■2017年4月9日 第1回 開講式 〜 勉強品目「春野菜・新野菜」について 群馬県地域興しマイスター 担い手支援スペシャリスト シニア野菜ソムリエ  田村善男氏
  • うどは、1975年(昭和50年)頃、東京が69%のシェアを持っていました。当時はうどといえば、東京うどでした。1985年(昭和60年)になるとそれが54%になり、2000年(平成12年)には栃木が4割で、茨城、東京、2008年(平成20年)になると栃木が半分を占めるようになりました。

  • ハカマから頭のてっぺんまで白いのが東京うどです。ムロといって、地下に穴を掘り、根かぶを入れて軟化栽培します。昔は春、3〜5月だけの出荷でした。
田村善男氏と高橋芳江氏
  • うどを春だけでなく、年末あたりにも売りたいと考えた農家がいて、出荷時期を長くするために、群馬の嬬恋、昭和村などの高冷地に根かぶを持っていきました。それを養成したところ、うどは休眠する性質があるので、早く芽が出て、12月頃に出せるようになりました。そうした工夫を重ね、現在は周年出荷されるようになった、というわけです。

  • 昭和村で、1975年(昭和50年)頃、土を寄せて、上の部分は青いまま出したのが「山うど」です。最初は「緑化うど」という商品名で出ていました。「山うど」といっても栽培しているもので、山で育ったうどではありません。最近は、栃木、群馬が主力で流通しています。

  • 野生のうどは、関東では4〜5月頃が時期ですが、量が少なく、扱う人もいないので、店頭に並ぶことはまずないと思います。

  • ふきは、年間の量としては、愛知が6割と圧倒的に多くなっています。愛知は「愛知早生」、刀根沼田などは「水ぶき」という品種を使っています。

  • ふきとふきのとうは、別々に出ます。まず最初、春先にふきのとうが出てきて、そのあと、茎の部分は別に出てくる。ふきのとうからふきが出るわけではありません。

  • ふきのとうには、雄と雌があります。花粉を持っているほう、黄色っぽいのが雄で、白いのが雌です。飲食店では特に蕾の状態がベストですが、すぐに開いてしまうのでなかなか難しいものがあります。

  • ふきには品種がいくつかあり、茎だけを取るものや、ふきとふきのとうが両方取れる品種もあります。料理をする場合は、板ずりをすると色よくあがります。

  • 新しい野菜もいろいろ出ていますが、消費者からすると、名前も知らない野菜は、食べ方がわからないと買えません。新しい野菜を扱うなら、八百屋さんが知識を持っておく必要があります。

  • 最近はイタリア野菜も増えています。埼玉に「ヨーロッパ野菜研究会」というグループがあり、めずらしい野菜をたくさん作っています。種苗会社のオープンデーでは、カーボロネロやさまざまななすなどを、農場で展示しています。見慣れない野菜は売るのに苦労します。生産者は自分たちでレストランなどを新規開拓して、直接取引することが多いようです。八百屋さんはそこにどう絡んでいくか、課題はいろいろあるでしょうが、チャレンジする価値はあるかもしれません。

  • パプリカは最近の中では伸びた野菜の代表で、消費も増えています。1982年(昭和57年)頃、築地の仲卸、大祐の会長がオランダでパプリカを食べ、色鮮やかで肉厚でおいしいので、これが日本の食卓にあったら豊かになるだろう、と考えてタネを持って帰ってきました。当時、100グラムのタネが27万円以上もしたそうです。高知、茨城などに入れて栽培しましたが、10年後には自由化になりました。最初はオランダがトップのシェア、今は韓国、ニュージーランドで9割以上を占めています。国内で挑戦している産地の課題は、量と継続性です。ただ、いずれ、年間を通して国産のパプリカが流通する時代が来るかもしれません。

  • 新しい野菜として、アイスプラント、ロマネスコ、グラパラリーフ、食用ほおずき、プチヴェール、蕾菜などがあります。にんじんにも紫、黄、白など、さまざまな色のものがあり、紫アスパラ、ホワイトアスパラなどもあります。オクラにも紫オクラ、丸オクラがあったり、リーキも注目されています。ホワイトアスパラやリーキなどは、昔からあった野菜ですが、消費に結びつかず産地が定着しませんでした。
◇質疑応答より

    Q:軟白うどは出荷量にかなり差があると思うのですが、その理由は?
    A:軟白うどの時期は本来3〜4月ですが、根かぶを冷蔵したりして、多少出荷時期が延びてはいます。ただ、まだ年間通して作るのは難しいことと、生産者としては採算面もあって、多いときと少ないときがあるのではないでしょうか。中にはがんばっている生産者さんもいるので、年間安定して扱いたければ、そういう方を探してどう結びつけるか、だと思います。

    Q:愛知と群馬を比べると、ふきは群馬のほうがアクが強く、ふきのとうは愛知のほうがアクが強い気がするのですが、なぜですか?
    A: アクの強さについては専門ではないので分かりませんが、品種の問題はあるかもしれません。愛知は「愛知早生」、群馬は「水ぶき」が中心で、「水ぶき」はふきもふきのとうも両方出荷できます。愛知はふきのとうは別の品種で作っていると思います。

◇「春野菜・新野菜」の補足 〜 東京青果(株) 藤原寛氏
  • 詳しい話は田村さんがしてくれたので簡単に紹介します。根みつばは茨城産。シャキシャキとした歯触りと、すがすがしい香りで、根がついているので日持ちがいいのが特徴です。

