■2009年10月18日 第7回 〜 講演「“きのこ”について」
 東京青果(株) 野菜第5事業部 グループマネージャー 南 佳伸氏
◇きのこの栽培方法について
  • 基本的に、きのこは「原木栽培」と「菌床栽培」の2つに分けられます。原木で栽培されているのは、しいたけ。あと、ごく少数ですが、なめこも原木で栽培されています。

  • なめこは、秋口〜冬にかけて、特に冬場に、原木栽培が若干出てきます。ただし、1ヵ月〜2ヵ月程度の期間で、2〜3ケースほど。ほとんど原木栽培のものはありません。希少性が高い。

  • 原木栽培は、全国生産の2割程度。ただし、市場流通としては1割ぐらい。あとは、道の駅などに生産者の方が持って行ったりして販売している、というのが現状です。

  • メインとなるのは菌床栽培。菌床栽培には2種類のやり方があり、牛乳瓶のようなちょっと大きめの瓶で作るのと、1kgぐらいのブロックで作る方法があります。
東京青果(株) 野菜第5事業部
グループマネージャー 南 佳伸氏
  • エノキ、ぶなしめじ等の菌床栽培は、ポットのような瓶で作っています。エノキは裏側を見ると、丸い形をしていますが、それは瓶で作っているため。しいたけは、1.2 kg〜2 kgぐらいのブロックからニョキニョキと出てくる。マッシュルームはまたちょっと違っていて、「床(とこ)」というもので作っています。

  • エノキの場合、原料は、だいたいナラの木。その他、栄養剤として、米ぬか、ふすまを使う。エノキの場合は、トウモロコシの芯の部分(コーンコーブという)を粉砕したものを入れて栽培しています。マッシュルームは、馬糞とワラを混ぜて発酵させます。温度を60〜70度ぐらいまで上げて、また温度を40度に下げて…。詳しいことは分かりませんが、そうした方法で作っている、という話を聞いたことがあります。

  • きのこは、だいたいが菌床栽培で、ハウスで空調を効かせて作っているものと、キュウリ等を作るようにトンネルで作っているところがあります。いずれにしても、ある程度温度管理をされているので、工場生産的。よって、野菜等に比べると、数量的にも、価格も、安定して供給できています。

  • 夏場の不需要期(私はあまり好きな言葉ではないのですが…)には、生産量自体を落としています。ただ、従業員の年間雇用ということを考えて、ある程度は作らなくてはいけない。ですから、半分に減産するというところまではいかないと思います。
◇「マイコファジスト」とは
  • 「マイコファジスト」とは、全農長野が中心になって提唱している言葉で、「菌食主義者」という意味です。菌学者の今関六也氏(1904〜1991)が唱えた栄養論、「菌食論」の考え方を元にしています。菜食主義者(ベジタリアン)は野菜を中心に食べる人たちのことですが、それに対して、菌食主義者というのは、きのこをいっぱい食べることを心がけている人のこと。「きのこを積極的に食べて、健康になろう!」ということです。

  • エノキは、ダイエットやメタボ対策に効果があるといわれています。JA中野市が、「家庭でできるエノキタケエキスの食べ方〜エノキ氷」というものを紹介しています。ペースト状にしたエノキを60分煮出して、その液をキューブにして冷凍しておく。その氷を、味噌汁、煮物、吸い物などの料理に毎日使い、3ヵ月ぐらい続けると、痩せたり、内臓脂肪が減りますよ、と。作るのにかなり時間がかかって、大変そうではあるのですが…。ぜひ、お試しください。

  • きのこには、特に、免疫作用があるといわれています。これからインフルエンザ等がはやると予想されているので、「きのこをたくさん食べて免疫力を上げて、インフルエンザに負けない体になろう!」というのが、私のスローガンです。みなさんもきのこをいっぱい食べて、健康になっていただきたい、と思います。

◇「原木しいたけ」と「菌床しいたけ」について

  • 「原木しいたけ」と「菌生しいたけ」の違いは、木で作っているか、ブロックで作っているか。菌床のほうが、歯ごたえがやわらかい。また、鍋などに入れると、ちょっと縮んでしまう。ただ、最近のものは、原木も菌床も、レベル的に近くなっていると思います。

  • 香りは、やはり、原木のほうがいい。ただ、最近は、特に、子どもたちが香りを気にするということもありますので、食べやすいのが菌床なのかな、という感じがします。市場流通は、9割以上が菌床です。

