■2015年3月15日 第12回 修了式 〜 講演「おさいふの健康」について (株)エス・ジー・イー 代表取締役社長 西尾繁子氏

 「エス・ジー・イー」という社名は、30年前に会社を設立したときにつけたのですが、「スイート(Sweet)」、「ジェントル(gentle)」、「エレガンス(elegance)」の頭文字です。

 仕事の内容は、コンサルティングです。弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、行政書士、弁理士などがスタッフにおり、例えば、Aさんが困っているとして、法律的なアドバイスが必要ならその分野に強い弁護士を派遣するなどして、できるだけ早期の解決を図るようにしています。

 (株)エス・ジー・イーの代表取締役社長のほか、 東京都市大学の客員教授、青山学院大学、國學院大學の講師もしています。

(株)エス・ジー・イー 代表取締役社長 西尾繁子氏
 今日は、「企業の目的」とは何か、「4つのM」、「Plan、Do、See、Action」、「顧客価値」などについてお話しします。

 まず、「企業の目的」とは何か。会社を経営されている方は自分の会社の目的を、お勤めされている方は働いている会社の目的は何かを考えてみてください。「自分が食べたいものを販売する」、「社会貢献」、「従業員の幸福」、「継続」、「お客さまに喜んでいただく、感動を与える」と、いろいろなご意見が出ました。全部正解ですが、最終的にはひとつのところに行き着きます。それは、利益を出すということです。企業は、お金を稼がなければいけません。会社が儲かれば、税金も払えるし、従業員の給料も高くでき、社会貢献もできます。

 次に、「4つのM」について。よく、「モノ、ヒト、カネ」といいます。「モノ」は「Material」。これには工業製品だけではなく、サービスのような形のないものも含まれています。「ヒト」は「Man」、近頃は「人材」を「人財」と書くこともよくあります。「カネ」は「Money」です。では、モノ、ヒト、カネが潤沢にあればすべてうまくいくかというと、決してそうではありません。それらをうまく組み合わせて、足し算にするのか引き算にするのか、またはかけ算にするのか割り算にするのか、仕組みを作り上げるのが、「Method」です。

 今日は、「ステークホルダー」という言葉を覚えて帰ってください。「利害関係者」、いっしょになって考え、仕事をして、遊ぶ人たち、という意味です。八百屋さん、果物屋さんのお仕事で考えると、作ってくれる人、それを運んでくれる人、市場の方、買ってくれる方、みなさんのように売る方、食べる方、みんな利害関係者です。かかわった人たち全員に利益が出る仕組みが必ずあるはずです。その中の誰かが損をするような仕組みでは続かなくなります。

 モノ、ヒト、カネの中で、「ヒト」はとても大切です。 みなさんは、人を育てているでしょうか。褒めることも大切ですが、叱ることも大切です。たまたま今朝の新聞記事に、「叱ってくれる人がいなくなった」という俳優さんの話が載っていました。その俳優さんは、大女優といわれた方によく叱られたそうです。今になって、そのありがたみがよくわかった、と書いてありました。この俳優さんのように、キーマンを持つといいと思います。どうしていいかわからないとき、「あの人なら、どうするだろう」と考える。そして、あとに続く人のキーマンになってほしいのです。キーマンは、身近な人でも、テレビの中でしか見ない人でも、誰でもいいと思います。

 もうひとつ大切なのは、いい人に出会っているか。自分の回りにいい人をおくこと、いい人間関係を持つことは、とても大切です。みなさんは、毎月1回、今日のように集まっていらっしゃるわけですから、みなさんの力を集めて情報を共有すれば、とてつもない力になると思います。勉強というのは、1回聞けばいい、というものではなく、繰り返しが必要です。人間はいい話を聞いても忘れてしまいますから、私も大学で、大事なことは何回でも繰り返し学生たちに伝えています。

 「モノ」 については、お客さまが喜ぶいいモノを喜ぶ価格で提供できているか。先日、トヨタがクルマ業界の発展のために5700ぐらいの特許を開放しました。これから、そういった動きは加速されると思います。みんなでお互いの知識を共有すること。そして、それはヒトに集約されると思います。

 「カネ」についてですが、八百屋塾の塾生でもあるSONKOさんは、「心と体の健康」をモットーに、ご自分で「SONKO塾」を主催しています。ただ、おさいふが健康でなければ、心と体の健康も維持できません。結局、企業の目的とも同じで、利益が出せる方法を考える。このように、ヒト、モノ、カネというのは全部リンクしてくるわけです。