  • ふきは愛知産。食用にするのは地下茎から出てきた葉柄の部分です。

  • ふきのとうは北海道産。早春の季節食材で、天ぷら、辛子和え、ふきのとう味噌などがおすすめです。
東京青果(株) 藤原寛氏
  • うどは栃木産。完全に遮光して栽培され、「軟白うど」と呼ばれます。

  • 山うどは群馬産。ある程度日光に当てながら根元に土をかぶせて軟白したものです。軟白うどと比べると、苦みやアクがありますが、香りや風味が強く、うど本来の味が楽しめます。

  • 新たけのこは熊本産。通常は、九州や四国は12月頃から収穫が始まり、関東近郊では4〜6月くらいが旬です。品種は「孟宗竹」、白くてやわらかく、えぐみが少ないのが特徴です。

  • 葉たまねぎは千葉産。玉の部分がふくらみかけたくらいの早い時期に、葉つきのまま収穫したもので、たまねぎと青ねぎ両方のおいしさが楽しめます。新たまねぎよりさらにみずみずしくてやわらかく、甘みがあって辛みはマイルドです。
◇「春野菜・新野菜」の写真
うど
(栃木)
山うど
(群馬)
ふきのとう
(北海道)
ふき
(愛知)
ふき
(静岡)
たけのこ
(熊本)
根みつば
(茨城)
セルリー
(東京清瀬・並木農園)
葉たまねぎ
(千葉)
西洋野菜バラエティ
(静岡)
   
◇伝統野菜について 〜 (株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 私は江戸野菜コンシェルジュの1期生なので、田村さんから江戸東京野菜の紹介もしていただけて嬉しかったです。江戸東京野菜に限らず、八百屋塾で、ときどき日本全国各地の伝統野菜をご紹介しています。昨今はF1種ばかりですが、伝統野菜は味があっていいね、と見直されています。

  • 今日は、香川県の「葉ごぼう」と、奈良の「香りごぼう」をお持ちしました。「葉ごぼう」は、茎と葉を食べるもので、茎はシャキシャキした歯ごたえで天ぷらに、葉は佃煮などに使います。「香りごぼう」は今の時期だけで、とてもやわらかくておいしいので、のちほどきんぴらで試食していただきます。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 江戸東京野菜を守る活動をしている福島さんという農家の方から、貴重な菜花をいろいろいただきました。丸ではなく細長い形が特徴の「品川かぶ」の菜花、江戸時代の頃から三河島地域に伝わってきた「三河島菜」、大きな「下山白菜」、「後関晩生」や「城南小松菜」、多摩に100年以上伝わっている小松菜の菜花などです。めったに手に入らないものなので、のちほど食べてみてください。

  • 「赤根ほうれんそう」は軸の部分が赤い色で、今の時期が甘くておいしいそうです。これも所沢の福島農園のものですが、ほぼ無農薬、無化学肥料で、えぐみが少ないので、生でも食べられます。

  • 銀座にある山形のアンテナショップで山菜のイベントをしていたので、「山わさび」、「赤こごみ」、「野かんぞう」などをお持ちしました。

  • その他、めずらしい野菜としては、サラダなど生で食べられる「ケール」、「カーボロネロ(黒キャベツ)」の菜花などもあります。

  • 東京の足立区には、あさつき、木の芽などを作って出荷するつまもの農家さんがたくさんあったのですが、きれいに切り揃えて箱に並べるのは大変な作業で、辞めてしまう方が多くなりました。少しでも残ってほしいと思っており、今後もご紹介していくつもりです。
◇伝統野菜や菜花の写真など
葉ごぼう
(香川)
香りごぼう
(香川)
源平ごぼう
(香川)
品川かぶの菜花
(福島農園)
三河島菜の菜花
(福島農園)
下山白菜の菜花
(福島農園)
後関晩生の菜花
(福島農園)
城南小松菜の菜花
(福島農園)
多摩の小松菜の菜花
(福島農園)
ほうれん草の花
(福島農園)
赤根ほうれん草
(福島農園)
あさつき
(福島農園)
 
■2017年4月9日 第1回 開講式 〜 勉強品目「中晩柑」について 橋本幾男氏
◇勉強品目「中晩柑」
  • 今日は、夏みかんやはっさくなどの中晩柑をお持ちしましたが、昔と違ってあまり売れなくなってしまいました。

  • 夏みかんは、東京青果で扱っているのは千葉産だけです。昔は静岡の「するがエレガント」という甘夏によく似たものがおいしかったのですが、すっかり見なくなりました。

  • グレープフルーツは、今年はあまりよくない、と聞きました。とにかく大玉が少ない。昔はカットして中身をスプーンですくって食べたりしましたが、今は皮をむいて中の身だけにしてパックして売ったりするので、大玉がないと困ります。寒いとすっぱく感じるので、もう少し陽気がよくなるとグレープフルーツがおいしく感じられると思います。
橋本幾男氏
  • 今年は「メロゴールド」がおいしかったのですが、終わってしまいました。「せとか」も終わりです。今年はハウスみかんが早いのではないかと思います。

  • 和歌山の甘夏は、文旦が入っているので、比較的食べやすいと思います。

  • はっさくは、これから出てくる「さつき」より、「木なり」のほうがおいしいと思います。
◇「中晩柑」の写真
夏みかん
木なりはっさく
木熟はっさく
 

【八百屋塾2017 第1回】 挨拶講演「八百屋のありかた」勉強品目食べくらべ