■2013年7月21日 第4回 〜 食べくらべ
◇かぼちゃなどの食べくらべ
  • かぼちゃは粉質系の4種、「ほっこり133」、「くり将軍」、「イーティー」、「恋するマロン」をブラインドで食べくらべた。

  • 食べくらべにあたり、講師の野口総一郎氏より、次の説明があった。
    食べくらべたのは、最近伸びてきた品種です。「恋するマロン」、「くり将軍」、「ほっこり133」は、タイプ的には若干近い。「イーティー」はこの中ではややイレギュラーで、ホクホク感が強く、形に特徴があり、色がいい品種です。この4品種の中では一番作りにくいが、おいしい品種。「恋するマロン」、「ほっこり133」は、どちらかというと早く出す品種で、「みやこ」の次ぐらいに出ます。「くり将軍」は、遅出しの品種。非常に店持ちがいいために評価が高い。適度な粉質感と甘みがあり、果肉はややかため。「ほっこり133」は、非常に作りやすく、北関東で作っているところが多い。ほどほどの粉質感と甘みで、バランスがいい品種です。「恋するマロン」は、133と近いタイプですが、133より粉質感と甘みは濃い。どれも、生産者からも消費者からも評価の高い品種です。

  • 試食は、かぼちゃの含め煮2種(「恋するマロン」、「鹿ヶ谷」)、かぼちゃのオリーブオイル焼きローズマリー風味、唐辛子味噌、ズッキーニとトマトの和え物、かぼちゃの花のはちみつなど。
かぼちゃの食べくらべ
 
◇調理について
[古川恭子さんより]
  • 「鹿ヶ谷」は、典型的な日本かぼちゃ。みずみずしく、甘みが少なく、煮崩れしにくいという特徴があります。こういうタイプは、たっぷりの濃いめの出汁で煮るのがポイント。冷めていくときに味がしみるので、本当は前日に作っておくといい。

  • 最近のかぼちゃの味に慣れている人は、日本かぼちゃの味が物足りないかもしれませんので、料理屋さんでは、鶏そぼろあんなどがかかっていることが多いです。
古川恭子さん
  • 「恋するマロン」には、出汁は使っていません。水で煮ています。西洋かぼちゃは、昆布や鰹だしと相性がよくない。水で、しかも、しっかりと甘みを入れて煮ています。

  • 唐辛子味噌は、蒸し野菜でしたら、どんなものにでも合います。もう1種類、マヨネーズにレモン汁を加えたようなものと2色にしてもいいかもしれません。実は、私の家族はかぼちゃがあまり好きではないのですが、これくらい濃い味噌を添えると、喜んで食べてくれます。

  • 「坊ちゃん」は、ローズマリーといっしょに焼きました。初めからフライパンで焼くと時間がかかり、ローズマリーだけが焦げてしまうので、電子レンジに3〜4分かけてから焼きました。フライパンにたっぷりのオリーブオイルとローズマリーを入れ、「坊ちゃん」を加えて弱火で焼いてください。カリカリになったとローズマリーとかぼちゃはとても相性がいいので、ぜひお試しください。

 
◇食べくらべ、試食の感想
  • かぼちゃはいつも調理したものばかり食べていたので、今日の食べ比べで、ねっとりしたものからホクホクしたものまであって、甘みにも差があることがよくわかりました。バランスがとれていると思ったのは、「ほっこり133」。「イーティー」はねっとりしていてやわらかく、スイートポテトに合いそうだと思いました。「くり将軍」はあまり甘みがなく、かためでした。

  • かぼちゃはホクホク系が好きか、ねっとり系が好きかで好みがわかれると思います。私はどちらも好き。今日のかぼちゃは、なんとなく、全体的に甘みがないように感じました。もう少し甘みがほしかった。

  • 久々に八百屋塾に参加したのですが、今日のお料理もみんなおいしかったです。「鹿ヶ谷」などの日本かぼちゃは、出汁のとり方がじょうずじゃないと、なかなかうまく調理できないので、そういう点も勉強になります。「恋するマロン」は栗の香りがして、個人的にすごくおいしいと思いました。みなさんの評価が高かったのも、香りと甘みというところではなかったかと思います。

  • かぼちゃにつけた唐辛子味噌、さっそく家で作ってみたいと思います。
 
◇グループ討議後のコメント
  • うちの店には、昔からずっと通ってくれているお客さんや、近くに住んでいるお客さんがよく来てくれると思います。あとは、特売品を目当てに来てくれる人も多い。

  • メインは惣菜屋で、最近、野菜を扱い始めたのですが、思ったほどには野菜が売れない。どうやってお客さんを呼び込めばいいか、スイカを安く置いてみるとか、いろいろアイデアを出しながらやっているところです。

