■2019年9月8日 第6回 ウリ類・ブドウ 〜 勉強品目「ウリ類」 東京青果(株)野菜第3事業部係長 関崎敬介氏 |
- 東京青果で、カボチャとタマネギを担当しています。歳時記では、ウリは夏、カボチャは秋の季語です。
- カボチャは3種類、すべて北海道産をお持ちしました。JAなよろの「味平」と「味早太」、苫小牧の「ダークホース」です。
- 北海道では、8月から1月くらいまでカボチャを販売しますが、味のノリが早いもの、貯蔵性がいいタイプ、どちらのバランスもよいタイプをリレーしています。現在は、早生の産地がピークになっています。
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- 「味平」と「味早太」は、北海道では早いタイプの品種です。「味平」のほうが古い品種で、それより早く出せる品物がほしいということで出てきたのが「味早太」です。
- カボチャは通常、ハチか手で受粉させてから50〜55日おいて、キュアリングをして出荷します。「味平」と「味早太」は40〜45日で完熟し、食べ頃は9月頭くらいです。
- 「味平」はみかどさんの品種で、甘みと粉質感のバランスが良いタイプです。「えびす」と並び、品種的に優等生で、はずれが非常に少ないと思います。
- 「ダークホース」は、固定ファンの多い品種です。「味平」や「味早太」より粉質感が強くホクホクとした食感です。1週間ほどおくとさらに甘みがのってきます。苫小牧の厚真で作っています。昨年は地震で起きた山崩れの影響で圃場まで行けず、全量廃棄になってしまいました。今の時期には、有望な産地かつ品種ではないか、と思います。
- カボチャは、1万年〜8000年前くらいに、北米で栽培が始まったといわれます。ヒマワリ、アカザ、キヌアなども栽培化したとされ、最初はカボチャもタネを食べたのかもしれません。そこからさまざまな品種が作られ、世界中に広まっていきました。
- カボチャにはビタミンA、カロテンが多く、これらは目や皮膚にいい成分です。
- カボチャは低温障害が出るので、保存は8〜13℃、湿度は50〜70%がベストです。普通の野菜は湿度90%で保存しますが、カボチャはそれより少し乾燥したところです。切るとそこから傷みます。マッシュして冷凍すると、そのままスープなどに使えます。北海道の産地では、カボチャ団子にして食べています。マッシュし、つなぎに片栗粉を入れて練り、クッキーのようにして、フライパンにバターを入れて焼きます。手軽でおいしく、中にチーズを入れるといったアレンジもできます。
- カボチャの原種は、「ロロン」のようなラグビーボール形だそうです。育種上は都合がいいのですが、切りにくいし、カット機械に入らないので加工にも向きません。売る側としては、ラグビーボール形は市場では受けが悪いのではないでしょう。
- 国産は6〜7割が北海道産ですが、今、日本で消費されているカボチャの6〜7割は輸入品です。ニュージーランドが6万トン、メキシコが2万5千トン。その他、ニューカレドニア、トンガなど。輸入化された野菜としては早いほうではないでしょうか。
- カボチャは重いこともあり、国産の作付けは減少傾向にあります。収穫のときの人手が足りず、やめてしまう方も少なくありません。北海道ではロボットアーム収穫も可能ですが、ほかの産地ではできたものから収穫するので機械化はむずかしい。技術の進歩待ち状態で、それまでは国産のカボチャは減り続けると思います。
- 切ってラップに包むと断面が白くなるのは防げません。白くなった部分を食べてもまったく問題はありません。
- カボチャによくあるクレームは、まず、苦み。個体によって、ウリ科特有の成分「ククルビタシン」が出ることがあります。これは防ぎようがなく、当たってしまったら申しわけない、と言うしかありません。また、カボチャに特有な現象「クリスタル」は、切った断面に白い部分があり、そこは食べるとかたく苦みもあります。特に害はありませんが、商品にはなりません。デンプンが関係しており、玉が大きくなるときに水分が少ないとクリスタルが多くなる、といわれます。ほかには、「水化」といって、切った瞬間に水が出てくることがあります。これは着果不良と思われます。
- おいしいカボチャの見分け方は、ヘタの大きさ、乾いているかどうか、などとよくいわれますが、最近はヘタを取ることもありますし、キュアリングで縮むのでわかりにくくなっています。お尻の部分を見て、花落ちがしまっているもののほうがいい。なにより、きちんとした生産者さんが作っているかどうかが一番だと思います。
- ウリ科には、未熟果を食べるタイプと、完熟果を食べるタイプがあります。ゴーヤは未熟果で、完熟すると果皮は黄色、中のタネは真っ赤になります。キュウリも昔は黄色く完熟させたそうですが、品種間競争によって、未熟果が主流になりました。
- シロウリは肉質が緻密で非常においしいウリです。
- 加賀太キュウリは、昭和に育種され、コリンキーのような形のものと東北系との掛け合わせだそうです。
