私は今年で八百屋をやって50年になります。最近は市場に行っても画一的な品物ばかりで、今まで勉強したことが活かせなくなってきたので、あまり面白みがなくなってきてしまいましたが、八百屋さんはもちろんスーパーの方も、お客さまに「どうせお店の人に聞いてもわからない」などと思われないように、努力をしないといけません。「今日はコレ買ってって! これこれこういう理由でおいしいから」とおすすめした野菜がおいしかったら、また来てくれます。それが続けば、「あの店のものはいつもおいしい」と、いわれるようになります。また、店は休まなければダメです。地域のお客さまを全部独り占めしよう、などというのは浅はかな考えで、やめたほうがいい。ときどきはよその店で買ってもらって、味を比べてもらうことです。
お店というものは、何かカラーがないと集客できません。毎日、市場から持って来たものだけではダメなんです。うちの店では、津南の「雪下にんじん」と、名人が作った清瀬のセロリを扱っています。ほかの店では売っていない商品です。おいしさが分かればリピートが来る。ただ、いくらこだわりがあるといっても、他の店と9割も違う品揃えはできませんから、何か特色を出すといいでしょう。
市場で昨日買った商品がよかったからといって、今日もいいという保証はありません。毎日、目を通さなければいけません。私が教わったのは、とにかくマメに動くこと。箱にある番号とか生産者の名前を覚えておくといいと思います。世の中の相場はありますが、八百屋は自分で値段が決められる面白い商売です。いいモノを持ってくれば、多少高くても売れる。「あんちゃん」、「ねーちゃん」(先に生まれたもの)、「おひや」(冷蔵庫に入れたもの)は、目利きのできる人間なら絶対手を出しません。お客さまが何を買ってもいいように、八百屋が見極めた商品を店に並べてあげれば、「あの八百屋さんは何を買っても大丈夫」と言われるようになります。そのために八百屋塾で勉強をするわけです。
今、少人数の家庭が多いので、だいこんは1本あれば1週間くらいもつのではないでしょうか。うちの店では、3Lを半分に切って売っています。ちょっといいスーパーに行って見てみると、10センチくらいに切ったものが並んでいます。だいこん1本なんて、置いてありません。鍋いっぱい煮るわけでもないし、薬味や味噌汁の具に使うぐらいなら、それでいいんです。キャベツも半分のものがよく売れます。半分でも、たくさん売れば利益はいっしょです。
よく勉強して、お客さまに、おいしいものはおいしい、ときちんと説明できる八百屋さんになってください。自分が商品をよく知れば、店のグレードも上がると思います。1年間、毎月日曜日の朝早くからここで勉強するのは大変かもしれませんが、新しい発見や、気がつくことが必ずあるはずです。専門家の話も聞くことができるので、しっかり勉強してください。
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