■2016年6月12日 第3回 トマト・スイカ 〜 勉強品目「トマト」について 東京青果(株) 大杉幹夫氏
◇勉強品目「トマト」
  • 大田市場でのトマトの年間売り上げは、昨年150億円ですが、まだ伸びる可能性があると思います。

  • 大きく分けて、大玉、ミニ、フルーツ系高糖度トマト、中玉・ミディ系の4つ。売上比率は、大玉が53%、ミニ34%、フルーツ系7%、中玉・ミディ系6%です。

  • ミニトマトは、数量・金額ともに伸び率がトップで、約10年で倍くらいに伸びています。いろいろな種類があり、カラフルになって、目で食を楽しめることが功を奏し、進展につながったのではないでしょうか。
東京青果(株) 大杉幹夫氏
  • 6月はトマトの端境期で、九州から北海道までほぼすべての産地がつながっています。

  • 西南暖地から関東、福島以北の東北地区、北海道へとだんだん北上していくわけですが、今は、九州地区から関東地区に移っている時期で、東北、北海道が一部出てきています。

  • 今、一番の産地は、千葉、茨城、栃木あたり。7月にかけ、福島、青森、岩手に移行します。今年は北海道の一部が1週間早く初出荷されるなど、作型が前にずれ、前進出荷の傾向にあります。雨が少ないと日照が多いので、前倒しになりやすくなります。

  • 西南暖地は、4月くらいまでは暖房をかけて栽培しますが、5月からは暖房は不要で、風通しをよくして栽培しています。

  • 大玉もミニトマトも産地背景はほぼ同じで、だんだんと北海道のほうへ上がっていきます。ただ、カラー系の産地はまだ少ないのが現状です。

  • 昔は、雨よけや露地栽培も一部ありましたが、製品率が悪いため、今は、99%がハウス栽培です。

  • 今日お持ちした大玉トマトは、北海道、JA平取町。品種は「桃太郎8」が中心です。すべての生産者が100%同じ品種を作ることはできないので、ほかの品種も作っています。

  • 栃木の「麗容」は、丸玉で大玉傾向。サカタのタネの品種です。気温が高く、光合成がうまくいかないと、ヘタ周りが黄色くなったり、緑が残ったりすることもあります。比較的強い品種なのですが、真っ赤なトマトを好むお客さまは、東北、北海道に切り替えたほうがいいかもしれません。

  • 北海道、塚本青果のミニトマトは、5色のミックスで、赤、黒、黄、緑、オレンジのトマトが入っています。

  • 愛知県JA豊橋南部から出荷されるミニトマトは、糖度によって、「麗(レイ)」、「美(ビ)」、「愛(メグミ)」、「レギュラー」という4段階に分けられており、お客さまのご要望に合わせて選ぶことができます。赤と緑が混ざったようなミニトマトは、「タイガー」です。

  • トマトは糖度を上げるほど、皮がかたくなります。皮が残るのが苦手という方には、まだ量は少ないのですが、「プチぷよ」、「トマトベリー」のような皮が薄い品種がおすすめです。ただ、「プチぷよ」は輸送が困難なため、流通が難しいのが課題です。

  • ホワイトのミニトマトは、熊本。水をしぼってもなかなか糖度が上がりませんが、彩りとしてはいいのではないでしょうか。

  • 茨城、NKKアグリの「スーパーフルーツトマト」は、糖度9度以上。外国から独自に入れて開発したもので、品種名は明かしていません。4町歩もある広大なハウス2棟で栽培しています。

  • 「アメーラ」は静岡。長野にも圃場があり、まだ面積が増えています。年間を通じて栽培しており、潤沢な販売量を提供できます。6月は糖度が下がる時期ですが、最低保証が8度あります。7月になると、糖度は0.4〜0.5下がります。「アメーラルビンズ」も栽培面積が増えています。やや皮はかたいですが、糖度は年間を通じて10度くらいあります。イエローなどカラー系も作っており、2年後にはもう1色、「タイガー」に近い茶色系のものも出てくるはずです。

