■2023年1月22日 第10回 春菊・せり  〜 勉強品目「春菊」「せり」「ポンカンほか」 東京青果(株) 野菜第3部 マネージャー 鈴木剛氏、広島青果商業協同組合 青年部部長 橋本佳樹氏、伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏、八百屋塾顧問 副理事 杉本晃章氏

◇「春菊」「せり」について

 [東京青果(株) 野菜第3部 マネージャー 鈴木剛氏より]

  • 「根付き春菊(株張)」は入荷が限定的で、今日はサンプルをお持ちできませんでした。株もとから側枝がたくさん出て、株ごと抜き取るタイプです。ご購入の際は入荷状況をお問い合わせください。

  • 「根なし春菊(株立)」は、一般的に流通している春菊です。葉に深い切れ込みがたくさんあり、側枝の茎を切って何度も摘み取り、収穫します。9〜10月頃はかなり大きな葉、年末から今ぐらいの時期にかけてはわき芽を摘み取ったものが出荷されます。

  • 「おたふく春菊(大葉型)」は主に西日本で栽培されている春菊で、関東では茨城県JAなめがたしおさいのものが出回っていますが、数量は少ないです。葉の切れ込みが浅いのが特徴。葉は大きくてへらのように丸みがあり、肉厚でやわらかく、サラダなど生でもおいしく食べられます。普通の春菊に比べると香りは強くないので、クセがなく食べやすい味わいです。

  • 「仙台せり」は古くから栽培されています。私は相馬の出身なので、小さいころから慣れ親しんできました。根っこまで丸ごと食べる「せり鍋」が有名になり、ブランド化、特にGI認定後、認知度や需要が上がっています。根と茎の間が特においしく栄養も高いので、ぜひその部分を食べていただきたい。

  • 青森の「一町田せり」は、湧き水を利用して作っています。宮城、秋田、青森など、東北はせりの産地が多く、それぞれの特徴を出しながら販売しています。

  • 「三関せり」は、秋田県JAこまち湯沢。正確には今日は「三関せり」ではなく、同じ農協のほぼ同じ品質のもので、根っこが長いのが特徴です。この地域では、昔から、きりたんぽ鍋で根つきのセリを食べていました。草丈は宮城より短い。ほ場の土がやわらかく、根を伸ばすような栽培をしています。

  • 茨城県JAなめがたしおさいのせりは、通常、根は切られています。根は食べられますが、東北のようには洗っていないので、食べる際にはよく洗ってください。宮城県などの細かい調製と比べると、店持ちと見栄えの面で、生産者により若干差があるかもしれません。その分、価格は安めになっています。
◇「春菊」「せり」の写真
根つき春菊
(東京)
春菊
(千葉)
おたふく春菊
(茨城)
マイクロハーブ・シュンギク
(村上農園)
仙台せり
(宮城)
一町田せり
(青森)
三関せり
(秋田)
行方せり
(茨城)

◇広島の春菊について

 [広島青果商業協同組合 青年部部長 橋本佳樹氏より]

  • 今日は広島県中筋地区で栽培している「大葉春菊」をお持ちしました。葉が丸みを帯びた春菊で、市場評価が高い。価格も通常の春菊よりは高めです。

  • 登録上は14軒ですが、高齢化などにより9軒の農家さんで栽培されています。自家採種なので、各農家さんにより丸みの具合が違ったりします。

  • 店持ちがよく、生で食べても甘みがあっておいしい。
広島青果商業協同組合 青年部部長
橋本佳樹氏
  • 今日お持ちした中でやや長いものは組合長さんのものだと思います。多少長くなってもそれに対応した袋があるので、先がしおれたりすることもなくきめ細かく対応して出荷してくださっています。

  • 中筋地区では、ほうれん草、小松菜、みず菜、しろ菜など多種多様な葉ものも栽培しています。
◇広島の「春菊」の写真
中筋しゅんぎく
(広島-山福)
中筋しゅんぎく
(広島-中勝)
中筋しゅんぎく
(広島-福正)
中筋しゅんぎく
(広島-福百)
 

◇「伝統野菜の春菊・せり」について

 [伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏より]

  • 本日は春にふさわしい野菜、春菊とせりがテーマです。せりについては講師の方から非常に興味深いお話をうかがいましたので、さっとお話します。

  • 杉本さんから、自生の「野せり」もまだ食べられているというお話がありました。春の七草のうち、野菜として流通しているものは、せり、すずな(かぶ)、すずしろ(だいこん)の3つ。せりの栽培については、島根県の「黒田せり」や宮城県の「仙台せり」が江戸時代の記録に残っています。
伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏
  • 「せり」という名前の由来は植えると競り合って生えてくるからではないかといわれます。リウマチや神経痛に効果があるとされ、冬場の貴重な野菜、春を告げる野菜として食べられてきました。畑ではなく、湧水を使ったり水田で作られている野菜です。

  • 島根県の「黒田せり」の産地を訪ねたところ、市街地の中の田んぼで作られていることに驚きました。「黒田せり」は束ねてかんぴょうで結わえておでんの具にするそうです。お雑煮、鍋、おひたしなど、いろいろな食べ方がありますが、長年の間に地方独特の食べ方が培われているのも面白いと思います。

  • 「仙台せり」は、以前は根っこは食べていなかったそうですが、「三関せり」の根っこがおいしいということから、「仙台せり」の根っこも食べられるようになったと聞いています。