  • 見分け方は、肉厚で、膜が切れていないものがA級。膜が切れるとB級ということになっています。丸い形状ではなく、やや変型になると、それもC 級になる。A級は、まん丸で、膜が切れていない肉厚タイプ、ということです。

  • 原木しいたけは、1本を基本的に2年間使います。1年に3回、2年間で6回とれる。平均で11パック、1.1kgぐらいとれるといわれています。

  • 菌床栽培の1.2kgのブロックだと、出てきたものを間引きして、いいものを作れば、3.8パック。間引きをせずに数量をとると、6パックぐらいとれる。1つのブロックを3ヵ月間使う、といわれています。

◇「なめこ」について

  • なめこは、ほとんど瓶栽培で作っています。福島の鈴木農園では、「たべごろなめこ」や「ジャンボなめこ」といったものを栽培しています。「ジャンボなめこ」というのは、洗っていなくて、形が大きいタイプ。なめこの場合、瓶栽培をしていると、何回かとれる。一回出たものを小さめのときに切って、そのあとに出てきたのを大きくさせてとっているのが「ジャンボなめこ」です。

  • なめこの食べ方といえば、味噌汁がメイン。普通のなめこは、一回水で洗っているんです。「ジャンボなめこ」は洗っていなくて、そのままパックしているので、ソテーや天ぷらなどの料理でもおいしく食べられる。なめこ料理は比較的バリエーションが少ないので、そうした食べ方があるとご提案いただけると、もっともっと売れるのではないかと思います。

  • なめこは洗う派と洗わない派に分かれるようですが、普通は一回洗ってあるので、洗う必要はないと思います。もし気持ち悪ければ、洗っていただいてもよろしいのでは…。なめこの味噌汁を作るときは、沸騰してから入れるのではなく、水から入れるほうがぬめりが多く出る、ということです。これは好みですが…。ちなみに私は、なめこは洗わない派です。

◇「大黒しめじ(ほんしめじ)」と「丹波しめじ(はたけしめじ)」について

  • 「大黒しめじ(ほんしめじ)」と「丹波しめじ(はたけしめじ)」は、どちらも、タカラバイオが種菌を作っており、それを雪国まいたけと両方で販売しています。ですから、タカラバイオのものと、雪国まいたけのものと2つありますが、品物はまったく同じだと考えていいと思います。

  • 「大黒しめじ(ほんしめじ)」というのは、一般的に、「香り松茸、味しめじ」の味しめじです。

  • 「丹波しめじ(はたけしめじ)」は、いままでのぶなしめじのもうちょっと高級版というイメージ。軸が比較的がっちりしていて、食べたときの食感がいい。歯を当てたときに、パリッと割れるような…。和食でも洋食でも、何でも合うのが、このしめじです。

◇「山茶茸」について

  • 「山茶茸」というのは、エノキダケの原種です。昔からエノキと言われているのはホワイトなのですが、あれは品種改良によって白くしたものであって、基本的には、茶色いほうが原種。

  • 普通のエノキよりも歯ごたえがあり、食べたときの食感がいい。エノキ独特のツーンとくるようなにおいも比較的抑えられていて、食べやすい。私は、味噌汁にするのがいちばんおいしいと思っています。

  • エノキを栽培する瓶の口径のところに紙を巻いて、上に伸ばしていくと広がらない。広がっているのもありますが、それは、紙を巻かないで作ったタイプ。食味等は、それほど変わりません。

  • 新潟の津南町に、がんばっている山エノキの生産者がいます。山のなかに入って、原種のエノキをとってきて、それを培養して、いいものを選抜して…。どうしても種菌が疲れてくるので、そうするとまた選抜して、掛け合わせて、いいものを作っています。

◇「タモギタケ」について

  • 「タモギタケ」は、北海道や山形などで作られています。年間を通じて、それほど価格は変わらない。

  • 独特の黄色は、きのこのなかでもめずらしい。売るときに目立っていいのかな、と…。ただ、残念なことに、加熱すると色がなくなってしまうんです。炒め物や中華料理によく合うと思いますので、ぜひ、お試しください。関東だと、火曜日は配送の関係で入荷がないのですが、それ以外は安定して品物があります。

◇「アワビタケ」について

  • 「アワビタケ」は、ソテーなどにすると、かなり歯ごたえがあっておいしい。

  • 基本的には、沖縄等、暖かいところで、ブロック栽培されている。和歌山でも作られており、それは、瓶栽培。ほかのきのこは、一般的に、瓶よりもブロックのほうが栄養があるので、おいしいといわれるのですが…。「アワビタケ」に関しては、瓶で作っていても、かなりうまみや歯ごたえがあるので、おいしい。私としては、おすすめのきのこです。

