■2017年6月11日 第3回 パプリカ・すもも 〜 勉強品目「パプリカ」について 東京青果(株) 安藤克行氏
  • パプリカというと、赤や黄色とカラフルな色、大きい、甘みがある、ずっしり重い(肉厚)。ピーマンは緑色が多くて、苦く、小さくて軽いというイメージがあるのではないでしょうか。でも、植物学上の分類では、どちらもナス科トウガラシ属で同じものです。明確な分類・定義はされておらず、植物学的に区別する方法はありません。

  • 原産地はトマトなどと同じ、南アメリカです。15世紀の大航海時代に、香辛料としてヨーロッパに持ち込まれました。先に入っていたこしょうとともにペッパーと呼ばれ、貴重なものとして扱われていました。
東京青果(株) 安藤克行氏
  • ヨーロッパに持ち込まれたトウガラシ属には、辛いものも甘いものもあったそうです。それが各地で栽培されるようになり、品種改良が進められ、辛くないものが選別されて、ピーマンやパプリカになったと考えられています。

  • もともとパプリカはハンガリーで品種改良されたピーマンの一種で、肉厚で甘いものをパプリカというようになりました。

  • 植物学上はパプリカもピーマンも同じものですが、色、大きさ、味がまったく違います。これは、ピーマンは未熟果、パプリカは成熟した果実を収穫するからです。ピーマンは開花から15〜20日、パプリカは40〜50日で収穫します。

  • ピーマンも熟すと赤くなりますし、パプリカは未熟なときは緑色です。つまり、ピーマンとパプリカは、熟度と品種特性によって名前を呼び分けているだけ、ということになります。

  • 赤パプリカは、緑色から一回黒くなり、そのあと色が抜けて赤くなります。黄色いパプリカは、緑から色が抜けて黄色くなります。あいだの期間がないので、黄色のほうが4〜5日ほど早く色がつきます。産地では出荷に合わせて植えつけをずらしたりしているのですが、たまに黄色ばかりになってしまうこともあります。

  • パプリカとピーマンは植物として同じものなので、含まれる栄養素も同じです。ビタミンC、カロテンなどが豊富で栄養価が高く、これらの成分は抗酸化作用があるので、アンチエイジング、老化防止などに有効だといわれています。パプリカは完熟なので、ビタミンC含量をピーマンと比べると、2倍以上多く含んでいます。パプリカのほうが単価も高いですが、栄養価も高いといえます。

  • パプリカは1993年(平成5年)に輸入解禁となり、この25年ほどで、一般家庭でも使われる野菜として定着しました。輸入品の主な原産国は、韓国、オランダ、ニュージーランド。国内では、2006年(平成18年)に熊本で栽培が開始され、宮城、高知、宮崎、茨城、千葉、山形、長野、広島、北海道など、全国で栽培されています。

  • 東京都、都市場でのパプリカの取り扱いをみると、韓国産57%、オランダ11%、ニュージーランド8%と、約75%を輸入に頼っている状況です。残り25%が国産で、うち5%が宮城、茨城、高知、宮崎が3.5%ずつとなっています。なお、パプリカは市場外流通も非常に多い作物です。

  • パプリカは一般農家のほか、農業以外の業種がガラス温室を建設して、大規模な栽培を行っているのが特徴です。山梨の北杜市にある大型の連棟ハウスは、ガスの会社が親会社です。こうした大型の施設は水耕栽培です。パプリカの樹は10メートル以上に成長するので、作業員が昇降機を使って収穫します。

  • 農協として産地化し栽培に取り組んでいる例は少なく、茨城、熊本などの一部限られたところだけだと思います。

  • パプリカ・ピーマンの新しい品種をいくつかご紹介します。デルモンテの「ガブリエル」は手のひらより大きいのが特徴で、夏頃の出荷になります。「こどもピーマン」は、タキイ種苗が開発した苦みの少ないピーマンです。ハラペーニョの辛さが欠落した品種ということで、ピーマンとして食べるとやや物足りないかもしれません。デルモンテの「パプリコット」はこぶし大くらいの大きさで、茨城の「スィートカクテルペッパー」も小さな品種です。普通のパプリカは1個が大きいので、こうした小さいものはいろいろな色のものを使える、と好評を博しています。

  • 今日は、韓国産、オランダ産、国産のパプリカをご用意しました。色は赤、黄、オレンジです。韓国産は通年出ているのに対し、オランダ産は6〜12月くらいまでで、そのうらとしてニュージーランドが入ってきます。ちょうど今は端境期です。