  • 先日、テレビで漁師さんたちの話を見ました。それまでは、ただ魚をとって市場に卸すだけだったのが、最近はそれを改めて、釣ったらすぐに血抜きをして、頭を揃えてきれいに並べて出す、というサービスを始めたそうです。それを指示しているのが、女性でした。漁師のおじさんたちが、昔から、ずっとこうしてきた、というのを変えさせるのは難しかったと思いますが、違ったところからの発想というのがすごく大事なんだと思いました。八百屋も同じで、今までとはちょっと違うことを考えてもいいのではないか、と感じました。それが何なのかは、今、思案中です。

  • 今の時代、情報が氾濫しています。象徴的なのが、『小学1年生』という本がなくなったこと。情報が多様化しているので、ひとりひとりの好みが分散していて、小学1年生だからこれが好き、というのがなくなったらしいんです。テレビもネットもあるし、番組は録画しておけば、その時間帯じゃなくても見られる。そうなると、八百屋として生き残る道はこれだ、という正解はなくて、ありふれた情報の中から、自分の得意なところを見つけ出して、うまく表現することが大事なのでは。ひとりひとり環境は違うので、自分なりの答えがあるのではないか、と思います。八百屋塾では、一般の人から見たら、非常にマニアックな勉強を積んでいると思います。その知識をうまくお客さんに伝えること。例えば、お寿司を食べに行ったら、見習いさんに握ってもらうよりは、親方に握ってもらいたいですよね。 それと同じように、「野菜を買うなら、ちょっと高くてもあの人から買いたい」と思ってもらえるようにする。「あの人は何でも知っている」というのをうまく伝えるのに、ネット環境などは活用できるのではないか、と思っています。

  • 「本屋さんで野菜を売る」という新聞記事を読みましたが、買う側からすると、「野菜のことをわかって売っているのかな?」と思ってしまいます。

  • 政府が農業の6次産業化をすすめており、今、生産者の方も、加工業者との取り組みを進めたり、自身で加工に乗り出したりしています。私がかかわっている生産者の方々も、大きな生産法人さんは加工場を建てたり、そういう動きがあります。スーパーを見ていても、青果売り場より惣菜売り場の充実を図っているように感じます。今、働く女性が増えていて、生で野菜を買う人は昔に比べて減っています。今後、生で野菜を買うのは、料理が好きとか、野菜が好きとか、ややマニアックともいえるような方々に範囲が狭まってくる気がします。そういった方々が求めるものというのは、野菜にプラスアルファされた八百屋さんの知識だったり、情報、食べ方だったりすると思うので、八百屋塾での勉強は、八百屋さんにとってすごく強みになるのでは、と思います。

  • 先々月、うちの店では、オープンキッチンを作ったとお話ししましたが、それが、少し稼働し始めました。ただ、こう暑いと人も出てこない。うちの店は決して条件のいいところではなく、駅から6〜7分歩かなければいけませんし、商店街もこぢんまりしています。こんな時期に野菜を一生懸命売ろうと思っても、売れるわけがないと私は思っています。そこで、2年前から、夏場にスムージーを始めました。それがよく売れています。学生さんが通学の途中に寄ってスムージーを飲んでくれるなど、今まで来なかったお客さんが来てくれるようになりました。オープンキッチンのカウンターに3脚だけ椅子を置いてあります。スムージーは目の前で作るので、2〜3分はかかります。座って待っていてください、というのですが、その間に店の中をウロウロしながら野菜を見て、選んでくれたりする方もいます。
    今、ドールから出ている「ヨナナス」という機械がすごく流行っています。凍らせたフルーツを機械に入れると、下からジェラートのようなものが出てくる。冷凍したフルーツを使わなければできません。ということは、お店でシュガースポットの出てしまったバナナとか、値下げしようかなというものを冷凍して、ヨナナス用おすすめセットとすれば、販売できる。そういうことを流行ったときにいち早くやることで、「あの店はいつでも新しい情報を発信している」との印象をお客さんが持ってくれれば、まだまだ面白いかな、と思っています。
    惣菜も、夏は脂っこいものは食べたくないので、ナスを揚げ浸しにしたり、野菜を蒸したりゆでたりしたあと、バーナーで焦げ目をつけて、焼き野菜にして出しています。10種類くらいの野菜を焼いて、白だしにつける。10種類を自分で作ろうと思うと、山のように野菜を買わなければいけないので、若い人に人気があります。逆に、定番の煮物は年配の方に人気です。煮物か焼き野菜があれば、あとは、お魚か肉を焼くだけで夕飯ができるとなれば、少しはお客さんの役に立てているのかな、と思ってがんばっています。
 
 

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