- 私は長野県出身です。実家ではユウガオを味噌汁に入れていました。青臭くてあまりおいしくはなかったのを覚えています。
- ズッキーニは、夏野菜の煮込み「ラタトュイユ」によく使われます。産地では、他のウリにくらべ、連作障害が出にくいから作る、という面もあるのかもしれません。
- 花ズッキーニは、花の中に肉を詰めたりして食べます。ズッキーニ自体未熟果ですが、さらに未熟なものを食べよう、という人間の欲というか探求心はすごいと思います。
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◇「ウリ類」の写真 |
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■2019年9月8日 第6回 ウリ類・ブドウ 〜 勉強品目の補足 (株)果菜里屋 高橋芳江氏 |
- ユウガオは機械でくるくる回しながら細長く剥き、干してカンピョウにします。漂白と無漂白があり、無漂白のほうが高いようです。寿司などに使われ、栃木県が80〜90%のシェアを占める、と聞きました。
- 栃木県では「ユウガオ」、新潟県の長岡では「ユウゴウ」です。味噌汁に入れたり、クジラとあわせたクジラ汁や炒めものにします。山形や青森でも炒め煮などにします。
- キンシウリは別名「そうめんカボチャ」ともいいます。切ってゆでると繊維がほぐれてそうめんのようになります。酢の物などにして食べます。
- 伝統野菜つながりで、新潟県の「巾着ナス」と「梨ナス」をお持ちしました。実がしまった「巾着ナス」は、地元では、蒸したものをわさびじょうゆやからしじょうゆで食べる蒸かしナスにします。「梨ナス」は「泉州水ナス」の系統で、浅漬けに向きます。山古志村の「かぐら南蛮」はピリ辛で、「巾着ナス」といっしょに炒めたり、揚げびたしにしたりします。「かぐら南蛮」はタネを、興味があればお持ち帰りください。
- 「勘次郎胡瓜」は、山形県の真室川町で130年前から作られており、土地の名士の名前をとったそうです。皮はやわらかく、シャキシャキして、青臭さがあまりない、食べやすいキュウリです。ピクルスやデザートにも商品化されているようです。最近見つかった「けさ次郎キュウリ」は、この秋に山形の伝統野菜として認定されると聞きました。水分が少なくシャキシャキとしておいしいそうです。
- 「トロンボーン」はズッキーニの一種です。形がめずらしいだけで、料理にはあまり利用されていないようです。
- 「本田(ほんでん)ウリ」は江戸東京野菜で、マクワウリの一種です。昔は甘い果物がなく重宝されましたが、今の果物には太刀打ちできません。素朴な懐かしい味わいです。
- 「モーウィ」、「ナーベラー(へちま)」は、沖縄でみそ炒めなどにして食べています。
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■2019年9月8日 第6回 ウリ類・ブドウ 〜 勉強品目「ブドウ」 本部青年会 吉野元氏 |
- シャインマスカット以降、皮ごと食べられるブドウが赤も黒も出ています。今日は、山梨県産のブドウに限定して、食べくらべを行います。
- 今回、八百屋塾でブドウを紹介するにあたり、産地の方や育種をしている方のお話を聞きたいと思い、先日、志村葡萄研究所に行ってきました。
- 御坂町桃源郷公園前の「Grape Shop ココロ」という店の敷地内に圃場がありましたが、植え付けから4年目くらいでした。品種を選抜している圃場は企業秘密もあり、見ることはできませんでした。
- ブドウの小さな花からおしべを取り除き、掛け合わせたいブドウの花粉をつけ、袋をかぶせて交配し、タネを採ります。採れた多くのタネから有望なものを選抜して育てる、それが育種家の勘というかセンスなのでしょう。
- 志村葡萄研究所のカタログにある「自社開発」の掛け合わせには、「シャインマスカット」や黒い「ウインク」という自社開発のブドウが多く使われています。何を親にするか、何を選抜するかが育種のポイントになります。
- 農研によると、数年前から「シャインマスカット」の作付面積が増えています。「シャインマスカット」はアメリカ系とヨーロッパ系のブドウの掛け合わせで、ヨーロッパ系は皮がかみ切りやすいのが特徴です。市場ではヨーロッパ系のブドウが増えていますが、給食の業界では「巨峰」や「ピオーネ」の納品が多いのが面白いと思います。
- 今日のブドウの食べくらべは9種類、めずらしい品種も多数お持ちしました。貴重な経験になると思います。ただ、同じ品種でも毎年味は違いますし、生産者によっても違うので、これからも常に自分のベロメーターを鍛えていってください。
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◇「ブドウ」の写真 |
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