■2020年1月19日 第10回 イチゴ・サツマイモ 〜 食べくらべ

◇「サツマイモ」「イチゴ」の食べくらべと試食

  • サツマイモの食べくらべは、「鳴門金時」(徳島)、「紅はるか」(千葉)、「紅まさり」(茨城)の3種類。蒸したものを食べくらべた。

  • 料理は、サツマイモのきんぴら、ジョン、スイートポテトを試食した。

  • イチゴは、「やよいひめ」(埼玉)、「あまりん」(埼玉)、「よつぼし」(茨城)、「恋みのり」(長崎)、「あまおう」(福岡)、「とちおとめ」(栃木)、「桃薫」(茨城)、「おいCベリー」(長崎)、「さぬき姫」(香川)、「女峰」(香川) を食べくらべた。

サツマイモの食べくらべ
サツマイモのきんぴら
サツマイモのジョン
スイートポテト
イチゴの食べくらべ-1
イチゴの食べくらべ-2
     
 
◇調理について
[石井玲子氏、タナカトウコ氏より]
  • サツマイモのきんぴらは、細めの拍子木切りにして、炒め蒸しにしました。調味料は、砂糖、酒、みりん、しょうゆ、ごま。歯ごたえが残るくらいの食感でもおいしくいただけます。かき混ぜすぎるとサツマイモが折れてしまいますのでご注意ください。

  • ジョンは韓国料理です。今回はサツマイモを使いました。サツマイモはやや薄めの斜め切りにし、水にさらして、水気をよくふき取ってから、小麦粉を薄くまぶし、溶き卵にくぐらせて、熱しておいたごま油で焼きます。今日はホットプレートを使って焼きました。タレは、めんつゆ、ラー油、ごま油、砂糖(お好みで)、みじん切りのねぎを合わせただけでできる簡単なピリ辛ダレです。
石井玲子氏
  • スイートポテトは定番のレシピです。今日はサツマイモ1本(約200グラム)に対して、牛乳60cc、無塩バター10グラム、砂糖20グラム。ゆでたサツマイモを熱いうちにつぶして砂糖などを加えますが、そのときにサツマイモの味を見て、甘ければ砂糖の量を減らしてもいいでしょう。サツマイモの水分量によって牛乳や卵の量も加減してください。混ぜてから、鍋で一回水分を飛ばして調節することもできます。子供の食育イベントにもおすすめです。

  • 食べくらべのサツマイモは、皮つきのまま、丸ごと一本蒸してからカットしました。輪切りにしてから蒸す方法もありますが、「紅はるか」「紅まさり」はカットしてから蒸すと水分が多すぎるかもしれません。「鳴門金時」は逆に、カットしてから蒸すともっとしっとりして食べやすくなったかと思います。
 
◇食べくらべの感想
  • 「鳴門金時」はホクホク、「紅はるか」、「紅まさり」はねっとりしていた。「紅はるか」と「紅まさり」の細かな違いをどう表現したらいいかがむずかしかった。

  • 「鳴門金時」、「紅はるか」、「紅まさり」の順に水分量が多くなるように感じた。香りは「鳴門金時」が一番強く、「紅はるか」が一番バランスがよく感じた。

  • 全体的に評価がむずかしかった。「鳴門金時」はほっくりしていて、「紅はるか」が一番甘さが強く、香りもあった。「紅まさり」は食感がほっくり系とねっとり系の中間くらいで意外においしく、香りもあった。店では「紅はるか」を焼き芋に使っている。

  • 今回は、蒸かすという調理法だったので、「鳴門金時」がおいしかった。「鳴門金時」の水分量がちょうどよかったのではないか。焼き芋にした場合は、食感としては「紅はるか」のほうがおいしくなるかもしれない、と思った。

  • 個人的には「紅はるか」が好みだった。自分が調理して出すとしたら、研究しがいがあると感じた。

  • 食べくらべはむずかしい、とつくづく思った。「鳴門金時」の食感がホクホクで、「紅はるか」が中間、「紅まさり」がねっとりしているように感じた。「鳴門金時」はわかりやすい甘さ、「紅はるか」は品がある甘さ、「紅まさり」は甘すぎないと感じ、香りに関しては、わからなかった。

  • これほど多くの種類のイチゴを食べくらべたのは初めて。「桃薫」は香りがおもしろく、意外と甘くないが、目をつぶって食べたらイチゴかどうかわからないのではないか。「やよいひめ」がおいしかった。

  • イチゴが大好きでいろいろな品種を食べたことがあるが、今日は特別おいしいと感じたものはなかった。「あまりん」は砂糖っぽい甘さで食感がかためなので、加工に向くと思った。「桃薫」は食感もイチゴっぽくなく、香りも味も別の果物を食べているようだった。「おいCベリー」「さぬき姫」「女峰」などはもっとポテンシャルがあると思う。

  • 一番おいしいと思ったのは「あまりん」。最初、噛んだ瞬間は「ん?」と思ったが、そのあと一気に口の中に甘みが広がった。一瞬かたいかなと思ったが、中はやわらかかった。大人から子供までおいしく食べられると思う。「桃薫」は独特の風味があってイチゴっぽくない感じ。「恋みのり」はかたいが、ほどよい甘さで食べやすかった。

  • 「やよいひめ」と「あまりん」が甲乙つけがたいくらい甘かった。「あまおう」は甘くなかった。「桃薫」は面白い味で、イチゴはなく何か別のものに使えそうな気がした。

  • 「あまりん」がわかりやすい甘さで好き。「桃薫」は複雑すぎて、甘さもそれほどないので、めずらしさでお客さまにすすめることはできるが、売りにくいのではないか。「おいCベリー」も、「あまりん」とはまた違うコクのある甘さで好きだった。

  • 去年は「やよいひめ」がとてもおいしかったが、今年は甘すぎた。サツマイモのあとに「桃薫」を食べたので、サッパリとしておいしかった。私は「桃薫」がけっこう好き。

  • 私は「よつぼし」がフルーティーで濃厚で好みだった。「桃薫」は本当に桃の香りがして、桃は皮を剥くのが面倒なので、桃の代わりに使うと便利そうだと思った。

  • 農研機構で育成した品種について、「おいCベリー」は糖度も酸度も高めで濃厚な味わい。「恋みのり」はややかためだが、食味は良好。「桃薫」は、たいてい女性や子供さんの評価が高く、男性からは低い。イチゴとして見た場合、概念からして違うので受け入れにくいようだ。まったく新しいフルーツという感覚で食べていただくと割と評価が高く、トロピカルフルーツのような香りだという感想も多い。「桃薫」に関してはさまざまなご意見が出るので、イチゴの概念から外れたものとしてすすめするといいのではないか。(講師 野口裕司氏)

  • サツマイモの食べくらべは、あえて昔ながらの「蒸す」という方法で、焼き芋とは違う風味が出てきたりして、逆に新鮮だった。きんぴらには「紅あずま」、ジョンは「紅はるか」、スイートポテトは高系の「愛娘」を使っていただいた。品種に最適な調理をしていただき、感激している。サツマイモは奥深いので、みなさんと一緒に広める努力をしなければいけない、と思った。イチゴも風味や甘さが違って面白かった。いろいろなことを勉強して情報を共有し合う八百屋塾という場は素晴らしい、と思った。(東京青果(株)  狩野純一氏)