■2014年1月19日 第10回 〜 講演「じゃがいも」について ホクレン
販売本部園芸販売室青果課 妹尾勝文氏 |
◇ホクレンの取り組みについて |
- ホクレンは、経済事業を担う農協の連合会のひとつです。主に北海道で生産された農畜産物を消費地に出荷し、販売しています。大型品目が多く、米、麦、てんさい、青果物などが主体です。
- 事業の全体像としては、「作る」、「支える」、「知らせる」、「広める」、「研究する」という5つの「る」がコンセプトになっており、これを結ぶのがホクレンの役割です。
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- 「作る」とは、安全・安心でおいしい農畜産物を求める消費者に応えるために生産する、ということ。「支える」とは、農畜産物の種子の供給、資材の導入などにより、生産者に寄与していく、ということ。「知らせる」とは、消費者の食と農に対する信頼を得るために、生産者と一体となって生産履歴を記帳、トレーサビリティシステムを構築し、情報の追跡や開示を行う、ということ。「広める」とは、生産された農畜産物を全国へ販売する、ということ。「研究する」とは、農業総合研究所や畜産技術研究所などで、新品種の開発など、幅広い研究に取り組む、ということです。
- 現在の農家戸数は、4万5千戸。農協数は130です。
- これまで、じゃがいもでは、「ノースチップ」、「きたひめ」、「ひかる」といったさまざまな品種を開発しています。「ノースチップ」は加工用で、ポテトチップスに使用される品種です。「きたひめ」も同様にポテトチップスに使用される年明け以降の遅型品種で、芽が出にくく、収量が上がるのが特徴です。「ひかる」は、生食用で、年内より年明けのほうが甘みが増します。「きたひめ」、「ひかる」には、シストセンチュウ抵抗性があり、これが今世界的に求められています。「男爵」、「メークイン」のようなポピュラーな品種には、シストセンチュウ抵抗性品種がなく、一度その土地に菌が入ると作れなくなります。
- じゃがいものほかに、春まき小麦の「春よ恋」という品種を開発しています。うどん用に使われます。日本では9割が輸入小麦で、残りの1割が北海道産です。たまねぎは、大玉の輸入たまねぎに対抗すべく、貯蔵性がよく、収量が上がる「さらり」、「収多郎」といった品種を作っています。「スターチス」という花の品種改良も行っています。また、お米は「ゆめぴりか」という品種を作っています。ここ最近、北海道は気温が上がって、5年前の東北と同じぐらいになり、10〜20年前に比べると食味や食率も向上しています。地元で消費するほか、全国にも販売しています。
- ホクレンは、貨物船を2隻持っており、主に牛乳を東京方面に毎日運んでいます。あわせて、じゃがいも、たまねぎも運ぶことにより、流通コストの削減を図っています。
- 「ホクレン 食と農のふれあいファーム くるるの杜」は、2010年の夏にオープンした直売所で、食育事業なども行っています。
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◇「馬鈴薯」について |
- 「馬鈴薯(ばれいしょ)」の名前の由来は、形が馬の首につける鈴に似ていることから名づけられたという説があります。日本へは1600年頃オランダ人によって持ち込まれ、「ジャガトライモ」と呼ばれました。飢饉の際の救荒作物として広まりましたが、西日本では気候が合わず、北海道などの寒高冷地を中心に伝播しました。
- 明治以降の開拓使による作付け奨励により、北海道で本格的な栽培が始まりました。開拓使が道外からさまざまな品種を導入し、北海道に適したものを選別、普及に力を入れた結果、北海道の基幹品目になりました。
- 北海道農業試験場、川田龍吉男爵などにより、優良な品種が開発されましたが、時代とともに品種は年々変化しています。
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◇じゃがいもの作付から出荷まで |
- 3月中旬頃、北海道はまだ雪がある頃ですが、雪を早く溶かすため、融雪剤を散布します。ハウスの中では、ミニコンなどに芋を並べ、太くて強い芽を出す作業を行います。
- 4月中旬頃になると、切り目を入れたタネ芋を植えます。植えた後はマルチで霜を防ぎます。早いところでは4月下旬から、ゴールデンウィーク前後に植えつけを行います。その後、トラクターにスプレイヤーという器具を取り付け除草剤を散布、防除を行います。
- 生育期になると葉が繁茂し、きれいな花が咲きます。花は品種によって白、紫、赤とさまざまで、7月頃に美瑛町に行くと男爵の花が咲いているのが見られると思います。
- 葉が枯れてくると、下の芋が完熟してきます。収穫は、早いところでは7月中、その他はだいたい8月のお盆前後から始まります。畑の中の芋を起こし、ハーベスターで収穫、コンテナなどに入れていきます。それをトラックで運び、倉庫で貯蔵します。選果は収穫直後に行い、順次出荷します。
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◇じゃがいもの作付動向 |
- 2011年(平成23年)の北海道における作付面積は53,000ヘクタールで、全国の6割超を占めています。10アールあたりの反収は、3,490キロ。収穫量は185万トンで、全国の77%。面積のわりに収穫量が多いのは、品種改良などにより収量性を高めているためで、特に、加工用、デンプン用は生食用より反収が高くなっています。
- 用途別に見ると、デンプン用が8品種、加工用が12品種、青果用が31品種、残りが種子用です。
