Q:GAP認証は一般の小売屋さんが取得しなければいけないものではないのですよね?
A:はい、生産者が取るものです。ただ、東京オリンピックに向けて国が推進しようとしているので、できればGAP認証されているものを扱っていただけるとありがたいと思います。
Q:私個人としては、簡単に「有機」とか言わないほうがいいと思っていて、もっと表示規制をすべきではないかと思うのですが、そのあたりはどうお考えですか?
A:規制するのもひとつの手かもしれませんが、消費者が納得して買っているという現状もあるかと思います。また、すべて有機JAS認証が必要となると、農家の方の負担になります。世界的な流れとしては、アフリカ、アジアなどで、認証制度ではなく、参加型有機農業が増えています。消費者が参加して、その生産を認める、というものです。慣行農業なのに有機、というのは問題ですが、有機JASに準じた栽培をされている方はすべて有機JAS認証が必要となると、混乱が生じるかもしれません。
Q:政府が推奨するのであれば、畑だけではなく、生産から流通まですべてがかかわってくることなので、農水省だけではむずかしいと思うのですが?
A:確かに、環境に関しては全体で取り組んでいかないといけないと思います。個人的には、子どもの頃からきちんと環境に対する取り組みを教育する必要がある、と考えています。今、学校でもいろいろな農業体験を行っていますが、その中で環境にやさしい農業を実践していけるといい。たとえば、千葉県のいすみ市では、今年から、給食のお米を全量、いすみ市でとれた有機栽培米にしています。こうした取り組みが少しでも増えていってほしい、と思っています。
Q:うちの店では特別栽培以上のものを扱っています。有機でも一定の基準で農薬の使用が認められている、ということですが、お客さまから「一定の基準って何?」と聞かれたらどう説明すればいいのでしょうか?
A:そのままでは甚大な被害が出そうなときに限り、別表2にある農薬は使ってもいい、ということです。
Q:有機JASで「転換期間中」と書いてあるのはなんですか?
A:JASに取り組むために転換中です、ということです。有機JASの場合は、最低2年(永年生作物の一部は3年)、使用禁止資材を使ってははいけない、とされています。有機農産物の表示基準、第5条に、申請して転換期間中の場合は、その旨を記載しなければならない、と規定しています。
Q:有機JAS、特別栽培以外のものの場合、八百屋は商品に無農薬、減農薬といった表示をしてはいけないのですか?
A:認証を受けていないものは、パッケージや箱に「有機JAS」などとつけることはできませんが、八百屋さんが「この農家さんは無農薬で栽培していますよ」と話すのは構いません。有機農産物が箱に入っていて、それをバラして袋に小分けして販売するときは、有機の小分け業者の認定が必要となります。ただ、八百屋さんが小分けして販売するとき、空箱の有機JASマークを切り取って小分けした農産物の近くに掲示した上で、POPに「有機の○○です」と書くなど、正確な情報を提供するのは問題ありません。
Q:オーガニックの基準は?
A:「オーガニック=有機」と考えてください。ただ、ややこしいですが、「オーガニック=有機JAS」ではない、とご理解ください。
Q:かなりややこしくて、消費者の立場からすると、「じゃあ、いったい何を選べばいいの」という思いがあるのですが?
A:何を基準にするかは人それぞれですし、なかなかむずかしいと思います。日本では、有機は安心・安全のイメージですが、諸外国では環境保全の観点から増えてきました。農林水産省は農薬も所管していますし、農薬を使うから安全ではない、とは言えません。農薬に対して拒否感がある方は、できるだけ有機や特別栽培のものを選ぶといいと思います。
Q:私は自然栽培をしている方を応援したいのですが、あまり増えないのはなぜ?
A:自然栽培は技術が難しいのが理由のひとつだと思います。国としてては、科学的に本当に効果があるのかどうかがわからないので、推奨しにくいのですが、自然栽培を否定するわけではなく、そういった方は非JASのほうでがんばっていらっしゃると思います。
Q:日本の農薬の使用量は、中国、アメリカに次いで世界で3位だと聞きました。ということは、国土の面積からすると世界一なのでしょうか?
A:数字だけをみるとそうかもしれませんが、ヨーロッパなど、気候が涼しくて湿度がない地域に比べて、日本は高温多湿で病害虫が発生しやすい。有機の方は農薬を使用しませんが、一般的には農薬を使って対処しています。
Q:オリンピック・パラリンピックの食材の調達基準のお話がありましたが、供給先というのはどこになるのでしょうか?
A:オリンピックの選手村や、関係者が集まるVIP用食堂などです。
Q:オリンピック・パラリンピックの食材の供給先というのはごく狭い範囲で、それだけのために農家さんがGAPを取る必要はないのでは?
A:考え方次第です。先日、イオンさんが、有機や、GAP認証を取っているものの割合を増やす、と発表しました。そこに食い込みたいとか、海外輸出を考えている場合は、GAPを取っていることが求められます。そうした経営戦略を持っていないのであれば、無理に取る必要はありません。
Q:特に高齢者や小さな農家さんには、GAP認証はきついと思うのですが、それがないとオリンピックの関係のところには納品できないのですよね?
A:納品というより、調達する業者さんの対象にならないはずです。消費者からすると、農家が農薬をどこに置いているか、とかいうことも気になりませんか? それをきちんと証明するものがGAPだと考えれば、差別化のひとつとして活用できるのではないでしょうか。
Q:有機JASの別表1、肥料及び土壌改良資材は天然物質に由来するものが多いとのことでしたが、そんなにたくさん天然物質に由来するものがあるのですか?
A:さまざまな岩石、蛎殻なども天然物質ですから、種類はかなりたくさんあります。
Q:日本は国土も狭く、農薬などの飛散もあると思います。JAS規格を取っている農産物について、お客さまに「本当に間違いない?」と聞かれたとき、どう説明すればいいでしょうか?
A:有機JAS認証を取っている圃場は、毎年検査しています。また、独立行政法人が流通しているものを買い上げて検査し、有機JASに反しているものがあれば立ち入り検査をすることになっています。また、登録されていないのに表示している場合などは、表示110番制度といって、一般の方にパトロールしてもらう制度があり、そうした情報にもとづいて調査に入ります。有機JAS制度は、そういったことで信頼性を確保しています。
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