■2014年12月14日 第9回 れんこん・いちご 〜 講演「れんこん」について 茨城県農業総合センター 専門技術指導員室
貝塚隆史氏 |
◇「れんこん」とは |
- 主に食べている部分は、地下茎、根茎といわれる茎にあたります。
- 原産地は、中国、インド、エジプトなど、さまざまな説があり、定かではありません。
- 日本では2000年以上前のはすの実から開花した「大賀はす」が有名ですが、1500〜3000年前に入ってきた、と考えられています。食用として売るために作られるようになったのは、明治時代です。
- 中国では、古くは薬として使われており、花や種子の部分なども食べられていたことがわかっています。
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茨城県農業総合センター
専門技術指導員室 貝塚隆史氏
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◇はすと睡蓮の違い |
- かつては、はすと睡蓮は仲間として扱われていました。一番新しい分類方法では、はすと睡蓮は別物だということが提起されています。
- 睡蓮はスイレン科スイレン属、はすは双子葉類のハス科ハス属の植物です。
- はすは葉が立っているのに対し、睡蓮は葉が浮いています。また、はすの葉は水をはじく特性があるのですが、睡蓮は撥水性がありません。切れ込みの有無なども違います。
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◇生育の仕方 |
- れんこんは高温多日照を好むので、生育には暑い時期が適しています。
- 茨城県でのれんこんの植えつけは3〜4月、地温が8〜10℃になったときです。地中の部分と葉は15℃以上ないと生育しません。最適温度は地上部が25〜30℃、地下部が24〜25℃程度です。日長が12時間以下になると、れんこんが太っていきます。
- 植えたタネれんこんが伸びていくと同時に葉が出てきて、最初は浮葉といって水面に浮かんでいる状態。そのあと立葉、最後に止葉が出ます。上から見ると、八方に広がっていくのがよくわかります。
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◇茨城県のれんこん生産状況 |
- 国内でのれんこんの生産状況は、茨城県が約半数と圧倒的なシェアを占めています。次いで徳島県、愛知県、佐賀県など。
- 茨城県内での栽培地域は、土浦市、かすみがうら市、行方市、小美玉市、稲敷市など、霞ヶ浦の周辺で栽培されています。なかでも、土浦市、かすみがうら市で、茨城県のれんこんの半分が生産されています。
- 東京都中央卸売市場における茨城県産れんこんの取扱量は、9月から翌年の3月までが多く、特に12月が非常に多くなりす。6〜8月は少ないですが、一年間を通して出荷しています。数量は97%、金額も95%と、ほとんどが茨城県産です。
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◇品種について |
- れんこんにはさまざまな品種があります。同じ「金澄34号」でも、作り方によって違う品種のように見えることもあります。一番多く作られているのは「金澄20号」で、「金澄36号」はややこぢんまりした形状が特徴です。その他、個人育種のものなども多数あります。
- 1997年(平成9年)に作られた「茨城県におけるれんこんの品種」というパンフレットによると、30品種(系統)ほど作られています。また、2011年(平成23)年にれんこんセンターと田村蓮根部会で調べてみたところ、27品種ほど栽培されていることがわかりました。
- れんこんの品種は、早生品種と中晩生品種にわけられます。早生品種は、「天王」、「早霞」、「湖北の光」など。中晩生品種は、「福だるま」、「中国」、「霞ヶ浦」など。「早霞」、「霞ヶ浦」は、茨城県が育成したものです。
- 品種は、大きく中国群と在来群にわかれます。在来群に比べると、中国群のほうが肥大性がよい、といわれています。「加賀れんこん」など、全国で作られている「備中」は中国群の系統です。
- 1996年(平成8年)頃の品種構成を見ると、早生品種は「ザラッパ」、「湖北の光」、「天王」が多く、中晩生品種は「福だるま」、「金澄」、「霞ヶ浦」が多くなっています。
- 金澄系は中国種と在来の天王種を交配して作られたものです。 1985年(昭和60年)に金澄系が登場して以降、茨城県の主要品種になりました。ただ、同じ品種で違う名前、違う品種で同じ名前のものがいくつも存在しているので、今後、それぞれの特性などを明らかにしていく必要がある、と考えています。