 先ほど「仕組み」という話をしましたが、過去の失敗は足し算に変換することができます。そして、できれば、かけ算にしてほしい。かけ算をすれば、強大な力を発揮することができます。できるだけ人のいいところと自分のいいところを合わせて考え、みんなのいいものを引き出すよう心がけるようにしてください。そして、悪いと思うところもプラスに変換する方法が必ずある。人生で無駄なことは何もありません。

 次に、「Plan、Do、See、Action」について。「Plan」は、計画や企画を立てるということ。考えただけでは役に立ちませんから、「Do」、行動を起こす。自分ができなければ誰かにやってもらえばいいのです。その行動が正しかったかどうか、チェックするのが「See」。見直す、ということです。そして再び、「Action」。これも行動ですが、「Do」と違うのは、見直しをした後の行動ですから、少し上に位置するはずです。これらを横に並べるのではなく、サイクル、渦巻きだと考えてください。しかも、平面ではなく、奥行きがある3Dとして捉えることを覚えておくと、よりよくなると思います。

 お金を稼ぐとき、どんなことをしてもよいわけではありません。稼ぎ方に品性が出て、使うときに人格が現れる、といわれますので、覚えておくとよいでしょう。

 仕事をしていく上で人を動かすとき、モチベーションを上げるためには「魔法の言葉を探そう」と、私はよくいいます。給料を上げる、立場を与える、いいところを見つけて褒めるなどもモチベーションを上げるひとつの方法ですが、そうしなくても働きたくなる魔法の言葉があるはずです。私が大学で財務の授業を受け持ったとき、合格率が30〜35%しかありませんでした。そこで、学生に、「この授業は、企業評価だと思ってください」、といいました。今の大学生の主な目的は、いい企業に就職することです。一般的に「いい企業」だといわれている会社が、例えば、開発や福利厚生に本当に力を入れているのか、安定しているのか、成長率があるのか。この授業を一生懸命やれば見抜くことができるようになり、企業に選ばれるのではなく、自分が企業を選ぶ立場になれる。そういう人生に変更していきましょう、という話をしたら、その年から合格率が80%になりました。そういった魔法の言葉を探すこと。人それぞれ違うかもしれませんが、その人と自分の関係にとっての魔法の言葉が必ずあるはずです。

 上に立てば立つほど魔法の言葉は必要ですが、上の人や子どもに対しても同じです。そのためには、たくさん本を読むとか、テレビを見るなどして、ボキャブラリーを増やすこと。そうすると、魔法の言葉も見つけやすくなります。例えば、5年前の嫌な経験が役立つこともありますから、どんな経験も無駄ではありません。

 今日は、具体的なケーススタディをひとつだけお話しします。今、日本は農林業が衰え、山里が竹藪になりつつあります。ある自治体から、竹藪が増えすぎて困っている、何かいい方法はないだろうか、との相談を受けました。そこで、私は、リンクのさせ方を考えました。農林水産省だけではなく、文部科学省、厚生労働省とも連携する。そして、中学校、小学校、幼稚園の子どもたちで「たけのこ蹴とばし隊」を作り、学校の理科の授業や遠足で竹藪に行ってもらう。たけのこは成長するととるのが大変ですが、小さいうちなら子どもでも蹴っ飛ばせば簡単にとれます。おもしろがって蹴っ飛ばしてくれる年代の子どもたちを集めれば、いくつかの竹藪はあっという間に片付きます。また、地域の婦人会などにも協力してもらい、たけのこ汁などを作って食べれば、地域の交流も図ることができます。その後、たくさんたけのこがとれるので、たけのこせんべいを作る、という話も進行しました。このように、農業の分野だけで考えるのではなく、政治、教育の分野も引き込んでいく。リンクさせる習慣をつけると、解決しやすくなると思います。

 最後に、仕事のタームを考えることを覚えておいてください。仕事には、長い期間かかるものもあれば、数ヶ月、1日の短期のものもあります。ロングタームの仕事は大きな利益が出ますが、経費もかかります。そればかりでは、会社がつぶれてしまいます。短いタームの仕事があってこそ、長いタームの仕事を支えられるのです。日々の仕事を大切に、いくつかの仕事を同時進行することが大切です。みなさんが豊かに、健康になられることをお祈りし、本日の講演を終了します。ご静聴ありがとうございました。

 
 
 

【八百屋塾2014 第12回】 挨拶修了式記念講演「おさいふの健康」について1年間の感想