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■2012年8月19日 第5回 〜 食べくらべ
◇なすなどの食べくらべ
なすは、「長なす」、「式部」(栃木産)、「千両2号」(栃木産)を蒸して食べくらべた。
「畑なす」、「丸なす」、「青なす」、「シチリアなす」の4種は炒め焼き。「絹かわなす」は塩もみ。「賀茂なす」と「寺島なす」は煮物で試食。
その他、梨なども試食した。
なすの食べくらべ
[調理の先生より]
今日のなすの塩もみは、ちょっと時間が足りませんでした。本当は半日ぐらいおいたほうがいいのですが、2時間ぐらいしかなかった。3%の塩をまぶしてからもんで、重石をしておきました。小なすのほうがかたい分、味が入りにくいです。
荒井慶子先生
[感想など]
「千両2号」は皮がやわらかくて、自分の好みでした。今の若者の中には、なすの皮を残す人がいるらしいので、やわらかいなすは若者向けにいいかも。
今日の「長なす」は、やや筋っぽかった気がする。
「千両2号」は、やわらか過ぎて、食感がいまいちだった。私は「式部」のほうが好き。ちゃんと食感があり、かたくはなかった。味も濃い感じがした。
「式部」のほうが作りやすいので、市場に出回っているのも「式部」が多い。「式部」には、B品、C品が出にくい。「千両2号」のほうがやや作りにくい。
産地では、時期によって、「式部」と「千両2号」の両方を作っているところが多いと思う。
今日の「千両2号」と「式部」は、普段自分が感じているのとは逆の食味だった。「千両2号」はもっと歯ごたえがあり、「式部」のほうがやわらかいはずだと思っていた。
なすはたいてい品種名を書かずに、「なす1袋いくら」で売っているから、スーパーの店頭では「式部」と「千両2号」の違いはわからないと思う。
うちの店は高齢のお客さんが多いので、「皮がやわらかいなすをください」といわれることが多い。その場合、今日の「千両2号」のようななすが喜ばれそう。
「丸なす」にもいろいろありますが、今日の山形の「丸なす」は、トロッとして甘みがあって、すごくおいしかった。
「畑なす」がおいしかった。一般の消費者は、何種類かのなすを食べくらべることはないと思うので、私たちが食べた感想をうまく伝えてあげれば、より一層そのなすの価値が生きるのでは、と思いました。
「寺島なす」は江戸の伝統野菜のひとつです。京野菜、加賀野菜など、地方の野菜も大事ですが、この「寺島なす」や「品川かぶ」、「半白きゅうり」など、江戸の伝統野菜も守っていきたいので、今後も八百屋塾で取り上げてもらえると嬉しい。押上に、東京の食材だけを使った料理を出す「よしかつ」というお店があります。夜だけしかやっていなくて、予約しなければダメですが、とてもおいしいので、ぜひ行ってみてください。
私は、蒸しなすが苦手です。今日、「千両2号」を食べたとき、舌がチカチカするような感覚が残りました。いがらっぽいというか、それが蒸しなすが苦手な原因なのですが、同じ栃木産のなすでも、「式部」のほうは感じませんでした。
「寺島なす」は、栽培の仕方なのか、調理法があっていないのかわかりませんが、えぐみを感じた。
「寺島なす」はタネが多く、えぐみがあって、かたい。今は、やわらかく、クセのないものが好まれるので、その流れには反すると思います。ただ、昔からの伝統の味として残していきたい。油と相性がいいので、揚げると苦みやえぐみは抜けます。天ぷらもおいしい。天ぷらにして、「寺島なす」のかたさを味わうようにするといいと思います。
なすは、品種による違いもありますが、煮たり、蒸したり、料理方法によっても全然違ってくると思いました。
伝統野菜は、必要は必要だと思いますが、季節もので、一年中出回る野菜ではない。差別化するために売るのもいいと思いますが、お客さんが料理をしなくなっているので、たとえば、「寺島なす」があっても、どうしたらいいのか困ると思う。私個人としては残してほしいと思いますが、なかなか難しい。
伝統野菜は、一般的にいつでも食べられるようなものではなく、季節があり、その地域に根付いて、そこで食べていくのがいいと思います。確かに、食べたいという気持ちもありますが、一般的になったら伝統野菜ではなくなってしまうのではないでしょうか。今は流通が発達しているので、あの地方にこういう伝統野菜がある、とわかりますが、それがなければわからないままだったのでは。みんなが知ることは大事ですが、その地域や農家を元気にさせていこう、という思いの中で食べていくものなのかな、と思います。
今日食べたなすの中では、「絹かわなす」がおいしかった。なすの漬物が苦手、という人も多いので、何かおいしく食べられる方法はないか、とみんなで話していました。