- 金坂氏の文献によると、金澄系の品種は、「金澄(1号)」から始まり、「20号」が5代目にあたります。最終的には、「43号」ぐらいまで作られたそうです。「20号」と「24号」の間に「21号」、「22号」、「34号」までの間に、「25号」、「29号」、「31号」、「32号」といろいろ記されていますが、本当にあったのかどうかはいまはわかりません。
- 「金澄20号」は、関東だけでなく、全国的に作られています。食味がよく、早くから採れるのですが、秋から冬にかけて気温が低下するとスネが上がり、かたくなったり、変色したりします。
- 「金澄34号」は、浅いところにできるのが特徴で、広く作られています。「金澄36号」は、節が小型で丸々としているのが特徴で、深いところにできます。れんこんのできる場所の深さは、作業性からも重要で、近年、だんだん浅めになってきています。
- その他の新品種としては、金澄系では、「37号」、「38号」、「39号」があり、「幸祝」は食感がややもちもちしたれんこんです。「まつかぜ」、「みらい」といった新しい品種もあります。
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◇他県の品種育成状況 |
- 佐賀県では、「明星」、「さが白祥」といった品種を育成していましたが、現在は撤退しています。
- 愛知県では、「立石1号」というれんこんを育成しましたが、品種登録はされていません。
- 徳島県では、いまも品種を育成しています。台風の被害を避けるため、早生品種や、内容成分に着目した育種を始めた、と聞いています。個人で赤いれんこんを作った生産者もいるそうです。
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◇茨城県の品種育成状況 |
- 茨城県が育成したのは、「霞ヶ浦」、「早霞」。「霞ヶ浦」は、中国の品種系統から選抜したもので、収量は多いのですが、深いところにできるのが難点です。「早霞」は、いまはあまり栽培されておりませんが、早生性がある品種でした。
- 「エノモト」、「タマミノリ」、「あじよし」など、茨城県には個人でれんこんの育種をされている方も多くいらっしゃいます。
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◇茨城県でのれんこん栽培 |
- 茨城県では、ハウスと露地栽培で、1年を通してれんこんが収穫できています。品種は作型に応じて変えています。
- 露地では、4月に定植、8月に開花します。以前は赤い花でしたが、いまはほとんどが白い花です。
- タネばすは、普通のれんこんと同じように作ります。20%をタネばすとして用意する必要があるので、10アールの場合、2アールはタネばすの分として確保します。
- 植えつけから出荷までの流れは、土を平らにして植えつけ、カラ刈りという作業のあと収穫します。カラ刈りは赤渋を抜く作業です。赤渋は、酸素が鉄と結合して酸化鉄になったもので、品質的に問題はないのですが、地上部の葉を刈りとって、葉柄から酸素が入らないようにします。収穫は、ほぼ人の手による水掘で行われます。その後、不要な部分を落とし、れんこんセンターで箱詰め、出荷します。夏は鮮度を保つために発泡スチロールに氷を詰めて、出荷します。
- 病害虫には、褐斑病、腐敗病、アブラムシ、ハムシ、ヨトウムシなどがありますが、薬はほとんど使わず、環境にやさしい栽培を行っています。
- 生産履歴やレシピなどを、いばらき農産物ネットカタログ「いばらき農みるねっと」(http://ibrk.jp/)で紹介しているので、活用してください。
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◇いいれんこんの見分け方 |
- れんこんには穴があり、「見通しがよい」、「先が見える」ことから、縁起がいい食べ物とされます。シャキシャキとして食感がよいのも魅力のひとつです。栄養面では、ムチン、食物繊維、ビタミンCなどが豊富です。れんこんはでんぷんが豊富なので、ビタミンCが失われにくい、とされています。
- おいしいれんこんの見分け方は、丸みがあり肉厚で、持ったときに重いもの。表皮が淡い褐色で、傷がないもの。表皮や切り口がみずみずしいものを目安にしてください。
- れんこんの先端部分はやわらかいので、サラダなどに向いています。元のほうはでんぷんが豊富で、ややかたいため、通常の料理におすすめです。部位によって使い分けると、より一層おいしく食べられると思います。
- 茨城県には、れんこん麺、サブレ、れんこん粉末、煎餅、カレーなど、れんこんを使ったさまざまな加工品があります。
- れんこんは、おせちに使われるため、年末年始が最需要期ですが、周年作っていますので、1年間通して取り扱っていただければ幸いです。
