■2022年4月17日
第1回 豆・アスパラガス

約2年ぶりの開催となった「八百屋塾2022」。今年度は全12回、リアルとリモートを組み合わせたハイブリッド形式で行う予定です。第1回目のテーマは、「豆・アスパラガス」でした。

豆の展示
アスパラガス、いちごの展示
 
■八百屋塾実行委員長 飯塚高史

 昨年11月にリモート八百屋塾をテスト開催しましたが、それを除くと2年1カ月ぶりという久しぶりの開催です。今年度は、この会場とリモートのハイブリッド形式で12回。感染者が増加した場合はリモートのみになるかもしれませんが、楽しい勉強会にしていきたいと考えています。

 本日のスタッフは、葛西支所 吉野、板橋支所 塩野、板橋支所 篠原、豊島支所 鈴木、神田商組 高橋、多摩支所 日原、多摩支所 山田、調理班の田中、石井、黒津、米本、ホームページの記録係 クサマ、野菜の調達や講師派遣担当 高橋ほか、16名が担当します。

八百屋塾実行委員長 飯塚高史

 コロナ禍での開催なので、パーティションの設置、入口での検温、マスク着用、エレベーターは3人までなど、感染対策を行っています。みなさんも気をつけつつ、楽しんで受講してください。

 今日は「免疫力」について、管理栄養士の松村眞由子さんにお話しいただきます。久しぶりの八百屋塾、一日楽しんでください。

 
■東京都青果物商業協同組合 理事長 近藤栄一郎

 おはようございます。本日の八百屋塾に多くの方にご参加いただき、まことにありがとうございます。本年度もぜひご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。コロナ禍がなかなか収束せず、八百屋塾は教室に加え、ウェブでもあわせて開催というハイブリッド形式になります。このような勉強会を、文明の利器によって全国に配信できるというのは非つねに大きなメリットではないかと思います。

東京都青果物商業協同組合 理事長
近藤栄一郎

 昨日、大先輩、杉本さんと野菜談義をしました。今、いろいろな春野菜が出ていますが、たとえばネギや大根など、トウが立ったものを販売している店もあります。売り手も買い手も、旬がわかっていないのかな、という話をしました。おいしいものを自分の舌で確かめるのが八百屋塾の原点ですから、ぜひここで再確認してください。

 今日は、「免疫力を高める野菜の活用術」について、講師の松村眞由子さんにご講演いただきます。コロナに打ち勝つのはなかなか難しいようで、ウィズコロナになるわけです。そのなかでコロナにかからないようにするには、免疫力を高める必要があります。

 免疫力を高めることは、老化やコロナの予防にも有効といわれます。野菜を活用して免疫力を高めることは、時代に合ったテーマだと思います。みなさまもご自身の健康のため、消費者の方々のために、八百屋塾をご活用いただければ幸いです。

 
■八百屋塾顧問 副理事 杉本晃章

 今の野菜は総じておいしくなくなっています。なぜなら、全部ハイブリッドにしてしまったからです。ただ、大量消費の時代、ハイブリッドでなければ生産が間に合いません。

 キュウリが100本成ったとすると、昔は50〜60本がまっすぐのA品で、あとはB品やC品でした。今のハイブリッドでは90本はA品ができます。すごく効率のいいタネなんですね。一番いいのは、病気に強いことです。苗を100本買ってくれば100本ちゃんと育ちます。自分でタネを播いて苗を育てたら、5〜6割しか苗ができません。しかも、半分は曲がったキュウリになってしまいます。今、市場には、曲がったキュウリは出ません。5センチくらい育ったときに採って、姫キュウリとして売ってしまいます。

