度を上げると、その分野菜の糖は下がります。窒素は野菜の体を大きくするので、収穫量は上がりますが、甘みやコクのあるおいしい野菜はできません。窒素が多いと虫の被害が増えることもわかっています。有機質肥料でじっくり育てると、土の中にあるものをゆっくり拾い上げてくるのでうまみが出ます。私たちは、土の中に住むいろいろな微生物や生き物が食べられるような有機質を提供し、その生き物が増え、アミノ酸、ビタミンなどを作り、野菜がそれらをゆっくり吸い上げるのでおいしくなるのです。化学肥料にはいくつかのものしか入っていません。有機質肥料を使うと豊かな土になる、と言われるのですが、畑の土を見ただけではなかなかわかりませんよね。でも田んぼに水を入れると、一週間で水のなかは生きものだらけなります。慣行栽培の田ではおたまじゃくしがいるくらいです。田んぼに水を入れて一週間で土作りのすごさがわかります。
|