■2017年11月12日 第8回 やっちゃば秋葉原
学べるマルシェ
公開八百屋塾 第1部 |
「秋葉でマナブ!野菜好きに育てた八百屋と料理家の奥義」 |
杉本青果店代表 八百屋の匠 杉本晃章氏
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◇はじめに |
- 本日は「公開八百屋塾」へお越しいただき、ありがとうございます。私のことを、テレビで見た方もいらっしゃるかもしれません。テレビ朝日の番組「相葉マナブ」などに出演し、旬の野菜の解説などをしています。
- 17年前から、この会場で、八百屋の勉強会「八百屋塾」を開講してきました。「野菜の神様」と呼ばれた江澤正平先生が創始者で、私自身も第1回目からの受講生です。
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- 江澤先生はよく、「野菜を売るのは八百屋でなければダメだ」とおっしゃっていました。何でも答えられて、お客さまのご相談にのれる八百屋になること。また、儲けるのではなく、お客さまに野菜の魅力を伝えて儲けさせていただく、という姿勢でいなければいけない、とも言われました。
- 今回のような野菜の勉強会は、私が仕入れをしている北足立市場でも、年に5〜6回、特に若い世代を対象におこなっています。最後は必ず食べくらべをして、自分の舌で野菜の味を確かめてもらいます。今日は、ゆでたブロッコリーの食べくらべを用意しました。ゆで時間によってどのように変わるのか、ぜひ体験してください。
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◇伝統品種とF1 |
- 今の野菜は昔と比べて、やわらかく、味が薄くなりました。いわゆるハイブリッド、F1になったからです。たとえばほうれん草でも、F1は病気に強く、揃ったものができます。それに対して、伝統品種のほうれん草は長さが揃わず、10センチのものも20センチのものも出てきてしまうので、収穫にも何回も畑に行く手間が必要です。
- 伝統品種のだいこんはかたくて独特のにおいがあるので、下処理をしてから煮ものにします。それを面倒だと思う人もいるでしょうが、きちんと手間をかけることで、F1のだいこんよりもおいしい煮ものに仕上がります。
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- さといもも、「大野芋」や「八幡芋」のような伝統品種は、弱火でコトコト煮なければいけません。F1のさといもは強火で煮ても大丈夫です。
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◇さといもをおいしく食べるには |
- 今日はいろいろな野菜をディスプレイしてありますが、こんなさといもを見たことがありますか。親芋があって、そこに子芋、孫芋がついています。
- 孫芋は掻いて出荷されるので、その痕から傷むことがあります。今の時期の温度ならいいのですが、冬になるとガリガリになっておいしくありません。特に「石川早生」などはそうなったらいくら煮ても無理です。よく、「この間買ったさといもはガリガリだった」という声を聞きますが、それはあたりはずれではなくわけがあるのです。えくぼがあるさといもはすぐに使うこと。掻いてない芋は長持ちします。価格が多少高くても全部使えますから、安い芋をたくさん買うより、いい芋を少量買うほうがいいと思います。
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- 「やつがしら」という大きなさといもは、親芋と子芋が合体したタイプです。おいしく食べたいなら、下半分は捨てること。よくある失敗は、おいしくないところも煮てしまっただけです。われわれは野菜の質のよさでA級品、B級品と呼びますが、「やつがしら」のAとBを比べると、Bのほうが食べられない部分が多い。可食部を考えると、高くてもA級品を買うほうがお得です。
- 残念ですが、このようなことを八百屋でもわかっていない人がいます。だから、「八百屋塾」で勉強しているわけです。「あの八百屋で買えば、絶対に間違いない」と言われるように、これからも努力を続けたいと思います。
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◇旬のねぎは焼くととびきりのおいしさ! |
- これから、ねぎはどんどん甘みとうまみが増す時期です。ねぎは10ケ月かけて育てます。畑に畝を作って定植し、伸びたらそこに土をかけていき、最終的にはかけた土のほうが高くなるほどです。土かけが少なかったり、かけた土が強い風に飛ばされてしまうと、青い部分が多いねぎになります。軟白部分が多いねぎは、やわらかさが違います。
- 3センチほどの長さに切ったねぎをホットプレートで焼いて子供たちに食べてもらったら、「うちで食べるねぎとは違う!」と驚かれました。ねぎは薬味として生で使われるのがほとんどです。生のねぎは辛みがありますが、焼くと甘くなっておいしいので、子供も食べるようになります。これから旬を迎えるので、ぜひ焼いて食べさせてあげてください。
- ねぎは2月の下旬頃から花芽を出し、やがて花が咲き、ねぎ坊主をつけます。これを「トウが立つ」といい、トウが立ったねぎはかたくておいしくありません。
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◇ブロッコリーとカリフラワー |