- 北海道農業研究センター、北見農業試験場、ホクレン農業総合研究所で、タネ芋の試験などを行っています。
- 北海道のタネ芋は、静岡や長崎、鹿児島で生産されるじゃがいものタネにもなります。タネ芋については、国の機関で面積が定められており、計画に沿って栽培されています。通常のタネ芋の前に原種、原原種というものがあり、1〜2年で即タネができるわけではなく、品種によっては、10〜20年の開発期間を経て、ようやくタネになります。
- タネ芋と通常の芋では、消毒の回数が異なります。タネ芋は少し病気が入っただけでも流通できなくなるので、産地や畑を厳しく限定して作付しています。
- 今、ポピュラーな品種は、「男爵」、「メークイン」、「きたあかり」の3つ。「男爵」は9,757ヘクタールで全体の5割を占めます。「メークイン」は5,128ヘクタールで26%、「きたあかり」も1,562ヘクタールあります。そのほかにも、「とうや」、「マチルダ」、「きたかむい」、「スノーマーチ」、「アンデスレッド」、「インカのめざめ」など、品種は多様化しており、それぞれの畑に合った、病気への抵抗性がある品種の導入が進められており、400ヘクタール未満というものも多くなっています。
- 新品種の育種目標としては、青果用では、多収、良品質、耐病性、時期的には早生〜中生の品種。加工用も良品質が前提で、チップやコロッケに使われるので、揚げたときに焦げないよう糖分が少なく、多収も重要なポイントです。デンプン原料用は、多収、良品質、耐病性の品種が求められます。
- 選抜対象形質としては、最近、特にジャガイモシストセンチュウの抵抗性品種であることが大きな条件になっており、この形質を備えた「男爵」、「メークイン」以上の品種を開発しようとしています。
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◇じゃがいもの品種紹介 |
- 「男爵」は最もポピュラーな品種ですが、芽が深いので、加工用には、芽が浅く、「男爵」のような食味と貯蔵性のある品種が求められます。現在、「男爵」を超えるような品種の開発を目指して研究が進められています。
- 北海道の「メークイン」は、関西を中心に出荷されています。煮崩れが少ないので、カレー、シチュー、煮物などに向き、油で揚げる料理には向きません。
- 「ワセシロ」は、青果にも、加工にも使われている品種。早い段階に出荷できるのが強みです。ただし、芽は深いので、加工では使い勝手がよくないといわれます。早堀りのポテトチップス原料としても利用されています。
- 肉質が黄色い「きたあかり」は、だいぶ定着してきました。芽が動き出す時期が「男爵」より早いので、2月上旬ぐらいで出荷は終了します。粉質で、「男爵」同様、粉ふきいもに向いています。外食産業からも引き合いがありますが、色が黄色いのでサラダには使いにくいといわれ、白系の芋を上回るほどにはなっていません。
- 「とうや」は、「男爵」より早く出荷できることと、芽が浅いのがセールスポイントで、学校給食を始め、加工用に使用されています。大玉で、早い時期には評価を得ている品種です。
- 「マチルダ」は、まだあまり生産量が多くない品種ですが、肉質は黄色、形状は卵形、芽が浅く、加工に向いています。小粒傾向なので、冷凍食品メーカーが多く使用しています。芽が早く、2月いっぱいぐらいの出荷で終了します。
- 「さやか」は、丸くて芽が浅く、肉の色が白いので、サラダメーカーから引き合いがあります。大きいため作りやすく、貯蔵性もあります。ただし、味はあっさりしており、芋らしい味を求める人には物足りないかもしれません。
- 「ひかる」は、年明けに糖度が増す品種で、1月以降からが中心となります。芽が浅く、色は若干黄色いですが、サラダにも合います。
- 「スノーマーチ」は、2004年(平成16年)にできた品種で、1〜2月が出荷の最盛期です。そうか病に強く、食味は「男爵」並に良好、芽も浅いので、非常に有望な品種です。
- 「ゆきつぶら」は1〜2月中心の品種で、芽が浅く、白いので、加工用に向いています。食味もまずまずなので、煮物やサラダにもお使いいただけます。
- 「きたかむい」はホクレンで育成され、2007年(平成19年)にデビューした青果用品種です。丸くて芽が浅く、色は白。大玉で、2L、Lの比率が高いのも特徴です。「とうや」に似ており、年内から引き合いがありますが、食味的には年明けのほうがおすすめです。デンプンの糖化が進み甘くなりやすい。年内と年明けでは、食味がだいぶ異なります。
- 「インカのめざめ」は、大量生産はしていません。極早生で小粒、若干黄色みがかっているのが特徴で、ナッツや栗のような風味がする、といわれます。収量が上がらないので、面積は限られています。
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◇じゃがいもの消費拡大のために |
- 消費が伸び悩んでいますが、惣菜のサラダ、ポテトチップス、ファーストフード店のフライドポテトについてはある程度需要が見込まれます。
- 品種の特徴が消費者に伝わっていないので、今後、品種にあった料理法の紹介等をしながら、いかに裾野を広げていくかが課題です。
- 昨年、「じゃがい問題研究所」というホームページ(http://www.jagaimondai.jp/)を立ち上げました。じゃがいもの品種紹介やさまざまなレシピを掲載していますので、ぜひご覧ください。
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