伝統野菜は、戦略のうまい産地はいいけれど、下手なところは伸びない。伝統野菜には歴史があるので、その歴史をうまく知らせていけば、アピールできるのでは。私は、「寺島なす」は、あまりおいしいとは思わなかった。今、おいしいなすがいろいろあるので、それほど「寺島なす」にこだわらなくてもいいのではないでしょうか。
私は伝統野菜についての知識が全然なかったので、このテーマでお話を聞けたことが今日の収穫でした。八百屋なのに、江戸の伝統野菜があるということ自体認識がなかったし、「寺島なす」も、今日初めて知りました。東京でも農家として頑張っている人がいる、ということ自体が驚きでした。
「伝統野菜」と聞くと残したほうがいいと思いますが、実際は、供給と流通の問題もあるので、レアなものとして残っていけばいいのではないか、と思います。
伝統野菜は、F1に比べると、揃いは悪く、天候にも左右されるので、効率が悪い。うちの店では、伝統のなすをかなり売っていますが、知っている人しか買ってくれません。一年中、「米なすください」といってくる料理人もいるほど。周年米なすを作っているからだと思いますが、伝統野菜は、地方野菜として今まで残ってきたものなので、その地方に行くと、みんな食べている。だから、東京の市場で伝統野菜が売れなくても、なくなりはしません。地方のなすは、ちゃんとその地方で育まれて残っているので、心配ないと思います。地方が伝統野菜を売り込みたい、という気持ちはよく分かりますが、われわれ流通の現場の最先端としては、すごく骨を折っています。ほとんどの人が、なすはふわふわなものだ、と思い込んでいる。「この伝統のなすは、実がしまっていて皮はやわらかいよ!」なんていっても、「何言ってるの?」という顔をされてしまいます。わかってくれる人はすごくわかってくれるのですが、100人に1〜2人です。でも、私は、その人たちのために、これからも伝統野菜を売ろうと思っています。「十全なす」もたくさん売っていますが、今、本当においしい時期です。ゆでて、冷やして、しょうがじょうゆで食べると、ひとりで5個くらいペロリと食べられます。地元では、これを素麺にのせたりして食べています。
伝統野菜は残したほうがいいと思いますが、淘汰されていったのには、作りにくい、収量が上がらない、流通にのせづらいなど、いろいろな問題があって少なくなったのだと思うので、流通の主流には成り得ないのでは。ただ、プロの料理人に調理してもらうと、独特のえぐみなどがとてもおいしいものに変わっていったりするので、その点は魅力。あえて東京とかに出さないで、その地域でしか食べられないという観光資源にするなどして残していくのがいいのではないか。
カゴメは、トマトの品種を、種子バンクとして、年間100〜200残しています。気候変動などが起きたとき、今までは流通しなかった品種、あるいは栽培効率が悪かった品種が、もしかしたらマッチングするかもしれない。そうした可能性はあります。ですから伝統野菜も、野菜としての伝統野菜は残らないかもしれないけれど、種子としてきちんと残しておいて、それを今後の栽培の中で継承していくような残し方もあるのではないでしょうか。
大田で一番高いといわれた梨は、まだ青いからかもしれませんが、いまいちのような気がしました。熊本や千葉の梨のほうが甘みがあっておいしかった。
[その他]
最後に、ゲストとして八百屋塾に参加された、JA行方北浦地区の青年部のみなさんからご挨拶がありました。
JA行方の北浦という地域から来ました。青年部の組織で担い手をしています。ほかに、100人の担い手がいます。
今、多く作っているのは、さつまいも。「紅あずま」を行方は「紅こがね」として、流通しています。また、「紅まさり」、「紅はるか」を行方では「紅ゆうか」として出しています。麻生という地域では、「クイックスイート」、「紅赤」、「金時いも」などが流通しています。
JA行方北浦地区の青年部のみなさん
チンゲンサイ、水菜、わさび菜といったの葉物の栽培もしており、ほうれん草を周年作っている人もいます。品目はかなり多く、50品目以上あると思います。若い生産者も多いので、機会があれば、ぜひ産地にいらしてください。
青年部という組織は、主にPRを担当しています。これまで、横浜や、銀座にある茨城のアンテナショップなどでPR活動をしました。自分たちが出しているものを直に消費者に提供し、PRする活動をメインとしていて、消費者の生の声を聞きたい、と思っています。
【八百屋塾2012 第5回】
実行委員長挨拶
|講演「
なすについて
」|勉強品目「
なす
」「
梨
」|
商品情報
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食べくらべ
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