■2014年9月21日 第6回 レタス、葉もの類 〜 講演「レタスについて」 横浜植木(株) 種苗営業部 主任 石田友一氏
◇レタスの分類
  • レタスはキク科タンポポ亜科に属しており、レタスの花はタンポポによく似ています。

  • レタスには950もの種類があります。アブラナ科は338種類なので、その3倍ほど多いことになります。
横浜植木(株) 種苗営業部 主任 石田友一氏
◇レタスの種子の発芽特性
  • レタスのタネは極小で、タンポポのように綿毛の先についています。われわれはその綿毛だけを取り除いて、品種として売っています。

  • レタスのタネはとても小さく、蒔く作業が大変です。最近は、特殊素材でタネをコーティングして、蒔きやすい形にしたものを販売しています。また、どのタネが何か分かるように、白いものだけでなく、緑や赤に色づけしたものもあります。

  • 秋に芽が出て、冬を越し、春になると花を咲かせてタネになり、夏を迎えるというのがレタスの一生で、春に芽が出ると、真夏、厳しい生育条件になるので、秋に発芽して身を守り、現在まで生きながらえてきたわけです。

  • 夏場に発芽すると自分の体を維持できず枯れてしまうため、30℃以上の高温になると発芽率が急激に下がります。

  • レタスは「好光性」といって、光が好きな性質があります。真っ暗な中ではなかなか発芽しません。
◇レタスの種類
  • レタスには、ロメインレタス、エンダイブ、グリーンリーフ、レッドリーフ、玉レタスなど、さまざまな種類があります。

  • ロメインレタスは、ヨーロッパで発達したレタスで、比較的、葉が厚めの品種です。日本でよく作られている玉レタス、グリーンリーフ、レッドリーフは、葉が薄い系統です。欧米ではレタスを炒めて食べる食文化があるので、葉が厚いものが好まれます。日本では生食が主で、コールドチェーンが発達していることも、葉が薄い系統が多い理由ではないか、と思います。
◇レタスの生理生態
  • レタスは、15〜20℃が生育適温です。いまの時期、レタスを植えておくと、1日で前日の1.1倍とか、1.2倍とか、どんどん大きくなります。

  • 冷涼な気候を好み、比較的、乾燥に強いタイプです。最近は、ゲリラ豪雨や局地的な大雨が多く、生産が難しくなりつつあります。

  • レタスは高温による積算温度の蓄積により抽苔します。つまり、その日の平均気温を足していき、ある一定の温度に達したときに花を咲かせるメカニズムが働く、ということです。

  • 10℃以下になると、レタスは生育が止まります。
◇東京市場の月別県別入荷状況
  • 9月は冷涼地の長野県産のレタスが大半を占めますが、ちょうど、茨城県の最初のものと、長野県の後半のものが重なる時期です。

  • 11〜12月は茨城県産がメイン、その後は静岡県、兵庫県、香川県、長崎県、熊本県など、太平洋に面している地域が産地になります。これらが崩れると全体の量が減り、価格も不安定になります。
◇産地での栽培状況
  • 八ヶ岳の麓のレタス畑では、「1条植え」といって、畝に1列にレタスを植えています。植え方は手植えか機械植え、農家さんによります。全面マルチで、土壌中の水分と肥料を確保して栽培しています。

  • 長崎県は、島原、雲仙、南島原あたりが産地です。海に囲まれた地域で、トンネルはしても、それほど温める必要はなく、作りやすい場所です。このところ、レタスの値段がいいので、長崎県、熊本県ではレタスの栽培が活発化しています。

  • 最近は、大産地から安定供給されにくくなり、三浦半島でもレタスが栽培されるようになりました。いままで作っていた大根、キャベツより、価格はレタスのほうがいいですし、重量野菜と違いラクに栽培できます。今後も少しずつ広がると思いますが、台風が来ると三浦半島は1回でダメになってしまうので、注意が必要です。