  • 静岡、遠州中央農協もフルーツ系の高糖度トマトを作っており、その青採りが「グリーントマト」です。ソースに使ったり、天ぷらで食べると意外とおいしいという人もいます。A5ランクで脂がのった日本のお肉には、さっぱりとした青いトマトのほうが合う、という発想から、暑くなってくると青トマトの注文が倍以上入ってきます。放っておけば真っ赤になるトマトです。

  • ミニトマトの「みどりちゃん」はリコピンがないので青い。赤くはならないトマトです。

  • 中玉系の「シシリアンルージュ」は、生でも加熱しても食べられます。今日お持ちしたのは、JA千葉みどりのもの。大分、愛知と並び、技術が高いミニトマトの産地として知られています。

  • 加熱用のトマトは、これからまだ増えると思いますが、生食と比較すると高いのが課題です。海外では、トマトを投げるお祭りがあるくらい、安い価格で売られています。でも、日本のトマトは世界一おいしい、ということは知っておいてください。

  • イタリア系の「ボンジョルノ」は、愛知、JA豊橋南部。イタリア系というと「シシリアンルージュ」や「サンマルツァーノ」がよく知られていますが、それより玉が一回り大きいトマトです。横にスライスしてハンバーガーに挟むときにちょうどいいサイズ。ソースにしてもおいしい品種です。
◇「トマト」の写真
大玉トマト
(北海道)
大玉トマト
(栃木)
ど真ん中
(北海道)
タイガー
(愛知)
ホワイト
(熊本)
ミニトマト
(愛知・南部地域)
ミニトマト
(北海道・辰馬ファーム)
赤糖房
(和歌山)
スーパーフルーツトマト
(茨城)
アメーラ
(長野)
スイートピュア
(静岡)
ボンジョルノ
(愛知)
オレンジ
(さいたま榎本農園)
きりちゃん
(さいたま榎本農園)
サンチェリープレミアム
(さいたま榎本農園)
しましまシリーズ
(さいたま榎本農園)
トスカーナバイオレット
(さいたま榎本農園)
トマトベリー
(さいたま榎本農園)
プチぷよ
(さいたま榎本農園)
みどりちゃん
(さいたま榎本農園)
玉女系
(さいたま榎本農園)
中玉トマト
(さいたま榎本農園)
シシリアンルージュ
(さいたま榎本農園)
■2016年6月12日 第3回 トマト・スイカ 〜 勉強品目「スイカ」について 橋本幾男氏
◇勉強品目「スイカ」
  • 今日は、鳥取のスイカ2種、熊本の「よかよか」、八街のスイカ、藪塚の「紅小玉」、熊本の「黒スイカ」などをお持ちしました。

  • 私が大好きなのは、八街の伊藤さんのスイカ。昔、「三山(さんざん)」を作っていた人です。「三山」は非常に皮が薄く、割れやすいスイカでした。タネを交配する人が亡くなり、作られなくなりました。
橋本幾男氏
  • 藪塚の「紅小玉」は、やや実がやわらかい。熊本の「黒スイカ」のほうが、ひとりじめ系統なのでシャキッとしています。

  • 今、スイカを丸ごと買う人はなかなかいないので、うちの店では1/8にカットしたスイカなども売っています。ちょっと芯を外して切れば白い筋が出ません。縞模様の間を切るとタネが見えないといいますが、必ずうまくいくとは限りません。

  • 今年は、千葉あたりでも夜温が低く、昼夜の温度差があるので、味は平均していいそうです。

  • 昭和30年代頃と比べるとスイカもだいぶ変わってきていますので、市場で食味を確かめるといいと思います。
◇「スイカ」の写真
スイカ
(熊本)
スイカ
(千葉)
小玉スイカ
(群馬・藪塚)
 

【八百屋塾2016 第3回】 挨拶講演「ミニトマト」について勉強品目「トマト」「スイカ」食べくらべMr.八百屋のここだけの噺