  • 青森「一町田せり」は、岩木山の麓で作られています。ここにも視察に行きました。一面雪の中で、せり田のところだけ湧水を引いているので雪がありません。仲間が収穫のお手伝いをしましたが、水は冷たいけれど、凍る冷たさではない、と言っていました。せりは選別作業がとても大変そうでした。

  • 「水前寺せり」はひご野菜のひとつで江津湖周辺で栽培されています。根つきではありません。

  • 春菊の原産地は地中海沿岸です。最初は「花園春菊」といって、観賞用でした。それが中国やインドに伝わり、葉を食べる野菜として用いられるようになりました。

  • 日本へは中国から導入されました。室町時代末期か鎌倉時代にはあったといわれます。ローマ菊、ルソン菊、琉球菊、さつま菊、高麗菊といった名前から、南方または朝鮮経由と推察できます。

  • 京都の「おたふく春菊」は「京菊菜」とも呼ばれます。鍋専用のものとして、大きな葉のものでしたが、最近は中葉寄りになっているようです。

  • 広島の中筋地区で自家採取・栽培されている「中筋しゅんぎく」は、地産地消推進事業"ひろしまそだち"のひとつとして、広島市が力を入れている大葉春菊です。

  • 地方名が多く、関東では「春菊」、関西では「菊菜」、「新菊」など。蒔くと周年食べられるので「ふだん菊」、「無尽草」とも。西日本で多く栽培され、関東ではあまり広まりませんでしたが、健康志向で見直されて、今はどこでも周年栽培されています。

  • 葉の形や大きさにより、中葉・大葉。小葉は栽培が難しく、今はあまり流通していません。

  • 「中葉春菊」は、葉のつき方によって「株立」と「株張」に分けられます。「株立」は茎の回りの枝を何度も収穫するタイプ。「株張」は、根が張っていて根つきで収穫するタイプです。

  • 春菊はとても傷みやすい野菜です。葉がみずみずしくて色が濃くてつやのあるものを選ぶとよいでしょう。

  • 食べ方はオールマイティーですが、九州にはふぐのちり鍋専用の春菊などもあります。福岡県の「なべ春菊」は、別名「ローマ」という「大葉春菊」です。葉が大きくてやわらかく、香りはマイルドです。

  • 「中葉春菊」は、香りが強く、茎もシャキシャキとしておいしいので、博多では「茎春菊」と呼ばれて好まれているそうです。
 

◇「ポンカン」「はるみ」「デコポン」について

 [八百屋塾顧問 副理事 杉本晃章氏より]

  • 「はるみ」も「デコポン」も、「ポンカン」と「清見」の交配品種です。「ポンカン」の品種が違ったため、違ったものができました。

  • 「ポンカン」はインド原産で、台湾での生産が多い。20〜30年前、日本産「ポンカン」が出る前は、台湾の「ポンカン」が主流で、高品質で大きなサイズでした。日本ではまだ「甘夏」が幅を利かせていた時代で、それよりよほど糖度が高いということで、高級な柑橘でした。

  • 戦前、台湾を統治していた時代に、愛媛県、熊本県が「ポンカン」を導入して作り始めました。
八百屋塾顧問 副理事 杉本晃章氏
  • 「ポンカン」には、背が高いものと扁平なもの、2種類があります。おなじみの「大田ポンカン」は低床性で、デコはありません。「吉田ポンカン」には少しデコがあり、それが「清見」と交配したときに「デコポン」になったのだと思います。生産は愛媛県が半分近くを占めていて、あとは鹿児島、高知など。

  • 「ポンカン」はすあがりが早く、頭の上の部分がパサパサになります。2月になると大きいものは品質が低下しますから、小さいものを売るといいでしょう。品種によって、若干、種が入ることを理解して販売してください。

  • 「デコポン」の品種登録は「不知火」です。「デコポン」は熊本県果実連が命名した登録商標なので、ほかでは使えません。愛媛県は「ヒメポン」という名前にしましたが、広島産は「ヒロポン」になってしまう。そこで、日園連がJA関係のものは「デコポン」を使う、と決めました。糖度13度以上、酸度1度以下のものは「デコポン」、ほかは「不知火」で販売する申し合わせになっています。

  • 12月収穫で今出回っている「デコポン」は、貯蔵が進んでいないので酸が強い。おすすめは、ハウスもので2月に入ってから、露地は5月に入ってから。八百屋としては5〜6月の果物がなくなる時期においしい柑橘が出るのはありがたいと思っています。

  • 今の時期は、「天草」、「せとか」、「紅まどんな」など、甘い柑橘が多く出ています。「デコポン」に関しては、もう少し酸が切れてから出荷してもらいたいというのが八百屋としての希望です。

  • 「はるみ」は静岡県の果樹試験場で生まれた品種です。広島、愛媛、熊本でも作っていますが、静岡から苗木を導入したものです。清水の「はるみ」は酸が強いのですが、濃厚な味で、3月頃になってもおいしい。広島、愛媛の「はるみ」は酸抜けは早いのですが、「せとか」とぶつかるので負けてしまう感があります。3〜4月は静岡の「はるみ」の販売がおすすめです。
◇「ポンカン」「はるみ」「デコポン」の写真
デコポン
(熊本)
はるみ
(愛媛)
ポンカン
(愛媛)
 

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