■2012年5月20日 第2回 〜 食べくらべ
◇豆ごはんなどの調理について
 食べくらべの前に、矢長謙三さんより、豆ごはんなどの調理に関しての説明がありました。
  • 5年前から、新富町で、「潤菜(るさい) どうしん」という野菜主体の日本料理のコースを出すお店をしています。

  • 7〜8年前に、八百屋塾に参加していました。

  • 今日の豆ごはんは、そら豆とえんどう豆で作りました。
矢長謙三氏
  • そら豆ごはんは、そら豆を茹でておき、あとからのせる方もいらっしゃいますが、今日は、ごはんにのせて炊きました。香りもすべて移したい、という思いがひとつ。また、そら豆は、かたさが残るぐらいに茹でたものを食べるおいしさと、崩れたものを食べるおいしさがあります。崩れたものが合う調理は、ごはん、コロッケ、ポテトサラダなど。せっかくですから、茹でて食べるのとは別の食感、おいしさを感じていただきたい、と思って、ごはんにのせて炊きました。そら豆と同じく、ワラビも、やわらかくしてもおいしい。醤油をかけて食べるのであれば、ほどよいやわらかさがいいのですが、ごはんにのせて炊くとトロッとなって美味。

  • 豆には塩味が合う、と思います。醤油が合う素材、たとえば、油揚げ、牛肉などは入れないほうがいい。そら豆と一緒に炊いておいしいのは、ベーコン、豚肉、アサリなど。塩で調理しておいしいものを想像していただければいいと思います。今日はそら豆だけで作りました。ちなみに、ワラビは醤油と合うので、油揚げ、牛肉とあわせてもおいしい。

  • 昆布出汁と塩で炊いているのですが、昆布出汁は、水1リットルに対して、10gほどの昆布を入れています。かつおぶしを使わないので、昆布がやや多め。好みもありますが、塩は、1リットルに対して、6〜8g。今日は、そら豆をたくさん入れたので、8gくらいです。

  • 米は、土鍋で炊いています。まず、30分水に漬けて、それからザルに上げて30分。そのザルに上げた米と同量の水を入れます。鍋によって、蒸気の飛び方が違うので、同量+αだと思ってください。火加減はキッチンによっても違うので、適宜、調節します。

  • 今日のえんどう豆のごはんは、別格だと思ってください。このようなごはんを炊こうと思ったら、市場で相当たくさんの箱から選ばなければいけません。うすい豆は、八百屋塾用に採ってもらったものなので、若採りで、かたさや状態が非常にいい。私は、今、えんどう豆が売れる世の中になっていない、と思います。売れ残るので、おいしくない状態になっていることが多い。生産者によっても、かなりバラツキがあります。皮に白いシワが出てきていたら、いくら茹でても、渋みばかりで、甘さは出てきません。じょうずに回転する方法を、八百屋さんなども考えていただければ、もっとえんどう豆のよさが伝わると思います。今日は、非常にいいえんどう豆だったので、皮で出汁をとって、塩だけで豆ごはんを炊きました。

  • キヌサヤも茹でてきました。昔のセオリー通りに筋を取ってから茹でようと思うと、反対側に筋があるキヌサヤもあって、なかなかうまく取れません。そこで、今日は、筋をつけたまま茹でて、あとから筋を取って食べていただきます。私は、茹でてから筋を取るという調理法でもいいのではないか、と思います。

  • キヌサヤの茹で方は、蓋をして茹でることをおすすめします。火にはクセがあります。鍋を2つかけて茹でていると、真ん中のほうが強く対流し、外は対流しません。そうすると、火の入り方がだいぶ違うので、蓋をして全部を回転させてあげるのがいいと思います。ただし、これは、100℃を超えて茹でてもいい野菜の場合。ブロッコリーなどは、100℃を超えてはいけない野菜です。アスパラも、サイズによっては100℃を超えてはいけない。ブロッコリーは、沸いたお湯に1分半〜2分ほど漬けて、ザルに上げるだけ。失敗がありませんし、甘さとかたさのバランスがほどよく仕上がります。