  • 三浦半島の冬場の温かさは日本でも有数で、サニーレタスを作っているある農家さんは、「ベタがけ」といって、布1枚だけで栽培に成功しています。他の地域ではトンネルですが、品種力と農家さんの栽培技術があって、土地が合えば、厳寒期でも布1枚でOKで、それほどコストもかかりません。
◇レタスの育種
  • レタスはすぐに自家受粉してしまうので、F1品種を作るのは難しい。

  • 玉レタスには、冬タイプ、夏タイプ、中間タイプの3つの系統があります。

  • 夏タイプには、マック系、エンパイア系、マックとサリナスの掛け合わせ、エンパイアとサリナスの掛け合わせがあり、これらは晩抽性を持った玉レタスです。

  • 冬タイプは低温肥大性と耐病性を持ったもので、12〜2月に栽培されます。

  • 中間タイプは、育てやすい時期に作るレタスです。カルマーは、中間タイプの非常においしいレタスですが、サリナスのほうが形がいい。

  • 耐寒性と低温肥大性を持った品種は、暖冬になると、「暴れる」というのですが、葉がたくさんできて、巻かないレタスが出てきます。逆に、暖冬に対応する玉レタスは、一昨年と去年のように寒い時期があると、大きくなりません。

  • 7〜9月のクレームで多いのが、腐敗病、すそがれ病、斑点病など。雨が多くて温度が高い時期に多く発生する病気です。見て分かれば農家さんも出荷しませんが、外見からでは分からないものもあります。カビの一種が箱の中で蒸れて繁殖し、開けると腐っていたということもあります。

  • 冬場は、暖冬対応の品種が寒さに負けると、葉ができずに巻いてしまい、ソフトボールのように小さくてかたいレタスが発生することがあります。農家さんと協力して、大きくしっかりしたものを生産していくのがわれわれの使命だと考えています。

  • 冬場は凍害も発生します。レタスは水分が90%以上の植物なので、霜にあたり、凍ったり溶けたりを繰り返すと、傷みが出ます。最近の気候は、急激に寒くなったり暖かくなったりを繰り返す傾向があるので、凍害が出やすく、売るときには必ず箱を開けて確認していただきたい思います。生産者によってもかなり違うので、生産者の顔を知ることも大切です。
◇水耕栽培について
  • 水耕によるレタス類の栽培は、この5年でかなり増えているようです。

  • 水耕栽培では、生育スピードが早いことが求められます。だいたい40日100グラムがターゲットになります。ただ、これだけスピードが早いと肥満体質になり、ヒトでいう成人病、つまり、カルシウム欠乏、芯の腐れといった生理障害が出やすくなります。株揃いがいいこと、発芽がいいことも育種に求められる条件になっています。

  • 水耕栽培の一番のメリットは、安定供給、安定価格。地域雇用の促進にもなっています。デメリットは初期投資が大きく、設備の維持費がかかること。また、販売先の確保も難しい問題です。
◇質疑応答より

    Q:夏場に多いレタスの中の傷みは、農家さんには分からないのでしょうか?
    A:いわゆるレタスの脱水症状で、冷涼な気温で生育しているときに、急に温度が上がると、根から水を吸い上げるスピードが追いつかなくなり、自分の葉に供給した水を、成長点を維持するために逆流させるシステムが働きます。外の葉がしおれていれば分かりますが、中は分かりにくいと思います。

    Q:今年は特に、表面が茶色くなる「サビ」が多いと思うのですが?
    A:レタスの収穫は、朝3〜4時の真っ暗な中、ヘッドライトをつけて作業をしているので、見分けにくい、という事情があります。また、農家さんが葉を落とすときの切り方によっても傷がつくことがあります。

    Q:レタス1個にカビが出るとほかにも移ってしまうのでしょうか?
    A:その可能性はあります。ですから、1個見つけたら隔離しないといけません。箱で納品する場合も、手間ですが、7〜9月は開けて確認したほうがいいと思います。

 
 

【八百屋塾2014 第6回】 挨拶講演「レタスについて」|勉強品目「レタス、葉もの類」|商品説明食べくらべ