- 真っ白で上品なカリフラワーは、戦後から1985年(昭和60年)頃まで、高級野菜として扱われていましたが、1985年(昭和60年)を境に、ブロッコリーにとってかわられました。ブロッコリーの緑色は栄養価の高さを感じさせますし、また、カリフラワーは2〜3人の家庭には大きすぎた。生産者としても、カリフラワーは広い株間が必要で、ブロッコリーなら倍くらい栽培できます。今はブロッコリー9対カリフラワー1くらいのシェアです。
- ブロッコリーは簡単にゆでられ、きれいなグリーンなのでお弁当やサラダにいい。私の祖母は畑で作っていて、収穫すると、ゆでで酢のものにしました。今でいうピクルスです。考えれば、ずいぶんハイカラだったと思います。
- ブロッコリーの選び方は、花蕾(からい)がかたいこと。ひとつひとつの花が大きくないこと。茎が細いものより太いもの。細いのは夏のブロッコリーです。旬は2〜3月で、茎の太いものが出てきます。茎もおいしいので、花蕾とは別に、スティック状にしてゆでて食べてください。以前、学校給食で「ブロッコリー(花蕾だけ)」という注文がありました。残った茎だけ売るわけにもいかず、おいしい部分なのに捨てるほかありませんでした。
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◇りんごについて |
- 「ぐんま名月」、「シナノゴールド」、「シナノホッペ」、「王林」、「シナノスイート」など、今日並んでいるりんごは、長野県の山ノ内町からの直送品です。
- 山ノ内町と私の店がある足立区は友好提携都市で、数年前から山ノ内町のりんごを足立区のみなさんに食べてもらおうという取り組みを始めました。それがきっかけで、生産者さんに「八百屋塾」にも来てもらうようになり、少しずつ、山ノ内町のりんごを取り扱う八百屋が増えています。
- 形など見た目はいいから、確実に熟したものを、採ったらすぐに東京に運んでもらっています。年内生産で、貯蔵はなし。今、早生、中生種、晩生をあわせて、年間、1500ケースほど売っています。
- 「ぐんま名月」は、「あかぎ」と「ゴールデン」の交配種で、作付けはりんご全体の0.2%くらいです。無袋栽培で、これから蜜が入ります。
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- りんごにはさまざまな品種がありますが、それぞれに特徴があっておいしい。中生種は甘みと酸味のバランスがいろいろなので、好みのりんごを選ぶチャンスだと思います。食べくらべをして、それぞれの味を覚え、好みのものを選んでください。
- 私は「陽光」のようなすっぱいりんごが好きですが、最近は見かけなくなりました。「ふじ」も採れたてで多少酸があるものがいい。完熟果は、蜜が入っているものを貯蔵すると黒くなります。貯蔵されるのは熟していないりんごです。
- ニュージーランドのりんごも出回っています。小さめで紅玉に似ています。国産の長期低温貯蔵したものより、おいしいと思います。外国ではりんごは皮ごと食べます。日本人はきれいに皮をむいたり、変色しないように塩水に漬けたり、手をかけるので、食べるのが面倒になってしまう。皮の下には栄養が豊富ですし、できれば皮ごと食べてください。
- 「葉とらずりんご」とは、葉っぱを取らずに育てたものです。太陽の光が当たらない部分は真っ赤にはなりませんが、赤いかどうかは味には無関係です。反射板で色だけつけているりんごもありますし、色がいいからおいしいというわけではありません。見た目より味で判断して、たくさん食べていただきたいと思います。
- 品種名を書いて売っているのは、じゃがいもとりんご、最近ではぶどうぐらいでしょうか。ホクホクが好みなら「男爵」、煮崩れがいやなら「メークイン」と、品種は選ぶ基準にもなります。本来はそのほかの野菜や果物も品種で売らなければいけない、と私は思っています。
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■2017年11月12日 第8回 やっちゃば秋葉原
学べるマルシェ
公開八百屋塾 第1部 ブロッコリーの食べくらべ |
◇ゆで時間の違うブロッコリーを食べくらべ |
- 「八百屋塾」では、話を聞くことに加えて、実際に食べることを大切にしています。今日の食べくらべのテーマは、ゆで時間を変えた「ブロッコリー」です。
- 「花蕾」というのは花のつぼみのことで、同じくらいの大きさに切るのがポイントです。小さい子がいるなら一口で食べられるくらいに、お弁当に入れるならもう少し大きく、料理の付け合わせならより大きいほうが水っぽくなりません。ゆでる前に用途に合わせた大きさに切って、お湯に入れます。お湯の量、ゆで時間は、好みもあるので正解はありません。ゆでたらざるにあげ、水にはとらず、そのまま冷まします。花蕾の中に水分が残っているので、しっかり水けをきるのがコツです。ブロッコリーを1個ゆでると、たいてい1回で食べきれず、冷蔵庫で保存します。ゆでおいたブロッコリーは子供が食べない、という話をよく聞きますが、残った水分のせいではないかと思います。
- アメリカ人はブロッコリーを生で食べます。ヨーロッパでは6分以上ゆでて食べることが多いです。
- 今日は、沸騰したお湯に芯から入れて、再沸騰後1分、3分、6分のものを用意しました。子供たちには3分くらいゆでたものが受け入れられやすいと思います。煮込みやグラタンにすると、6分ゆでたものと似たような食感になります。もしゆですぎてしまったら、つぶしてパスタソースにするとおいしく食べられます。
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