  • キヌサヤは、鍋の大きさや量にもよりますが、1分〜1分半ほどで水に落とすくらいがいいと思います。色重視だと、1分以内くらいで水に取るのですが、それだと、せっかくのキヌサヤの甘みやうまみが出てこない。今、生食主体、色主体で、野菜がサラダに押されていますが、日本の食文化は、火を入れることから始まったので、もう少し、火を入れることに眼を向けていただければ、と思います。

◇豆類、メロンなどの食べくらべ
  • いんげんは6種類、「グリーンタッキー」(千葉)、「ステイヤー」(千葉)、「鴨川グリーン」(千葉)、「キセラ」(鹿児島)、「サーベル」(群馬)、「スーパーライト」(群馬)を茹でて食べくらべ。「ステイヤー」はごま和えも試食した。

  • えんどうは2種類、徳島のさやえんどうと、京都の在来種のさやえんどうを茹でて食べくらべた。

  • 料理は、矢永謙三さんの「そら豆ごはん」(愛媛のそら豆を使用)、「うすいえんどうごはん」(大阪のうすいえんどうを使用)のほか、いんげん「鴨川グリーン」の天ぷら、「キセラ」の天ぷらと炒めもの、グリーンピース(熊本)のポタージュを試食した。
[調理の先生より]
  • グリーンピースのポタージュの色を美しく仕上げるには、グリーンピースを茹でてから使うのですが、味の面では茹でないほうがいいので、今日は茹でないで作りました。最初に、繊維に逆らって薄切りにした玉ねぎをしんなりするまでバターで炒めます。これがポタージュの土台で、そこに、生のグリーンピースを加えました。スープは、手軽にキューブタイプのものを使いました。キューブ1個に水3カップと書いてあったら、4カップくらいに薄めにしてください。後から味を足すことはいくらでもできますから。豆を加えて煮立ってから弱火で約20分。豆が十分にやわらかくなるまで煮たら、ハンドミキサーで混ぜ、牛乳、生クリーム、バターなど、好みで仕上げをします。冷凍保存できますが、その場合は、牛乳や生クリームを入れる前に冷凍したほうがいいと思います。

  • グリーンピースを茹でるときは、お湯が沸いたところに、0.5%の塩を入れて茹でます。おすましなどは塩が0.7〜0.8%ぐらい。それよりやや薄いくらいの塩味です。

  • グリーンピースの豆をサヤから出して、豆だけ茹でるとき、茹であがったら、すぐにザルに上げたり、急に水で冷やすとシワシワになってしまいます。流しの下に、茹でた鍋ごとおいて、少しずつ水を入れて、だんだん温度を下げると、ふっくらと仕上がります。

  • いんげんのごま和えは、普段は白ごまを使いますが、黒ごまで作っても、コクがあっておいしい。

  • 天ぷらには、天ぷら粉を使いました。

  • いんげんはベーコンと炒めてもおいしい。ベーコンを炒めて脂を出したところにいんげんを入れ、いんげんが生の場合は、最後にちょっと酒を加えます。

[感想など]
  • グリーンピースとうすい豆を食べくらべた感想は、 うすい豆のほうが味が濃くて、口の中に入ったときの香りもよかった。色もきれい。あとからグリーンピースを食べたので、味気なくて、香りもなかった。これだけ差があるのか、と驚きました。でも、熊本のグリーンピースを使った豆ごはんはすごくおいしかったので、調理方法がすごく大事なんだ、と思いました。料理の仕方を学んで、お客さんに簡単な料理方法を教えてあげられるといいかもしれない。

  • えんどう豆のごはんは、皮で出汁を取っているのがすごくポイントだったと思います。
 

【八百屋塾2012 第2回】 実行委員長挨拶講演「豆について」|勉強品目「豆類」「メロン」|食べくらべ塾生より