橋本さんのお店も、杉本さんの北千住のお店も、大変な人気店です。お二人に共通しているのは、強烈な個性の持ち主だということです。おいしいものはおいしい、まずいものはまずい。決して嘘は言いません。商売人にとって、本当のことを言い続けるのは難しいこともあります。「これ、おいしい?」とお客さまに聞かれたとき、つい、「まあまあですよ」と言ってしまったりもします。橋本さんは、絶対にそんなことは言いません。
昔は能力や立地条件にかかわらず、モノが売れた。厚利多売ができた時代でした。今、野菜や果物は八百屋ではなく、スーパーマーケットが主力です。個人店が大型店に対抗するのは無理な話です。
では、八百屋さんはダメになる一方なのか? まだ、生き残る道はあります。八百屋さんは、四季折々の野菜と果物に接することができ、自分の扱うもので人の健康に貢献できる幸せな商売です。売れないから辞めた、と簡単に投げ出してしまうのはもったいない職業だと思います。
八百屋さんの利益率はどれくらいかというと、一般的には20%前後、目標は25%といわれています。でも、分母が1500万と3億ではだいぶ違います。分母を変えたいなら、小売だけでなく、納品事業を始めるべきです。安定しているのは、行政関係。小学校の給食から始めるといいと思います。分子を変えたいなら、加工品を作って販売するのが一番の近道です。保健所の許可が必要ですが、それほど難しくはありません。
私は主に果物を扱っていますので、実がやわらかくなってしまった早生りんごや、傷が入ってしまったいちごをジャムやペーストにしています。カットフルーツも4種類くらい、毎日切って売っています。ただ、カットフルーツは、人通りがないと成功しません。100人以下の客数では厳しく、逆にロスが出る可能性もあります。
おすすめは、「むき栗」です。私はもう9年やっています。1年目はうまくむけませんでしたが、2年目からきれいにむけるようになり、3〜4年目になると予約が入るようになりました。今は、8月末になるとお客さまから「むき栗まだなの?」と、催促が来ます。むき栗は、凍らせておくことができます。月に1〜2回、それを甘露煮にすると、また売れます。パートさんを雇ってむいてもらうのは大変ですが、自分で店番をしながらむくのであればできますよね。今シーズンも、かなりの量を冷凍していたのですが、2月にはすべて売れました。
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