◇「白舞茸」と「舞茸」について

  • 「白舞茸」は、舞茸の白いものだと思っていただければ結構です。黒い舞茸は、鍋や舞茸ごはんにすると、色が出てしまう。アクではないのですが…。色が黒くなってしまうので、そういうときは、白舞茸を使っていただくといいと思います。

  • 舞茸は、黒い色がからだにいいといわれています。ですから、鍋にした場合、あとのスープも飲まないと効能がないらしい。黒いのも悪くはないということです。みなさん、黒いからといってスープを捨てないようにお願いします。

  • 舞茸の色については、環境によって若干違いがある。黒っぽいものと茶色がかっているもの、どちらがいいとはいえない。選び方としては、肉の厚いもののほうが食感が楽しめていいと思います。

  • よく、舞茸でがばっと大きいのがありますが、私はそれを半天然と呼んでいます。まいたけは、完全空調の施設で、菌床のブロックに菌を植え付けて土のなかに埋めておいて、自然発生で作っています。植え付けは人工的、発生は天然。菌床のブロックの大きさによって大きかったり小さかったりしますが、雪国まいたけのものは、ひとつのブロックで600〜700gぐらい。それをスライスして売っています。

  • 本当の天然舞茸もありますが、なかなか市場流通にはのってこない。私が今年売ったのは、だいたい、10個ぐらいじゃないでしょうか。500g〜1kgぐらいで、だいたいキロ1万円という相場。かなり希少性があると思います。

  • 天然だと、外で作っている関係上、ゴミや虫、土などがついているので、ハケで落としたり、調整するのが大変。工場で生産されたものは、衛生面もきっちりしているので、洗わなくてもOK。その分、食べやすいのかな、と思います。

◇「雪嶺たけ(白嶺たけ)」について

  • 「雪嶺たけ(白嶺たけ)」は、全農長野や、福岡の大木町などで作っています。

  • 中華の高級食材といわれており、なかなか作るのが難しい。きのこのなかでは、安定して出荷ができない商品です。

  • 食べ方としては、ソテー等、炒め物がかなりおいしい。エリンギよりも、もうちょっと歯ごたえがあって、うまみがあります。

◇「ハナビラタケ」について

  • 「ハナビラタケ」は、基本的には生でも食べられる、という話を聞いています。

  • 若干、カレー粉のような、きのこらしくない香りがあります。また、比較的、歯ごたえもある。かなり、いろいろなバリエーションで食べていただける、と思います。軽く電子レンジで加熱して、ポン酢を回しかけただけでも結構おいしくいただける商品です。きのこっぽくないところが面白いと思うので、おすすめです。

◇「山伏茸」について

  • 「山伏茸」は、山形もがみ鮭川や、全農長野ちくまなどで作っています。

  • 山伏茸にも種類があり、サンゴのような形をしているので「サンゴ山伏」といわれるもの、ハリネズミのような形をしているものがあります。

  • 味はあまりありません。認知症予防といった効能があるといわれており、どちらかというと、薬膳に近いような商品なのかな、と…。スープ等で召し上がっていただくといいと思います。

  • サンゴ山伏は比較的店持ちがいいと思うのですが…。全般に、山伏茸は、あまり店持ちがよくないという傾向があります。

◇「生木耳」について

  • 木耳は、正確にいうと3種類ある。「白木耳」と、黒木耳のなかに2種類、「本木耳」と「あらげ木耳」というものがあります。基本的には、南のほう、暖かいところで生育します。昔は、沖縄でよく作っていました。

  • 中国産農産物の問題を消費者がかなり気にしていますので、日本の各生産者が木耳に目をつけ始め、全国的にいろいろなところで作っています。木耳は、このあと、量的にもたくさん出てくるので、価格もある程度安くなるのではないでしょうか。ただ、安くなった場合は、あまり市場には出さずに、乾燥に回すといっていますが…。いま、中国産の乾燥木耳がメインですが、今後は、国産もかなり出てきます。中華料理屋さんに乾燥木耳を納めている方がいらっしゃいましたら、国産の乾燥もすすめていただくと、売り上げ拡大につながると思います。乾燥なので、年間を通して、価格も安定していますので…。