八百屋塾顧問 副理事 杉本晃章

 最も残念なのは、日持ちさせるためにキュウリの皮をかたくしたことです。昔は3日目にはスカスカになり、そんなキュウリを売ったらお客さまに怒られました。八百屋はその日のうちに売るという体制で 、毎日30〜40ケース売ってきました。お客さまの購買力も強く、1箱買って漬けものにする方もいました。今は漬けものをしないので、1〜2本あればいい。皮がかたいので、ぬか漬けにしてもなかなか浸透しないんですね。だからおいしくない。今のキュウリは冷蔵庫で1週間ぐらいもちます。しかも、3日目も1週間後も味が変わりません。売るほうにとっては、ロスがないので都合がいいともいえます。日持ちはよくなりましたが、皮がかたくておいしくなくなってしまいました。

  私は、「キュウリの命は採ってから3日」と教えられてきました。市場についた時はすでに2日目ですから、その日か翌日まで。では、キュウリの命とは何か。青臭さ、いわゆるカッパのにおいです。今のキュウリにはそれがありません。余談ですが、カッパ巻きの由来は、新宿のすし屋が、戦後、ネタがなかった時代にキュウリののり巻きを作ったのが始まりだそうです。

  植物は、春のお彼岸を目途に、花を咲かせようとします。花をつける前にトウ立ち(抽苔)が始まり、野菜の栄養分はすべてトウにもっていかれます。長ネギがいい例で、寒さが強い時期はとても甘くてやわらかい「冬ネギ」ですが、3月3日のひな祭りを過ぎたあたりから急激にトウが立ち、かたくなり、最後はネギ坊主ができます。この頃にはもう食べられません。ところが、今、平気でトウが立ったネギを売っている店があります。恥ずかしながら、八百屋でもわかっていない人がいる。それは、自分で食べていないからです。これから、春ネギもトウが立ってきます。一度、トウの立ったネギを焼いて食べてみてください。どれほどかたいかがわかると思います。それは、ホウレンソウ、小松菜、かぶなども全部いっしょです。

  市場で目利きするとき、私は父親に「トウが立ったものを買っちゃダメだ」と言われ続けました。お客さまの中にも野菜に詳しい人がいて、「こんなの売っちゃダメよ!」などと言われたものです。私には、八百屋の子として、怒られながらもイチから野菜の勉強をしてきたという自負があります。みなさんも、お客さんからほしいと言われれば何でも売ってしまうような八百屋にはならないでください。プロとして、「おいしい」という点はつねに念頭においておきましょう。

  白菜についても少しお話しします。秋冬白菜は、漬けものにすると非常においしいですよね。うちの店でも大きな樽で何十個と漬けて販売しています。白菜もトウが立ちます。3月頃になると芯が上がってきて、おいしくありません。秋冬白菜は2月下旬〜3月半ば頃まで。春白菜は、芯が黄色く、葉っぱも青々していて、見た目にはきれいです。お客さまも1回は買ってくれるのですが、2回目はない。今は1年中、白菜が出ています。夏は高原白菜が出回ります。お客さまの中には、「おたくの白菜の漬けものおいしいから、夏も漬けてよ」と言ってくれる人もいるのですが、夏の白菜はかたくておいしくないので、漬けません。以前は、冬のタネを使って夏に山の上で作っていました。下に持ってくると暑いからすぐ溶けてしまった。それがこの10年くらい前から、暑さに強いハイブリッドの白菜になりました。見た目は同じようでも、かたくておいしくない。今は1年中、何でも出ていますが、味は旬のものには構いません。

 八百屋塾は開講してから20年以上経ちました。長年勉強をしても、まだ足りない部分がたくさんあります。みなさんはどうぞ何でも聞いてください。一番いいのは質問をすることです。

 まだまだ話したいことがたくさんあって一日あっても足りないくらいですが、このあと、免疫力のお話がありますのでバトンタッチします。昔から、好き嫌いなく食べないとダメだよ、と親によく言われたものですが、それは免疫力を高めるためにも最適なんですね。みなさんもお客さまのために、野菜のよさをぜひ広めてください。

 

2022年度 第2回八百屋塾
2022
年5月22日(日)

講演: 「トマト」について
講師: タキイ種苗
勉強品目: トマト


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