■2017年1月15日 第10回 だいこん・いちご 〜 勉強品目「だいこん」について 東京青果(株) 鈴木孝佳氏
◇勉強品目「だいこん」
  • 去年の販売を振り返ると、夏場、何回か北海道に台風が上陸し、だいこんの産地にも被害が出ました。関東の秋冬の作の播種期も天候不順の影響があり、9月頃の播種作業がほとんどできなかったため、入荷量が少なくなりました。また、最近はコンビニがおでんに力を入れていて、毎年契約産地で作っているのですが、今年は特に、北海道、青森がやられて、原料を確保できない状況になりました。日本中の市場からだいこんをかき集めたこともあり、高騰した原因のひとつになったと思います。関東産は、徐々に相場はもどっています。露地栽培は今が旬で、売りやすい単価で売れるのではないでしょうか。2月中旬くらいから、千葉はトンネルだいこん、三浦は春だいこんに切り替わります。資材費はややかかりますが、やわらかくて食べやすい品種に変わります。夏は今後もだいこんが高い状況が続きます。なんとか安定供給していけるように努力したいと思います。
東京青果(株) 鈴木孝佳氏
  • 青首だいこん(耐病総太り)は、徳島、千葉、三浦の3種類をお持ちしました。関東では、徳島産のだいこんはあまり出回っていないと思いますが、京都、大阪あたりでは、徳島の里浦、長崎が一大産地で、徳島産のだいこんは煮物に最適です。東京市場では、三浦や千葉が主力になっています。

  • 「レディサラダ」は、神奈川・三浦。サラダ用に開発された品種です。最初の頃は販売に苦戦しましたが、ようやく認知されてきて、引き合いはあります。面積がやや減ってきているので、三浦の農協さんには増やしてくれるようお願いしています。

  • 皮が緑と白で中が赤い「紅芯だいこん」は、神奈川。大田市場には群馬県産も入っています。ここ数年、見かけるようになりました。変わり種のだいこんは、若い生産者が作っていることが多いようです。

  • 「源助だいこん」は、石川。煮物に最適で、料理屋さんとか、こだわりの野菜がほしいというお客さまに人気があります。三浦の「味一番だいこん」が同じような形状をしています。

  • 「辛みだいこん」は、群馬。昔は、そばどころの長野でたくさん作られていました。辛みが強く、夏場、そばの薬味として、年末にも年越しそば用に引き合いがあります。産地では、おろし以外に、煮ものに使ったりもする、と聞きました。いろいろな食べ方を試してみても面白いかもしれません。

  • 「聖護院だいこん」は京野菜のひとつです。関東ではあまり出回っていません。希望があれば、全農京都に発注して取り寄せます。価格はかなり高いだいこんです。

  • 「ミニだいこん」は、茨城。間引きではなく、専用にわざわざ作っているものです。青首だけでなく、売り場にこうしたいろいろな商品を並べて、調理法や食べ方などをしっかり説明して売れば、可能性が広がっていくと思います。
◇「だいこん」の写真
耐病総太り
(徳島)
耐病総太り
(千葉)
耐病総太り
(神奈川)
三浦だいこん
(神奈川)
湘白
(神奈川)
レディサラダ
(神奈川)
小桜
(神奈川)
紅くるり
(神奈川)
紅芯だいこん
(神奈川)
ビタミンだいこん
(神奈川)
黒丸
(神奈川)
黒長
(神奈川)
源助
(石川)
辛みだいこん
(群馬)
聖護院だいこん
(京都)
ミニだいこん
(茨城)
もみ菜
     
◇伝統野菜のだいこんなどについて 〜 (株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 東京都の伝統品種のだいこんと、長崎の伝統野菜、静岡の「マーメラス」というえんどう豆についてご説明します。

  • 「高倉だいこん」は、八王子の農家さんに昔から伝わっているだいこんで、縄で結わえて作るたくあん漬けが江戸時代からの伝統だそうです。霜に当たったりするとひからびてしまうので、ハウスに「おふとん」と呼ばれるものがあり、毎日、吊したのを下ろしてはおふとんをかぶせ、翌日また吊すという大変な作業を代々続けていらっしゃいます。細長いだいこんなので掘りやすく、すーっと抜けます。生産者の方はご高齢で後継者がいないのですが、なんとか守っていきたい、と思っています。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 「大蔵だいこん」は、世田谷区瀬田で大塚さんという方が作っているだいこんです。昔はもっと細長い形状だったのが、選別を繰り返し、7年くらい経って現在の尻詰まりの形になったそうです。煮崩れせず、おでんに最適で、世田谷区の学校給食で大人気だと聞きました。価格はかなり高いのですが、このだいこんのよさをわかってくれる料理人や地元のお客さまなどが買ってくれるそうです。生産者の思いや野菜のおいしさが相手に伝われば販売につながるという、いい例ではないでしょうか。

  • 江戸野菜のひとつ「亀戸だいこん」は、スラリとして先のとがった形が特徴です。農家さんにおすすめの食べ方を聞いたら、酢の物がおいしいと言われたので、昨晩作ってきました。のちほど味見してみてください。葉がパリパリしていて、味噌汁に入れて食べてもおいしかったです。

  • 「紅だいこん」、「辻田白菜」、「ゆうこう」という柑橘は、長崎の伝統野菜です。「ゆうこう」は、江戸時代から栽培されていたらしいのですが、最近になって発見されました。隠れキリシタンがこっそり育てていた、という物語がある柑橘です。酸味は薄く、ドレッシングなどに使われます。

  • 「マーメラス」は、静岡の浜松で作られているスーパーえんどう豆です。ゆでると、とてもきれいな色になって、やわらかく、スナップえんどうよりおいしいと思います。なかなか手に入らないのですが、ぜひお試しください。
◇写真
大蔵だいこん
(東京)
亀戸だいこん
(東京)
紅だいこん
(長崎)
辻田白菜
(長崎)
ゆうこう
(長崎)
マーメラス
(静岡)
   
■2017年1月15日 第10回 だいこん・いちご 〜 勉強品目「いちご」について 橋本幾男氏
◇勉強品目「いちご」
  • 今日は、徳島の「ももいちご」、福岡の「あまおう」、静岡の「きらぴ香」と「紅ほっぺ」、茨城・鉾田の高野さんの「とちおとめ」をお持ちしました。

  • 「ももいちご」は特別高い高級品です。もものにおいがする、というのですが、どうでしょうか。

  • 高野さんのいちご「とちおとめ」は、毎年大人気で、指名買いされるお客さまもいるほどです。

  • 今年の「あまおう」はやや酸が強いかもしれません。

  • みかんは和歌山。うちの店で暮れに売ったものと同じで、また市場にあったので持って来ました。去年はどこのみかんも傷みが出て困りました。長崎だけはしっかりしていてよかったと思います。
橋本幾男氏
◇「いちご」などの写真
あまおう
(福岡)
きらぴ香
(静岡)
とちおとめ
(茨城)
ももいちご
(徳島)
紅ほっぺ
(静岡)
みかっぴ
(和歌山)
 

【八百屋塾2016 第10回】 挨拶講演「だいこん」について」勉強品目「だいこん」「いちご」食べくらべ