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■2014年12月14日 第9回 れんこん・いちご 〜 講演「茨城県におけるれんこん優良系統の選抜試験」について 茨城県農業総合センター 生物工学研究所 堀井学氏 |
◇茨城県におけるれんこん優良系統の選抜試験について |
- 茨城県のれんこんの全国シェアは50.7%、東京都中央卸売市場では94%を占めています。茨城県では、よりおいしいれんこんを作るために、優良系統の選抜試験を行っています。
- れんこんにはさまざまな品種があり、生産者は、圃場の状態や特性に応じて、品種を使い分けています。これは茨城県に限ったことではなく、他県でも同様です。
- れんこんは枝変わりにより品質が低下することがあります。また、原因は不明
ですが、5年ほど経つと収量が低下するので、新しい品種を導入する傾向があります。
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- 茨城県や千葉県で、個人でれんこんを育種されていた方が亡くなられ、新しい品種が出なくなりました。そこで、産地にある品種の中からいいものを増やしていくことになりました。
- 掘る時期を、年内、年明けにわけて、それぞれ適した品種を選抜しています。
- れんこんの優良系統の選抜は、去年始まったばかりです。全県的な動きで、生産者、農協、県などでひとつのチームを作り、取り組みを行っています。
- 早生系統を産地から集めることから始めました。まず、聞き取り調査をして、12系統を選び、そこから10系統に絞りました。タネばすを集め、田んぼを区切り、そこにれんこんを1本ずつ入れて様子を見ました。栽培したれんこんは、JAや市場の方にも参加してもらい、20名で外観や食味を評価、その結果、5系統が選ばれました。
- 「金澄20号」は、スネ上がりが早いが、年内に掘るなら良い、との評価でした。「金澄34号」は収量がよく、「幸祝(ぐりぐり)」はコロコロとした形がスーパーなどで売りやすい、との評価で、「ひたちたから」、「パワー」は8月の収量がよく、スネ上がりが遅いことが評価されました。
- 今年度は、「金澄36号」、「金澄39号」、「みらい選抜系統」、「まつかぜ」、「タマミノリ」などの品種も試験を行っています。
- 収量、形状の調査に加え、どういったものが販売に向いているのか、市場で評価されているのは何か。味の比較は難しいのですが、食感は、シャキシャキ、ホクホク、ねっとりと、差がわかりやすいので、今後も調査と研究を進めていきたい、と思っています。
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◇質疑応答より |
Q:中の褐変は老化現象ですか?
A:老化というより、消耗といったほうがいいかもしれません。なかのでんぷんをエネルギーとして使い果たした結果、しぼんで茶色くなります。
Q:おすすめのれんこんの食べ方は?
A:農家さんは、素焼きがおいしい、といいます。そのままでもいいですが、穴に明太子を詰めたりして焼いても良いそうです。れんこんは油との相性が良いので、私は素揚げがおいしいと思います。9月頃のやわらかいれんこんをサッと揚げると、とうもろこしのような甘い味がしておすすめです。
Q:何月までだったら褐変が少ないのでしょうか?
A:系統によって違うので、一概にはいえません。選抜試験で、将来的に褐変が少ないものは出せると思います。
Q:茨城県のはすは食感がシャキシャキ、西のほうはもちもちしているものが多いと思います。また、九州から、新ばすなのにかたいものが出てきますが、なぜですか?
A:系統によってまったく食感が違います。茨城県は金澄系が多いのでシャキシャキ、西のほうは「備中」などのもちもち系を多く作っています。新ばすでかたいのも特性かもしれません。早くから掘り採り可能な「湖北の光」などは、遅らせるとかたくなってしまう、という性質もあります。
Q:れんこんの穴のところが茶色くなっているのは古いものなのでしょうか?
A:掘り採って、その場で切っても黒いものがあるので、古いのではなく、酸化鉄が付着しているのかもしれません。
Q:揚げると紫色になるれんこんがあるのですが、それはなぜ?
A:加熱すると紫色になるのは、少し消耗しているれんこんかもしれません。年明けになると出やすくなります。
Q:いいれんこんの見分け方は?
A:触ったときにちょっとやわらかく感じられるものや、外から見てやや乾いているものは、消耗しているかもしれないので、避けたほうがいいと思います。茨城のれんこんでは、先端の方の小ぶりなものはやわらかくて甘く、2〜3節目の大きなものはシャキシャキとした食感が楽しめます。
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