Q:「湘白」はF1なのですか?
A:横浜植木が一方の親を作り、私どもが「大蔵」×「晩野路」でもう一方の親を作って、かけあわせたF1品種が「湘白」です。
Q:その昔、伝統品種のだいこんはす入りがあたりまえでした。「湘白」はF1ですが伝統品種に近いとなると、す入りはどうなのですか?
A:「湘白」はすが入りにくい品種です。すが入るのは、基本的には老化現象です。採り遅れて真ん中に栄養がいかなかったとか、花を咲かせてタネを作るときに多く見られます。伝統品種がすたれてきたのには何か理由があって、そこは改良しないと安心して作ってもらえません。懐かしいとか、こんな調理に向くとか、いい特長は生かして、品種改良をしていきたいと考えています。
Q:「湘白」は、青変症は発生しますか?
A:「湘白」は青変症になりにくい品種です。品種によって、出やすい、出にくいがあるのですが、元になる物質が多いか少ないか、パーオキシターゼの能力が高いか低いかが関係していると思われます。
Q:昔は、だいこんを1本買うと、上が甘くて下が辛いものでしたが、最近はあまり差がないような気がします。それはなぜですか? また、だいこんおろしは、汁が特に辛いのはどうしてですか?
A:全般的に、辛みよりも甘みが際立つような品種のほうが多くなっているのかもしれません。辛みは、元となる成分と酵素の関係で成り立っており、そのどちらかが欠けていて辛みが出ない品種があります。辛いだいこんおろしが好みなら、「辛みだいこん」を使ったり、組織をできるだけ細かく潰したほうが辛くなるので、おろし金を変えてみたりしてはいかがでしょうか。辛みを発生させる化学反応は、液体の中でしか起こりません。だいこんおろしの汁が辛くなるのはそのためです。
Q:昔ながらの固定種の「三浦」を栽培している方はいるのでしょうか?
A:いると思います。
Q:F1品種の採種方法で、自家不和合性と雄性不稔性という性質があるとのことでした。自家不和合性はなんとなく理解できるのですが、花粉が出ないという性質は普通ではない気がしました。そういうものを親として使っても問題はないのでしょうか?
A:近親交配が進むと弱くなるのはよく知られているので、自家不和合性は理解してもらいやすいと思います。雄性不稔性については、利用されてから時間がかなり経っていることと、もともとだいこんの中から変異で見つかったものであり、人為的に作ったわけではないので、使っても問題はないと考えています。
Q:直売所向けの品種開発というのは、どういうことを目標にされているのですか?
A:その地域に根づいてきた品種があるのに、忘れられていたとか、あまり作られなくなっているケースが多いと思います。それを増やすために、素材として使い、作りやすくするのがひとつの目標です。作物としての物語をプラスして販売ができるように心がけています。
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