  • オランダやニュージーランドのほうが韓国より単価が高いのは、輸送にコストがかかるからです。韓国からは船で、1日で下関につき、各地に配送されます。3日〜1週間で市場に並ぶと思います。オランダ、ニュージーランドはエアーです。こちらも1日で来るので、日数的にはほぼ変わりません。

  • 今日お持ちした国産パプリカは、宮城、豊通食料のものです。トヨタ通商の子会社で、宮城にある自動車工場の廃熱を利用して栽培されています。もともと南米原産で、冬場は温度がかかるので、北海道、釧路では製紙会社の廃熱を利用し、大型プラントで栽培している事例もあります。

  • 「ミニパプリカ」は茨城、アグリニュー。一応、通年流通していますが、夏場に多くなります。

  • ピーマンを完熟させた「赤ピーマン」は千葉。サタカのタネが開発した辛みがマイルドなジャンボとうがらし「福耳」、「ジャンボししとう」もお持ちしました。

  • 「ししとう」、「万願寺」、「伏見」など、本来は辛くないはずの品種でも、ときおり辛いものがあります。水、日照、温度など、天候によって生育期に強いストレスがかかると、変異をして辛くなります。また、トウガラシ属の辛み成分は劣性遺伝子にのっているので、品種としては辛くないはずのものでも、劣性×劣性だと辛くなることがあるようです。
◇「パプリカ」の写真
パプリカ・赤
(宮城)
パプリカ・黄
(宮城)
パプリカ・オレンジ
(宮城)
パプリカ・緑
(ニュージーランド)
パプリカ・赤
(韓国)
パプリカ・黄
(韓国)
パプリカ・オレンジ
(韓国)
パプリカ・白
(オランダ)
パプリカ・赤
(オランダ)
パプリカ・黄
(オランダ)
パプリカ・オレンジ
(オランダ)
パプリカ・黒
(オランダ)
ミニパプリカ
(茨城)
赤ピーマン
(千葉)
福耳とうがらし
ジャンボししとう
(茨城)
■2017年6月11日 第3回 パプリカ・すもも 〜 勉強品目「すもも」について 橋本幾男氏
  • すももは、まだ少し時期が早く、全部ハウスです。すべて山梨、「貴陽」、「サマーエンジェル」、「ソルダム」、「かんのすもも」をお持ちしました。

  • 「貴陽」は6個入れと7個入れがありますが、6個入れは冷蔵庫に入れて4日、7個入れは1週間経っています。すももは必ず冷蔵庫に入れてしめないと味がのってきません。持って来てすぐ売ると、すっぱいとかおいしくないとか、苦情が来るので気をつけてください。7個入れの「貴陽」はちょうど食べ頃だと思います。
橋本幾男氏
  • 「かんのすもも」は、おそらく「太陽」系だと思います。

  • 「ソルダム」は、露地の最後になると「レッドソルダム」になります。これよりは「ソルダム」のほうがおすすめです。塩山あたりの「ソルダムエース」はいいと思います。

  • 「サマーエンジェル」は、酸が少なくておいしい品種です。

  • 「大石早生」は露地が出ていましたが、まだ小さいので持ってきませんでした。これから本格的に出てくる露地ものも、「月光」も、冷蔵庫で10日ぐらいしめてちょうどいいと思います。
◇「すもも」の写真
貴陽
(山梨)
サマーエンジェル
(山梨)
ソルダム
(山梨)
かんのすもも
(山梨)
■2017年6月11日 第3回 パプリカ・すもも 〜 「和歌山の梅」について (株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 本日の講演で、環境を大事にした農業というお話がありましたが、和歌山にも、地球にやさしい循環型農業を行っている地域があります。今日は、その和歌山の梅をお持ちしました。

  • 梅の木の上の葉をとって日に当てて育てた実は、黄色や赤に色づきます。真ん中が青梅で、下のほうは樹熟させるそうです。

  • 青梅は梅干しには向かず、シロップやジャムがおすすめだと聞きました。1キロの梅と氷砂糖を漬けておけば、1週間か10日で飲めるようになります。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 樹熟した下のほうの梅の実が梅干し向き、とのことです。

  • 今年は天候の影響で、あまり雨が降らず、梅が不作だそうですが、梅シロップ、ジャムなどを作ってみたいという方は、のちほどここにある梅をお持ちください。
南高梅
(和歌山)
紅南高梅
(和歌山)
梅シロップづくり
 

【八百屋塾2017 第3回】 挨拶講演「環境保全型農業の推進について」勉強品目食べくらべ