  • 山形に、本木耳を作っている人がいます。本木耳といってもやや小さめの商品ですが、あらげ木耳よりも歯ごたえがいい。ただ、本木耳を作っているのは、この生産者1人だけ。基本的には、あらげ木耳がメインです。

◇「マッシュルーム」について

  • マッシュルームには、「ブラウンマッシュルーム」と「ホワイトマッシュルーム」の2種類があります。比較的、味が濃いといわれているのはブラウン。ホワイトのほうは、生で食べられる。

  • 大きな大きなマッシュルーム、「ジャンボマッシュ」というのは、出てきたものをある程度間引いて、栄養分を集中させて、大きく育てています。だから、その分、コストがかかっている。

  • 「ポット・ベラ」という商品は、ブラウンマッシュルームの品種のひとつ。品種であって、大きいマッシュルームをポット・ベラというわけではないらしいです。

  • 基本的に、きのこは、大きいほうがおいしいといわれています。ホワイトマッシュルームにしても、アワビタケにしても、大きいもののほうがおいしい。

◇「あぎ茸」について

  • 「あぎ茸」は、エリンギの系統、兄弟みたいなきのこです。傘が開いてしまった状態より、丸みを帯びているくらいが出荷に適した段階です。

  • 味もエリンギに似ています。形状が少し違うだけなので、「あぎ茸」がなければ、代替えでエリンギでもいいのかな、と…。

  • あぎ茸は、あまり、店持ちがよくない。特に、傘のところが…。そのへんをちょっと気をつけて販売していただいたほうがよいのでは、と思います。

◇今年の「松茸」について

  • 今年は「松茸」が高いといわれていますが、雨が降らなかったのが一因。きのこというのは、たとえば、しいたけであれば、原木に菌を植えて、ショックを与えるわけです。そうすると、自分の生命の危機を感じて、生えてくる。ショックの与え方には、一回水に浸水させるだとか、木を叩くとか、雷とか、気圧の変化とか…。さまざまありますが、松茸の場合は、要因の一つとして、雨があります。だから、雨がないと出てきません。普段は、時期によって雨が降り、ショックが与えられて、出てくるのですが…。今年は干ばつ傾向で、雨が降らなかった。「早松(さまつ)」といわれている松茸はそろそろ出てきているのですが、そのあと、雨が降らなかったために、夏からの「本松(ほんまつ)」が出てこなかった、ということです。

  • 長野では、「早松(さまつ)」は少なく、そのあと「本松(ほんまつ)」も少なく終わってしまうだろう、という話を聞きました。その後の雨で、このあと、もしかしたら出るかもしれないけれども、たぶん出ないだろう、という話です。

  • 今後出てくるとしたら、西のほう、京都、広島あたり。それが出てくれば、そこそこ量もいくのではないか、と思います。

  • 松茸担当者の話によると、「キンモクセイが2回咲いた年は、松茸が豊作だ」といわれているようです。今年は、キンモクセイが2回咲いた。よって、出るのではないか、という話もあるのですが、いまの天候の流れからいうと、ちょっと厳しいのかな、というのが現状です。

◇白いきのこは光を当てないで作られる?

  • 先ほどもご説明した「白舞茸」のほか、「ぶなぴー」というきのこも真っ白です。あれは、光を当てないで育てているというわけではなく、もともと、そういう品種です。

  • エノキは、品種改良で白くさせていった。それが、いまの白いエノキ。もともとの茶色い原種とは違うものと考えていただいたほうがいいと思います。

◇きのこは生で食べられる?

  • 最近、マッシュルームだけではなく、生で食べられるエノキがある、というのを聞きました。確か、四国の生産者の方で、海洋深層水か何かを使って、栽培しているらしいのですが…。私は、基本的に、きのこは、マッシュルーム以外は生では食べられない、と思っています。多少ならば大丈夫なのでしょうが、生で食べるのは危険性が高い。

  • 長野県あたりの栽培しているところに行って、瓶にできている段階のものを1〜2本つまんで食べる分には問題はないでしょう。ただ、何かあってはいけないので、加熱して食べるほうがいいと思います。

  • きのこを収穫してから、お客さまのところにまで渡るのには、流通等で時間がかかっており、ある程度鮮度が落ちています。ですから、生では食べないで、加熱して食べてください、と言ってます。
 

【八百屋塾2009 第7回】 実行委員長挨拶講演「きのこ」|勉強品目「きのこ」「りんご」|商品情報食べくらべ